SDガンダムバインド~聖獣神話~   作:狼の騎神ガロ

9 / 13
お久しぶりです!今回は福音教会の話と影人の話です!緒方智絵里に三村かな子も登場!ではどうぞ!


第9話 幸福と祝福

翌日の朝のことだ

 

(なんだったんだ……)

 

布団の中で、影人は昨夜の戦闘を思い出す。意識はなく、まったく違う自分になっていた気がする。

 

(父さんと母さんの敵だって思って……花奈の言う通り、怒りで……聖獣に……)

 

あの時の自分は何だったのか、そんなことを考えながら寝返りをうつ。気になるのかその思考に気を取られ、うまく寝付けていない。そんな中…

 

ピピピ、ピピピ……

 

目覚ましが思考をさえぎるように鳴った。まずは起きよう、答えはおのずとわかる…そう思いながらうつろな目で時計を探す。しかし、手探りで探してるうちに、ふと何か柔らかいものに触れた気がした。

時計ではない、寝ぼけていてもそれだけははっきりとわかる。意識がどんどん覚醒していくと、触れた物はとても温かく、影人を包んでいたようだ。めを開けて触れた先を見ると……

 

「……!?は、はわわわ、わわわ」

 

「ふふ、目覚まし時計と間違えて胸触るなんて……ベタね、影人」

 

影人は隣で寝ていたらしい京香の胸を触っていたのだ…

 

「な…なんで京香がぁぁぁあ!?!?」

――――――――――

「まったく…耳元でうるさいわよ…しかも失神するし…」

 

「どれもこれも京香の自業自得だっての……」

 

十数分後、朝食を食べながら、影人は不快感を覚えていた。なにせあの後影人は絶叫した後失神してしまったというのだ。

 

「はいはい…それにしても、もうすぐ17だってのに、胸に触っただけで失神って…いろいろまずいんじゃない?」

 

「まぁ、わかってはいるつもりだけどさ……」

 

弱点を突かれ、影人は京香から目を背ける。勝機とみたのか、京香はさらに影人を責め立てる。

 

「それにもうすぐ夏よ?みんな薄いの着てくるんだから、せめて鼻血ださないようにしないと…」

 

「うぐ……確かに、鼻血だしてバイト先のみなさんに迷惑かけるわけにはいかないもんな……」

 

「それもそうだけど……一番大事なのはそこじゃないでしょ?あ、そうだ」

 

ふと思いついたように京香は影人のことをじっと見つめる。

 

「なんなら、私が初心脱却のお手伝い、してあげようか?」

 

「なっ!?何言い出すんだよ京香!!」

 

突然の提案、そしてその内容に影人は顔を赤くする。一方の京香は恥ずかしがっている素振りはない。

 

「何って…だから、あんたの初心脱却のために、水着になろっか…って」

 

「い、いやいやいや、それこそ何言ってるんだよ!!」

 

もう影人の顔はかなり赤くなっている。さらに、ふと呟いた言葉が、それに拍車をかけることとなる。

 

「いやぁ、影人ならいいかな……って」

 

「なぁ!?きょ、お前どんだけ俺の顔赤くしたら気がすむんだよ…はむ、んぐ……」

 

恥ずかしさを隠すために無言かつ勢いを早くご飯を食べる。しかしむせたのかいきなり心臓をおさえ咳き込む。

 

「はぁ…まったく、そんながっつくから…はい、お水よ?」

 

影人の背中を撫でながら京香は彼に水を手渡す。それすらもガブ飲みし、息を整える。

 

「誰のせいだと思ってんまったく……ごちそうさまでした」

 

その手をどかして食べ終わり食器を台所へ持っていく影人を、京香は笑顔で見つめていた。

 

(可愛いやつ……本当に、弟みたいね…)

―――――――――――

「まったく、今朝は散々な目にあった……」

 

バイトのために駅まで歩く影人、その横を花奈が歩く。視線はほぼ常に影人を見ているが、影人は一切気にしない素振りを見せ話を続ける。そしてふと、

 

「キョウカ、あの大きさの割には柔らかかったね、カゲト」

 

こんなことを呟く。しかも影人を見て、彼の名を呼びながら。影人はそっぽを向くが、一応尋ねる。

 

「なんのことだよ、それ…」

 

「フフーン、知ってるんだよカゲト、今朝キョウカの胸触ったでしょ…しかも、目覚まし時計と間違えて」

 

まるで花奈はその場にいたかのように事の一部始終を語っている。影人は顔を赤くしてかなりどぎまぎしている。

 

「な!?な、なんでお前がそれを知ってるんだよ!?」

 

影人が驚き尋ねた質問に対する応答として花奈が彼の前に立ち返した言葉は、とんでもない回答だった。

 

「え?だって私はカゲトと異体同心の関係だし、視覚も触覚も……つまり、カゲトと5感を共有してるの!」

 

「な、なぁあああああ!?」

 

朝の時間のおかげか誰も気付かなかったのが不幸中の幸いだろう。かなりドキドキしてあたふたしている。

 

「て、てことは俺が見てるのとかも……」

 

「そう、だからもしカゲトがアレなの見てたら、私も見てるかもね……まぁ失神しやすいカゲトのことだからそんなことないかもだけど……あ、そろそろカゲトがバイト先だから私はこれで〜」

 

駅が見えてくると花奈は姿を消す。もし事務所で花奈が現れたら、大変な問題になってしまうからだ。

 

「はぁ…まったく、何なんだあいつは……」

 

まるで花奈に勝ち逃げされたようで釈然としないまま、影人はいつものように美城プロダクションの事務所へと向かうのだった。

――――――――――

「もう朝からいろいろありすぎだっての……」

 

346カフェにて、影人はカップを拭きながらそんなことを呟く。

 

「……大神さん、大丈夫ですか?」

 

隣で同じくコップを拭く女性のバイト仲間が尋ねる。

 

「はい、大丈夫です……今朝…というか最近いろいろありすぎて理解に苦しんでます…」

 

聖獣との同調、京香が添い寝していてさらに胸を触ってしまったこと、そして花奈の異体同心宣言、どれもが影人を悩ませるのには充分すぎる出来事であった。

 

「まぁ、何があったかは聞かないですけど、お疲れ様です…」

 

「あはは…あ、行ってきますね」

 

客がくるのに気づいて影人は拭き終わったカップを置いて水を持っていく。

 

「いらっしゃいませ、かな子さん、智絵里さん」

 

「あ…ありがとうございます…」

 

「うん!」

 

水を置いた席には、茶色のショートヘアのおっとりとした雰囲気の三村かな子、その隣には同じく茶色の髪でツインテールのほんわかとした雰囲気の緒方智絵里が座っていた。彼女たちはシンデレラプロジェクトの一員で、彼女たちに双葉杏を加えて『キャンディアイランド』というユニットも結成している。かな子は、よく346カフェにくることがあり、智絵里とも来ることもあって、2人は影人とは顔なじみとなっている。

 

「注文は何にしますか?」

 

「私は…コーヒーで…」

 

「私はチーズケーキを一つ…いやふた……ううん、3つで!」

 

かな子は一人で注文するとは思えない量を注文する。最初の頃は大丈夫なのかと影人は疑問に思っていたが、働き始めてしばらくした今では、疑問には思わなくなった。そのまま注文を受け、キッチンの方に戻ろうとすると、ふと…

 

「智絵里ちゃん、クローバー見つかった?」

 

「ううん…まだ……」

 

そんな話が聞こえてきた。智絵里はよくライブ前などの時、願掛けとして四葉のクローバーを探す。

 

「そっか。もうすぐでイベントなのにね」

 

「うん…ちょっと不安……」

 

「イベント、もうすぐなんですか?」

 

コーヒーやケーキをテーブルに起きながら影人は尋ねる。どうやらCDの発売イベントのようだ。

 

「練習やレコーディングは頑張ったんだけど…」

 

「クローバーは、願掛けですもんね…」

 

「うん…」

 

智絵里は静かに頷いてさらに続ける。

 

「クローバー…四葉のクローバーは、見つけたら幸せが貰えるから…その幸せを、ファンのみんなに届けられたらな…って…」

 

「幸せを…届ける…」

 

智絵里の言葉を噛み締めるように影人は呟く。

 

「智絵里ちゃんは優しいよね。私も応援するよ!」

 

「はい、俺も応援してます、頑張ってくださいね、智絵里さん」

 

そして一礼して影人は下がる。しかし“幸せ"という言葉は、彼の中に少しの間呪縛のように残り続けていた。

―――――――――――

「QuelI->{EXiV[zep]->{ethes}}」

 

福音教会の教会内では、この言葉と共に聖獣の壁画に向かい、跪き、多くの信者が祈りを捧げていた。その中には影人の友人の智樹の姿もある。皆白いフードを身にまとい、祈りの言葉を1字も間違うことなく暗唱している。

 

「……よし、礼拝終了…」

 

祈りを捧げた智樹は立ち上がり、教会の外へ向けて歩き始める。その後ろから黒髪に緑の瞳の男性がやってくる。

 

「智樹」

 

「あ…ツルギ!」

 

彼の名は村雨ツルギ。剣が得意な信者であり、智樹の師匠でもある。

 

「どうだ智樹、剣の修行はちゃんとやってるか?」

 

「まぁなんとかやってるけど…最近はな…った!?」

 

智樹がサボってるのを感じてかツルギは手刀で彼の頭をたたく。叩かれた部分を抑え智樹はうなる。

 

「なんすか、俺サボってるわけじゃねえっすよ…ただ情報収集を…」

 

「と言う名のアニメと特撮の鑑賞だろ…まったく、アキラはちゃんとやってるというのに…」

 

「アキラ?」

 

彼らが言っているのはアキラ・プロフェシアのことである。中性的な顔だちの快活な女性で、男女問わず信者たちの間では人気である。

 

「へぇ…あの宝塚がそこまで日本文化に目覚めるなんてね」

 

「誰がタカラヅカですか…シンガイですよセンパイ」

 

「げ!?噂をしたら本人が」

 

ツルギの背中からヒョッコリとアキラ本人が現れ智樹に挨拶をする。

 

「まったく、センパイもちゃんとレンシュウきてくださいよ…アニメとか見るのはいいですけど…」

 

聞いてたのか…

アキラに指摘されこんなことを心の中で智樹は呟く。

 

「はいはい、明日から行きますよ明日から…」

 

面倒になったのか手を振りながら智樹は出ていった。その後ろでは…

 

「こないならカクゴしといてくださいねセンパイ!…どうしましょうツルギさん」

 

「まぁいい、その時は竹刀だ」

 

「あはは…」

 

こんな会話がこそこそと広げられていた。

そうとも知らず智樹は教会の外に出て深呼吸した。

 

「ふぅ、素振りはしてるってのに…」

 

しばらくするとその隣に小柄な黒いポニーテールの少女が立つ。名はムジナ。真実は定かではないが、福音教会成立からのメンバーで、かなり智樹のことを気に入っているらしい。

 

「智樹、さんざんアキラとツルギに叱られた…ドンマイ」

 

「ムジナ…いいよなお前はお気楽で」

 

「剣ならしておいて損は無い。面白い」

 

ムジナはどこか一方をじっと見つめて呟く。普段からこの様子で、智樹はもう気にすることはなくなった。

 

「てか、よくお前は俺の所にくるけどよ、他のことに興味とかねぇのか?」

 

「興味ならいろいろある。自然に街。人の心も興味の対象。特に智樹の心はムジナの興味をくすぐる」

 

「どういうことだよ…」

 

智樹は呆れながら言う。何故自分なのか、自分の心に興味を持つと言われても、智樹は全然嬉しくはなかった。するとムジナはクスリと微笑む。

 

「智樹の心は面白い。教団の中でも智樹は一番深い…無に近いものを持っている…」

 

「………は?」

 

さらに呆れた。普通ならネガティブな感情であるはずなのに、ムジナはむしろ笑いながらそれを言う。今の智樹は目の前のムジナに底知れぬ狂気を覚えていた。そんなことは知らず、ムジナは智樹を見上げ、

 

「智樹、その無は影になる。聖獣を呼び寄せるかもしれない……ふふ、楽しみにしてる」

 

そういって足早にどこかへと走り去っていった。

 

「俺が…聖獣に……」

 

地面に映る影を見て、智樹は1人呟いていた。

―――――――――――

「幸せ……ね……」

 

何気ない言葉のはずであった言葉は影人の中に重くのしかかっていた。しばらく幸せが何なのかわからず最近暮らしていた影人だからこそなのだろう。

仕事が終わり、歩きながら影人は考えていると…

 

「影人、お疲れ様」

 

「京香……」

 

家の前で京香が待ち構えていた。帰るのを見越して待っていたのだろう。

 

「どうしたの?待ち構えるなんて…」

 

「いいから、ほら入って?」

 

そのまま背中を押して影人を家へと半ば強引に入れる。

 

「な、なんだよ京香…いきなりこんな…」

 

リビングの椅子に座った影人に対面するように京香が座り、影人の顔をじっと見つめる。

 

「なんだか影人、夕べから疲れてたし……何かあった?」

 

「何かって…何も」

 

「ないわけないでしょ?その顔は、何かあった時の顔よ」

 

京香はまじまじと影人の顔を見つめている。どこか暗い表情、いつもの明るい影人を知っているからこそ、京香はそのわずかな変化を見逃さなかった。観念したのか、影人は昨日のアレシディアとの戦闘や、今日のことについて隠さずに話した。

 

「……へぇ、聖獣が影人の心を喰う、ね……てか、それと幸せがどうこうって何の関係があるのよ?」

 

「いや、特に関係はないんだけどさ…ちょっと疑問に思っちゃって…」

 

苦笑いしながら影人は答えると、京香は少し暗い表情をしながら尋ねる。

 

「……今の生活は、嫌かしら?本当の父さんと母さんがいたほうが…」

 

「いや、そういうことじゃないよ…京香や結衣さんには感謝してるし、この恩は返さないとって思ってる…」

 

否定して影人は言う。影人の父親と京香の父親は親友で、今影人がこうして倉敷家にいるのも、その影響、そして京香の母の結衣の厚意からである。だが、それが影人を悩ませていたという。

 

「けど、ふと思うんだ…京香の家に迎えてもらって、迷惑かけてるんじゃないかって…幸せの邪魔してるのかなって」

 

影人から出た言葉に京香はため息をつき…

 

「バ影人」

 

「なっ!?」

 

一蹴した。そして影人の両頬に優しく手を置き、まっすぐに影人の目を見つめる。

 

「いい?もし迷惑に感じてるなら、こうやって心配なんてしないわ…むしろ、あなたにはここにいて欲しい、聖獣になんてなって欲しくなかった…」

 

「京香……」

 

「それに、聖獣が心を食べるっていうのなら、食べられる前に、私が影人を繋ぎとめるわ…そう簡単に影人を手離してたまるもんですか」

 

そう言いながら京香はにっこりと微笑む。だが影人は少し複雑な表情を浮かべる。

 

「京香、どうしてそこまで俺のことを…」

 

「当たり前よ…影人は私の弟で家族なんだし、影人と一緒にいることが私の幸せなの」

 

驚いたように影人は目を見開く。

 

『何にも気にしないで!だって、家族なんだから!』

 

倉敷家に来てすぐに京香に言われた言葉を思い出し、影人はくすりと笑う。

 

「…そうだね、もう家族の一員なんだよね……それに、心を強く持てば聖獣に喰われることはない……京香がいれば、大丈夫かな?」

 

「影人……ふふ、当たり前じゃない!」

 

影人の言葉ににっこりと微笑む。きっと京香が自分を引き止める、そう信じ、影人は京香を見つめていた。とても和やかでいい雰囲気。だがそれは崩壊する。そう……

 

「むぅ……なんかいいムードになってるかな……」

 

花奈が……

 

「うぉぉ!?」

 

「げぇ、花奈!?」

 

影人も京香も驚いてるが、京香は特に雰囲気を壊され憤怒の状態だ。

 

「なんで今出てくるのよ!ムードってのがあるでしょムードが!」

 

「考えてるよ!だって今キョウカとカゲトいい雰囲気だったし!そりゃカゲトとキョウカがそうなのはいいけど、ちょっと嫉妬しちゃうかな!」

 

「何よ!花奈だって影人と何回もいい雰囲気になってるじゃない!」

 

「「ぐぬぬぬ……」」

 

口論を続け、京香と花奈が睨み合う。そんな2人の様子を見つめて影人は最初キョトンとしていたが、しばらくしてクスクスと笑い始める。

 

「……影人?」

 

「何かおかしいかな?」

 

「……いやさ…なんだかんだ、今こうしてるのが一番幸せなのかなって…」

 

一瞬驚いたように京香と花奈が影人を見ると、三人で目が合って、それがツボにはいったのか三人はクスクスと声を上げ笑い合った……




未央「それにしても、かげっちは私並に恐ろしい子だよ…多くのアイドルと仲がいいし、しかもしぶりんとは気さくな仲だし、プロデューサーとも……あの人、何者?
次回SDガンダムバインド聖獣神話『海王竜目覚める』新たな神話のページを開け!」

次回は影人の昔話、そして新しい聖獣の戦闘です!

ではまた今度!感想お待ちしております!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。