いやーいよいよ一章開始ですね!
なんか長かった気がする…。
10.幸先不安
大海原。
どこまでも続く青、蒼、碧。
どんなものも呑み込んでしまいそうなこの青い海を見てみると、一つ思うことがある。
――…普通にヤバくね?
いやだってだって、何にもないんだぜ? 無人島すらないんだぜ?
死んだじゃん、俺死んだじゃん。
普通のでっかい船ならまだしも、俺はボートだもん。 漕ぐやつだもん。
何? もう俺の海賊冒険記終了? 早すぎるわ!!
涙が出そうになるのをこらえながら、空を飛ぶ鳥の鳴き声や小さな波の音、ボートを漕ぐ音やがやがやとした喧騒の音を聞く…。
…って、うん?
「おいっ!! 何だあいつ!!」
背後から、酷く下品な声が聞こえてきた。
――まさか…。
何となく嫌な予感を感じながら、ゆっくりと、ホラー映画並みにためて振り返る。 そこには――――――――。
大きな船だった。 帆には、骸骨とクロスしている刀。 そして何だか、マフラーをつけている。
船首には、剣とマフラーがデザインされている。 ダサい。
そして、船の上には何人もの野蛮な海賊達が乗っていた。
海賊船じゃないですかやだー…。
△▼△▼△
拝啓。 サボ様。
さっき感動的な別れをしたばっかだけど、今の現状を綴ります。
…捕まりました。
「おい、酒もってこーい!」「ったく、昼間から飲むのかよ…」「うわっ、何だ今の魚うまそうだった!」「船長の居る島に行ったら、次どこ行くんだろ…」
外から、賑やかな声が聞こえてくる。
いま、俺は物置に拘束されていて、ガラクタに紛れていた。
俺は、現状に危機感を覚えながらも、この海賊達を分析した。
数は、結構多い。 大体30人ぐらい居るのかな?
もっと居るかも知れないが、30ぐらいが妥当だろうな。
で、船長はここにはいないっぽい。 俺を捕まえた目的は、次行く島に居る船長に引き渡す為らしい。 会話の内容からそう悟った。 どうやら次の島は、人が高く売れるらしく、この海賊達は何度も人を売っていたそうだ。
曰く、よく働く若い者は高く売れるらしい。
…まぁ、俺も一応18歳だしな。 丁度の歳なんだろう。
「おい、見えてきたぞ!」
また、物置の外から声が聞こえてきた。
そろそろ島に着くらしい。
ま、怯えた振りでもしとくかな。
△▼△▼△
大海原に、美しく輝く島の中心の塔が反射する。
島全体が煌びやかな輝きに包まれ、とても裕福そうに見える。
しかし、街を歩く人々は、どれも女性や幼い男児ばかりで、男性の姿が見えない…。
――ここは、宝石の国、“ヴァルテン”
「ほらっ、とっとと歩け! もたもたすんな!」
両手を後ろに縛られ、無理やり歩かせる。
酸を使えば一瞬で溶かせるけど……人数が多い。 この中にかなりの手練れがいるかもしれんしな。
…つーか、海楼石使えよ。 あれってこの世界で一番硬いものなんだろ?
まぁ、でもこの数で脱出しようとする無謀なやつは居ないと思ったのかな?
まぁ実際、俺もしてないけど。
街に入ったあたりで、ようやくこの島の住人らしき奴らが見えてきた。
…この海賊達、堂々と大通りを通んのかよ。 大丈夫なのか?
そう思っていたが、何だか住人達は特に珍しそうにこちらを見ることもなく、当たり前のように過ごしている。
うん? 何だ? 誰も助けようとしてこないのは驚きだな。
まぁ、別に必要としてないけど。
というか…妙に男が少ない気がする。
幼い男子は居るけど…でも何か、女の人をよく見るなぁ。
アマゾンリリー擬き、って感じ?
「…よし、着いたぞ。 入れ」
海賊に呼びかけられた。
目の前にあるのは……城。
…え? 城?
「さっさと入れ!」
ボケーッとしていると、無理やり背中を押され門をくぐらせられる。
そして、海賊はまた俺を歩かせはじめた。
――城。 城じゃん。 何で?
ドレスローザみたいに海賊が王様なの? だから住人も珍しそうにしなかったの?
でも、国を手に入れたのになんでわざわざ部下を海に出したんだ?
これ以上金とかを強奪する意味ってないよね?
そんな思考を延々と繰り返しているうちに、どうやら目的地らしい場所にたどり着いた。
「船長! カロンです!」
「入れ」
今まで俺を先導していた海賊が、部屋の中に居る人物に呼びかける。
部屋の中の人物――船長は、即答し、それを聞いたカロンは俺を連れて中に入った。
部屋の中には、奥にあるフカフカそうな椅子に腰掛けた偉そうな奴、船長一人で、俺を見てからカロンに尋ねた。
「…一人だけか?」
「は、はい…。 今回はあまり遭遇しなくて…」
若干冷や汗を流しながら、そう告げるカロン。
首にマフラーをつけた船長は、不服そうな顔をしたが、すぐに無表情になった。
「…ふん、まぁいい。 成果があれば良いんだ。
それにそいつは、活きが良さそうだ。
かなりの
「よし。 この前入った奴と一緒の牢に入れておけ。
明後日、二人同時に
また!
くっそ…。 もうやだよ、早速面倒くさい展開になったじゃんかよ…。
まぁ捕まえられた時から面倒くさい展開だったけど…。
もっと面倒くさそうじゃん!
「分かりました!
…ほら、来い!」
カロンは、船長の命令を受けると、また俺を無理やり歩かせた。
…今は、素直に牢まで行くか。
△▼△▼△
城の地下。
いかにも、という雰囲気の牢に連れて行かれ、中に放り投げられた。
「いいか! 大人しくしてろよ! 少しでも問題を起こしたら、殺すからな!」
カロンは、その台詞を捨てると、牢の格子扉を閉め、来た道を折り返していった。
「いてて…ったく、もう少し丁寧に扱ってくれよ…」
俺は、放り出された時にぶつかった手首をさすりながら、愚痴をこぼす。
「…大丈夫、ですか?」
「え?」
突然、牢の隅あたりから声が聞こえた。
見てみると、そこには闇に紛れて体育座りをしている少年が居た。
…そういえば、船長が誰かと一緒の牢って言ってたな。
誰か、ってこいつか。
「大丈夫ですか? 怪我、したんですか?」
再び尋ねられる。
「あー…大丈夫だよ。 痛いだけ。 えーと…」
…何を話したらいいんだ。
しばらく、その場を沈黙が支配する。
俺は、なんとなく気まずくなって、口を開いた。
「えっと、俺ソイズ! レイデルド=D=ソイズだ」
一瞬、Dであることを明かしてよかったのか、と思ったが、有名になったらどうせ明かすんだし、別にいいか、という結論に至る。
「あ…僕は、シェイラン=シェイルです。
よ…よろしく…?」
今この状況で、よろしく、というべきなのか迷ったのか、最後の発音が上がる。
しかし、俺は面倒くさい事を考えない。
「あぁ、よろしく」
俺はそう言うと、格子に視線を向けた。
これも海楼石で出来ていない…。
流石に格子ぐらいは海楼石で出来てそうだったんだけどな…。
ん、そういえば。
「なぁ、シェイル」
「…はい?」
「この島って、どんな島かわかる?」
そういえばここがどこか分かってなかった。
知っておくべき情報だし、ここは聞いておこう。
「どんな島、というのは…?」
「あー…名前とか、特徴、とかさ」
「あぁ…。
ここは、ヴァルテン、という島です。 これは島の名前でもあり、国名でもあります。
美しい
ん…そういえば、街とかけっこう綺麗な結晶とかあったな。
「だから、貿易をよくするんですけど…。
最近、この国の国王が、海賊に娘を人質にとられて、その海賊の言いなりになってるんです。目的は分からないけど…それからは、何故かこの国の男性ばかりが城に連れ去られるようになって、この島に来た男性も連れ去っているようなんです」
「俺は、航海してたら捕まったぞ」
まぁ、ボートを漕いで海を進んでるのを“航海”と呼ぶには怪しいけど…。
「そうなんですか? …何でそんなに男性を集めてるんだろ…」
――改造、とか言ってたけどな。
そう言おうとしたが、シェイルが続けた。
「…おっと、話が逸れましたね。 それで、残った女性達には、2つのグループに分けて、一つのグループを航海させ、もう一つのグループには何か作らせてるみたいです。 この前、牢の外で海賊達がそんな話をしてました。
女達に作らせた兵器が使いやすい~、みたいなことを」
あいつは、軍でも作る気か?
そこまで聞いて、そう思った。
“改造”とか“兵器”とか、絶対軍作るつもりだろ。
んで、それを使って新世界に進出、とか?
俺らの用途は、人間兵器、ってとこかな?
「よし、ありがとな、シェイル」
そう言うと俺は、立ち上がった。
そして、鉄格子を掴む。
「…? 何するんですか?」
後ろから来る質問。
俺は鉄格子を酸で溶かしながら、ゆっくりと微笑んだ。
「決まってんだろ。 脱獄さ」