あれから暫く探したが、結局、孤児院に残った人はローム以外居なかった。
皆既に逃げたか、それとも――
いや、考えない考えない!
とりあえず、今はロームを安全な場所へ移そう。
「ローム、何があっても俺から離れんなよ」
「う、うん…」
とりあえずは、いつもの修行場所まで行こう。 あそこは隠れられる場所が多いし、あそこまで行くには森のど真ん中を突っ切っていかなきゃいけない。 流石にそこまで海賊は来ないだろう。
俺はそう決めると、道中に居る海賊を薙ぎ倒しつつ、あの修行場へと急いだ。
△▼△▼△
「うぅ…ここ通るの?」
ロームが、半ベソを掻きながら修行場への道を歩いている。
そうか…もう慣れたけど、初見にはきついんだろうな、この道は。
「ほら、乗れ」
俺は屈んで背中に乗るようにロームに言った。 ロームは無言で背中に乗ってくる。
「よっしゃ、飛ばすぞ!」
木の幹を思いっきり蹴って、いつも行ってるように木と木の間を飛んでいく。 イメージ的にはそうだな…どこかの忍者を想像してくれたら良い。
この行き方は、俺が何度もここを通り、木の位置を熟知しているからこその荒技だ。 木の間を飛びながら次に着地する木を認識する芸当は初見ではできん。
「…ぐほっ!?」
――木にぶつかった。
あれ? こんな場所に木なんてあったか?
見てみると、丁度俺の進路を遮るように木から枝が伸びている。 しかもかなり太い。
さっき通った時にはなかった…。 でもあんな短時間でここまで固い枝が伸びるとは思えない。 …ということは!!
「誰だ!?」
周りを見回し、叫ぶ。
こんな芸当するのはどう考えても、能力者しか居ないわな。
「…ククク」
すると、丁度俺のぶつかった木が変形し始めた。
木は少しずつ小さくなっていき、丁度人間のサイズに。 そこから手が生え、足が生え、そして最後には…。
「やーっぱ、ばれちゃうよねぇ」
人間になった。
黒髪で金色の瞳。 歳は20ぐらいかな? 身長は低く、性別は男。 そして何より、その額だ。
額には、赤い丸、中に星印。 この紋章は――
「お前…転生者か!」
「おっ、知ってるねぇ。 てことは君も転生者! ククク、妙に強いなぁって思ったんだよねぇ」
何というかこいつ…ヘラヘラしてるな。 俺の嫌いなタイプだ。
「同じ転生者なら、自己紹介しないとねぇ。 こんにちは、僕はコロック=ルン。 ルンルンって呼んでよ」
「…は?」
お前、男か? って感じの呼び名だ。 なんだ? 男の娘ってか? やかましい。
「は? って…困っちゃうなぁ…。 …ま、いーか」
あはは、と明るく話すルン。
…さて、さっきから友達みたいに話してるがこいつ…多分敵だよな。
「お前…今島を襲ってる海賊の一味か?」
「お、分かっちゃった? そーだよ! 一応副船長やってんだよねぇ」
やっぱり! そうとなれば敵だ。 問答無用で倒す!
「…ローム、ちょっと隠れててくれないか?」
「う…うん」
ロームを背中から降ろし、木の陰に隠れたことを確認する。
「どったのぉ? あの子下がらせちゃって。 まさかまさか、僕と戦っちゃう感じ?」
「それ以外に何があるんだよ」
「あー、そっかぁー。 うーん、止めた方が良いと思うけどなぁー。 だって…」
次の瞬間、ルンが
「すぐ、終わっちゃうからさ」
何故か俺は、吹き飛ばされていた。 きっと殴られたんだ、ルンに。 痛みは感じない。 いや、痛みを感じるのが追いついていない。
「ぐっ!」
後ろの木に衝突したとき、ようやく顔面に激痛が走った。 たら~っと、鼻血が出ているのが分かる。
というか、あいつ今武装色と
「って、あれ?」
肩を後ろから掴まれた。 …ばかな、後ろは木のはず…。
無理やり首を動かして後ろを見ると、木にくっきりと、ルンの顔が浮かび上がっていた。
――――え?
「せいっ」
ここで、俺を掴んでいた枝が、俺を投げ飛ばした。
くそっ、痛ぇ。
さっきの木を見上げると、木で足場が作られていて、その上にルンが立っていた。
「一応言っとこうか。 僕はね、
樹木同化人間…イシイシの実の木版ってとこか? そいつと森で戦闘って…不利にも程があるだろ。
「じゃあ、俺も教えてやるよ! 俺は
言いながら、ルンの下へ跳ぶ。
拳に酸を纏い、
「サンサンの実、強酸人間だ!!」
ルンをぶん殴る。 だが、既にそこにはルンは居なく、俺の拳は後ろの木にめり込み、溶かしていった。
「こっちだよー」
空中から声が聞こえた。
見ると、
「空に逃げるなら…!」
今度は掌に酸を溜める。 そして、それを上に掲げると、叫んだ。
「
手から酸が飛び出し、その場に雨が降る。
この雨が降る時間はおよそ30秒! この間に…片付ける。
「おっと…危ないなぁ…」
降ってくる雨を器用に避けながら、近くの木に近付く。 同化しようとしてるんだろう。
「させるか!
手から酸を飛ばし、同化するのを妨害する。
「よっ…当たらないよー」
ルンは、飛んできた酸を避け、そのまま木と同化した。
「さ、いくよー!
ルンが同化した木から声が聞こえた瞬間だった。
僅かに木の表面に棘のようなものが出来たのを、俺の見聞色が察知した。 これは…。
棘のようなものが、だんだんと長くなってくる。 急いで地面に伏せる。 と、ここで棘が急に伸び、お互いに木を貫く。 そして悲鳴――――悲鳴!?
つーかこの声は…。
「ローム!」