元現代人は転生海賊一味を作りたい   作:四つ葉

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4.海軍本部中将

「兄…ちゃ…」

 

 木の後ろから、今にも命が絶えそうな声が聞こえる。

 ――――ローム…!

 俺は、頭上の棘を酸で溶かすと、ロームが居る木の裏へと回った。

 そこには、木の棘に串刺しにされているロームが…。

 

「ローム!」

 

 急いで棘を溶かそうとする。 が、棘とロームの身体が触れているため、ロームもろとも溶かしてしまう可能性が高い。

 

「くそっ、どうすれば…」

「うぅん…」

 

 ロームの顔は真っ青で、ぐったりとしている。

 

「…ソ…イズ…兄ちゃ…」

「…ん? …何だ…?」

「痛いよ…早く…た、す…けて…」

 

 ロームが、何かを訴えるようにこちらを見ている。

 

 ――――ッ!

 

「…分かった…」

 

 俺は、ロームの頭に手を置いた。 そして、ありったけの酸を、その掌から出す。

 溢れ出した酸は、ロームの頭、身体、その全てを溶かしていく。

 

「…じゃあな、ローム」

 

 また、会えたら会おう。

 

 やがて、酸がロームの全身を溶かしきった時、ようやく立ち上がった。

 

「あー…殺しちゃったんだー」

 

 いつの間にか、俺の背後に立っていたルンがぼそりと呟いた。

 

 …くっ…。

 

「お前ェ…!」

 振り返り、腰を落とし、拳を引く。

 

「あァァァァア!!」

 

 一回…一回でもいい…。 アイツをぶっ飛ばす。

 拳に力を込め、もう一度雄叫びを上げる。

 

 俺の想いに応えるかのように、拳が黒く染まり出し、その身を固くする。

 そして、無意識のうちに、地面を何度も蹴り、一瞬のうちにルンの背後へと回った。

 

「――――!?」

「うぅらァァァァア!」

 

 拳に酸を纏わせ、ありったけの力を込めて、ルンの後頭部を殴りつけた。

 

「うぐ…ッ!」

 

 殴られたルンは、何故か酸で溶けないが、それでも吹っ飛び、木の棘にぶつかって大ダメージが――――

「く…っ、月歩(ゲッポウ)!」

 

 ――――入らなかった。

 ルンはギリギリの所で空中を蹴り、ダメージを免れる。

 

「な…」

 

 そんな…武装色も、六式も一瞬使えたのに…。

 

「くそ…まだだ! もう一回」

 

 腕に力を込めて、拳を構える。 …しかし、一向に拳は黒く染まらない。

 

「終わりなの、君は!」

 

 いつの間にか、ルンが目の前まで来ていた。

 

「まず経験が違う。 僕はこの世界に来てもう20年近く経つんだよ? 君は勝てないさ」

 俺の周りを回りながら、言い続けるルン。

 

「僕は武装色が使えるし、見聞色も使える。 六式だって使えるんだ。 諦めて降参しなよ。 ま、それでも立ち向かってきたからには殺すんだけどねー」

 

 く…イラつく。

 でも、あいつが言ってることは本当の事だ。 実際、ルンには敵わない。

 

 …でも嫌だぞ、こんな所で終わりなんて。 せっかくこの世界に来たのに…もう終わりなんてさ…。

 と、その時だった。

 

「――――おォォォ」

 

 しゃがれた声。 妙な威圧感がある、でもちょっと優しげな声。 これは聞いたことがあるぞ。 …この声は…。

 と、上から誰か降ってきた(・・・・・)

 

「…え?」

 

 その人は、俺の前に着地すると、その背中の『正義』の文字をたなびかせた。

 

「まだ幼い子供に…何をしとるんじゃ…」

 

 やっぱり、この声は!

 

「君は…ガープ!」

 

 モンキー=D=ガープ。 海軍本部中将にして、ルフィの祖父。

 

 …というか、何で本部の中将とかいう割と偉い人がこんなとこに? ここってまさか、めっちゃ凄い島だったり…………

 

 

 いや、ないな。

 

「あちゃー、会いたくない人に会っちゃったなぁー。 じゃ、ここは退散ということで――――」

 

 ガープを見て、逃げようと背中を見せるルン。

 しかしガープは、ルンの肩を掴み、逃走を阻止する。

 

「逃がしはせんぞ。 “森林のルン”よ…。 今日こそお主を、いや、お主達“黒衣(くろごろも)海賊団”を捕らえるぞ!」

 

 真剣に言うガープだが、正直吹きそうになった。

 “森林のルン”て。 なんだそれネーミングセンスやばくね? 黒衣海賊団とかもさ…。 船長厨二なの? まぁ、ゴリゴリの厨二の俺が言うのもなんだけどさ…。

「もー、そんな真剣にならないでよー。 船長ならまだしもさぁ、僕副船長だよー?」

 

 いやいや、関係ないだろ。 つーかむしろ副船長ならアタリの方な気がするが…。

 

「お主、自分の懸賞金を分かっていてそう言っておるのか?」

「ん? 8700万ベリーだけど?」

 

 な…そんな大物だったのか? こいつ。

 

「そうじゃ。 そしてお主らの船長“腐敗者 オードゥン”、懸賞金9000万ベリー。 どちらも逃がさん。 さぁ、お主らの船長はどこにおる!」

 

 凄い剣幕で怒鳴るガープ。

 

 こいつらの懸賞金…頭一つ飛び抜けてないか…? あ、いや、でもここの海が何の海か分からないな。 もし東の海(イーストブルー)だったとしたら…凄いぞ…。

「はぁー。 そんなバカ正直に聞いたって、答える訳ないじゃん。 君がただの海兵だったら、このまま倒すとこだけど、まぁあのガープ中将だからね、ここは素直に尻尾巻いて逃げますよ~」

 

 ルンはそう言うと、素早い動きで近くの木に触り、同化した。 当然ガープの手からルンは消え、木に顔が浮かび上がる。

 

「む…」

 

 悔しそうに顔を歪めるガープ。

 え? 別にあの木は他の木と隣接してないから、あそこから逃げられないんじゃないの?

 

 そう思っていると、今度は別の木にルンの顔が浮かび上がる。

 

 え? え? …何で?

 

「じゃあねー」

 微笑みながら遠ざかっていくルン。

 そして、この森林のどこかに姿を消した――――。

 

△▼△▼△

 

「それで、お主達は大丈夫か?」

 

 今俺は、ガープを前にして椅子に座っている。 ここはガープの船…海軍本部中将の船だ。

 他にもこの島の僅かな生き残りが、この部屋に居る。

 それにしても…あの海賊達は、物凄い勢いで島を襲っていったんだな。 あんな短時間で生き残りがこれしか居ないなんて…。

 ――――皆…。 今はいない、孤児院の人達を思い浮かべる。 そう、結局、孤児院に生き残りは俺とローム以外居なかった。 そのロームもルンに殺された…。 また俺は孤独になってしまった訳だ。

 

 ガープが、生き残りの一人一人に話を聞いている。

 あれだけ優しい人が、海軍に他に居るのかな。 居たら、少し心が痛む。 俺はこれから海賊になろうとしてるんだしな。

 

 やがて、ガープが俺のもとへやってきた。

 

「お主は…確か、あの森に居たの」

「うん。 俺、一応能力者だから、対抗出来ると思ったんだけど…無理だった…。 ロームも死なせちゃったし…」

 

 若干、子供らしさを残しつつ喋る。 まぁ、能力者って言ってる時点でただの子供じゃないけど。

 

「…能…力者?」

 

 ガープの目が見開いた。

 それもそうか、幼い子供が悪魔の実食ってるんだもんな。

 ん…? というかそれってルフィと似てね?

 

「そうか…だからあの場所に居ったんじゃのう…。 それと、その“ローム”というのは…」

 

 と、ガープが懐から何かの箱を取り出した。

 

「あの森に落ちてたんじゃが…ひょっとすると…そのロームという者のものかもしれん」

 

 その箱は、若干溶けかかっている。 多分、酸から奇跡的に溶けるのを免れたんだろう。

 

 俺は、その箱を受け取り、開ける。

 中には一枚の紙と、一本の美しい黄緑色の羽根だった。

 一部が溶けている紙を取ると、早速読み始めた。

 

△▼△▼△

 

――ズ兄ちゃんへ

兄ちゃん、誕―日おめでと――。 この前、珍――鳥を見つけたから、その羽根をプ―――トするよ! 喜んでくれたら嬉しいな!

 

△▼△▼△

 

「ローム…」

 

 そういや、明後日は俺の誕生日だったな。 すっかり忘れてた。

 

「ありがとう…」

 

 そう言うと、箱の中にあった黄緑色の羽根を取り出し、容易く取れないように髪に絡めた。

 

「ありがとう、おじさん。 これ、ロームが俺に用意してくれたものみたい」

「そうか…ならあげよう」

 

 ガープは優しい眼差しで俺を見て、言う。

 ん~、何だか、さっきからガープが考えてたような奴じゃないんだよな~。 妙に優しい、つーか…。

「それより、お主は、親御さんとかは居るのか?」

「…え? いや、居ないよ。 孤児院の皆も死んじゃったし、これからどうしようかな…」

 

 …見えてきたぞ。 これは多分…。

 

「そうか…身寄りが無いのなら、住む場所にあてがある。 少し荒っぽい奴が多いが、それでも良いかの?」

 

 やっぱり、か…。 神様がこうなるように仕組んだんだな…。

 …でも…。

 

 俺はロームの手紙を見る。

 

 なんつー方法を取ってくれたんだよ…。

 

「…? どうかしたかの?」

「…あ、いや、何でもない。 …うん、良いよ。 独りで過ごす方が嫌だもん。 俺そこ行きたい」

 手紙をポケットにしまい、そう答える。

 ガープはその答えに満足したようで、「分かった」と言って部屋から出た。

 

 と、すぐに部屋の外から話し声が聞こえた。

 ドアに近付いて盗み聞きしてみる。

 

 

「ガープ中将! これからどうしますか? まずは生き残った人達を一旦本部へ…」

「いや、いい。 予定通りドーン島へと向かっておくれ。 海軍候補の子が居たもんでの」

 

 え…もしかしてそういうこと? ガープが妙に優しかった理由って。

 

「はっ! 分かりました!」

 

 海兵が、ガープの指示へと聞いてどこかへ走り去る足音。 その後、ガープもまた、ドス、ドスと重い足音を残し、どこかへと去った。

 

 

 はぁ…ガープに目を付けられちゃったよ…。 これからどうしよう…。

 

 その場に座り込み、頭を抱えると、丁度船が動き出した。

 少し揺れる船内。

 

 そしてガープの船は、ドーン島を目指し進み出した――――。




 う~ん、ガープのキャラ崩壊が少しあるかな…。 原作のキャラを扱うのが難しくて、何だか変な感じになってしまいました。
 ソイズの感情も何だか不安定になってるし…失敗したな…。
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