「何者、って…」
最初、俺はアルトが言った意味が分からなかった。
“何者”とは――――? どういうことだ?
だがしかし、アルトの次の言葉で、俺はようやく意味を理解する事が出来たのである。
「おめぇの記憶を覗くとよぉ、変な記憶が見つかったんだ。
たっけぇ建物に、走る鉄の塊。 歩く奴らも何だか派手な服だしよぉ…。
なぁ、何なんだあの記憶は?」
…まさか!?
俺は瞬時に、アルトが言った事を、自分がよく知っているものと置き換えた。
たっけぇ建物――多分だけど、高層ビル。
走る鉄の塊――車。
これは……前世の記憶を覗かれたんだ!
「なぁなぁ、教えてくれよ」
思いっきりこっちに身を乗り出してきて、興味津々で問いかけてくる。
「…教えたら、お前は何をするんだ?」
「…何を?
いや、別に何もしねぇけど…。
喰おうっつっても、まずそうな感じしかしねぇし」
…どうしよう。 どう説明するべきか。
無視して酸を放つか? いや、でも修行をしてない――少なくともその記憶がない――状態で、攻撃するのはまずい。
かといって、「実は俺、転生者で、それは前世の記憶なんだ」って言って騒がれても困る。 まぁ、信じてくれるかは分からんが…。
…って待てよ?
こいつ、俺の前世の記憶が見えてるくせに、神様との会話とかは見えないのか?
…聞いてみるかな。
「…おい。
質問に答える前に、まず俺の質問に答えてくれ。
俺が、白い場所で変な爺さんと会話してる記憶は見えないか?」
「ん?
見えるけどよぉ、何だかモヤモヤしててよくわからねぇよ。
何か、その記憶にあんのか?」
…何でだ?
神様が、そこら辺を弄っててくれたのかな?
あの神様なら……やりそうだな。
「…というか、早く答えてくれよぉ! 気になるじゃんか」
…あぁ、駄目だなコリャ。 誤魔化しが効かねぇかもしれない。
…仕方ない…。 言うか…な。
「…はぁ、話すよ。
実は、お――――」
言いかけたその時、俺の声は誰かの悲鳴に遮られた。
「何だ!?」
気がつけば、赤い光が見える…。
ってあれ、炎じゃん!
くっそ、時間がかかりすぎた! こうなったらもう
「? 何が起きたんだ?」
アルトが、間の抜けた声で呟いた。
俺は立ち上がり、アルトの首根っこを掴み、立たせると思いっきり蹴って転ばした。
「ぐおっ!?」
状況はやばいけど、逃げるチャンスだ!
今のうちに!
そう考え、全力疾走でその場から逃げ出す。
「あっ、待て!」
背後から、アルトの声が聞こえる。
と同時に、一瞬で目の前にアルトが現れた。
「!?」
驚いて反応が遅れた。
その間にアルトは、武装色で固めた拳で、俺の脳天を殴る。
そして俺は、意識を手放した。
△▼△▼△
目が覚めたらそこは、船の中だった。
周りを見ると、誰も居なく、だだっ広い空間が広がっている。
――え、ここどこ…?
何で俺はここに居るんだ?
4歳あたりからの記憶がない…。 あ、でもサンサンの実の記憶はあるな…。 そこから所々実に関しての修行の記憶はあるけど…それ以外がない。
何だか怖くなってきて、まだボーッとしている頭を奮い起こし、起き上がった。
ここで、部屋のドアが開き、水を持った男の人が入ってきた。
「お…、目が覚めたか」
男の人はそれだけ言うと、部屋から出て行く。
そして数分後、また別の男の人が現れた。
顔に青い刺青を入れたその男は、ゆっくりと近付いてきて、口を開いた。
「…調子はどうだ?」
「え? …あ、はぁ…。 まぁ、悪くはないです」
「そうか…」
男は、床に座り込んだ。
俺も、釣られて座る。
…というかこの人…。
「目覚めたら見知らぬ場所で驚いているかもしれないが、とりあえず、自己紹介しておくか。
俺はモンキー・D・ドラゴン。 革命軍という組織の総司令官だ」
ですよねー。
ドラゴンから自己紹介してきたのは驚きだけど、自己紹介されるまでもなく、この刺青は絶対ドラゴンだ。
…つーか、ここ革命軍の船なのか!?
「…あの、僕は何故ここに…」
控え気味にそう尋ねる。
「…グレイターミナルが燃やされた事は、知ってるな?」
「え…?」
ちょっと待った、もうそんなとこまで進んでるのか?
俺の反応に、ドラゴンは驚いたようで、目を見開いた。
「覚えてないのか…!
…まぁ良い。 とにかく、グレイターミナルが燃やされたんだ。
その燃やされたグレイターミナルに、お前が倒れていたんだ。
俺達は、お前を手当てする為に、船に入れた。
まぁ、手当てといっても軽い怪我だったがな」
ドラゴンがそこまで話すと、船の外から、砲撃の音が聞こえた。
ドラゴンは、その音を聞くと、素早く部屋から出て行ってしまった。
俺はドラゴンが確実に去ったことを確認すると、再び寝転がった。
――何だか、よく分からないままこうなってしまったな…。
記憶もないし、一体どうなってるんだ?
色々考えるが、いくら考えてもきりがないため、完全に思考を遮断した――。
今回は物凄いハイスピードテンポでした。
というか、ドラゴンの口調が分からない…。
一応、ソイズ以外のグレイターミナルの人達は、既に目覚めています。
でも、その人達が一体どうなったのか分からないので、劇中ではあんまり語りません。