第19話をもってこの章は終了となります。
では、ごゆるりと…
sideハンゾウ
「あっぐぁっ!」
「あひゃひゃひゃぁ!!オルェァア!虫けらが!とっととクタバンナァ!」
地面に叩きつけられると同時に落下速度を利用した剛腕によるハンマーが俺の鳩尾深くに刺さる。
堪らず声が出たが、そのせいで肺の中にあった空気が全て吐き出され、瞬間的に酸欠に陥る。
奴のハンマーで打ちつけられた俺の身体はゴムボールのようにバウンドし、攻撃の準備を整えて待っていた奴の目の前に晒される。
「ゥゥルゥア!」
「っ!?…ぁっ!」
今度は兜と鎧の間に器用に指を突っ込み、喉仏をひっつかんで反対方向にぶん投げる。
流石の俺もこいつはちと辛い。
地面に転がされ立ち上がろうとする俺に追い討ちの電撃レーザーを放ち、俺が無理やり回避して状態が崩れると、再び距離を詰めようと跳躍してくる。
間一髪それも横に転がることで回避、しかし、そこからの回転ラリアットに巻き込まれ、俺の身体は宙を舞う。
それを予測していたかのように電気玉を空中でぶつけて俺の体制を崩し、また強烈なハンマーで俺を地面に叩きつける。
そのまま再びバウンドした俺のマウントを取り、雄叫びをあげる。
(まぁいったなぁ…パワーじゃぁぜってぇ負けねぇけど…このスピードで攻められちゃぁ勝ちが見えねぇ)
「ドォシタァ?その程度で幻のハンターとは…タイシタもんだなぁ!?えぇ⁉︎」
くっそ…声が出ねぇ⁉︎
喉がいかれやがったか…くっそ!うっぜぇ!
「はぁっははぁ!!コイツデ終わりダァ‼︎「どこを見ておるのだ?」ーーごはっ!?」
刹那
俺の上にいたクソザルが消え、呼吸がしやすくなる。
それどころかさっき強打して熱を持っていた腰や背中の熱が引き、喉の痛みも取れて行く…
これは…一体
「大丈夫か?こんな所でくたばるような球ではないとは思うが…
この先は小生に任せろ」
そういうと、俺を助けた奴はハンマーの柄で地面を突き
「我がマツバ家に代々伝わりし最果ての術…その目に焼き付けるが良い」
静かに呟くと、ハンマーと触れている地面が凍り始めた。
やがてそれは恐ろしい程のスピードで範囲を広げ、次第に下から氷の壁を形成する。
ラージャンは何かを察し、逃げようと走るがその先を氷壁が拒む。
ラージャンは次第に高く伸びていく壁を壊そうと攻撃を仕掛けるが…氷壁を壊すことは愚か、削ることもできない。
怒り狂い、こちらに向かって咆哮し毛色が変わった時には既に天までもが氷壁に覆われ、完全なる氷の世界を作り出す。
「《秘奥儀【氷極結界】一ノ陣》」
男が言い放つと温度が急激に下がり始める。
俺は暑さも寒さも無効化するスキルを体験したことがあるが、おそらくこの寒さはホットドリンクなどでは緩和することすら叶わないであろう。
「あ゛、アガァァア゛ァ゛ア゛!」
ついに耐えきれなくなったのか、男に飛び掛るラージャン。
しかし、男はゆっくりとハンマーを持ち上げると再び呟く
「我を守りし者よ…この氷極にて姿を現せ…」
刹那
「なっ⁉︎ぐがぁアアあぁあ⁉︎…がはっぁ…」
ラージャンが真下からの攻撃で吹っ飛び、間も無く天井に作られた巨大な氷柱に体を貫かれる。
その一部始終を見ていた俺はただただ戦慄した…
ラージャンの真下から出てきたあれは…
あの鋭角な鱗に白く輝く太く鋭い切っ先…見間違えるはずもない
ーーあれは『崩龍【ウカムルバス】』だーー
男は一つため息を吐くとウカムルバスに手を置き何かを呟く。
上半身(?)のみを出していたウカムルバスはその言葉を理解したかのように頷き、再び氷を砕き地に消えていった。
男がハンマーで地面を叩くと結界が溶けて行き、ラージャンの姿をした虫の息の空賊に問いかける。
「その姿はなんだ?誰に何をされたのだ?」
男は空賊が反撃せんと握りしめた左腕に容赦なくハンマーを打ち付けると苦しみ呻く男を気にすることもなくもう一度問いかける。
「その姿はなんだ?誰になn「大体…検討はついてる…その辺にしておいてやれ」ーーほう?」
男はラージャンから興味をなくし俺の方へ向かって歩いてくる。
俺は立ち上がり、男に向かい合うと男も歩みを止め、腕組みをしてこちらを見据えどうしようか考えているようだった。
さぁて…どうするか?
ウカムは苦手なんだよなぁ…
それにあの規格外の結界…俺でも太刀打ちできるかどうか…
そして時は非情にも動き
「見ぃぃぃいいつけたぞ‼︎『覇王ハンゾウ』‼︎今日こそ!小生との決着をつぅうけるのだぁ!」
「…は?」
「小生との熱きヴァトルを忘れたとは言わさんぞ⁉︎さぁ!ぜぇぇん力でかかってくるが良い!」
「ちょ、たんまたんま」
「ぬ?」
そう、それは思わぬ方向へ転がるための…
「お前…誰?」
「…」
もし機械仕掛けの運命があるのならば、変なところに思わぬ形でそれも自然に歯車がはめられたかのような
「ぬぁ!ぬぁぁにぃぃぃ!?」
やがて宵闇から抜け、朝焼けが美しくゼドアラを照らす頃、1人の男の絶叫が木霊する…
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side???
《奴が敗れたか…力も制御できん若僧にあのような力はちと刺激がつよすぎたかのぅ…》
【イイヤ、アイツノオカゲデオマエサンノムスコガ、ココヲメザスハズダ…ケッカハ、オナジデアロウ?】
『……やがて時充るとき、古の予言通り、我らが前にあの男の代わりが現れる…では、次のステージに移るとしよう…』
巨影達は互いに頷き、己の守衛地へと戻る。
一つはいつ崩れるともわからぬ、雷鳴轟く最果ての古塔へ
一つは屍の山をきずきあげ、もう2度と人間の立ち寄らぬ巨城へ
一つは最早生命を寄せ付けぬ灼熱の溶岩の成す、地獄の火口の深部へ
それらはやがて姿を変える。
一つは禍々しくも神々しい壮麗な翼を備え、煌々と輝く王冠の如き4本の角を冠した巨龍に
一つは自分以外の全てを認めず己の思うままに猛威を振るい、かつてこの世に滅びと災厄をもたらすと言い伝えられた巨龍に
一つは紅蓮に燃える劫火の化身。かつて究極の憤怒により覚醒を遂げた世界の全てに幕を引く『弥終の導き手』と記された巨龍に
それぞれの地におき、かの者と世界の終焉たる時を待つ。
ここまで読み続けて下さった方々に深く感謝致します。
次の新章におきましては、雰囲気をガラリと変えてちょっとバトル少なめでいきたいと考えています。
コラボとかも…したいなぁ苦笑
感想等お待ちしております。
そしてこれからも『狩人闘恋万華鏡〜迅竜の恋情と覇竜の傷跡〜』をどうぞよろしくお願いします!