狩人闘恋万華鏡〜迅竜の恋情と覇竜の傷跡〜   作:ドーントレス

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どうも、ドーントレスです!
今回でバトル終了の予定です!

めっちゃかけた気がします!気がするだけ!

では本編をごゆるらんとどうぞ


第30話「とある伝説の傭兵」

 

 

何かを守るために人は力を持つ。

 

しかし、絶大なる力を持つものは時としてそれに糾弾される。

 

そう。

 

力を持ち過ぎたものたちは、時としてその護りたいと思った者たちによって滅ぼされてしまう…

 

真に伝説となり英雄と称される者ほど…孤独に最も近い。

 

ーーーだが、彼らは戦う。それでも多くの者を救うためにーーー

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

最初に動いたのはセイラの方だった。

ハンゾウに真空波を放ち、ハンゾウはそれを受ける為に火炎を両の掌から放出し、それを武器として具現化させる。

セイラの太刀に対抗するかのように炎の中から現れたのは【覇刀タンネカムトルム】

つい先刻海を一振りで叩き割ったその太刀を振るい、セイラの真空波を相殺する。

 

ハンゾウはそのままの勢いで太刀を下段に構え前方に跳躍、セイラとの距離を詰めに行く。

しかし

 

ガゥン!

 

「…っぜぇな!」

 

ルナの援護射撃がそれを許さない。

セイラの闘い方は主に中距離でこそ真価を発揮する。

お互いセイラの戦法を知っているからこそ、ハンゾウは距離を詰めに行き、ルナはそれを拒む。

 

再びセイラは太刀を振るい、真空波を巻き起こす。

ハンゾウはそれを身を捻ることで回避…しかし

 

「それは失策なるぞ」

 

「っ⁉︎」

 

鈍い打撃音が響き、ハンゾウは逆サイドまで吹っ飛ぶ。

マツバが瞬時にハンゾウの行動を読み、無防備となった脇腹にフルスイングしたのだ。

 

「うぅむ…やはり我が愛槌ではない分扱いにくいな」

 

「けっ!なぁめてんじゃぁねぇぞ!!!」

 

標的をマツバへと変え、ハンゾウは刹那に距離を詰める。

マツバは…動かなかった。

 

刹那

 

「っ⁉︎ごっふぁ!」

 

ハンゾウの身体が再び宙に舞う。

爆音と共に右腕と左腹が爆破したのだ。

その爆破は『徹甲榴弾Lv3』によるルナとローザの精密射撃によるものだった。

ハンゾウは即座に体勢を立て直し、再び火炎から武器を形成する。

 

「させるか!」

 

「っせぇんだよ!」

 

ローザの射撃にハンゾウは右に一回転して回避、炎から形成した【覇砲ユプカムトルム】を狙わずに放ち、ローザのヘビィボウガンの銃口に弾丸を打ち込み、粉砕する。

 

「きゃっ⁉︎」

 

「ほぉれ!もういっちょ!」

 

「っ⁉︎ローザ殿!!!」

 

ハンゾウは、ヘビィボウガンが爆破した衝撃で怯んでいるローザにもう一撃『通常弾Lv2』を放つ。

反応が遅れたマツバとローザにそれを防ぐ手段など…なかった

 

しかし、ローザの眉間を狙ったそれがローザに届くことはなかった

 

刹那

 

キィン!

シュッ!シュシュン!

 

「なっ⁉︎ぐっ…クッソ!!!」

 

マツバにもローザにも何が起きているのか全くわからない。

金属同士がぶつかり合う音と、何かが風を切り迫る音がして、ハンゾウを後退させている。

 

「な、一体何が「…狂犬よ…師の封印を解き、再び表に出てくるとは…その不敬なる行いは万死に値すると知れ」ーーーあ、あれは⁉︎」

 

大海に聳え立つ3本の一枚岩の上…そこに赤き瞳の『白銀の太陽』を冠する一式装備を纏いし『伝説の傭兵』…ソルはハンゾウを見下ろし日の光を受け煌々とした輝きを放つ。

 

「…テメェか、いつもいつもオレのことを狂犬だの無知だのほざきやがって…最初にぶっ殺してぇ奴がテメェの方からやってくるとはなぁ!」

 

「…吠えるな、だから貴様は知性が足りないというのだ…大人しく元の場所に戻るならよし、でなければ」

 

「力ずくってか?はっ!テメェ如きがオレとまともに闘えんのか?せっけぇ闘い方しか知らん臆病もんが!」

 

「…狂犬よ…あまり強いことを言うもんじゃない…弱く見えるぞ?」

 

刹那

 

ドガァン!!!

 

3本の一枚岩は同時に音を立て崩れ落ち、ハンゾウはその場を飛び去る。

あっけに取られていたマツバとローザはそれを見ていることしかできない。

しかし、やがて気を持ち直すと加勢しなければと動き始める。

だが、それをセイラが止めた。

そしてローザにセニアの看病を、マツバにはオズを連れてくるように言いつけた。

 

セイラは空中で行われている激闘をまるで夏の昼の雲でも見るように、自然と無意味に心を躍らせながら見上げる。

 

「…見せてごらん?あんたが『兄弟子』に何分耐久できるのか…」

 

 

これは余談だが、ソルとハンゾウの戦績(約十年前までの)は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1233戦

ソル1232勝1分

ハンゾウ1232敗1分

 

である

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…今回のを含めたくはないが…記念すべき1234回戦目だ…特別に、もう2度と表に出てきたくなくなるくらいに痛めつけてやろう」

 

「ほざくな!あのガキと一緒にするんじゃぁねぇ!ただの人間とはちげぇんだよ!」

 

「だから…あまり吠えるなと……待て、貴様…今俺の弟弟子を馬鹿にしたのか…?」

 

ソルが切り立つ崖の上に立ち、遥か下の岩の上に立つハンゾウを見下ろす。

 

「あぁ?だったらなんだってんだよ?可愛い弟弟子を馬鹿にされて激おこってか?」

 

煽るようなその言葉に対し、ソルは静かに「いや」と呟くと崖を一直線に降りていく。

ハンゾウは迎え撃つ構えをとるが…

 

「ムカ着火インフェルノだ」

 

刹那

 

崖下にいたハンゾウの身体は背後からの打撃によって跳ね上がり、中腹辺りで更に横からの一撃を喰らい岩壁にめり込む。

ソルの追撃はそれだけにとどまらず、ハンゾウが顔を上げると同時にその紅い髪を引っ掴み再び崖下へと叩きおとす。

ハンゾウは空中で受け身を取ろうと身を翻す…が

 

「…遅い…鈍い…弱い!」

 

先程ハンゾウが作った窪みから踊りでたソルは無数の投げナイフをハンゾウに向かって投げ下ろす。

ハンゾウはそれを腕で弾き飛ばすが、全てを受けきれず数本が関節部に突き刺さり鮮血を抉り出す。

 

「っがぁー!!」

 

「…駄犬が、吠えるなと言っている!」

 

腕のガードを解いたハンゾウの顔面に、かの空の王者を彷彿とさせる蹴りが一撃、ハンゾウの左頬に直撃する。

蹴り下されたハンゾウはそのまま右側頭部から岩に激突、脳震盪を起こし、頭から血を流すハンゾウをソルは肩にかつぎ、そのまま投げ飛ばす。

大木をへし折って止まったハンゾウにゆっくりと歩み寄るソル。

 

刹那

 

剣形態の【覇剣斧ムルカムトルム】がソルに向かって飛び、その後ろから【覇皇大剣ガカムトルム】を上段に構えたハンゾウが躍り出る。

どちらも速度は目に止まるものではなかった…

 

 

「…遅い、と言っている」

 

ソルは最初の剣斧を難なく掴み取り、続く第2陣の攻撃を叩き落し、右脚による回転蹴りをアカム装備の天を穿つ左肩の牙をへし折ってハンゾウの頸椎に食らわした。

思わぬ反撃にハンゾウは目を白黒させながら勢いに負け吹っ飛ぶ。

 

「…よく聞け、これ以上俺の弟弟子の身体を痛めつけるのは本意ではない…だからもう一度だけ言ってやるぞ駄犬…元の場所に戻るなら良し…でなければ」

 

「でなければ…なんだってぇんだよ?」

 

ハンゾウは仰向けに倒れ、そのままきき返す。

ソルはゆっくりとハンゾウに歩み寄ると腰のポーチから禍々しく燃え続ける札のついたクナイを一本取り出し、ハンゾウの額にあてがった。

 

「…不本意だが、我儘な犬には死と言う名の躾を施すことになる」

 

ハンゾウは答えない…いや、答えられない。

ソルの持つそのクナイは確実に自分を殺せると覇龍の本能が告げているからだ…

やがてハンゾウは顔を逸らし

 

「…わぁった…わぁかったから!そんな物騒なもんしまってくれ…」

 

ソルは頷くとポーチにそれを戻した。

ハンゾウは再び顔を空に向けると清々しい潮風が頬を撫でる。

 

「…もうちと、この世界を満喫したかったなぁ」

 

「…そう思うのなら、内なる俺の弟弟子と対話すればいい。

あいつはそこまで分からず屋でもないはずだ」

 

「はっ…どぉだかねぇ」

 

しばらく静寂の時間が流れ、ハンゾウはゆっくり目を閉じる

 

「…覇龍よ、一つ頼みがある」

 

ソルは相変わらずハンゾウの側にしゃがみ込み顔を覗かせている。

ハンゾウは鬱陶しそうに目を開けるとソルを見る。

ソルの紅い目にはもう怒りは宿っておらず、寧ろ何一つ感情をたたえていないかのようだった。

 

「…ハンゾウの、力になってやってくれないか?

今まで通りでいい。

俺は…常にあいつを守れる訳ではない…」

 

「…」

 

「…だから、貴様に頼む他…俺にはできない」

 

「……」

 

「…どうか、たの「うっせぇよ」…」

 

ハンゾウは再び目を閉じ、そして微笑んだ

 

「あいつに死なれちゃぁ俺も存在できなくなる…だぁから危ねぇ時には出てきてやってんだ…そんでも、テメェに殺されかけたがな」

 

「…少し欲を抑える努力をしろ…そうすれば、俺もハンゾウを痛めつけないで済むのだから…」

 

「はんっ!そんなんオレの生き方じゃぁねぇ!食欲・性欲・破壊欲!どんな欲にだって全力で楽しみ尽くし、満たすことに意味がある…だぁが、死んじまっちゃぁ元も子もねぇもんな…わぁってるよ」

 

ソルはしばらくハンゾウを見ていたが、やがて立ち上がりその場を去った。

覇龍は深いため息を吐くと

 

「…バケモンって本当にいやがんだな…だが、残酷な奴だ…このままあのガキと変われってぇんだから…ま、知ったこっちゃぁないがな」

 

1人呟き、再び煉獄にその意識を落とした。




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