もうそろそろ日恋編も終わって最終章へ向かうつもりです。
最終章も変わらず読み続けて下るという御心の広い読者様方、これからもどうぞよろしくお願いします。
ではごゆるらんとどうぞ
sideローザ
おっす!みんな、あたいだよ。
セニアもハンゾウも復活して再びあたいたちの旅が再開して、漸く辿り着いた【ヴァリアライト】。
今はそこの城下町の入り口辺りにいるんだけど…なんだか様子が変なんだよねぇ…
「あ?城下町に入れない?」
「あぁ、なぁんか最近妙にモンスターから襲撃されてるらしくてな…安全が確認できるまで入れちゃくれねぇんだと」
ハンゾウがヴァリアライトの門番と話てきたようだが、どうやら、あたいたちの都合のいい方向へは行かないようだ。
かと言ってこの雪原で野宿は辛すぎる。
あたいもセニアも女の子なんだしね。
「…今失礼なこと考えた奴、正直に前に出ろ」←徹甲榴弾装填中
しかし、話には聞いていたけど…本当に物騒な城壁だねぇ。
ぱっと見ただけでもバリスタ18機に大砲が6門、撃龍槍が3つか…
「…ま、あんなのが近くにあれば…当然か…」
あたいはヴァリアライトの城壁から目を離し、山脈を降りた先にある暗雲漂う巨城『シュレイド城』を見とめる。
丁度一年前…古龍観測班にいる狩友の言葉が蘇る。
ーー黒龍が再び姿を現したーー
かつての繁栄と栄華を誇ったシュレイドを、半永久的に闇へと誘った災厄『黒龍【ミラボレアス】』。
ドンドルマから精鋭達が何度も送り込まれ、十数度にも渡る討伐戦の後に漸く討伐に成功した歴史にも残る災厄の龍。
その討伐戦の度に必ずその遺族、友人、恋人達が涙を流した。
あたいも、その1人だった。
唯一の幼馴染を、4度目の討伐戦で失った。
…その場に…あたいはいなかった…いけなかった…でも…
「形はどうであれ、また、会えるんだね」
あたいは湧いて出る感情を押し殺しながら、シュレイド城を睨みつける。
そう、確信的に…あたいはそこへ向かうのだと思っていたのだから…
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「あぁ⁉︎ハンゾウ…てめぇ、なんつった⁉︎」
「〜だぁから、ヴァリアライトには泊まれねぇ。入れねぇんじゃここにいても凍え死んじまうからな、おまえさんもさっきそんなこと言ってたろぅが…
あと、その近距離で叫ぶのはやめろ!」
「そんな!…確かに、そうだけど!」
「あんだよ?あの町になんかあんのか?…まぁ、近くで暖取れるようなとこ探すからよぅ、とりあえず落ち着け?おまえ…なんか変だぞ?」
あたいたちは、結局ヴァリアライトには入れず、他のどこかで泊まることになった。
そん時、ちょっと感情的になってハンゾウに掴みかかっちまったけど、後で謝ったら何かを察してくれたらしく、ハンゾウは何も聞かずに許してくれた。
しかし、問題はこの近くに暖を取れそうな山小屋なんかを調べずに来ちまってたことさね。
ハンゾウに相談したら
「最悪、穴掘ってしのぐしかねぇな…門番の話では今夜は吹雪らしいし、日没までにはまだまだあっから地図頼ってとりあえず探してみるか…20分だけくれ。そんでも見当つかねぇようなら、この山を降りよう」
…妥当な判断だと思う。
てか、ハンゾウはこういうことに慣れているのか、やけに頭が回る。
山を下りてしばらく行けば【ドンドルマ】がある。
でも、あんだけでかい街だったらおそらくハンゾウはまた1人のハンターとしてではなく、『
ハンゾウはヴァリアライトに関しても下調べを入念に行なっていた。結果的にドンドルマからの交易商人やハンターに見つかる可能性が高くはないとの判断でヴァリアライトへ向かったのだ。
山を下りてどこに行くのか、それも含めてこの付近を調べるということだろう。
そんな時だ
ハンゾウが地図とコンパスをぐるぐる見回し、ついに頭を抱え困り果てようかという時、1つの旋律が幽かに聞こえて来た。
その旋律は、哀しく、誰かを思うようにそっと心を独りぼっちにするかのような…とても悲しく美しい旋律だった。
それが近づいてくるのだ。
あたいは車内に取り付けた窓から音のする方を確認する。
微かに人影のようなものが見え、急いで荷車の屋根まで登りスコープでその方向を見る。
何やら大きな龍車を引きながら此方に向かって来ている人物は、どうやらハンターのようだ…あの装備は
「バサルX?こんな雪山にか…?まぁ、なんにせよ、こっちに向かって来てるなら好都合さね。この辺の道くらいは知ってるだろう」
バグパイプを吹きながら龍車を引くバサルX装備のハンターをあたいは引き止め、話してみることにした。
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「だぁっはっはっはっは!」
「あっはっはっはっは!」
…何これ
「おぉめぇさ、生きてたかぁ!ひっさしいのぉ!ハンゾウ!」
「お前さんこそ、こんなとこで会うなんてなぁ!元気してたかよ?」
「あったりきぃよ!昔も今も俺ぁRockだでな!」
なんだろう。すんごい盛り上がってる…
でもこれこそ好都合さね。ハンゾウの知り合いっぽいし、この辺に寝屋を構えてるんだったら、ちょいと貸してもらえるようにハンゾウから頼んで貰えば…
あたいはハンゾウに交渉してもらうようにそっと後ろから声をかけようとしたーーが、
「んだども、こげん寒かとこになんばしに来よっとね?」
「ちょいと野暮用でよ。あとロック、お前まぁた訛ってんぞ?あんまり訛られると俺にも分かんなくなっちまうから気ぃつけろ?」
「おぉ、そいつぁ悪かった!じゃけんど、ヴァリアライトにゃぁ今入れんだろ?」
「そうなんだよなぁ…どっかいいとこあればいいんだがなぁ。最悪、穴掘って野宿だ」
なんか、流れがいい感じになってきてる…このまま2人に任せっちまっても大丈夫、かな?
「そいつぁいけねぇや!おめぇさ、女子2人も連れとって野宿者なるつもりだったんかいな?」
「かぁってに決めつけんなっつーの!最悪の場合だけだよ、最悪のば・あ・い!
そぉだよ、ロック。この辺で雨風しのげそうなとこってないか?」
「俺ん家っつー選択肢あっけど「あ、そいつぁなしで」…だぁっはっはっはっは!やっぱりそうくるか!んだらぁ、あそこ使ったらいいじゃろ!」
「…あそこ…?」
「ほんれ、おめぇさ、よく知ってるあそこだげな。…もう何年も経っちょるさかい、おめぇさもそろそろ帰ってみてもよか思うがねぇ…」
「……」
ん?ハンゾウと…名前が分からんハンター(声かけたのあたいなのに、あたいを無視してハンゾウとずっとお喋りしてたから名前も聞いてない。さっきハンゾウが呼んでた『ロック』でいっか…?)との会話が雲行きが怪しくなってきた途端に途切れてしまった。
なんとなくあたいはハンゾウの後ろに座り直して話を聞く体制を作って待っていると
「…あぁ、そうだな。…墓とか立ってんのか?」
「形だけの気休め品だがな、
「……そうか。ありがとな」
「俺もそっちまで行くから案内してやるけん。山の天気は変わりやすいからなぁ」
「…助かる」
…声のトーンが落ちてる。しかも2人ともだ。
何かあったのか?あたいもちょっとしか聞き取れなかったけど…確か墓って言ってたような…
「おぅ、ローザ!次の宿が見つかったぜ。ちょいと歩くがそう遠くはねぇ筈だ…ついでに紹介しとく、こいつは『ロック』…まぁ、俺の知り合いだ」
「紹介に預かったロックだ。ハンゾウとは昔殴りおぉた仲でぇ!よろしくな!」
「んぇ…?」
ハンゾウとロックが唐突に此方に注意を向けてきたので反応に遅れたが…あたいの疑問の種もこの先に行くところでおそらく解消されるだろう。そう思ったあたいは
「よ、よろしく…お願いします?」
纏まんない頭の中で馬鹿みたいな反応を返していたのであった。
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side???
「…やっと、ここまで辿り着けたわね」
「……」
《汝等は…?》
【最果ての古塔】
その雷鳴轟く頂きに、2人のハンターと一頭の巨龍の姿がある。
一人は紅き瞳に流れる黒髪には白のエクステ、一見華奢だが古龍観測班の観測し得る全てのモンスターを狩り、大老殿にその名を残すギルド史上最強の女剣士『白疾風のセイラ』
そして一人は、この世の全ての刃物を使いこなし、ハンターズギルドに所属していた時に、まさしく最強の名を欲しいがままにした白銀の剣士、『伝説の傭兵ソル』。
それに対面するは、光がなくとも輝く白き鱗と体毛に包まれ、禍々しくも神々しい壮麗な翼を、自分に向かうことがどれ程愚かしく其の者自身がどれ程小さな存在かを見せつけるが如く広げ、煌々と輝く王冠の如き4本の角を冠する【祖龍】。
『祖なるもの』『祖龍』と崇め奉られた伝説の古龍【ミラルーツ】である。
セイラは神々しく佇む祖龍から目を離すことなく、しかし太刀を構えることもなく只々腰に手を当て動かない。
ソルも同じく、腕組みをしたまま祖龍を見上げる。
両者動かず様子をみていた中、セイラの方から静寂(正確には雷鳴が轟きまくっているが…)を破り口を開く。
「あんたが戻ってきたってことは、再び『滅びの時』が近づいてきたって事ね?…で、あんたは今回はどうする気なの?」
祖龍は一切動かず、問いに答える。
《非力なる人の子よ、我が力をいかに振るおうと此度の滅びは変えることはできないであろう。我が力を求め、汝等はここまで来た様だが…無駄足だったな》
「あら。祖龍様は案外すんなりと滅びを受け容れるのね?
人の営み、自然界の美しさを最も愛し守り続けた祖龍様はもういらっしゃらないのかしら?」
祖龍は少し悲しみに瞳を染め、尚も変わらず全て悟ったかのように答える。
《我が力は既に衰えた…我が同胞、我が分身も邪龍としての力しか残ってはおるまい…その力を滅びの対としてあてがえば、それこそ真の滅びが訪れる。
許せ人の猛者よ。そして、この領域に訪れた罪は目を瞑ろう。
汝等の世へ戻るが「解せないな」……?》
ここまでセイラとのやりとりを静聴していたソルが、組まれた腕をほどき祖龍を睨め付け言い放つ。
「貴様はこの領域を再び
未だ【弥終の導き手】は確認されていないが、貴様がここにいてがいない筈がない。答えろ。お前らの考えている【滅びの時】を止める方法を」
祖龍はソルを見つめ、頑なに動こうとしなかったその四肢を擡げ、白き吐息を吐き散らかし、目元を朱に染め怒声を響かせる。
《小童が…我の慈悲は2度とは無いぞ!その脆弱な肢体を塵と化したく無くば、己が身分を弁え即刻我が前から消え去るが良い!!!》
「…ソル、行きましょう?ああなっては話し合いの余地がないわ」
「…くっ」
紅き雷の落ちる音と共に疾風の乙女と伝説の傭兵は最果ての古塔より姿を消す。
祖龍は再び己の激昂を鎮め、腰を下ろして空を見上げる。
《我ができることはただ一つ…彼奴と『滅び』をぶつける【舞台】を作ることだけだ…それまでは…》
巨龍は静かに首を下ろし、息を吐く。
そして、まるで自分に言い聞かせるように深く沈んだ声で
《我の出番…もう無いんだろうなぁ》
祖龍のつぶやきは雷鳴と共に雲間に溶けていった。
この物語は中途半端に原作に忠実です。
そして、この世界での設定として分かりづらく挙げるのならば『祖・黒・紅』の龍は全て別々の生を持ってこの世界に存在しています。
それでは、感想等お待ちしております。