自分は、今ほど不運だと思ったことはない。なぜなら、事故にあっても、怪我は特になかった。高いところから落ちても、軽い打撲で済んだ。運が悪かったのか、良かったのか、わからなかったが、今の状況は、運が悪い。
朝食を食べた後に、華扇さんに山を降りて実践をすると言われた。弾幕勝負に慣れるための実践だ。
正直、実践は好きじゃない。最悪大怪我をしてしまう可能性があるからだ。それだけは、勘弁して欲しい。
まあ、修行の一環だから仕方ない。今回は頑張ろう。
山を降りる途中で、道が狭く足元が崩れやすい道があったんだ。華扇さんはスイスイ進んで行くから、自分は置いて行かれそうになり、急ぎ足になって注意を怠ってしまった。
数歩進んだ先の足場が崩れてしまった。足元が急に崩れ、とっさの反応もできないまま、山から転がり落ちてしまった。
転がり落ちること数秒、なんとか助かることに成功した。辺りを見渡すと、綺麗な花が咲き誇っていた。
その光景は、とても綺麗で見ほれてしまった。立ち尽くしていると、後ろから後頭部に何かを突きつけられた。
「ここに何の用かしら?人間さん?」
「え、えっと......さっき上の方から転がり落ちてしまって、そしたらここに.........」
「そうなの。本来なら怪我の治療でもしてあげようかと思ったけど、私の花...........潰したわね?」
足元を見ると、潰れて押し花のようになってしまった花が自分の足に踏まれていた。
やってしまった。しかも、この人謝っても許してはくれなさそうだし、顔がすごい形相になっているもの。でも、やって見なくてはわからない。
「ご、ごめんなさい!!悪気はなかったんです!なんでも手伝いますから!」
「なんでも?」
「は、はい!」
なんでもと言う言葉に、彼女は怖い目をして言った。
「じゃあ、この花たちのための肥料になってもらおうかしら?」
「へ?」
ひ、肥料になってもらう...........?この人は、なにを言っているんだ?
後頭部に突きつけられていたものが、離れると今度は、脇腹に鈍い痛みを感じた。
口の中に鉄の味が広がる。内臓が少しやられたかな?にしてもいきなりすぎるよ。脇腹まだ痛みが残ってる。この人一体何者?
「あら?結構力を入れたのに、頑丈なのね?」
「げほっ!あ、あなたは...........なんなんですか?」
「私を知らないと言うことは、可哀想に外来人なのね?私は【風見 幽香】フラワーマスターとも言われてるわ」
風見幽香?って華扇さんが言っていた花畑の大妖怪?な、なんてことだ。自分はなんて運が悪いんだ。勝てるわけがない!死ぬ...........!
「怯えた表情ね。けど、同情はしない。いい肥料になってね?」
風見幽香が傘の先をこちらに向けると、先端に魔力だろうか?強い力が集まって行く。溢れそうになるぐらいの力が集まると、力が解き放たれ、自分を攻撃した。
一瞬なにが起こったかわからない。自分は風見幽香の弾幕であろう力によって消し炭にされたと思った。けれど、自分は無傷。怪我はない。
そして、いつの間にか自分の前に人が立っていた。風見幽香ではない。見知らぬ人が立っていた。
「なぜ邪魔をするの?」
風見幽香の言葉に、自分の前に立っている男の人が焦ったように言った。
「いやいやいや!花を傷つけられて怒るのはわかるが、すぐに肥料にしようとするな!」
「この子はなんでも手伝うと言ったのよ?だから、肥料になってもらうの」
「こいつは、落ちただけじゃねえか!俺がなんでもしてやるから許してやれ!」
「...........わかった」
話がついたのか、彼が自分に手を差し伸べた。
「立てるか?」
「は、はい」
彼はとても不思議な雰囲気の持ち主だった。人間のような気配でもあり、人ではない気配も交わっている。
この人は、何者なんだろうか?
「俺は【桐月 アルマ】魔人だ」
「じ、自分は、修羅仙我です...........魔人?」
「ああ、半人半魔とも言う」
人間と魔族の間から、生まれた人ってこと?いや、人と言うのかな?
幻想郷って、本当にいろんな個性的な種族やキャラがいるんだなぁ。
気のせいかな。風見幽香から変な視線を感じる。
「今回は、バカ魔王の顔に免じて許してあげる。けど、なんでも手伝うと言う約束は守ってもらうわよ?」
「え?」
「お、おい。幽香」
「別に殺すわけはないわよ。本当にお手伝い」
「ならいいが...........」
そう言って自分の肩を掴んで深刻そうな顔をして、死ぬなよと言い残し、アルマさんは消えて行きました。
不思議な人だったなぁ。また会えるかな?会えたら嬉しいな。
あれ?バカ魔王...........?確かに幽香さんはそういった。魔王ってあの魔王?
「あ、あの幽香さん」
「なにかしら?」
先ほどの殺気を放っていた人とは思えない優しい雰囲気の幽香さんの反応に怯えつつ、聞いた。
「アルマさんって魔王なんですか?」
「一応ね。けど、今は魔人」
「そうなんですか」
「...........ねえ。仙我と言ったかしら?私と弾幕勝負しない?」
「え...........?」
次回は、仙我を探す華扇さんのお話です。