東方紅緑譚:番外編   作:萃夢想天

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この番外編については、完全に不定期更新です。

なお、こちらでは随時ストーリーやコラボを
募集しておりますです。他作品でも構いません。

言いたい事はそれだけです。


それでは、どうぞ!


番外編「十六夜紅夜のとある一日①」

 

 

 

_____________午前7時15分、十六夜 紅夜 起床

 

 

 

まだ朝も早く、随分と早起きな小鳥たちのさえずりによって目が覚める。

窓越しに聞こえてくる彼らのモーニングコールに、僕はあくびで答えた。

まだ完全に目覚めていない脳を起こす為に、ベッドの中で軽く柔軟運動をする。

その後身体中に血が巡るのを感じた僕は、ベッドから足を出して床に立ち上がる。

 

 

「良い朝ですね…………んん、背伸びが気持ちいい!」

 

 

両手を頭の上で重ねて、そのまま上へと押し上げる。

すると連動して腕の関節が、脇下の筋肉が、肩甲骨の骨格の一部がポキポキと

軽やかかつリズミカルに音を鳴らして、僕の心地よさをさらに引き上げる。

そこまでして、やっと僕の脳みそは起床したようだ。

淀んでいた脳内が一気に冴え渡り、思考回路がクリアになっていくのが分かる。

そして部屋に備え付けられている時計を確認して、今の時刻を確認する。

 

 

「7時18分ですか。顔を洗って着替えて朝食を済ませ、お嬢様のおやつを作って……」

 

 

声に出して時刻と共に今日やるべき事を再確認していく。

明確な目標が無いにしても、毎日やることは多いのだ。

 

「………そして就寝、と。今日もこんな具合でしょうかね」

 

 

そして今日一日のスケジュールを思い起こし、早速その通りの行動に移る。

自室に備えられた洗面台に顔を近付き、蛇口をひねって冷たい水を出させる。

両手を皿のようにして水を蓄え、軽く顔にかけるようにして洗顔する。

寝ている間に掻いていた微量の汗が、水と共に流れ落ちるのを感じながら

下にかけてあったタオルを目をつぶりながら手に取り、顔をクシャクシャと拭く。

そのままタオルで髪をかき上げ、ついていた寝癖を簡単に解消する。

 

「こんなものでしょうかね。さて、着替えて朝食を取りますか」

 

 

僕は呟きながら洗面台から服の収納してあるクローゼットへと移動する。

クローゼットを開けて中を確認し、シワ一つなくキッチリと仕舞われている

僕の燕尾服を眺め、どれが今日の気分に合っているかを選ぶ。

…………………どれも同じなんですがね。

 

「コレにしましょう。ナイフは勿論仕込んでおいて、っと………」

 

 

数ある中から、一着の燕尾服をチョイスしてハンガーから外す。

燕尾服の裏側は異様なまでにポケットやフックが付けられていて、

そこに、箱の中に仕舞ってある僕のジャックナイフを数本仕込む。

いついかなる時でも、お嬢様の安全を考慮しての暗器です。

取り出し終えたナイフの箱を仕舞おうとして、クローゼットの奥の方に

置かれていた少し大きめの箱へと目線が移った。

 

「ああ、『あの日』の衣類ですか。ここに入れてましたね」

 

 

僕はその箱の中身が何であるかどうかを思い出し、取り出すのを止めた。

わざわざ過去の事を掘り返す必要はありませんからね。

降ろした燕尾服の袖に腕を通して、そのまま羽織ってボタンを留める。

僕の身の丈にピッタリのサイズの燕尾服は、いつ着ても心を弾ませる。

自分で自分の服を仕立てるのは、かなり苦労しましたからね…………。

僕がお嬢様に仕えると決まった三日後にこの服を着ていった時は、

お嬢様もレミリア様も、パチュリーさんもこあさんも驚いてましたね。

そんなに僕が洋服を一から作れることが意外だったんでしょうか。

 

 

「さてと、着替えも終わったし…………次は洗濯ですね」

 

 

過去を掘り返す必要が無いと言っておきながら、前にあったことを

思い返していた僕は、矛盾しているなぁと我ながら苦笑する。

ベッドのシーツを引っぺがし、脱いだ寝間着などを包めて両手で持つ。

だが、問題はここからだ。

 

 

「あの、お、おはようございます紅夜さん!」

 

「(やっぱり来た………)ハイ、おはようございますこあさん」

 

 

そう、こあさんこと小悪魔さん。

彼女は決まって僕が着替えを終えた直後にやって来る。

最初は単なる偶然かと思っていたけれど、ここまでくると故意だと分かる。

何故僕の着替えを終えたタイミングで彼女が来るのかは不明だけど、

この後彼女が僕に対して言うであろう言葉は予想がつく。

 

 

(今日も洗濯物は私が持っていきましょうか、でしょうね)

 

「あの、きょ、今日も洗濯物は私が持っていきましょうか…………?」

 

______________ビンゴ。

 

僕は昨日も一昨日も繰り返したやり取りにため息が出そうになる。

どうしてかこあさんは僕の洗濯物を持って行きたがるようになっていた。

一体いつからこうなったのか、今では思い出せそうにはないです。

理由を聞いても話してくれず、理由が無いために断るのも不自然。

結局彼女に洗濯物を任せて、僕はいつものように食事を取りに行くんです。

でも、今日は再び聞いてみることにしました。

 

 

「構いませんが、どうしてこうも毎日なんです? しかも同じ時刻に」

 

「えっ⁉ い、いえその! 何かあるわけじゃなくてですね……………」

 

「まぁ、僕としても助かりますけど。教えてくれてもいいのでは?」

 

「はうぅ…………ご、ごめんなさい」

 

 

僕の追及に対して、顔を俯かせて謝罪しているこあさん。

顔を朱く染めて頭の小さな翼をパタパタと忙しなく動かしている姿を見ると、

こちらとしては何も言えなくなってしまいます…………だって可愛いですし。

 

 

「謝る必要なんて。では、今日もお願いしますね」

 

「は、ハイ‼」

 

 

彼女の謝罪に対する返答をしてから、折れた僕は彼女に洗濯物を手渡す。

すると一気に明るい表情になったこあさんが、翼をバサバサと羽ばたかせて

僕の洗濯物を受け取り、お礼を言いながら僕の部屋から出ていった。

普段の彼女からは想像も出来ない速度に、僕は面食らってしまう。

少し間をあけて無理矢理冷静さを取り戻した僕は、その足で食堂へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________午前7時33分、十六夜 紅夜 朝食

 

 

 

こあさんと別れて食堂へと赴いた僕は、慣れた手つきで調理を始める。

初めは慣れない環境や器具の影響で失敗ばかりだったけれど、今はもう違う。

包丁を手に取って皮を剥いた玉ねぎにその切先を向ける。

そのまま躊躇無く玉ねぎを切り刻み、みじん切りにしてカゴに入れる。

流れるような動作のまま、今度はジャガイモの皮をクルクルと回転させて剥く。

そして先ほどよりも少し力を込めて、一口大の大きさへとカットしてカゴ入れる。

その二つを入れたカゴに溶いた卵を入れて、幾つかの調味料を加えて混ぜる。

それらの動作をこなしている間に熱していた平たい鍋(フライパンの劣化版)に

油を少量垂らして、調理を開始する準備が全て整った。

 

 

「さぁて、昨日より美味しく出来ますかね……………」

 

 

数分後、平鍋からまっさらな白い皿に落ちてきたのは、純金色のペスチャだった。

見た目に関していえば、中々上手く出来ているように見える。

まぁでも、料理において重要なのは見た目よりかは味ですので。

試行錯誤の上に完成した、手頃かつ有り余る食材を使った上物料理。

真っ白い湯気を巻き上げ、出来立てであることを激しく自己主張するペスチャを

我慢することなど出来ずに、僕は手を合わせて命への感謝の言葉を告げてから

かぶりついて___________________美味しかった。

 

 

「コレはマスター出来ましたかね。次の料理を考えましょうか?」

 

 

余裕な態度で熱々のペスチャを頬張りながら僕は呟く。

だが僕の言葉に対して何かを言う人は、今この場には誰もいない。

昼食や夕食はみんな揃って食べるのがこの紅魔館の習わしだが、朝食においては

吸血鬼や人間など互いの活動時間や生活サイクルを考慮して時間帯をずらしている。

寂しいような気もするが、それも仕方のないことでしょうね。

 

 

「ふぅ、満足出来ました。御馳走さまでした」

 

 

僕は食前同様に手を合わせて命への感謝と祈りを捧げて食器を洗う。

綺麗に拭き終えた食器を乾燥棚に乗せて乾かしておく。

一連の手慣れた動作を終えた僕は、そのまま自室へ歯を磨きに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________午前8時00分、十六夜 紅夜 組み手

 

 

 

 

朝食を終えて歯も磨いた僕は、彼女の待っているであろう場所へと赴く。

するとやはりというべきか、そこには既に僕を待っている彼女の姿があった。

 

「すみません、お待たせしました。始めましょうか、美鈴さん」

 

「あ、紅夜君! さあ今日も張り切って行きましょう‼」

 

 

そう、紅魔館の門番である紅 美鈴その人であった。

彼女は僕の姿を目視するや否や、拳を握って独特の構えを見せてきた。

実は僕が体の鈍りを彼女に訴えた翌日から、彼女と組み手を組むことになったのだ。

初めてこの紅魔館に来たあの日、僕は2度美鈴さんと戦って最後に負けた。

でもあの時の戦闘で僕には天賦の才があると肉迫してきた彼女の熱意に圧されて、

仕方なく組み手を受け入れていたんですよね。でも今は割りと楽しんでやってます。

 

 

「では早速、セイッ‼ ヤッ‼ タァッ‼」

 

「くっ‼ ま、だ、まだぁ‼」

 

「やりますね、でもこれなら‼」

 

「その手は食いません、よっ‼」

 

「ぐうっ…………流石は紅夜君ですね。でも、これからですよ‼」

 

「分かっていますよ、ではこちらから‼」

 

 

僕と美鈴さんが互いに駆けだして、距離を縮める。

その後ほぼ同時に繰り出した互いの正拳が、互いの頬を打ち貫いた。

 

 

 

そしてそこから三十分ほど経ったころ、ようやく組手は終わった。

二人共全身に汗を流しており、僕も既に燕尾服を脱ぎ捨ててシャツのみになっている。

だらしないと言ってしまえばそれまでの恰好で、二人揃って紅魔館の門前に座り込む。

でも、僕が座っているのは石造りの橋の上ではない。

 

 

「んふふ~、どうですか紅夜君? 寝心地いいですか?」

 

「え、ええ。悪くは無いですけど…………何で膝枕なんて」

 

「良いじゃないですか、コレくらいは平気ですよ~」

 

「いや貴女じゃなくて僕が…………まぁいいや」

 

 

僕が今頭を預けているのは、美鈴さんの形のいい太腿の上。

完全に膝枕の体勢になっている、そこが一番問題だった。

美鈴さんは拳法を嗜んでいるので、もちろん筋肉の付きが素晴らしいのは見れば

分かるのですが、厄介なことに彼女はチャイナ服のような恰好をしているので

その、体勢的に、見えるんです……………………何がとは言いませんが。

 

 

「眠くなってきちゃいますねぇ~…………寝ちゃいましょうか?」

 

冗談じゃない、こんな状況で寝られる訳が無い。

僕は彼女の言葉を聞いて慌てて置き上がろうとするが、それに気付いた美鈴さんが

僕の上半身を抑えようとして僕に覆い被さってくる__________ってそれは流石にマズい‼

 

「んーーー‼ んんーーーッ‼‼」

 

「駄目ですって、暴れないで下さいよ。ちょっと、動いたら…………」

 

 

この状況で動くなって言う方が無茶だと僕は思う。

彼女のかなりふくよかで、誤魔化し様のないほど豊満な女性らしい部分が

僕の顔を完全に圧迫してくるのだから、動かないほうが難しい。

息をしようともがけば、彼女が逃がすまいとさらにキツく抑えてくる。

そうすればするほど美鈴さんの暖かさと柔らかさが伝わってきて色々マズい。

とはいえこちらも残された下半身だけでは抵抗することも出来ない。

 

 

「あっ…………駄目ですってば、もう……………んん」

 

(なんか美鈴さんの反応が、段々違う方向にいってるような…………)

 

 

そうこうしている内に肺の中の酸素の尽きかけ、いよいよマズくなる。

僕は最後の力を振り絞って、両足と自由な右手に力を込めて一気に地面を弾く。

テコの原理の応用のような感じで、美鈴さんの拘束から逃れた僕はそのまま

脱ぎ捨てた燕尾服を拾い上げて、能力を使用して紅魔館内へと逃げ延びた。

深呼吸をしながら、燕尾服を着直した僕はボソリと呟く。

 

 

「ホント、刺激的な毎日ですね……………でも疲れた」

 

 







「と、言った感じで僕の私生活が暴かれましたね」

「そのようだな。しかし、奇妙な連中だな」

「面白い方々なんです。慣れれば、ですけど」

「そういうものか。だが、まだ終わってはないんだな?」

「ええ、まだ午後と夜がありますから」

「そこまで暴露されて問題無いのか?」

「問題無い日をチョイスしてますから。
流石に出しちゃマズい日はカットですよカット」

「そうか。私もいずれこうなるのだな?」

「ですね。僕が終わったら覚悟するべきです」

「唯一の救いは、不定期であることか」

「救いとなるか災いとなるか…………」

「考えない事にしよう、それでは諸君」

「ええ、皆様、御閲覧頂きありがとうございます。
それではまた会える日を、心よりお待ちしております‼」
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