他のSSが書けなかったので書いていたらPCの不調で消えまして。
まさか8000文字が一瞬でパァになるだなんて思ってなかったので
かなり今落ち込んでいます。時間が空いたので不定期だった
こちらを気分転換に書こうかなと思いましてハイ。
それでは、どうぞ!
__________________午前9時01分、十六夜 紅夜 読書
紅魔館の門前で美鈴さんと組み手を終えた僕は、何故かそのまま美鈴さんの膝枕で
(というかそこからのコンボ攻撃で)ノックアウト寸前に陥ったので、組み手で掻いた
汗を流すという名目でシャワーを浴びて気分をリフレッシュしてきました。
朝から浴びるシャワーというのも、案外悪くないものですね。
いつもより気分が良くなった僕はその軽い足取りのまま大図書館へ向かいました。
普段は主人であるフランドール・スカーレットお嬢様の身の回りのお世話などで
自分自身の時間は一切持てないのですが、この図書館にいる間だけは例外です。
『吸血鬼の従者たる者、あらゆる才に通ぜよ』とお嬢様の姉君のレミリア様が
おっしゃいましたので、そのお言葉を実現するために勉学に励むのです。
僕が外の世界にいた頃に学んでいたのは、人を殺す手練手管や言語など。
おおよそ他人との関わり合いという部類では役に立たないスキルばかりでしたが、
ここでは純粋に僕が知りたいと思う事を知りたいだけ学ぶことが許されています。
それはこの大図書館の管理人であるパチュリー・ノーレッジさんのご厚意あっての
所業なんですが…………………何故彼女は僕に目をかけてくれるのでしょう?
「十六夜 紅夜です。失礼します、パチュリーさん」
到着した大図書館の扉を開けながら僕は通る声で室内にいるであろう彼女に許可を取る。
返事は返ってこないが、基本的に立ち入りを拒まれるようなことは無い。
あるとすれば、魔法を使った実験を行う場合や新たな魔導書を製本する時などですかね。
まぁそのどちらも紅魔館の主人であるレミリア様に許可を得なければ出来ない事ですが。
僕は扉を丁寧に閉めてから一歩一歩踏みしめる様にして歩く。
実を言うとこの大図書館には、紅魔館で数少ない『紅』色以外の色がある部屋なのだ。
この館のほとんどはレミリア様のご趣味で紅色に染め上げられている。
だからこそ目の保養的な意味では、この大図書館は癒しの場でもあるわけです。
「こちらにいらっしゃったんですか、パチュリーさん」
「あら紅夜、おはよう」
「おはようございます。どうでしょうか、お体の調子は?」
「今のところは問題無いわ」
それは良かった、と顔で笑って心で安堵した。
この大図書館を管理しているパチュリーさんは極度の喘息持ちらしく、
わずかな埃の量の増減だけで体調を壊しかねない虚弱さをお持ちでいます。
普段は永遠亭から購入する薬で症状は抑えられますが、それも完治では無いので
いつか僕は永遠亭で医学を学べるほどになるまで学術の才を高めたいと思っているのです。
パチュリーさんには、というかこの館の皆様には返しきれない恩がありますし。
僕はパチュリーさんの容体を聞いたのは、他ならぬ僕の為です。
この大図書館にある本のほとんどは魔導書であるために僕に閲覧は許されていません。
ですが別に魔法使いになろうと言うわけではないので、特別に知識理解を深めるだけならと
パチュリーさん自ら僕の勉強を教える教師の立場を買って出てくださったのでした。
「すみませんパチュリーさん。いつもご迷惑をおかけします」
「全くよ。しかも私の体調を気にしてくる辺りさらに面倒くさいし」
「え、な、何故ですか⁉」
「だって私がダメなら勉強を止めて、いいならやるって、私基準はどうも」
気を悪くしてしまったのか、パチュリーさんは適当な本を開いてしまいました。
一度閲覧し終わるのを待っていれば、自分の時間は無くなってしまう。
今日は諦めるかと背中を丸めた直後、僕の燕尾服の袖が引っ張られました。
何事かと思って顔を上げると、本を読みながら僕の動きを止めた彼女が静かに
淡々と、しかしどこか嬉しさを感じさせるような口調で話しかけてこられました。
「まあでも別に、私はやりたくないわけじゃないんだけどね……………する?」
__________________同時刻、小悪魔 司書仕事なう
今日も今日とて忙しい、パチュリー様の使い魔は大変です!
朝に目覚めて朝食をとり、身支度を整えたら主人の命令通りに働き続ける。
そんな事務的な日々だったんですが、ここ最近は数少ない楽しみの一つです。
何故なら彼が、『十六夜 紅夜』がこの紅魔館の新たな住人となったからです!
紅魔館の主人であり、私の主人であるパチュリー様の無二の親友で在らせられる
レミリアお嬢様に使えることを許された規格外の人間、『十六夜 咲夜』さんの弟さんで
彼はレミリアお嬢様の妹様であるフラン様の従者兼執事なる役職を得ました。
当初は何やら訳ありだったらしいのですが、今ではその陰りすら見当たらないほど
仲睦まじい麗しき姉弟の間柄になっています。
「…………………………それにしても」
未だ興奮冷めやらぬ熱っぽい表情のまま、私は小さくため息を吐きました。
本来ならば幻滅されるべき行為、なのに何故か私の身体は満たされていくようでした。
何がこうなってしまった原因なのか、それは朝の洗濯物が関係しています。
「うへへ…………紅夜さんの…………………匂いがぁ♡」
そう、朝に紅夜さん本人から奪うようにして持ってきた彼の匂いが染み込んだシーツ。
洗濯物を干そうと思って風でなびいたシーツを頭から被ってしまったあの時から、
私は彼の洗濯物を率先して回収しようと努めました。
その結果が溢れんばかりの周囲からの奇異の視線と両手に残った彼の残り香。
「あぁ~~………………幸せ」
彼には無断でしているこの行為は、まず間違いなく彼本人からも非難を受けるものです。
そりゃ同僚が自分の洗濯物を抱きしめてスーハーしてれば、私だって嫌ですけど。
だからって止められないんです、止められない。
愚痴にも似た感情に任せてこのまま押し切って、うやむやにできませんかねぇ。
「…………ん?」
そんな事を思っていたら、大図書館の扉が開いて彼が入って来た。
幸い自分のいる位置をは逆に言ったが、あそこにはパチュリー様がいるはずでは?
そう思った私は近くに歩み寄って本棚の影に隠れる様にして二人の様子を見守りました。
パチュリー様は徐々に機嫌を悪くなされているようです。
すると紅夜さんが振り返って帰ろうとすると、パチュリー様の声が聞こえてきました。
「やりたくないわけじゃないんだけどね……………する?」
あまりに直球的な物言いに無関係な私が一番驚きました。
その驚きのせいか言葉も出ず、全身から力が抜けていくようでした。
ですがそこを堪え、足に力を籠めると気を持ち直して背筋をピンッと伸ばした姿勢で
お二人の邪魔にならないように物音を立てずに図書館を後にしました。
「……………いいなぁ、パチュリー様」
十六夜 紅夜と八雲 縁のダブルトーク!
「ハイ、いかがだったでしょうか」
「今回はまた、随分短いな」
「ま、いろいろあったんでしょうね」
「そんなものなのか。というより紅夜、今回は何だ」
「何だ、と言いますと?」
「いや、小悪魔は何を勘違いしていたんだ」
「さぁ、何だったんでしょうねぇ」
「………………………………」
「怖いから無言で迫るの止めてもらえません?」
「そんな事はしていない」
「はいはい…………ええ、それでは皆様。
もうすぐこの2015年も終わりを迎える季節ですね」
「一年とは案外短い月日だったな」
「まさに"光陰矢の如し"ですね」
「その通りだ。さて、この番外編の次回はあるのか?」
「ええ、なんでも大晦日特別版を書きたいのだとか」
「失敗するのが目に見えるようだ」
「ですね……………………とにかく、今回はここまで。
次回もまた不定期なのでいつ書くのかは未定です」
「次逢う時を楽しみに」
「それでは皆様、良い日々をお過ごしください」