東方紅緑譚:番外編   作:萃夢想天

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どうも皆様、約一年ぶりの更新に驚愕の萃夢想天です。

こちらは本編終了後のお話や、読者の方々からのリクエスト等の、
いわゆる「おまけ」に類する作品となっております。

血生臭い本編では描ききれなかった、キャラクターの別の顔が
書きたくて、久々にこちらに手を出した次第です!


それでは、どうぞ!





番外編「八雲縁の終える一日」

 

 

 

 

_____________それは全てを受け入れる残酷な楽園の、ありふれた一日の中の1ページ。

 

 

 

 

 

結論から言おう。

この私、八雲 縁は困り果てている。

"困りそう"でも"困っていた"でもなく、現在進行形である。

しかしその感情を口に出すことが許される状況ではなかった。

 

私という存在は、あらゆる障害を排除するためにあり、それを実現できる力も有している。

その為、よほどの事ではない限り、私を困らせるような事態にはなりえないはずなのだ。

 

だが現状、その『よほどの事』が起きてしまっているのだから、困り果てている。

 

 

「どうしたの、縁。どこか調子が悪いの?」

 

「いえ、紫様。御身に御気遣いいただけるほどの事ではございません」

 

「あらぁ~、だったら私が介抱してあげようかしらぁ~?」

 

「幽々子様、それには及びません。貴女様の御手を煩わせることなどできませんので」

 

「付き従うモノの鑑だな。よし、気に入った! やっぱり守矢(ウチ)に来い!」

 

「八坂 神奈子、何度も言っているが、私は紫様の所有物としてしか動かないぞ」

 

 

私の右から、左から、そして背後から、それぞれ独特の印象を持つ声で語り掛けられる。

そしてそれらの声の主は三人とも、見事に私の体の一部分を掴んで離そうとしない。

少なくとも戦闘用に造られた私を、酒を呑みながら片手で捕まえられるような人物で

ないのなら、私とて困り果てるような事態には陥っていなかったのだろうが。

 

「ちょっと幽々子、いやらしい手つきで縁に触らないでくれるかしら」

 

私の右側から、紫様のハリのある御声があがれば、

 

 

「いやぁねぇ、やらしい抱きつき方してるのはどっちよぉ」

 

私の左側にいらっしゃる、幽々子様の張り付くような声が返り、

 

 

「たかだか手つきで目くじらを立てるヤツに、お前が仕える価値など無かろう?」

 

 

私の背後で、洩矢 諏訪子と東風谷 早苗の二人と頷き合いながら八坂 神奈子が嘯く。

 

 

「「何か言ったかしら?」」

 

背後の戦神の言葉に過剰に反応した御二人が、貼り付けた冷笑で私の後ろを睨みつけ、

凍えるような視線をぶつけられた当人は、好戦的な笑みを浮かべて一升枡の酒を呑む。

 

もうかれこれ30分ほど、同じやり取りを繰り返している。

最初は私も主人とその友人を取り持とうとしたのだが、それがかえって熱を持たせる

行為につながると思い知って以降、積極的に会話に踏み込もう気にはなれずにいた。

だが、それが当然だろう。なにせ相手は、この幻想郷きっての最強格の存在なのだから。

 

我が主人にして、幻想郷の管理と調和を司る、八雲 紫。

主人のご友人であり、冥界に揺蕩う亡霊の姫、西行寺 幽々子。

人間の信仰を集め、今なお神格を衰えさせぬ、八坂 神奈子。

 

およそ並みいる凡庸では近付くことすらできないほどの実力者の口論を、

私如き道具風情が仲裁しようなどと、思いあがること自体が既におこがましく思う。

ただ、だからといってほぼ同じやり取りをし続けられるのも、その渦中に置かれるのも、

ウンザリというほどではないにしろ、軽く辟易しかけてきたところではあった。

 

 

(誰でもいい…………誰か紫様達を止めてはくれないだろうか)

 

 

かつての【異変】を経たことで私にも宿った、精神と呼べる場所で独り不敬を考える。

本当ならばこの精神という場所には、私以外にもう一人いるのだが、生憎今日はいない。

八雲 藍と橙の二人から、幻想郷の知識やルールを教わる講座に招かれたからだ。

『彼女』がいれば、幻想の果てに甦った局地的三国志状態から一時的にでも逃げられた

だろうと、浅ましくもあり得ない可能性を考えては、実現不可能であると諦める。

 

うつむき気味になっていた私は、改めて顔を上げて視野を広げる。

 

視界いっぱいに映り込むのは、この場所で行われている久方ぶりの宴会の風景。

春と夏の境目であるこの季節独特の、居心地の良い夜風を受けて参加者は酔いを注ぐ。

私のかけがえのない友となったチルノは、彼女の友である大妖精やルーミアらを連れ、

呑めや歌えやのどんちゃん騒ぎを繰り広げる宴会場を、ふらふらと飛び回っている。

そこから視線を動かせば、かつて意識を失っていた際に世話になった命蓮寺の一門が

浴びるように酒を呑み過ぎて気を大きくした妖怪などを、優しく看病していた。

そうして宴会場の左端から、緩やかに右端へと視界を動かしていると、その途中で

一人の参加者が視界を遮りながら、見慣れた(さかずき)を手にしてこちらに近付いてきた。

 

 

「いよっこいせ」

 

「伊吹 萃香。何故私の膝の上に腰を下ろしておられるのか、御教え願えますか?」

 

「んー? へへ、気分だよ気分。ここが一番、座り心地がいいのさ!」

 

 

快活に笑みを浮かべながら杯を傾けるのは、紫様の旧友であらせられる鬼の少女。

主人が信頼を置く相手である上に、私も何度か助けられた経緯がある以上、彼女には

強く出ることができない。だから、なるべくやんわりとした言葉を選んで尋ねたのだが、

裏表のない彼女はさも当然のように、私のあぐらの中に座って、その背を預けてきた。

彼女と私の激しい身長差のせいで、その赤銅色の長い髪が腹部に触れてこそばゆい。

私が触れているのだから向こうも気付いてはいるはずなのだが、一向に退く気配がない。

自由気ままに酒を水のように呑み込む鬼の少女を、左右と背後から鋭い殺気が射貫く。

 

 

「………ねぇ萃香、どうしてそこに座るの? 席なら他にも空きがあるのよ?」

 

「別にー? ただ、一番近くて一番座り心地がいい、最良の物件があったからさ」

 

「でもぉ、ここには私たち分のお酒しか無いわぁ。ほら、あっちにいっぱいあるわよぉ?」

 

「別に酒ならどこでだって呑めるだろうさ。けど、ここで呑むから美味いんじゃないか」

 

「………おい小鬼、どこに座ろうと勝手だが、酒の美味さは場所では決まらんぞ?」

 

耄碌(もうろく)したのかい? 四季の風情に()む酒は、格別だろうにさぁ」

 

 

視線の主たちはこぞって新参の伊吹 萃香を口撃するも、あえなく言葉に沈められていく。

一応紫様たち三人の口論は鳴りを潜めたが、また別の問題が浮上しては意味がない。

さらに言えば、彼女が言いくるめた人物には、私を使う主人がいらっしゃるのだ。

流石にこれ以上の言葉は旧友といえど、主人の道具としては見過ごせずに口をはさむ。

 

 

「伊吹 萃香。晩酌の相手ならば、他の者を見繕うべきだと愚考致しますが」

 

「なんだよ、つれないねぇ。せめてお酌の一献や十献くらいしてくれても」

 

「貴女の言う一献は、少なくとも私の考えている一献の数倍だと確信しております」

 

「ちぇっ! 天狗も河童もかまってくれないからこっちに来たってのにさー」

 

先程より少しだけ強めの口調で言葉を紡ぐと、意外にも彼女はあっさりと折れてくれた。

諦めが早いというより、元から大して執着が強くなかったと捉えるべき反応だろうと

判断しつつ、彼女の言葉の中に不可解な部分を聞きつけて、それを尋ねてみた。

 

 

「天狗や河童が、貴女を蔑ろに? それは、いくらなんでもおかしいのでは?」

 

「んーにゃ、見てみな。ほれ、あそこ」

 

「ん…………アレは、射命丸 文か」

 

 

妖怪の山を鬼が総べていた時代の名残で、天狗や河童が鬼に歯向かえるはずがないのに、

その鬼の中でも最強の名を謳う伊吹 萃香の酌を断るなど、できるわけがない。

私の中にある妖怪間での格差を覆す言葉に疑問を抱いたのだが、その答えとして彼女が

小さく細い指で指し示したのは、幻想郷最速を誇る新聞記者の鴉天狗だった。

 

 

「そうさ。いやしかし参ったよ、まさか文の奴が人間と子供つくるなんてさー」

 

「同意します」

 

「よく産めたもんだよ。普通人妖の混血(まじりもの)なんてものは、存在することが奇跡みたいなもんだ。

なのにアイツ、『愛の結晶』だとか何とか吹いて回って………ホント、幸せそうだね」

 

「…………同意します」

 

 

そして、私と伊吹 萃香の視線が行き着いたのは、射命丸 文が抱きかかえる幼い赤子。

天狗一族が赤子を巻く召し物に包まったその子供は、母親の腕の中で安らかな寝息を立てる。

幻想郷という非常識の世界に生まれた、さらなる非常識の存在の出誕には、私も居合わせた。

かと言って、射命丸 文が子を産んだ場面を見たのではなく、産まれた子を愛おしそうに抱き、

血を半分注ぎ込んだ私の友であり、彼女の子の父親である彼と微笑み合っていた所に到着した

だけだ。それでも、彼女と彼の浮かべた新しい命を慈しむ笑みは、記憶に深く刻まれている。

 

 

「まったく、"幻想郷をかける最速の風"が、一人の男になびいちまうとはねぇ」

 

「意外、ですか?」

 

「まぁ、多少はね。けど、いいんじゃないかい? 人と仲良く生きられるなら、さ」

 

「………幸せを、祈っておられるのですか」

 

「あたしはいつだってそうだよ。『人の幸せ』を、今も昔もこれからも」

 

同僚と抱いた赤子の寝顔を優しい笑顔で見つめる射命丸 文を、鬼の少女はただ見つめる。

今の状態では伊吹 萃香の顔を見ることはできないが、それでもきっと笑顔に違いない。

そのまま無言で杯に酒をなみなみと注いだ彼女は、水面に今宵の月を落として呑み干した。

 

「「「………………………」」」

 

 

ただその間、ずっと私だけに刺し貫くような視線が浴びせられたのは、言うまでもない。

 

そこから、時は流れる。

 

 

久方ぶりの宴会も徐々に佳境に迫り、各々の事情がある者は帰路につき始める頃になる。

酒樽の蓋を開けた時には東から昇ったばかりの月も、既に西の空に大きく傾いていた。

 

宴も闌、数時間前までの喧騒は嘘のように静まり、今はただ過ぎる時に思いを馳せる。

誰しもが喉を通る熱さと辛さに酔いしれる中、伊吹 萃香の特等席と化していた私の前に、

またしても別の客が訪れた。

 

 

「萃香のお守り、ご苦労様」

 

誰かが持ち込んできた焼き鳥串を片手に持った、宴会の主催者の巫女がやって来た。

幻想郷の住人であれば知らない者はいないその人物に、私は座りながら軽く頭を下げる。

 

 

「博麗 霊夢か。この程度の事、文字通りに造作もないことだ」

 

「でしょうね。ってか、長ったらしいから霊夢でいいって言ってるでしょ?」

 

「…………紫様がお怒りになる」

 

「あー、それは面倒ね」

 

 

何の断りもなく私の対面上にどっかりと腰を下ろした霊夢は、近くにあった徳利を

素早く掴んで自分の膝元に置き直し、あたかも自分のものであると言いたげに指で弾く。

ちゃぽん、と中身が振動で揺れる音を聞き、気を良くした彼女は急に話題を振ってきた。

 

 

「そう言えばさ、アンタあれからアイツとはどうなのよ」

 

「アイツ?」

 

「こころよ、こころ」

 

「ああ、秦こころか…………どう、とは?」

 

「だからさぁ、こう、何かあったりしなかったの?」

 

「うむ…………特にこれといったことは無いな」

 

「あらそう、つまんないの」

 

 

霊夢が焼き鳥串を頬張りながら尋ねてきたのは、私が初めて感情を抱いた存在の事。

出会った当時は色々と分からずに苦労したが、今はもうそれが男女間に生じる感情で

あることを学んだため、さほど狼狽することはない。だが、同時に進展もない。

それを「つまんない」と揶揄した霊夢に対して、私が言葉を返そうとしたちょうどその時。

 

 

「霊夢、つまらないとは失礼な物言いだな。成敗してやるぞー」

 

 

中年の独身男性のような酒の飲み方をする霊夢の背後に、お面を被った少女が現れた。

そしてその少女は懐から泣きっ面の描かれた面を手に、霊夢の顔へそれを押し付ける。

突然の迷惑行為を受けて、当然ながら霊夢が怒りの感情を露わにして少女を叱った。

 

 

「ちょっとこころ、いきなり後ろからお面かぶせてこないでよ!」

 

「だって霊夢が縁と仲良くしてたから」

 

「コイツと話がしたかったらそうすればいいじゃない!」

 

「恥ずかしい」

 

「ええい、おかめの面で紛らそうとするな!」

 

「やめろー、放せー」

 

 

体の周囲を漂うお面をとっかえひっかえしながら抵抗する少女、秦こころはしばらく

霊夢の追撃を躱していたものの、やがて分が悪くなりだすとこちらに歩み寄り、

酔いが回ってきてへべれけだった伊吹 萃香を蹴り飛ばし、空いた膝へと座り込んだ。

 

 

「なっ、アンタ後で萃香に殺されるわよ?」

 

「縁が守ってくれる」

 

「って、言ってるけど?」

 

「守れと言われれば、守る」

 

「やったー。うれしいー」

 

「………感情の起伏がないアンタら見てると、こっちも気が削がれるわ」

 

 

刺してあったはずの鶏肉を口に収め、武器となった串をゆっくりと下ろしながら

霊夢が気怠げに呟き、それを降伏と受け取ったこころが勝利の舞を膝の上で踊る。

そうして落ち着いた彼女は、私に嬉しそうに笑っている好爺の面を差し出した。

無論、彼女の意図を読めない私ではない。彼女の手から面を受け取って顔に貼り付け、

同じように彼女が自身の顔に張り付けたおかめの面を見つめる。

 

 

「縁」

 

「なんだ?」

 

「好き」

 

「私もだ」

 

 

互いに素面では語れない、唯一の感情を、素顔を隠した仮面越しに告げる。

数年前に私たちが互いを想い合うようになってから始めた、想いを伝える儀式である。

他人から見れば異様に見えるソレも、当事者である私たちからすれば様式美なのだ。

見つめ合うおかめと好爺の面同士が徐々に近付き、ついに彼我の距離がなくなる瞬間。

 

 

「この付喪神風情が‼ 私の縁から離れなさい‼」

 

「わざわざ九十九年耐えて得た命、死に誘われたくないわよねぇ‼」

 

それまで少し離れた場所でせめぎ合いをしていた、主人とそ御友人が戻って来た。

仮面越しに彼我の想いの距離を確認しようとした私たちを、スキマの能力とと霊体化を

駆使して引き剥がし、おかめの面を付けたままびっくりしているこころに、主人たちは

今度こそ本気の殺気を込めた視線をぶつける。

 

 

「薄汚い霊面気が…………消されたくなければ失せなさい」

 

「あらあらぁ、ねぇ紫、もしかしてあの木っ端妖怪を許す気でいるのぉ?」

 

「本心を言えば粉微塵にしてやりたいわ。でも、それをしたら縁が悲しむから」

 

「そーだったわねぇ。だったら、半殺しにすればいいじゃない」

 

 

常に余裕と微笑を湛えておられる御二人が、全能神ですら容易く殺められるだろうと

思わせる量の殺気を全身からあふれ出させている。酒に酔う二人ではないことから、

この行為が酔いに任せた情動的なものではなく、理性ある行動であることが分かる。

ただ、理解できるからと言って、それを止められるわけではない。

放っておけば御二人はこころを害するだろう、それだけは避けなければならない。

どうにかしてこころを助けねばと考えを巡らせ始めた時、なんとこころが先に動いた。

 

 

「縁を縛り付ける矮小な悪女に歪んだ色魔めー、この私が成敗してくれるー」

 

「何ですって…………?」

 

 

自身の体を中心に漂うお面の一つをかぶり、不可思議極まる体勢で口上を述べる。

さながら時代劇の正義に燃える主役のような口ぶりだが、流石に相手が悪過ぎた。

 

 

「ねぇ紫、私ちょっと酔っぱらっててぇ、手が滑っちゃうかもしれないわぁ」

 

「奇遇ね幽々子、私も今、すっごく手が滑りそうな気がするの」

 

 

今のこころの一言で、完全に手加減と言う言葉を脳内から抹消した主人と御友人が、

それぞれ自身の愛用している扇子を取り出し、完全に臨戦態勢を整えていた。

周りで静かに酒盛りを愉しんでいた参加者も、何事かと驚いて視線を投げかけてくるが、

そんなことはお構いなしに、紫様も幽々子様も、そしてこころも戦闘状態に移行する。

 

 

「いじきたない奴らめ、この私とここにいる博麗 霊夢が相手になってやるー」

 

「はぁ⁉ なんで私がコイツらの相手しなきゃいけないのよ‼」

 

「来るぞ博麗の巫女、戦いの火蓋は切って落とされたのだー」

 

「アンタが切り落としたんでしょうが‼ でも、ここで暴れられても困るのよね」

 

 

そして何故か戦線に加えられた霊夢もまた、宴会場となっている博麗神社に被害を

及ぼさせないためにもお祓い棒を手にして立ち上がり、こころの真横に並んだ。

 

対して紫様と幽々子様は、その背に巨大なスキマと扇子を背負いながら空へと浮かび、

戦闘の利をあらかじめ得ておきながら開戦を今か今かと待ち望んでいる。

 

 

「紫ぃ、手を組むのはいいんだけれどぉ、一つ約束してほしいの」

 

「何かしら?」

 

「今度紫が冬眠した時、その期間中、縁を貸してちょうだい」

 

「…………断っても無駄ね。分かった、その代わりに全力を出しなさい」

 

「はいは~い! 縁のために頑張っちゃう!」

 

「………気持ちよくお酒飲んでだのに、どうしてこうなるんだか」

 

「戦う宿命を背負ったものに、真の安息などありえないのだ」

 

「その安息を私から引っぺがしたのは誰かしらねぇ⁉」

 

「無駄話はそこまで、来るぞ、霊夢」

 

「アンタ後で覚えときなさいよ………ったくもう!」

 

 

地上と空中。それぞれがそれぞれのやり取りを終えて、今度こそ互いを見やる。

 

そこからはやはり、幻想郷屈指の実力を誇る者たちの、弾幕ごっこが始まった。

 

 

「いいぞー! やれやれー!」

 

「わ、ちょ、お料理に当たりますから!」

 

「おーおー! きれいだねー!」

 

 

神社の上空で繰り広げられる凄まじい争いに、その真下にいる宴会の参加者たちは、

調子に乗って盛り上げたり、舌鼓を打つ料理の安否を気にしたり、純粋に楽しんだり、

各々の反応を示している。だが、事の発端となった私からすれば、気が気ではない。

思わず人間臭い行動である溜め息を吐きそうになるが、それをグッと堪えて空を見た。

 

四人がそれぞれ自分の弾幕を放ち、暗くなった夜空に鮮やかな大輪の華を咲かせる。

さながらその光景は、夏の風物詩である花火を連想させるも、閃光と共に消えてしまう

火薬の花とは違い、彼女たちの撃ち出す弾幕は黒い夜を極彩色に彩り続けている。

人の心を惹きつけてやまない、人の心の中に備わっている『感情(おもい)』を胸に、

私は今日もまた、いつもと変わらない平凡で特別な一日を、記憶に深く刻みつける。

 

 

 

 






「今回は縁が語り部ですか」

「本編では紅夜、お前が出ずっぱりだからな」

「なるほど。それは悪いことをしましたね」

「気に病むな。それより、子供は元気か?」

「ええ、そりゃもう。毎日毎日泣いて笑って、もう可愛くて」

「親バカというやつか。ところで、十六夜咲夜との子は」

「縁、それ以上はまた、別の機会といたしましょう」

「そうか、分かった」

「では、11か月ぶりの不定期更新、お楽しみ頂けましたでしょうか?」

「こちらは前書きの通り、本編終了後やもしもの世界観など、
本編では書ききれなかったストーリーを中心に展開していく」

「ですので、どうか気長に次回をお待ちくださいませ」

「最近作者も、こちらで描きたい話が増え始めて悩んでいるようだ」

「優柔不断なクソ野郎ですね」

「同意する」

「それでは皆様、良い日々をお過ごしください」

「息災でな」
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