【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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提督の世界異動から始まります


第一章
第一話  着任した......


今日も俺は艦これをやっていた。

遠征任務に出し、演習を行い、デイリー任務を消化する。そして、第一艦隊で海域を解放する。作業の様に思えるこれも、面白さの一つだと俺は考えている。

今俺がやっている艦これ、《艦隊これくしょん》は第二次世界大戦中に大日本帝国軍が建造した軍艦が女体化し、深海棲艦という敵を倒していく育成ブラウザゲームだ。

ひと時流行り、アニメにもなって放送された。それ程に人気の出たゲームだった。

俺は一通りデイリー任務を消化し終えると、第一艦隊の編成を確認した。

長門、扶桑、山城、日向、赤城、加賀。これが俺の第一艦隊だ。重巡軽巡や駆逐艦が居ないのは単に火力が出ないと言う短絡的な理由で、もし夜戦になってもこれまでの経験から、負けることはなかった。

確認し、改装から装備を確認すると俺は出撃画面に移動し、出撃させた。

 

〈出撃!〉

 

画面にそれが映ると、編成された艦隊が深海棲艦と戦い、海域を進んでいく。

俺はそれをただ眺めているだけだ。そうすれば、勝手に戦闘は終わり、次のマスに進んでいく。

そうだとばかり思っていた。

だが今日は違った。

画面が光だし、辺りが光に包まれた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

光に包まれ、それが収まると目がだんだんと慣れ、辺りの様子が判るようになった。

様子を理解する前に違和感を覚えた。座っていたはずなのに、今、立っている様に感じている。そして、部屋の匂いがしない。強いていうなら外の匂いだった。そしてほんの少し潮の匂いが混じっている。

 

「俺の家ってこんな磯臭かったか?」

 

と呟いて匂いを嗅いでいると、目がやっと見えるようになり、辺りを見渡せるようになった。そして、見渡すと俺は混乱した。

 

「は?......ここどこ?」

 

そこは煉瓦の塀が並ぶ場所だった。

何処かもわからない。取りあえず見渡してみると、後ろには商店街というか店が並んでいる。左右は取りあえず塀。

少し離れたところに塀から飛び出ているところがあったので、俺はそれを見にいった。

 

「横須賀......鎮守府......。ほーん。」

 

俺は目の前の文字に対して読みはできたが、理解はできなかった。

横須賀という言葉。神奈川県にあるアメリカ軍が使っている昔軍港だったところだ。

俺はその横須賀鎮守府と書かれたものをまじまじと見る。それが書かれているのはブロンズの板で、光を反射していた。光を反射しているのなら俺の姿も反射して映っている訳だ。

 

「ん?なんか反射してるな......。おわっ!!」

 

俺はいつ以来、というか思い出そうとすれば結構記憶に新しい学ランを着ていた。だたし白色。

そして、手袋をしていて、腰には拳銃と軍刀がぶら下がってる。どう考えても服装は軍人。しかも第二次世界大戦中の日本海軍将校の正装だ。

俺が自分の姿に戸惑いつつも慌てていると、どこから現れたのか、兵士が現れた。

その兵士の姿は俺にとって見覚えのある姿だ。なぜなら、陸上自衛隊の迷彩服だったから。そして、携えている小銃も自衛隊が使っている89式自動小銃だった。

 

「どうも。」

 

兵士はそう言って俺に近づいてきた。

 

「あっ、どうも。」

 

俺がそうやってキョドりながら返すと、兵士は小銃を肩からおろして塀に立てかけた。

 

「戸惑っていらっしゃいますね?すぐに説明できる者が到着しますので、それまでお待ち下さい。」

 

そう兵士は俺に笑いかけた。

俺もそれにつられて引き笑いをして、その場でぼーっと空を眺める。

 

(ここ、ほんとにどこなの?)

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

兵士が俺に話しかけてきて2分くらい経った頃、一人の女性がこちらに向かってきた。

とても兵士には見えない華奢な体格、メガネ、長い黒髪、高校生かと思ってしまうセーラー服調の制服。

俺は彼女に見覚えがあった。

 

「初めまして、提督。私は大淀です。こちらへどうぞ。」

 

そう言うと大淀は振り替えてって現れた方向に歩いていく。俺は取りあえず付いてこいと言われたので、付いていくことにした。

兵士に礼を言うと、『自分の仕事ですのでお気になさらずに。』そう言った。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

長い髪を揺らしながら進む大淀に俺は話しかけた。状況が呑み込めてないのだ。

 

「大淀、でいいんだよな?」

 

「はい、大淀ですよ。どうされました?」

 

俺は唾をのみ込んで言った。

 

「俺の事を提督って言ったけど、どうして?」

 

俺がそう聞くと大淀はクスリと笑った。

 

「私では説明出来ません。ここに入って頂いて、お聞きになって下さい。」

 

そう言って大淀が止まったのは、執務室と木の板に書かれている部屋の前。これまで通ってきた部屋より大きな扉で、重厚な雰囲気を出している。

俺はそれに手をかけて開いた。この時、心拍数が自分でも判るくらいに跳ねあがったのは言うまでもない。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

扉を開けて中に進むと、中では6人。これまた見覚えのある顔が並んで敬礼をしていた。

俺がその様子に呆気を取られていると、端に立っていた長身の女性が歩いてくる。大淀の件で大体想像はついていたが、俺に向かってきているのは長門。戦艦 長門だ。

 

「提督。私は第一艦隊旗艦 長門だ。」

 

「おっ、おう。見れば判る。」

 

俺はテンパりすぎて変な風に返してしまった。

 

「まず、提督に謝りたい。済まない、いや、申し訳ございません。」

 

長門は俺の前でそう言うと、深く頭を下げた。

俺はどういう状況なのか掴めないまま、更に長門に謝られて頭が追い付いていなかった。

 

「いやっ......その前に、状況を教えてほしい。えっ?なんで俺......。」

 

俺は何故こんなところに居るのか、状況が判らない。俺はパソコンの前に居たはずだ。どうして画面の中にしかいないはずの長門が目の前に居るんだ。俺は山ほど聞きたい事があったが、取りあえず長門の謝っている訳を聞くことにした。それが俺の状況の理解に繋がると思ったからだ。

 

「提督はパソコンで指示を出していた世界から、私たちが深海棲艦と戦争をしている世界に連れてこられたんだ。その事に関して謝りたい。」

 

長門はそう言うと、執務室にあったホワイトボードに何かを書き始めた。

 

「まず、提督の身が置かれている状況だが、提督は現在横須賀鎮守府の長だ。」

 

「うん。それはこの状況で判ってる。俺が知りたいのは、何故君たち艦娘が俺の目の前に具現化しているかだ。」

 

俺がそう言うと、長門はホワイトボードに丸を2つ書いた。そしてそれを線で結んだ。

 

「右の丸と左の丸の関係性は現在の提督の状況を完結に現したものだ。右の丸は今、提督が認識している状況。左は提督がパソコンで指示を出していた状況のあるところだ。」

 

そう長門が言うと、俺の中である言葉が出てきた。

 

「......平衡世界、いや、異世界か。」

 

「正解だ。ここは深海棲艦が海を支配している世界。そして、提督は深海棲艦が居ない世界から私によって呼ばれ、この世界に現れた。」

 

長門はそう言うと、再び頭を深く下げた。

 

「私たちは提督の事情を考えずに、無理にこの世界に呼んでしまった。本当に申し訳ございませんでしたっ!!」

 

俺は今どうしてこうなったかは理解ができた。だが、その真ん中がぽっかりと空いたままだった。それは、如何して俺が長門たちによって深海棲艦が海を支配している世界に呼ばれたのかだった。

 

「大丈夫だ。混乱したけど......。それで、どうして俺を呼んだんだ?理由があるのだろう?」

 

俺がそう言うと、長門は下げていた頭を挙げて、艦の名前を唐突に挙げて言った。

 

「......長門、赤城、加賀、雪風、熊野、夕張......共通点があるだろう?」

 

俺は挙げられた艦娘の共通点を考えた。答えはすぐに出た。

 

「......レア艦だ。それも俺が保有している。」

 

「そうだ。」

 

長門は答えると続けて言った。

 

「彗星十二型甲。」

 

「レア艦載機。」

 

「そうだ。ここまで言えば判るだろう。」

 

俺は頭を回転させることなく答えた。

 

「......俺は最近始めたばかりだ。そして建造や海域でのドロップで出にくい艦娘を多数保有していて、かつ通常ならばそれなりに進んでいないと連続で艦載機開発ができないのにかなり初期で彗星十二型甲を出した。」

 

「そうだ。今挙げた艦娘と彗星十二型甲は提督のいた世界で司令部のレベルが一ケタ台で出した。」

 

「それがなんの関係があるんだ?」

 

そう俺が言うと、長門が何かに手招きをして手の上に乗せた。

 

「提督の様な人間が指揮する司令部にはこちらの世界の秘書艦、つまり私の手のひらに居る妖精から特別な力が与えられるんだ。それを≪提督を呼ぶ力≫とそのままの意味で言う。」

 

「そうか......。初期に幸運な艦隊司令部にはそんな報酬が......報酬って言っていいのか?」

 

「言っていいだろう。少なくとも私たちにとっては報酬以外の何物でもない。」

 

そう長門は言うと息を整えた。

 

「つまり、幸運な艦隊司令部には特別報酬としてその艦隊司令部を指揮する提督をパソコンで指示をしている世界からこちらの世界へと呼び、直接指揮を執ってもらえるという訳だ。」

 

俺は長門の説明にところどころ違和感を覚えていた。

 

「聞いてもいいか?」

 

「いいぞ。」

 

「俺が君らの前に現れる事が報酬なのか?それとも直接指揮を執ってもらえる事が報酬なのか?」

 

「どっちもだ。」

 

そう長門は答えた。

だが、長門は俺の質問に答えていない。

 

「なぁ、結局のところ俺を呼んだ理由は何だ?」

 

そう言うと、長門を含むその場に居た艦娘全員が顔を俯かせてしまった。

それを何も言わずに俺は眺めていたが、すぐに長門は顔を上げた。

 

「深海棲艦がいるこの世界......そして艦娘がいるこの世界ではな、人間から海を奪った怪物として深海棲艦は憎まれ、私たちは救世主と称えられていた。」

 

長門はそう言ってまた顔を俯かせてしまった。

 

「だが根源は同じ。私たちも海から現れたのだからな。それを怪しんだ人間が言ったんだ。『艦娘も深海棲艦なんじゃないか。』って。それ以来人間は私たちを鎮守府という檻に閉じ込め、私たちが出撃するのに必要な資材を送る代わりに海を取り戻してほしいと言われた。」

 

長門の握る拳が力み、見ていても判る程に食い込んでいく。

 

「人間たちはそれの要求の見返りに何がほしいかと私たちに問うたんだ。それに私たちは唯、『提督が、私たちを指揮してくれる司令官が欲しい。』と言った。」

 

長門の握る拳が震えている。

 

「そうしたら人間たちは執務室にこんなものを置いた。」

 

そう言って俯いたまま長門はあるものの前に立った。それは俺も見慣れたもの。印刷機だ。

 

「人間は私たちにこれを渡すとこう言った。『この機械からお前らの欲しがっている指揮官から命令書が届く。これ通りに作戦行動を取れ。それとこれは別世界とつながっている。それも君らに好意を持っている人間が命令を出している。』そう言ったのだ。」

 

俺はこれがその言葉で何なのか理解できた。

俺がやっていたブラウザゲームでの艦これで出したありとあらゆる命令はこれによってここに届いていたのだ。

 

「つまり......君らは自分らを指揮する提督、つまり俺が欲しかったという事か?でもそれが何で初期でレア艦や艦載機を保有しているところにのみ限定されるんだ?」

 

そう言うと長門はさっきまで俺の視界にもちらちらと入っていた妖精を手のひらに乗せた。

 

「この妖精たちがそう決めたんだ。妖精は私たちの艤装を操作してくれたり、工廠で私たちを建造したり、装備を開発したり、入渠の世話をしてくれる。その中の開発を行う妖精が最初の建造をしに言った吹雪に言ったそうだ。『この先、早い時期にレア艦や装備を多く建造・開発できたら君らの望みをかなえてあげれるよ。』と。」

 

その言葉で俺の中での辻褄が合った。

色々と端折れば、幸運であったなら提督にも会えるだろうという事だ。

俺はそれを言っても尚、俯いたままの6人を見た。そうすると長門が再び口を開いた。

 

「......妖精からはその後に続きを言ったそうだ。『もし、それが出来たとしても私は執務室にある命令書が出される機械の向こう側の人間。つまり別世界の人間だけ。』とな。」

 

「それが俺。」

 

「そうだ。それとな、まだ続きを言ったんだ。『だけど私はその人間がもしここに居ることを嫌がったら別世界に帰すつもりだからね。』と。だから.......。」

 

そう言って震えが増す長門を俺はどうもしてやれない。

 

「だから、それが叶った私たちの前に現れた提督、あなたが帰りたいと言うならば............帰る事が出来る。」

 

そう言ってもなお長門たちはまだ震えていた。

 

「てっ、提督はどうする?いま私の手のひらにいるのがその妖精だ。ここで帰りたいというなら、帰る事が出来る。その代り、こちらに残る場合は一生提督の居た世界には帰れないぞっ。深海棲艦との戦争の最中、死んでしまうかもしれない......。」

 

俺はこれまでの話を聞いていて深く考えるまでもなかった。

長門の言った人間が気になって仕方ないのだ。長門が言う話から考えるとこの世界の長門の言う人間は俺の居た世界に何等かの干渉ができるという事だ。それが怖いのだ。

だから、俺はそれの監視の為に......。

 

「......分かった。提督としてここに居続けよう。」

 

そう言うと全員が顔を一斉に挙げた。

 

「本当かっ!?嘘じゃないな!?」

 

「あぁ。長門の言うには艦娘は非人道的に扱われているみたいだな。」

 

俺は表立った理由を言う事にした。いま言うべきじゃないと思ったからだ。

 

「そうだが......。それだけか?」

 

「それと、俺の居た世界はつまらないんだ。」

 

そう言うと近くで長門たちと同じように震えていた大淀が手を震わせながら俺に一枚の紙を渡した。それは提督になった人間の名前を書き込む紙だ。

俺はそれを受け取ると、大淀が差し出したペンで名前を書き込んだ。

 

「あぁ......やっとだ。」

 

そう言って長門たちはその場に居た全員で喜んだ。俺はそれをただ眺めている事にした。今後の事を考えなければならなかったからだ。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

数分一頻り騒いだ6人は俺がボケーっと眺めているのに気が付き、再び整列した。

 

「すみません。嬉しくて......。」

 

長門は頬を染めながらそう言うと、咳払いをして号令をかけた。

 

「全員、提督に対し、敬礼っ!!!」

 

一糸乱れぬ敬礼に俺は戸惑いつつも適当に答礼した。

 

「提督は判っていると思うが、形式上自己紹介をさせてくれ。私は長門型戦艦一番艦 長門だ。」

 

「私は扶桑型航空戦艦一番艦 姉の方、扶桑です。」

 

「扶桑型航空戦艦二番艦 妹の方、山城です。」

 

「伊勢型航空戦艦二番艦 日向だ。」

 

「一航戦、航空母艦 赤城です。」

 

「一航戦、航空母艦 加賀です。」

 

全員が俺の目の前で言った。

 

「「「「「「提督、ご命令をっ!!」」」」」」

 

 




暇になって書き始めたのがこれです。
今までの私の作風からは少し外れていますが、楽しんでいただきたいと考えております。
これ以降、第七話まではストックですので、順次公開させていただきます。

因みに、第一艦隊。この話に登場した艦娘の編成は自分が使ってる編成です。

ご意見ご感想お待ちしております。

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