【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第九十五話  提督の苦悩⑤

 

今日はお茶会をしてやれないとだけ艦娘に連絡を入れると、早々に執務を片づけていた。

その理由は、工廠に用があるからだ。

昨日開発されたF-15J改二をこの目で見る事と、どう運用するかを決めるためだった。

 

「アトミラール。」

 

変わらず秘書艦の仕事をしてくれているフェルトは俺が終えた最後の書類を手に取ると整えた。

 

「なんだ?」

 

「私が提出で戻ってくるまで少し待っていてはくれまいか?私も工廠に行ってみたいからな。」

 

そう言って俺の返事を訊く間もなくフェルトは執務室を出て行ってしまった。ちなみに番犬艦隊にはF-15J改二の存在は知られていない。俺的には俺個人で行きたかったが、そういう訳にもいかない様だ。最低限、朝潮だけを連れて行くという手もあるが、あとで何言われるか分からない。というよりも、フェルトと突っかかるビスマルクとの間で喧嘩が起きるからだ。

 

「仕方ない。」

 

俺はそう言って背筋を伸ばすと、腕も伸ばした。固まっていた筋肉が伸び、解放されるこの感覚は好きだ。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

フェルトが帰ってきたので工廠までは全員で行き、中には俺とフェルトだけが入った。

内部は相変わらず物で溢れ、忙しなく妖精たちが作業をしている。今はどうやら哨戒任務に出ていた航空機の点検をしているらしい。

 

「提督、お待ちしてました。」

 

そう声を掛けてきたのは白衣の妖精だ。開発班の妖精。

 

「あぁ。早速だがよろしく頼む。」

 

俺がそう言うと白衣の妖精は俺の肩によじ登ってきた。

 

「何時ものところです。」

 

そう言われて俺は工廠の奥へ歩みを進めた。そんな俺に付いてくるフェルトは不思議そうな表情をしていた。今から何をしに行くのか、何を見に行くのかさえ聞かされていないなら当然だろうが、言わない俺も悪い。

 

「フェルト。」

 

「何だ?」

 

俺は歩きながらフェルトに声を掛けた。

 

「これから鎮守府で開発されたものを見に行く。そのために向かっているんだが、フェルトはいいのか?」

 

「構わない。寧ろ興味がそそられる。是非、見てみたい。」

 

そう言ったのを訊いて俺は何も言わずに進んでいった。

やがて何時ものところにシートを被せてる塊が鎮座していた。例の如く白衣の妖精は俺の肩から飛び降りるとそのシーツを剥がした。

 

「これがF-15J改二です。」

 

そう言われて俺はマジマジとその機体を見る。そうすると強烈な違和感に襲われた。何かが足りない、そう思わされたのだ。

 

「......足りないな。」

 

そう言うと白衣の妖精はF-15J改二の翼の下に入り、あるところを指差した。

そこは普通ならミサイルを担架するハードポイントにミサイルが担架されていないのだ。きっと安全面を考慮して取り外しているんだろうと思ったが白衣の妖精は言い放った。

 

「ここに載せる筈のミサイル......誘導噴進弾はコチラでは開発できてません。解析する物がありませんでしたからね。」

 

そう言って俺の肩に戻ってきた。

 

「但し、ロケットランチャーを担架させることは出来ます。」

 

そう言って白衣の妖精は機体の横に置かれていた筒を指差した。それがどうやらロケットランチャーらしい。

その一方でフェルトは目の前に現れた奇妙な形をした航空機に言葉を失っていた。フェルト曰く『メッサーシュミットとフォッケウルフとシュトゥーカ(スツーカ)しか見たことが無い。』らしい。

 

「......これは、これは何だ?」

 

そう訊いたフェルトに白衣の妖精は答えた。

 

「現代兵器を解析して私たちが作り出した最新鋭航空機です。」

 

「プロペラがついてないじゃないか。」

 

「それはジェットエンジンで飛びますからね。」

 

そう言い放つ白衣の妖精に相反して、フェルトは凄い形相でそれを見ていた。

そんな雰囲気になってしまったので俺は無理やり白衣の妖精に訪ねてみた。

 

「ミサイルが積めないということは、現実、コイツができる戦闘は近距離での格闘戦か?」

 

「そうなりますね。ですけど、この機体に搭載されている機関砲は発射速度が速く、すぐに弾を消費してしまいます。ですので『わざと』機首に配置されていた機関砲を単砲身にしておきました。それと、ミサイルが担架されるレールにはこんなものも用意しています。」

 

そう言って白衣の妖精は俺の肩から飛び降り、小さいシートに覆われていたものを見せた。

それは何と言うか、筒。ロケットランチャーの時もこの反応だったが、本当にそうとしかいいようが無かった。

 

「これは?」

 

そう俺が訊くと、白衣の妖精はその筒に走り寄り、何かを開いて見せた。そこには大量の弾薬がベルトに等間隔で並んでいるもの。所謂、弾薬ベルトが見えた。

 

「これはハードポイントにつける機関砲です。」

 

俺はそれを言われただけで何かは納得がいったが、フェルトはまだ分からない様だった。

 

「フェルトさんが分かるように言えばこれは『ガンポット』です。」

 

そう言うとフェルトも分かったのか、今まであまり話さなかった口を開いた。

 

「ガンポットなら多少わかる。このガンポットは何mmの機関砲なんだ?」

 

「20mmです。」

 

そう言った白衣の妖精は再び俺の肩に戻ってきた。

 

「言い忘れていましたが、F-15J改二以外にも完成している物があるんです。」

 

そう言われて白衣の妖精に言われてF-15J改二を通り過ぎると、そこにもシートの被ったものがあった。

それを白衣の妖精が剥がすと、見たことのあるシルエットのものが出てきた。

 

「これはF-15J改と同時に搬入されてきたF-2を解析して作った航空機。言うなればF-2改ですね。」

 

そう言った白衣の妖精は俺の肩から飛び降りて何かの資料を持ってきて俺に渡してきた。その資料はF-2改のカタログスペックが書かれているらしい。俺はそんな数値を見ても分からないのだが、白衣の妖精から説明があった。

 

「コイツは解析元よりも遥かに性能がいいです。レシプロ機並みの運動性能を有してます。そしてジェットエンジンを積んだことによって高い上昇性と速度を持ち合わせています。」

 

そう言って白衣の妖精は一息ついた。

 

「言うなればこの機体、『現代の零戦』と言っても過言ではありません。これにミサイルが搭載されようモノなら、拠点防衛から攻撃まで色々な任務をすることができます。」

 

そう言い切ったのだ。

俺はそれを訊き、取りあえずということで20機ずつ作るように命令を出しておいた。試験運用だ。鎮守府に近づく深海棲艦への攻勢に使うのだ。

白衣の妖精に一言声を掛けた後、工廠を後にした。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

タウイタウイ泊地に付いた私たちは朝と同時に出発し、リンガ泊地に向かっています。

既に赤道近くの地域を航行しているので、気温が暑いです。皆結構参っている様で、私も暑さで疲れていました。せめてもの救いは、艦橋から出ると潮風が涼しいということです。

 

「ふぅー......。」

 

私は艦橋から見渡す艦隊の状況を見つつ、休憩していた。安全圏を転々と移動をしていますが、いつどこで襲われるか分からない海の上でずっと意識を集中していたからです。

 

「リンガ泊地に着けばあとはリランカ島を目指すだけですね。」

 

そう自分に言い聞かせて私は艦橋に戻って行った。

 

「旗艦:霧島より全艦隊。現状を報告せよっ!」

 

私はそう言い放った。このやり取りももう数えきれない数をしています。全ては味方の安全のためであり、任務成功を確実にするためです。誰一人かけてはいけないんです。

次々と入ってくる報告を訊き私は今回も『異常なし』と心の中に唱えました。

 





今回は何か解説っぽかったですね。すみません。
それよりハンデが付きました。ミサイルが出来てないと言う......。ここから勘ぐって下さい。おもしろいと思います。

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