【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第九十八話  提督の苦悩⑧

霧島さんに言われて索敵機を出しています。先程わかったのですが、どうやら霧の中からやっと出れたと思ったらリンガ泊地まで戻ってきていた様です。索敵機の妖精さんから届いた報告でした。

 

「加賀さん。そっちには索敵に出せる艦載機はありますか?」

 

私は通信妖精さんから受話器を受け取り、加賀さんに繋げて貰いました。

霧島さんからの指示はありませんが、必要な行動です。今から索敵機を霧に方に出してみようと思います。

 

『烈風隊が甲板に出てますが......先ほど出したばっかりですよね?』

 

そう返事が返ってきた。その返事は至極当然の回答でしたが、説明します。

 

「多分、霧が晴れ次第出発です。ですので早い方がいいので索敵機に霧を観察させましょう。」

 

『分かったわ。私は左回りに出します。』

 

「なら私は右回りね。」

 

そう言って通信妖精さんに受話器を渡すと私は指示を出した。

 

「甲板で待機中の烈風2機へっ!霧の外縁部を右回りで偵察行動して下さいっ!」

 

発動機の音が轟々と鳴り、烈風が発艦していきました。これでより早く事を進めることが出来るはずです。

 

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ーーー

 

 

先程赤城さんと加賀さんの艤装から烈風が飛んでいきました。きっと偵察でしょう。行き先を見ると霧。晴れないかの確認の為でしょうね。

提案は赤城さんで間違い無いでしょうね。

 

「霧島より全艦隊へ。霧が晴れ次第、リランカ島に向けて出発します。」

 

私は通信妖精さんに言ってそう受話器に言うと、揚陸艦を見た。甲板には所狭しと物資が並び、艦橋の下は開けていて乗組員が話をしている様です。姿を見る限り、将官ではありませんね。

 

「あの霧、一体何なんでしょうか......。」

 

私の中にはただそれだけしか考えられなかった。

霧が起こした現象。到底理解出来ない事です。

再び入れば何か分かるかもしれませんが、どうなるか分かりません。ここは避けるべきでしょうね。

 

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ーーー

 

 

リランカ島に出撃してから5日が経った日。新瑞が鎮守府に来た。M61と一緒に来たのだが、門で止められた様だ。俺は見に行くために門に向かった。

 

「すみません。鎮守府の警戒レベルを上げているので、貴方を易々と通すわけにはいきません。」

 

そう言って門兵がある人を止めていた。そしてそれを困った表情で見つめる新瑞の姿もあった。

 

「どうかされたんですか?」

 

俺がそう言って新瑞に話しかけた。

 

「あぁ......連れてきた部下が止められてしまってな。あいつには武装解除をさせてあったんだが......。」

 

そう言って困っているので、俺は門兵に話しかけた。

 

「通してやってくれ。」

 

「はっ!ですが彼はこの様なものを......。」

 

そう言って門兵は俺にナイフを見せてきた。みかけはどうやら軍用ナイフの様だ。鞘に刺さっており、随分と重そうだ。

 

「はぁ......隠し持っていたのか。おい、どういう事だ。」

 

そう新瑞は部下に詰めかけた。

 

「いえっ!これは肌身離さず持つものでありますので......。」

 

「バカか!貴様っ!!」

 

新瑞はそう言って怒鳴った。かなりの迫力で、怖い。

 

「ここは他とは違う。いう事を聞くんだ。」

 

そう言って新瑞はその部下の頭を叩いた。

 

「門の近くはいけない。警備棟ならいいか?」

 

そう新瑞が言うのでそうする事にした。本部棟には入れない事が分かっているのだろう。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

警備棟に入った俺たちは会議室みたいなところを取り、俺と新瑞、そして部下が入った。

 

「アポがあっても良かったんじゃないでしょうか?」

 

そう俺が言うと新瑞は笑った。

 

「はははっ!!いつもの気分だった。今日はこいつを連れている事を忘れていてな。紹介する。」

 

そう新瑞が言うと部下は俺に対して敬礼した。

 

「私は空軍中部航空方面隊所属 第六航空団 天見(そらみ)少尉です!」

 

俺はてっきり陸軍のかと思っていたが空軍だったらしい。何故空軍の兵がナイフを持ち歩いているんだと疑問に思ったが、よく考えたら空軍の人間と会うのは初めてだった。

 

「天見少尉は第六航空団でF-15Jに搭乗している、航空兵だ。」

 

そう言われて俺は何とも思わなかったが、どうしてそんなパイロットがウチに来たのか疑問に思えた。

 

「それで、M61は?」

 

「おっと、そっちが本命だったな。もうそろそろ運んでいるトラックが到着する。門兵と艦娘に検査させた後、運び込む。」

 

「何時もの門ですよね?既に待機してます。」

 

そう答えると俺にM61についての書類を俺に渡してきた。

 

「報告書を見たが弾薬ベルトはそっちで作るようだな。」

 

「はい。」

 

そう答えると新瑞はまた書類を渡してきた。そこには『現代の戦闘機との相違点についての教導』と書かれていた。

 

「これは?」

 

俺がそう訊くと新瑞は答えた。

 

「そちらに配備されたF-15J改二とF-2改を運用するにあたってのレシプロ機との相違点に付いての講習と運用するにあたっての指導だ。そのために天見をこちらに配属させたい。」

 

そう言って俺に新瑞は言ったが、それを押しのけて天見が目を輝かせて言った。

 

「F-15J改二?!F-2改?!なんですかそれッ!!新型ですかっ!?」

 

そう言って新瑞に詰め寄っていた。この人、結構猪突猛進な感じなんだ。

 

「この鎮守府の航空隊に配備されているジェット機だ。」

 

そう新瑞が言うと天見は首を傾げた。

 

「ここの鎮守府?基地には旧世代のレシプロ機しか配備されてないって聞きましたけど?」

 

「これまではそうだったが、つい最近配備されたんだろう?」

 

そう俺に苦笑いしながら新瑞が訊いてきた。

 

「そうですね。試験運用ですがどちらも20機ずつ配備してます。」

 

そう俺が言うと天見は目を輝かせた。

 

「はぁ~!!最新鋭戦闘機のある基地に配属だなんて、昇進ですかね?!」

 

そう言う天見を見て俺は『コイツアホか』と思ったが口にはしない。

 

「違う。さっき言っただろう。教導だ。つまり貴様は教官だ。」

 

そう言って新瑞は部屋を出て行った。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

返事もしてないのに投げられたと思い放心していると、天見が俺の目の間で手を振っていた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「っは?!......大丈夫です。」

 

俺はそう言って手に持っていた書類とM61の書類を持って咳ばらいをした。

 

「取りあえず、事務棟にて待機。外出の一切を禁止する。」

 

そう言うと天見はギョッと驚いた。この感じ、何回も経験している。

 

「いや、何で君にそんな事を言われないといけないんですか?上官を呼んできてください。」

 

そう言うので俺は溜息を吐いて持っていた書類を机に置いた。

 

「はぁ......証明できるものがないんだよなぁ......。」

 

そう言って俺はポケットの中を探り、何か証明できるものはないかと探した。

今、外に出るということで上着を着ているのだが、俺の着ている服はおろか階級章さえも見えない。そして俺はまだ18だ。そう思われても仕方なかった。

上着を脱げばいいんだろうが、上着の下はシャツだ。外に出る前、慌てて出てきたので軍装の上着を着るのを忘れていたのだ。

 

「どうしたもんかね......。」

 

そう言って悩んでいる俺に天見は声を掛けてくる。

 

「ちょっと!呼びに行かないんですか?!ここの司令に挨拶しておかないといけませんし!」

 

そう言って思いっきりイライラした表情で俺に言ってる天見にどういうか悩んでいると、会議室に長門が入ってきた。

 

「ここに居たか。」

 

「ん?」

 

俺は振り返ると、長門が困った表情をして言った。

 

「ドイツの奴らが提督が帰ってこないと騒いでいるんだ。どうにか......む?貴様は誰だ?!」

 

俺にそう言って視界に映った天見にいきなり敵対心を向けた長門は艤装を身に纏った。

 

「部外者だな!両手を頭の後ろで組め!」

 

長門が急に艤装を身に纏ったのを見て驚いた天見は言われた通りに腕を組んだ。

 

「艦娘っ!?」

 

そう言って驚く天見だが、長門が流れるような速さで艤装に何時の間に換装したのか、7.7mm機銃を天見に向けた。

 

「貴様っ!何者だっ!!」

 

そう言う長門と驚く天見の間に俺は割って入り、長門に艤装を仕舞うように言った。案外長門は聞いてくれて、すぐに艤装を消してくれたが、警戒しているのには変わりない。

 

「そう威嚇するな、長門。」

 

「あぁ......『提督』がそう言うなら。」

 

そう言ってすんなり長門は俺の後ろに立った。その一方、天見は顔面蒼白。長門が言った言葉に反応した様だ。

 

「提督っ......提督って、ここの司令官ですか?」

 

「そうだな。横須賀鎮守府艦隊司令部司令官だ。」

 

そう長門は澄まし顔で言った。

長門の言葉を聞いた天見は一層顔が青くなり、両手を組んだまま膝を付き、床にゴンと額を打ち付けた。

 

「もっ、申し訳ございませんっ!!まさか、司令だとは思えなくて......。」

 

そう言った天見に長門は過剰反応した。

 

「なん......だと。『だとは思えなくて』だと......。貴様ぁ!!提督を侮辱するのか!!!」

 

俺の背後からかなり酷いオーラを感じている。この感覚は経験がある。あれは金剛が突然現れるときと同じものだ。

 

「よせっ!長門っ!!」

 

「だがっ!」

 

「若いからそうみられても仕方ないんだ。天見少尉、立てるか?」

 

「はい......あっ、いえ......。腰が抜けてしまって......。」

 

そう言ってペタンと座り込んでしまった天見は、少し泣きかけていた。

 

「司令......私は着任して5分で銃殺なのでしょうか?」

 

いきなりそんな事を言い出した。

 

「何言ってんだ?」

 

「横須賀鎮守府で提督や艦娘を怒らせると是もなしに軍法会議でそのあと銃殺だと噂で......。」

 

そう言って今にも泣きだしそうな声で言う天見に長門は言った。

 

「そんな根も葉もない噂......提督は一度たりとも死刑を執行させたことはないぞ。軍法会議で死刑が決まった兵をいつも助ける。そんな人間だ。」

 

そう言って長門は目を泳がせながら続けた。

 

「艦娘はどうだろうな......はははっ。」

 

俺は長門に『艦娘もなかっただろう』と言って天見が歩けるようになるとすぐに事務棟に案内した。

今日のところは待機でと伝え、今後の予定やらを話した。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

天見と分かれて何故教官が現れたのかと考えだした。

新瑞の言った事は確かにあっている。レシプロとジェットでは戦術構想が違う。その相違点を見つけ、ジェットに関する知識を費やす。必要な事だが、何かが違う気がした。

何故なら開発される航空機にはそれぞれ妖精も現れる。その意味とは......そもそもそれの操縦には慣れているとうことなのではないか。そう思ったのだ。

だったら天見は必要ない。せいぜい、戦術を考えるときに話し相手になるくらいだ。

大本営は何かを勘違いしているのではないか、そう思った。

 

「考えていても仕方ないか。取りあえず明日、模擬戦を見せてからにしよう。」

 

そう考え、今日はその事を考えるのをやめた。

M61に関してだが、新しく生産された20門が届いた様だった。数は合わないが、妖精が解析してコピーを作ればどうにかなる。そう考え、追加を頼むのを止めた。

ちなみに俺を探していたドイツ艦たちは、余りに長い事帰ってこないので心配しただけらしい。結構なお騒がせだった。

 




今回は新しいキャラの登場ですね。天見ですが、口調から分からないと思いますので一応ここに簡易的な紹介を。
天見は女性。作中にもありましたが中部航空方面隊 第六航空団所属の少尉。パイロットですね。

冒頭のアレですが、まぁ毎回差し込むので。

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