【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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特別編  大晦日

 

今日の鎮守府では大掃除が早々に始められていた。皆、気合を入れて彼方此方を掃除している。

何故、そんなことをしているのかというと、今日は12月31日。大晦日だ。

一年の汚れを払って身を清めるとか、新年に気持ちよく神様を迎えられるようにとか言われているが、これはもう習慣に過ぎない。

そんなの関係なく、俺たちは掃除をしているのだ。

と、言いたかったが......。

 

「おい。」

 

「はい。」

 

報告に来たらしい頭巾を頭に巻いた赤城はドヤ顔で俺の前に立っている。

 

「嘘は良くないぞ?」

 

「嘘など言ってませんよ。第一、綺麗にするのは当然の事です。」

 

赤城が報告したのは、大掃除完了の知らせだった。朝少し早く起きて朝食を摂り、掃除を始めたのは午前8時。

赤城が完了を知らせたのは午前11時。

 

「いくらなんでも速過ぎる。」

 

「とは言え、終わりましたからね。艦娘寮は大型艦が中心に取り仕切り、それぞれの棟ではそれを使っている人たちがやりましたからね。」

 

俺は頭を抱えて言った。

 

「本部棟は?」

 

「本部棟は提督と艦娘がやったじゃないですか。」

 

本部棟は艦娘寮で手を拱いていた艦娘が本部棟をやると言って8時半に押し寄せてやっていた。ちなみに俺の掃除場所は執務室と私室。他のところもやるつもりだったが、待機艦勢の強固な壁によって阻まれて結局やれなかった。待機艦勢はこれを機にと気合入れてやっていたらしく、本部棟の一部の廊下はワックスのせいでかなり滑るらしい。本部棟というか俺を手伝っていた西川曰く『あれはスケートリンクですね』だそうだ。

 

「そもそも掃除するところなんて家具の後ろ位ですし......。他の棟なんて想像以上に居る門兵さんが出向いてやったらしいですからね。」

 

赤城はそう言って頭巾を解いた。

 

「という訳で大掃除が終わりました。」

 

そう言って来るので何だか悔しくなった俺は苦し紛れに言った。

 

「艤装は?」

 

そう言うと赤城はすぐに答えた。

 

「それはもう終わってますよ?」

 

軽く一蹴され俺はもう歯向かう気にはなれなかった。

 

「分かった......。夜は宴会だし、それまでは......自由で。遠征艦隊も流石に出撃してないだろう?」

 

「そうですね。今日は哨戒機だけです。」

 

そう言うと赤城は俺を立たせた。何故立たせたかというと......。

 

「さて、私は任務を受けているので、提督!行きますよ!!」

 

と言って俺の手を掴んだ。

 

「引っ張んなし!!歩けるからっ!!!」

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺がどこに連れて行かれたかというと、食堂だった。

そしてそこには掃除を終えた艦娘たちが全員集合している。何事かと思って見渡すと、ある席に一人だけ座らされている艦娘がいた。

 

「助けてぇ~提督ぅ~。」

 

椅子に座らされて手を縛られている北上だった。

どういう状況なのかさっぱり分からないが、北上を囲んでいる艦娘たちが殺気立っている時点で安易に想像がついた。

きっと北上は『提督への執着』で艦娘たちが怒る事を言ってしまったんだろう。赤城が俺を強引にここに連れてきた時点で色々想像はつくが、他の艦娘が『提督への執着』が発動されても正気でいられる赤城がこんな事をするなら相当な事を言ったんだろう。

 

「何をしたのか分からないが、取り合えず謝っとけ、北上。」

 

俺はそう遠い目をして言ったが、どうやら違うようだ。

 

「違うってばっ!」

 

そう言って暴れる北上の横をよく見ると大井も結構お怒りの様子だ。大井って北上LOVEじゃなかったか?

 

「私でも流石に......ね。」

 

そう言っている大井の表情が怖い。北上が震えているくらいだ。

一体何があったというのだ!!

 

「じゃあ何で?」

 

「これですよっ!!」

 

そう言って俺に見せてきたのは食堂の今日のメニューだ。

レパートリー豊かでいつも皆満足しているし、これが一体どうして北上を怒る原因になるのか俺は分からなかった。

 

「いや、意味わからないから。」

 

「今日の朝ですよ!!」

 

そう言われて俺は朝のメニューを見た。ちなみに鎮守府での食堂の利用法は和洋中で選択でき、それぞれを言って注文する。俺は中華以外で美味しい方という注文をして居るが、この鎮守府では朝は洋食派が多いらしい。俺は洋食をメニューを見た。

そこにはパン、サラダ、オムレツ、スープ。至って普通な気がするが、どこに怒る要素があると言うのか。

 

「至って普通じゃないか。」

 

そう言うと金剛が目を潤ませながら現れた。

 

「朝食でオムレツが出ると事あるごとに北上が『提督のオムレツまた食べたいなぁ~間宮さんのとは違う美味しさが堪んないんだよねぇ』とか言うからデース......。私たちは提督のオムレツすら食べたことないノニ。」

 

「ん。」

 

俺は時間を見て、決心した。大晦日に今年一番疲れる事をする。

 

「分かった。間宮。」

 

「はい。」

 

食堂に集まっているので勿論、間宮も居る。そんな間宮を呼んだ。

 

「今日の昼の洋食枠、俺に任せてくれ。」

 

「えっ......ですけど......。」

 

そう言ってオロオロする間宮に俺はサムズアップした。

ちなみにサムズアップは一部の地域では侮蔑の意味もあるから。ちなみに日本と英語圏は大丈夫で、多分ドイツも大丈夫。

 

「大丈夫だっ!!......多分。」

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺の長時間労働は2時間に及んだ。

消費した卵の数は90個くらい、バター1kgくらい、牛乳は分からないがすごい量を消費した。だが手伝ってくれた間宮は別に表情を変えなかったのでいつも通りの様だ。まぁ、俺はこんな大人数分の用意はした事ないから仕方ないんだろうが......。

 

「つっ、疲れた......。」

 

食堂の一角で机に突っ伏していると、横に間宮が座った。

 

「お疲れ様です、提督。」

 

「あぁ......マジで疲れた......。」

 

そう言って腕からズレ落ちた頭が机に額をぶつけた。

 

「おごっ......痛てぇ。」

 

「提督はまだですよね?用意しておきましたよ。」

 

そう言って間宮は雑炊を出してくれた。

 

「疲れていると思いましたので。」

 

「ありがと......。」

 

そう言ってもそもそと食べ始めた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

日も落ちた頃、食堂は改装(※妖精によって)され、どっかの宴会場みたいになっていた。

今日はここで年越し宴会というか、大晦日のパーティー的なのを開く。俺は結局、雑炊を食べた後、すぐにその場で寝てしまったらしく起きたら準備が始まっていた。

 

「うわっ......殆ど出来てるじゃん。」

 

そう言って寝ぼけた頭を持ち上げると、もうそこには白い壁に白い机、白い椅子の清潔感溢れる空間が畳に張り替えられ、長机が並べられていた。食堂にはステージが設けられていて、マイクとスピーカーが置かれている。

完璧な忘年会会場になっていた。何処行ったパーティー。

 

「おはようございます、提督。」

 

そう言って現れたのはまたもや間宮だった。

 

「おはよう。」

 

俺はそう言って立ち上がり、背伸びをした。

 

「さて、始めますか。」

 

「えっ?」

 

そう言って戸惑う間宮に俺は言った。

 

「手伝うから。料理作るのも、何か買い出しに行くのも、もし必要なら鎮守府から出るから。」

 

「ありがとうございます!」

 

そう言って俺は辺りを見渡した。既に日が落ちているところで大体察しはついていたが、もう殆ど出来上がっている。ということで、俺は気合入れて言ったがやる事が無い。

 

「そうですね......今日も門を警備している門兵さんと不休で働いている妖精さんに何か作りますか?」

 

「そうだな。門兵には温かいもの、妖精たちには甘いものでも用意しよう。」

 

そう言って俺と間宮で作り始めた。温かいものの方は取りあえずメニューは間宮に任せ、妖精の方は俺がやる。今からクッキーやら作っても仕方ないからと言って考えている最中に自暴自棄になり、結局パウンドケーキを作る事になった。だが、予想以上に作り過ぎてしまい、妖精たちに配り終わったあと、作った半分以上が残ったのは別の話(※この後、金のカチューシャをした艦娘がかっさらっていきました)。

ちなみに間宮は年越しそばを作ると言っていたが、今からそばは作れないので天ぷらそばにすると言って作っていた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

「那っ珂ちゃんだよー!今日は盛り上がってるー?」

 

「「「「「「いぇーい!!!」」」」」」

 

「それでは、今年もお疲れ様でしたぁーーー!!!かんぱぁーい!!!」

 

「「「「「「かんぱーい!!」」」」」」

 

という感じで始まった忘年会(※もうパーティーじゃなくていいです)は那珂が乾杯の音頭を執ってくれた。ちなみにこれからそれぞれで有志が出し物をしていくらしい。

 

「有志一番っ!!那珂ちゃん、歌いまーす!!!」

 

どうやら音頭を執ってくれたのはそのまま有志に入りやすいようにということだったらしい。

那珂は歌い始めた。鎮守府文化祭(仮)で歌ったあの曲を歌いながら踊り、途中バックダンサーも乱入して結構盛り上がった。

途中、五月雨の手からマイクがすっぽ抜けたのは笑えたが、どこに落ちたのだろう。『不幸だわ......。』とか聞こえたので多分山城の方に落ちたんだろうな。

那珂が歌い終わると、夕立だけが舞台に残った。

 

「提督さんは那珂ちゃんだけに曲を用意したらしいけど、妖精さんが見つけたの片っ端から残してくれていたっぽい!!......さぁ、素敵なパーティー始めましょ?」

 

そう言って舞台の照明は落ち、紅いライトがぐるぐると回り始めた。どうやら夕立も歌うらしい。ロック調のリズムに乗って、歌いだす夕立に全員が立ち上がり手を天に突き上げている。忘年会どこ行った。

という流れで次々と艦娘たちは歌っていくが、どうやら最後に歌うのは時雨の様だ。これまでに熊野と鈴谷の時には結構しんみりとした空気が流れたが、この流れから察するに時雨はあの曲だ。

 

「僕で歌うのは最後だよ......じゃあ、歌うね。」

 

そう言って曲が流れ始めるが、何を歌うのか知っているのだろうか。白露型ゾーンは既に涙を流している。感動するのが早い。

 

「ふぅ......ありがとう。じゃあ、次。お願いね。」

 

そう言って歌い切った時雨はマイクを置いて舞台から降りて行った。

そして時雨と入れ替わりで舞台に上がったのは俺だ。

 

「じゃあしんみりしたところで、今から赤城と加賀が配るカードを1枚ずつ受け取ってくれ。」

 

そう言って赤城と加賀が配り始めたのは1桁と2桁の数字が24個書かれたカードだ。

 

「これはビンゴと言って、毎回このガラガラから出てくる数字を俺が読み上げるからそのカードに書かれている数字と参照してくれ。もし読み上げられた数字があったならこうしてくれ。」

 

そう言って俺は持っていたカードを適当な数字のところをぶち抜いた。

 

「まぁこのカードは使わないから、こんなふうに穴を開けていって、縦横斜めで端から端まで空いたら『ビンゴ』と言ってくれ、景品をあげるぞ!」

 

そう言うと皆、カードを構えた。やる気満々の様だ。

 

「最初は真ん中の数字の書かれていないところを穴開けてくれ。じゃあ始めるぞっ!!!」

 

そう言って始まったビンゴ大会はかなり盛り上がった。景品が置かれている台が見えていると言うのもあるが、景品が景品だ。間宮のアイスクリーム6人分と伊良湖の最中6人分がある。先着12人がそれにありつけるのだ。

と言ってガラガラ回すこと十数分で最初のビンゴ者が挙がった。

 

「司令ぇ!やりました。」

 

「うん。分かっていたよ。」

 

そう言って俺の前に来たのは雪風だった。

 

「じゃあ、どっちがいい?」

 

「雪風はアイスがいいです!!」

 

そう言って雪風をビンゴ席に座らせ、ガラガラを回し始める。

時は流れて1時間。最後のビンゴが出た。北上だ。

そうして忘年会は進み、落ち着いて食事をする時間になった時、俺は逃げ場を探していた。

 

「提督も一杯どうだ?」

 

そう言って俺の左腕をがっちりホールドしているのは長門だ。忘年会を始める前に確認したところ、酒は重巡より大型のは許可されているらしく、酒保で酒も買えるらしい。そして長門は酔っている。

 

「提督ぅ~。目を離しちゃダメデース~。」

 

一方、右腕をホールドしているのは金剛だ。

 

「俺は呑めないし、第一未成年だっ!離れろ!」

 

そう言って俺は腕を振り払おうとするが、当たってはいけないところに当たってしまうので全力で抵抗できずにいた。

立ち上がればなんとかなるかもしれないが、それも叶わない。さっきから夕立が俺の膝に乗って離れないのだ。これまでの夕立何処行った?!大人しかったじゃないか!と言いたいほどだ。いや、泣きたい。

 

「夕立もっ、離れろっ!」

 

「良いじゃない~。温かいっぽいっ!!」

 

「俺は十分だっ!!」

 

そう言って抵抗するが、今度は頭をガシッと掴まれた。

 

「提督、何ニヤニヤしてるのかしら?」

 

「アトミラール、酒は飲まないのか?」

 

ドイツの戦艦と空母に絡まれた。

 

「飲めん!飲みたくてもなっ!」

 

そうだ。俺の中では俺の居た世界基準になっている。18歳は酒を飲めない。当たり前だ。

 

「いいじゃないのっ!ほら、飲みなさいっ!!」

 

そう言ってビスマルクに酒瓶の口を口に突っ込まれた。

 

「げほっ!!やめろっ!!」

 

「えぇー!飲みなさいよ~。」

 

飲まされた時にビスマルクの顔が見えたが、赤かった。ビスマルクも酔っている様だ。

 

「だぁーーー!!!誰か助けてくれぇー!!」

 

俺の悲痛の叫びが会場に木霊した。

結局見かねた赤城が止めに入ってくれた。俺に絡んでいた長門、金剛、ビスマルクは海上の端で加賀からお説教を喰らっている。別に何もしていない夕立とフェルトはそのまま俺のところに居るが、気にせずにいると段々と艦娘が集まってくる。俺の正面の席は赤城なのだが、その両脇と俺の両脇に陣を張った夕立とフェルトの脇には艦娘が集まり、20人分の机なのに60人近くが使っている状態だった。

 

「せっま......。」

 

俺は間宮の用意した料理を食べつつ、あの3人が連れて行かれてから初めて口を開いた。

既に両脇とは肩が当たっており、むしろぎゅうぎゅうと押し付けないと座れない状態だった。

 

「それは仕方ないな。何故か集まっている。」

 

そう帽子を置いて食べているフェルトは言った。酒を飲んでいる様だが、絡み癖は無い様だ。

 

「それは仕方ないわね。皆提督と食べたいっぽい。」

 

夕立はジュースなので、酔いはしないだろうが、いつもの感じではない。

まぁ、ぎゅうぎゅうずめだが楽しいので良しとしよう。皆も楽しそうだしな。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

結局騒ぎつかれて食堂で皆、雑魚寝した。

 





特別編ということで、大晦日を出させていただきました。気付けは今日は2本投稿ですね。
まぁ、大晦日があるということは、お正月もあるわけで......。
明日をお楽しみに。
ちなみに明日は自分が忙しいので、明日は本編を出すことが出来なさそうです。
これから書きはしますが、間に合わなければ挙げません(白目)
間に合えばいいんですがね。

そう言えば、提督のセリフに少し方言が入ってるかもしれません。すみません。

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