【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第百二話  作戦後報告

 

俺が送った手紙の返事はすぐに帰ってきた。何でいつもそんなに速いのか気になるところだが、今はそれどころじゃない。

見たらすぐに来るようにと書かれていたのだ。

 

「執務も終わってるし行くか。」

 

ちなみに手紙の返事は今朝届いていた様で、執務を終わらせてから見た。鎮守府から出るとなると艦娘は絶対ついてくる。そこで本来ならば秘書艦を連れて行くべきなのだろうが、今日の秘書艦は扶桑だ。

俺が報告に行く内容を扶桑は知るはずもなく、連れて行く訳にはいかない。

なので扶桑に断りを入れておかなければならなかった。

 

「扶桑。」

 

「はい。どこかに行かれるのですよね?お供します。」

 

「いや、必要ない。それと俺がどこに行ったか聞かれても散歩と言っておいてくれ。」

 

そう言うと扶桑は眉毛を八の字にして言った。

 

「私には教えていただけないのですか?」

 

「分かったよ......大本営だ。先の作戦で口頭で報告しなきゃいけない事があるからな。」

 

「分かりました。」

 

扶桑は分かってくれたので俺は上着を着て執務室を出た。大本営に向かう前にまずは霧島を捕まえなくてはいけない。そう思い、本部棟を歩き回る。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

案外早く見つかるもので、資料室に居た。どうやら何か調べ物をしていた様子だが、そんなことはお構いなしに話しかけた。

 

「霧島。」

 

「はい。どうされました、司令。」

 

霧島は見ていた本を閉じてこちらを向いた。

 

「大本営に行くぞ。ついて来てくれ。」

 

「はぁ?......了解しました。」

 

どうして連れて行くかの趣旨を言わずに俺はそう言ってしまったのでいまいち分かっていない状態の霧島を連れて行くことになった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺は警備棟に行き、武下に車の運転を頼んで大本営に向かった。

車内で俺は霧島に説明をするのだが、俺は武下の耳にも入れておこうと思ってわざわざ武下に頼んだのだ。

 

「それで司令。どうして秘書艦でなく私を連れて行くと?」

 

案の定、乗り込んで走り出した途端に霧島が訊いてきた。

 

「イレギュラーについて大本営の新瑞さんと総督に話すことになった。そのために霧島が付いてくるのに一番適任かと思ったからだが。」

 

「成る程......。」

 

俺はそう言って武下に声をかけた。

 

「武下大尉。」

 

「はい。」

 

「武下大尉にもこのことは話すべきだと思いますので聞いていて下さい。」

 

「了解しました。」

 

俺はそこで整理した内容を霧島と武下に話した。最初話したのは霧島と話をした内容の振り替えり、あとは俺だけが考えたイレギュラーに関する事だった。

話をしていくとみるみる霧島と武下の表情は険しくなった。

 

「イレギュラー......確かに横須賀鎮守府で起こった事は他の鎮守府では起こらなかった事ですが......。」

 

そう言って前を見ながら武下は言った。他のと言っているということは、武下は他の鎮守府の情報を持っているのだろう。

 

「司令が仰った事が本当でしたら、ゆくゆくは......。」

 

霧島は言いかけて言うのをやめた。たぶんその後に辿る未来を言おうとしたのだろう。

 

「ですが信じられませんよ。」

 

そう切り出した武下は続けた。

 

「こちらに合わせて装備を更新してくるなんて......。次はジェット戦闘機でしたっけ?深海棲艦にそれを開発するだけの技術力があるのか、そもそも開発機関の存在すら分からない状況ですのに......。」

 

「だが実際に富嶽級の大型戦略爆撃機は投入されました。」

 

俺はそう言って下唇を噛んだ。

もう戦闘にジェット戦闘機を投入してしまったんだ。ミサイルが運用できなかったのはせめてもの救いだと俺は考えるが、これからどうすればいいのか見当もつかない。だが確証があるのは、艦載機の更新は大丈夫だと言えることだった。

現状、最強の艦上戦闘機なのは烈風と震電改。赤城たちにカタパルトは存在しないので、離陸にかなりの距離を使うジェット機は運用できないのだ。艦爆や艦攻も彗星一二型甲と流星改で十分な火力は得ている。それに使っている艦載機をカスタマイズするのは問題ない可能性がある。それに賭ければいい話だった。

そうこうしているうちに大本営に着き、俺と霧島は総督と新瑞が待つ会議室に向かった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

会議室には俺と霧島の表情とは打って変わって、上機嫌の総督と新瑞が待っていた。

 

「おはよう。まずは、ありがとう。作戦が成功したそうだな。」

 

「はい。予定より少し遅れましたが、どうにか。」

 

俺はそう言って案内された椅子に腰を掛けた。

 

「今日は赤城や夕立ではないのだな。」

 

そう訊いてきた総督に霧島は自己紹介をした。

 

「金剛型戦艦 四番艦 霧島です。」

 

そう言って俺の後ろに霧島は引っ込んだ。

 

「して提督。今日の話とは何だね?手紙をわざわざ別に送って......。」

 

そう訊いてきた総督に俺は話を始めた。

 

「私がこの世界に来て5ヵ月が経ちました。それまでに経験してきた事、得た情報などを集約したんです。」

 

そう言うと新瑞は俺が送った手紙を見て聞いてきた。

 

「それを話すためにわざわざ来たのだろう?」

 

「そうです。」

 

そう言って俺は凄んで言った。

 

「結果から言いましょう。......日本皇国は深海棲艦との戦争を永遠と続けさせられる可能性があります。何故、そのように至ったかと言うと、5ヵ月間の間に考えられない様な事が起きました。」

 

「考えられない事とはなんだ。」

 

喰いついてきた新瑞は手紙を置いてこっちを向いた。

 

「最初は『ロスト』という単語が始まりです。着任してすぐ、我々の艦隊に所属する駆逐艦 夕立はロストし一週間後に座礁した状態で発見されました。『ロスト』という単語を我々は使いません。海域で艦隊から離脱してしまえばその時点で轟沈なんです。次はキス島の深海棲艦の行動の変化です。キス島へ出撃していた戦艦 長門の報告によると『深海棲艦が戦術を変えてきた。旗艦を丸裸にする戦術などしてこなかった。』との事。その次は工廠で本来ならば存在しないはずの艦載機の開発がされました。陸上機もです。幻の富嶽までもが完成形で開発されたんです。次に新瑞さんが鎮守府に置いて行ったF-15JとF-2。それらは工廠で解析され、遥かに性能の良い改良機が開発されました。最後は雷撃作戦中、艦隊を分担した『霧』です。」

 

そう俺が言うと新瑞は握った拳を震わせて言った。

 

「途中の艦載機の話は聞いてないぞっ!特に富嶽。アレさえあれば深海棲艦を全滅できるんじゃないのか!?」

 

そう言った新瑞に言った。

 

「まだ終わってませんよ。.......それだけじゃなかったんです。鎮守府への空襲。これも十分に考えられない事。」

 

そう言って俺は姿勢を正した。

 

「そして作戦終了後に鎮守府に飛来した高高度を飛行する爆撃機。哨戒に出ていた戦闘機が富嶽並みに大きな機体だった、と。」

 

そう言うと総督が肘を付いて言った。

 

「それだけでそう思い至った訳では無いだろう?」

 

「はい。深海棲艦は我々が装備を更新してくるとその後、装備を更新してくるんです。そして我々と同じことをします。つまり今現在最も考えられるのは......。」

 

そう言うと霧島が言った。

 

「ジェットエンジンを搭載した迎撃機が深海棲艦側に現れるということです。」

 

そう霧島が言うと新瑞は顔を青くした。

 

「なん......だとっ......。」

 

そう反応した新瑞に俺は畳みかけた。

 

「それに深海棲艦の方はどうやって作っているか分からないですが、我々よりもはるかに多い物量で攻めてきます。作戦終了後に飛来した爆撃機の編隊は護衛機合わせて約620機。こんな規模の編隊なんてありえませんよ。」

 

そう言うと総督は被っていた帽子をずらした。

 

「だから戦争が永遠と続くのだな。」

 

「そうです。我々は戦術や練度によって攻撃しますが、深海棲艦は物量です。お互い平行線のまま永遠と戦争を続ける、そう考えたのです。」

 

そう言って俺は腰にぶら下げていた軍刀を鞘ごと抜いて机に置いた。

 

「何をしているのだね?」

 

そう訊いてくる総督に俺は言った。これは霧島にも言わなかった事だ。

 

「ただ、深海棲艦に爆撃機もジェット機も無かった時に戻し、本土が安全になる方法があります。......私をこの場で殺す事です。」

 

俺はそう言って頭を下げた。

 

「現在運用されている艦娘へ指令を送るシステム、つまりこの世界を司る理は私をイレギュラーだと判断し、崩れた均衡を元に戻そうとしています。」

 

そう言って俺は顔を少し上げた。

 

「嘗てあった海軍本部は恐らく知っていたんでしょうね。こうなる事を知っていたから私の暗殺を企てた......。」

 

そう言いきって俺は再び顔を下げた。

その時、総督が立ち上がり何かを引き抜いた。

 

「提督をこの場で殺せば元通りなのか......。だが、それで提督はいいのか?」

 

そう言って総督は歩き出した。

 

「いや、提督が良い悪いではない。私たちは別世界の人間に戦争をさせてきた、それも未成年。未来のある青年だ......。」

 

そう言って総督は俺の方に歩いてきた。

 

「提督が言った事は正しい。ここで提督を殺せば元通りになるかも知れぬ。だがこの世界の人間に深海棲艦と戦う力が無い。経済大国と謳われた日本皇国は衰退し、貧困と飢えに苦しむ国民は今は幸せに暮らしているかもしれないが、提督の言う理に囚われ過ぎた。」

 

そう言って総督は俺の横で足を止めた。

 

「だから提督を殺す事など出来ない。国民の為に......。」

 

そう言って総督は俺の顔を上げさせた。

 

「大本営総督として提督に命ずる。横須賀鎮守府に存在するジェット戦闘機及び富嶽は廃棄、現状を維持しつつ海域奪回に尽力せよ。」

 





今回のはノーコメントで。何も後書きに書くことがないものですから......。

そう言えば第何話か覚えてませんが、提督が読んでいた本をハーメルンのオリジナル作品に投稿しようと考えてます。ですけど本作と同時進行になってしまうのでかなり先になりそうですが......。

ご意見ご感想お待ちしてます。

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