【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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番外編  俺は金剛だ!⑧ 『権力を持つ人はちゃんと選ぶべきだ』

 

俺がゆっくりと私室に籠っていると、突然ドアがノックされた。ゆったりしているのになんだよと思いつつ扉を開くとそこには腕章を付けた兵士が2人とその後ろにすっごい厚化粧だけど軍服を着たおばさん?が立っていた。

 

「何すか......。」

 

そう俺が頭を掻きながら言うと、厚化粧の人が扇子を仰ぎながら言った。

 

「顔も整ってるし、身体つきも最高......気に入ったわ!」

 

そう厚化粧の人の鶴の一声で俺は腕章を付けた兵士に両脇から拘束された。ちらっと見たが腕章には『憲兵』と書かれている。しかも両方とも顔を紅くして鼻息が荒い。黙っていれば寡黙な女性だと言うのに、その行動が唯の獣に変えてしまう。

怖すぎるっ!!

 

「いきなりなんすかっ!?拘束して?!」

 

そう俺が暴れながら言うと厚化粧の人が広げていた扇子を閉じて俺のあごへやった。ツツツと伝っていくその感触は気持ち悪い。

 

「あら?海軍大将様が貴方を貰ってやると言っているの。貴方にそれを拒否する権利は無いわ。」

 

そう言ってつんつんと突いてくる。

そんなことをされてイライラし始めたが、どうにかしてこのク[自主規制]から解放されたい。初見で俺の本能が危険だと訴えているのだ。これなら足柄に絡まれていた方が楽だ。

 

「そうすか。......俺はここの所属なんすけど、いきなり変えれるものなんすか?」

 

俺は下手な敬語でそう言う。ちゃんとすればそれなりの敬語も言うけど、この場面ではワザと言っているのだ。

 

「変えれるわっ!何て言ったって私は海軍大将様よ!士官学校を首席で卒業、任官後も異例のスピード出世、若くして海軍大将になったわっ!」

 

俺は『何言ってんの厚化粧ババァ』と言いかけたのを飲み込んで笑った。

 

「そうなんすかっ!凄いっすね。」

 

「そうよっ!だからここの階級の低いお子ちゃまが動かしている鎮守府の貴方も私が移籍させられるわっ!」

 

そう言って連れている他の憲兵の肩をバシバシと叩いている。何という醜い......と言うのもこの厚化粧ク[自主規制]はダルマみたいなのだ。体系で人を判断してはいけないとか言うが、これはあまりにも酷い。まず第一印象が最悪なのだ。

 

「んでもお断りします。俺、ここがいいんで。」

 

そう言って俺は扉を閉めようとした。ちなみに既に両脇から拘束していた憲兵は離れている。

 

「何よっ!私が貴方が欲しいと言っているのっ!」

 

そう言って俺が締める瞬間に扉の隙間に扇子を挟んできてそう訴えてきた。うっとおしい、その言葉に尽きる。

 

「俺は欲してないっす。」

 

そう言って締める力を強めて行くと、あっちは押し負けたのか扉がピシャリと閉まった。

 

『ここを開けなさいっ!』

 

「嫌です。お引き取り下さい。」

 

俺はチェーンを掛けつつそんなことを言ってダラダラしていた位置に戻った。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

海軍大将様(笑)を追い返して、グダグダしていると昼の時間になったので俺は昼ご飯を食べに食堂に来ていた。

ここに入ると俺の鼻腔を美味しそうな匂いが刺激する。匂いがより一層俺の空腹を加速させるのだ。そんな中、見たくない顔が居た。

海軍大将様(笑)だ。さっきと変わらずに憲兵を連れている。どうやら食事中の様だ。

 

「クソッ......見たくねぇ。」

 

俺はそう呟いてなるべく離れた場所の席に座ると、食事を始めた。俺の口に運ばれていくおかずたちはどれもとてもおいしい。どっかの高級な店に来たんじゃないかというレベルだ。店出せるぞ、間宮さん。

そんな事を考えていると俺の左側に座っていた艦娘が話しかけてきた。

 

「奇遇ですね、金剛君。」

 

俺に話しかけてきたのは翔鶴だった。

 

「おぉ、翔鶴。勝手に隣座ってごめんな。」

 

「いえ、気にしてませんよ。それより後ろの海軍大将、金剛君を狙ってきたのでしょう?」

 

そう言って翔鶴が顔を傾けて目を合わせないようにそちらを見た。

まぁ、翔鶴の言う通りなんだが。

 

「そうだが、どうかしたか?」

 

「いえ......あの人、結構悪い評判があるんですよ。」

 

そう言って俺の方を見て話し始めた。

 

「あの人、悪事を階級で握りつぶしたりするらしいです。横領、賄賂なんて何時もの事らしいです。それに誘拐もやったって噂です。」

 

そう言って翔鶴は眉をひそめた。

 

「金剛君を連れて行くのは私欲なんでしょうけど、多分人形にされてボロボロになったらどっかのお店に売られるんですよね。」

 

そう言って翔鶴は言うが、すぐにご飯に視線を戻した。

 

「と言っても噂にすぎません。ですけど、さっきもあの人に連れて行かれそうになった様子ですから次は演習で勝ったら寄越せとか言ってくるんですよ。」

 

そう言うと、俺は気になった後ろを振り向いた。

その海軍大将様(笑)が丁度、白瀬さんと話をしている様子だった。白瀬さんは眉間にしわを寄せて、海軍大将様(笑)は扇子を振って笑っている。あの手の人間がする行動だ。どうやら翔鶴の言った通りの様だ。

 

「今しがたその演習が取り付けられたみたいだ。」

 

「そうですか......。誰が呼ばれてもいいようにしておきましょう。私はこれで戻りますね。」

 

そう言って翔鶴はトレーを持って食堂を出て行ってしまった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

「て訳で演習することになった。」

 

「いや、前のセリフないからな。意味わからないから。」

 

とメタいツッコみを入れておいて、本当に演習することになった。

翔鶴の言った通りで、あっちが勝ったら俺を連れて行くらしい。そしてこっちの勝った時の要求はというと......。

 

「こっちが勝ったら前哨任務をあっちに丸投げして、資源調達もあっちから分捕り、バケツを1000個ほど要求した。」

 

と澄まし顔で白瀬さんは言った。

 

「そんなのによく乗ったな[自主規制]も。」

 

「あぁ、『海軍大将様(笑)が佐官から上に行ってない鎮守府に演習で負けたら笑いものですね。』って煽ったら乗った。」

 

「おい。曲がりなりにも上官だろうが。」

 

白瀬さんもなかなかアレだが、乗る[自主規制]もアレだ。何というか、すごくフリーダム。本当に国家機関なのかと疑いたくなる適当さだ。

 

「それでこっちが出す艦隊だが、旗艦は金剛に任せる。」

 

「どっちの金剛だ?」

 

「無論、男のお前だ。」

 

そう言った白瀬さんは俺に編成表を見せてきた。

 

「水上打撃力を重視した海域攻略で使う様な編成にした。まぁ、金剛と交流のある艦娘しか選ばなかったから。」

 

編成表には俺以外に比叡と武蔵、足柄、夕立、翔鶴と書かれていた。確かに俺と交流と言っていいのか分からないが知っている艦娘だが......夕立なんかはさっき話したくらいだけど?

 

「分かった。何時からだ?」

 

「今から行ってこい。」

 

「了解。」

 

俺はそう言って白瀬さんに編成表を返すと、ドッグに向かった。俺がその場を離れる時、白瀬さんが呟いていた言葉が聞こえていた。

 

「ふふっ......馬鹿め。ウチの艦娘を舐めて貰っちゃ困る。」

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺は艤装を身に纏って海上に出ると既に艦隊は集まっていた。

 

「お兄様っ!絶対勝ちましょうっ!」

 

そう言ってガッツポーズする比叡。

 

「金剛君は渡さないわっ!」

 

と言ってドヤ顔する足柄。

 

「悪い娘にはお仕置きね。」

 

と魚雷を発射管から抜いて手に持っている夕立。

 

「勝ちましょうね。」

 

落ち着いた雰囲気で笑っている翔鶴。

 

「相棒を奪う奴なぞこの武蔵が返り討ちにしてくれる。」

 

と俺の肩に手を回して笑っている武蔵。いつの間に俺は武蔵の相棒になったのやら。

 

「おおぅ......取りあえず行くか。俺もあんな[自主規制]のところに行きたくないからな。白瀬さんの方がいい。」

 

そう言って俺は開始のブザーがなるのを訊いて、動き出した。

ちなみにあっちの編成は訊いている。旗艦は大和。こちらにいる大和とは違うらしい。それ以下は伊勢と日向、北上、大鳳、加賀。ガッチガチの攻撃特化らしい。全く分からないが。

 

「あっちの大和は私が引き受けよう。あいつの大和は好かん。」

 

そう言って武蔵は自分の艤装の46cm三連装砲を撫でた。どうやら会ったことがあるらしい。

 

「制空は取れるか分かりませんが、こっちはそれを想定済みです!」

 

翔鶴は矢を放って艦載機を発艦していた。飛び立つ艦載機にはどれも腹に何かしらも抱えていない。それに俺の記憶する零戦とは似ても似つかないシルエットをしていた。

 

「あれは何だ?」

 

「烈風ですよ。提督が全艦載機をこれに変えておけと。私も言われなかったらそのつもりでしたし。」

 

そう言って翔鶴は最後の矢を放った。これで発艦できる艦載機は全て発艦したらしい。

他の僚艦も皆、戦意高揚しているらしく、その中で夕立が浮足立っている。マジで怖い。

 

「ふふふっ......あははっ......あははははははっ!!」

 

「何か目が光ってるんですけどっ!?」

 

足柄曰く、興奮状態らしい。

 

「低速艦相手に遅れは取りませんっ!伊勢と日向なんて赤子の手を捻るようなもんですよっ!」

 

「私も加勢するわっ!序でに雷巡も駆るわね!」

 

そう言って比叡も気合十分の様だ。

 

「よしっ!戦術なぞ知らんっ!空は翔鶴が取ってくれるっ!存分に暴れよう!!」

 

「「「「応っ!!」」」」

 

全速の単縦陣で突っ込む体勢に入ったが、よく考えたら俺の獲物はなんだ?まぁ艦載機を飛ばして武蔵達が引き離させた空母たちを駆ればいいか。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

「こちらは大将様の艦隊です。」

 

「誰に言ってるんの?」

 

大将様に言われて急遽、演習することになりました。演習相手はつい最近あちこちで話題になっている鎮守府です。どうやら男がいるらしいのですが、その男を掛けて勝負することになりました。

戦う女の園に男がいるなんて訊いた事ありませんが、演習で勝てば男がめでたくこちらの鎮守府に来るということで皆、楽しみにしています。

相手は訊いた事も無い提督の鎮守府。下っ端として働いているみたいですが、我ら大将様の艦隊に勝てる訳がありません。

大規模作戦では中核を担い、いくつもの棲地を奪還してきた鎮守府です。そんな鎮守府相手です。

 

「皆さんっ!張り切って行きましょうっ!!」

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

獅子奮迅で突き進む武蔵達は凄いの一言しか言えなかった。最初の航空戦で翔鶴は相手の艦爆・艦攻隊を撃破、護衛の艦戦隊と乱戦になり、事実上制空権を確保した。

艦隊を視認すると比叡を先頭に翔鶴の護衛に足柄と夕立を残して俺と武蔵が吶喊した。

最初の宣言は何だったのかと思いつつ、艦隊が見えるようになると相手は動揺をしているように見えた。

 

「うそっ!?艤装を背負ってるっ?!」

 

「そうか......。」

 

そう言っているのが聞こえるが、俺たちとしては関係なかった。

俺はあんな[自主規制]のところには行きたくないし、仲間もその気持ちを汲み取ってくれているはずだ(※主人公は勘違いしています)。

 

「一斉射っ!ってぇーー!!」

 

艤装の砲から砲弾が一斉に吐き出される。その砲弾は弧を描きながら飛翔し、着弾。

装填が終わればまた砲撃をする。そして飛んでくる砲弾を回避するのだが、俺の方に何故か飛んでこない。

 

「旗艦が彼なら撃てないっ!」

 

「全滅させるしかないのかっ?!」

 

そう肉薄してきていた伊勢と日向が言っている。ちなみに俺は比叡に加勢して低速戦艦を相手にしていた。

 

「私は空母を叩くっ!」

 

そう言って離れて行った武蔵の居たところを見ると、ペンキだらけで放心しているあっちの大和が立っていた。

早すぎじゃないかと内心思いつつ、俺は目の前に集中した。

 

「比叡っ!日向を抑えろっ!」

 

「はいっ!」

 

俺は比叡に日向を抑えてもらい、伊勢と対峙した。

 

「はぁ~!貴方を手に入れて見せるっ!(キラキラ)」

 

そう言って凄んでいる伊勢に俺は向けていた砲を元に戻した。

 

「えっ?なにっ?降参??んふふ~!頂きねー!」

 

そう言ってあっちも砲門を逸らしてこっちに来るのを俺は両手を広げて待った。

 

「やったー!!............あっ。」

 

俺はこっちに走ってくる伊勢が見ていないのを確認すると、主砲を一基だけ腹の前に出していた。そして今、その砲門が伊勢の腹を捉えている。

 

「馬鹿だなぁ......。降参する訳ないだろうっ!!」

 

そう言って砲弾を放った俺は、伊勢に着弾して飛び散った返りペンキを浴びて離れた。

ちなみに伊勢も砲撃を喰らって放心している。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺が伊勢を撃破して数分後、翔鶴に接近していた北上を夕立が撃破した事でこちらが勝った。

俺は一度集合場所に集まってみると、皆被弾はしているが損傷大には至らないところばかりに当たっていたのだ。夕立に至っては被弾すらしていない。

 

「勝ったな!」

 

そう言って喜んでいるところに白瀬さんがやってきた。

 

「お疲れだ。お蔭で資材と高速修復材、面倒な任務から解放された!」

 

そう言って俺の肩をバンバン叩く白瀬さんに皆がツッコんだ。

 

「「「「「「そっち?!」」」」」」

 

「勿論。私の艦娘が負ける訳が無いからな......。海からポコスカ撃つ艦隊と、露払いや偵察、なんでもやってきた私の艦隊、強いのは明白だろう?」

 

そう言って胸を張ってドヤ顔をする白瀬さんを見て少し俺は見直した。結構、考えてくれていたんだと。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

「むききっ!!悔しい、悔しいわっ!!!何でこんな雑兵艦隊に負けたのよっ!」

 

俺たちの目の前でそう怒鳴り散らしている[自主規制]を俺たちは眺めていた。この光景、かれこれ20分もやっているのだ。しかも初めから同じことしか言ってない。言葉のレパートリーの少なさを見てみると本当に優秀だったのか疑わしいが、見ていて面白いので俺たちは遂に紅茶を飲みながら眺めていた。

 

「長いな。」

 

「あぁ。」

 

俺と白瀬さんはそんな事を言って座っているが、かなり近くで椅子に座って紅茶を飲んでいると言うのに気付かないあたり、軍人なのかも怪しい。

 

「そういえば。」

 

「む?」

 

俺はティーカップを置いて白瀬さんい訊いた。

 

「要求した資材はどうなった?」

 

「あぁ。それなら今頃、あの海軍大将様(笑)の鎮守府からこちらに向かっているだろうな。」

 

そう言ってニヤニヤする白瀬さんを見て俺はティーカップを持ち、飲んだ。

 

「あっ、無くなった。......金剛?!、おかわりっー!!」

 

「ハーイ!!」

 

この光景、傍から見たらかなりカオスだろうな。そう俺は思った。

 





唐突の番外編っ!
自分は何にも言いませんよ?それと[自主規制]の様な上司を持ちたくないデス。

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