【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第百七話  三つ巴①

新瑞さんから届いた手紙を見る良い機会です。提督もタイミングよく私に『特務』を命じて下さいました。

私は艤装の中でその手紙を開きました。

 

『内容、拝見させていただきました。確かに大本営、私たちこの世界の人間は異世界から来た提督に重い責任を負わせていた事には気付いておりました。ですので、それなりの恩恵や融通を聞いては来ましたが、やはり歳を考えるとそうでありましたか。

私としても戦中・戦後の提督の扱いは頭を悩ませており、方針が決まっておりませんでした。まさか艦娘の方から持ちかけられるとは思いませんでしたが、提督を傍で見ていらっしゃる赤城さんをはじめとする艦娘の方々の意見を取り入れていきましょう。

私はその足掛けとして、赤城さんのサポートをしましょう。』

 

そんな内容でした。

要するに、新瑞さんは協力してくれるということです。あちらも同じことを考えていたのなら好都合です。

私は満足しました。大本営の協力を取り付けたのなら、これ以上の力は無いでしょう。

 

それと、私だけで資源を集めるのは難しいので協力を得ました。加賀さんです。何故こういうことを始めたかというきっかけは伏せさせてもらいましたが、加賀さんは快く手伝ってくれると言ってくれました。それにあたって、資源を隠す予定の小屋と新瑞さんから受け取ったものを見せます。

 

「ふーん......新瑞さんねぇ。」

 

そう言って加賀さんは渡した手紙を読んでいます。

 

「分かりました。私にも『特務』が頂けるように提督に口添えをお願いします。『特務』で出る海域に点在する資源採掘場で持って行ったドラム缶に詰めて来ればいいんですよね?」

 

「はい。お願いしますね。」

 

私は加賀さんが読み終わった手紙をそう言って渡してきたので受け取りました。ですが、加賀さんは難しい顔をしています。いつも仏頂面ですが、私は相部屋ですので分かります。

 

「ですが空母2人だと辛いですね。」

 

そう言うと加賀さんは私室の畳に座った。

 

「どうしてですか?」

 

「私たち空母は資材回収に長けてません。駆逐か軽巡にも協力を仰ぐしか効率よく資材は集まりませんよ?」

 

そう言われて見た物の、それは私もとっくの昔に考えています。今は誰を選ぶかというリストアップの最中ですけどね。

 

「それに関しては私が選んでいます。まだ声はかけてませんけどね。」

 

そう言って私は名簿を渡しました。これは秘書艦だから出来る事ですね。こんな形で提督の信用を使うとは、少し罪悪感が......。

 

「成る程ね......。赤城さんの選んでいる艦娘は......うん、誰も提督への思いが強い娘ね。」

 

そう言う加賀さんも近衛艦隊に居たじゃないですかと言いかけたのは黙っておきましょう。

 

「だけどあの娘は居ないのね。」

 

「誰ですか、あの娘って?」

 

私がリストアップして一番協力してくれそうなのは夕立さんと時雨さんです。彼女たちは公私両面を提督に信用されています。今のところ提督が良いと言って私室に入れるのは彼女たちだけですからね。秘書艦であれば起床時に入室は許されてますが、他の娘は提督の許可が無ければ入れません。勝手に提督の私室を出入りできる彼女たちなら提督の為に私に協力してくれるかもしれません。きっと加賀さんも夕立さんと時雨さんの名前を挙げると思っていました。

 

「鈴谷さんです。」

 

加賀さんの口から驚きの名前が出た。資源回収に長けている軽巡や駆逐とさっき自分が言ったばかりなのに何故いきなり重巡の鈴谷さんの名前を挙げたのでしょうか。

 

「何故鈴谷さんなのですか?」

 

そう言うと鈴谷さんから信じられない言葉が出てきました。

 

「鈴谷さんも赤城さんと同じような事をしていますよ?随分と昔から。」

 

そう言った加賀さんは鎮守府の酒保がまだ大きな建物になる前に売っていた小さい手帳を出しました。ボロボロとはいかないものの、使い込まれています。

そんな手帳のあるページを開いて加賀さんは訊いてきました。

 

「『近衛艦隊』が何日か置きに集まって話をしていたのは知ってますよね?」

 

「えぇ。」

 

私が答えると加賀さんは読み始めました。

 

「ある日、集まって話をしている最中に鈴谷さんが『提督の為に外へ出るときに必要なものがあるじゃない?それを集めるのも始めた方がいいと思うんだよね。鈴谷は先に始めてるけど、やる人は言ってね。』と言ってました。これはつまり赤城さんがやろうとしている事に近いのでは?」

 

「そうですね......ですけど、私は提督の為に一刻も早く戦争を終わらせて、帰るところのない提督の為に何かをしようとしているので.......。」

 

そう言うと加賀は首を傾げた。

 

「そうなんですか?彼女も資金の調達、外とのパイプを得るなどやっているそうですよ?」

 

そう言って加賀さんはページをペラペラと捲っていってます。

 

「だけど......まさか赤城さん。」

 

そう言って加賀さんはあるページで捲るのを止めてそのページを私に見せてきました。びっしりと書き込まれた文の中にある一文を見て私は驚きました。

 

「携帯火器やパソコンを先行して手に入れようとしてませんよね?これらは提督が私たちが持っていてはいけないと言ったものですよ?」

 

私の頭の中は一瞬にして真っ白になった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

鈴谷は今日も補給トラックが荷下ろししているところに来てるよ。

いつも間宮さんが食料を受け取ってる最中、鈴谷は補給トラックに乗ってくる運ちゃんと話をするために来てるんだ。

 

「鈴谷さん、はい。」

 

「あざーすっ!」

 

「それにしても偉いねぇ。」

 

「んー?何が?」

 

鈴谷は意気揚々と手紙を見ようと封筒を開けると、運ちゃんは話しかけてきた。

 

「提督の代わりに『官給品』の受け取りだなんて。これ、噂だと危ないものとか入ってるんだろう?」

 

「そだよっ!なんだっけ?......拳銃の弾とか?」

 

そうなのです。鈴谷が受け取っているのは官給品です。でも一般的に言われる官給品ではないのです。

毎日受け取る官給品にそんなしょっちゅう拳銃の弾が入ってるわけないじゃなくて、これは偽装だよ。でも、拳銃の弾が入ってるのは間違いじゃないんだよね。携帯火器と部品が入ってるんだよね。

 

「でも驚きだよ。提督への官給品だけ特別扱いなんだろ?何でも、あの大本営の総督が中身を指示しているだとか......。」

 

「まぁね~。」

 

そう、鈴谷の協力者の一人は大本営の総督なんだぁ。

鎮守府に2回くらい来てるからその時に直接頼み込んでるんだよね。頼み込んでる時期が丁度、鎮守府と人間とがギスギスしてる時期だったから案外話もとんとん拍子で進んだんだけどね。

 

「じゃあ荷下ろし終わったみたいだからもう行くよ。じゃあね。」

 

「うん!ばいばーい!」

 

鈴谷は運ちゃんから受け取った『官給品』の箱を持って提督が見えるとこに行きます!

今日の分が届いたということはアレが完成するんだよねぇ。にひひっ。楽しみだなぁ。

 

そう言えば今日、官給品の中に手紙が入っていたよ。まぁ入れたのは総督だろうけどね。

手紙曰く『新瑞のところに赤城から提督の事に関しての協力要請があったけど、鈴谷の仲間かい?』だそう。んー。鈴谷に身に覚えはないけど、同じ動きをしているのならあっても不思議じゃないねぇ。

取りあえず保留。

 

まだあった。どうやら金剛さんの作っている地下のトンネルが完成したみたい。物を運んでる姿を見たからねぇ。鈴谷も是非その部屋使いたいけど、いいかな~。提督の本意は知らない筈だからね。教えたくないし。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

トンネル奥の部屋にはまだ封の空けてない集音機や偽装の為の造花とかが置いてありますが、今日はそれを使います。

先ほど、コンセントの設置が終わったらしいので妖精さんと一緒に集音機の設置、造花で偽装をする作業をします。と言っても、まだそれしかないので後で机と卓上ライト、ファイル、筆記用具、床にはトンネルの支柱で余った木材を敷きましょうか。

言い忘れてましたが、夜などは私室を抜け出してここで情報収集したものを整理したり、これまで作った見取り図を全て貼り合わせたりします。これの設置が終わればすぐに始めましょう。

 

「妖精の皆さーん、私は机を取ってくるので機械の開封と組み立てをお願いしますネー。」

 

「「「「「はーい。」」」」」

 

私はこれから机を買いに行きます。多分酒保で売ってるので皆が使わない入り口から入ってすぐにここに戻ってきましょう。

もう直ぐです。すぐに情報収集が出来ます。

それと、全ての準備が終われば私室の私の机に隠してある現金を持ってきて外へ少し買い物に行きます。そのために私服を持ち出しておいてあるんですからね。まぁ、機械の箱の上に袋に入れた状態であるだけですから後で別の場所に移さないといけませんが。

 

(これでまた一歩ですね。)

 




今回のシリーズからは提督の視点がほとんど入りません。全て赤城、鈴谷、金剛の視点で行こうと思います。協力者や居る場所で誰かは分かると思いますが、一応後書きには誰の話か書いておきます。ちなみに今回のは順番に赤城、鈴谷、金剛です。
いちいち『○○side』とか書きたくないですからね(←本音)

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