【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第百二十五話  operation"typhoon"⑤

 

夕食時、全員が集まった食堂で提督から明日から作戦再開の知らせがありました。

編成は変わりません。ちなみに言えば、様子はいつも通りに戻っていました。

 

(一応、心配ですね。あんな提督は初めて見ましたから......。それと、会議はもう無しですね。)

 

私はそう考えました。

 

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夕食後、皆がお風呂に入る時刻、私の部屋に金剛さんと鈴谷さんが来ました。たぶん、夕方の事でしょう。

 

「赤城、あれは一体どういう事デース?」

 

そう金剛さんは私に言いました。

 

「以前に提督に何をしているのか問い詰められた事があったんです。」

 

「何をしているかって?」

 

「私たちのしている事、全て提督は知ってますよ?」

 

そう言うと金剛さんも鈴谷さんも驚いた。無理もないでしょう。隠し通せていると思っていたでしょうから。

 

「どういう事デース!?誰かが漏らしたデスカ?」

 

「いいえ、それは無いと思います。何故なら私たちが結束する前から知られていましたからね。」

 

そう言うと今度は鈴谷さんが言いました。

 

「それホント?!あ~あ......。」

 

「いえ、鈴谷さんのは最近分かったみたいですよ?パソコンと銃器所持の事を仰ってましたから。」

 

私はそう言って姿勢を正しました。

 

「もうなりふり構って等居られません。夕方の提督を見ましたよね?」

 

そう言うと金剛さんも鈴谷さんも頷きました。

 

「きっと提督は敏感なんですよ。提督の過去にかなり酷い事があったらしいですからね。」

 

そう言って私に提督が話した事をそのまま金剛さんと鈴谷さんに話しました。

 

「......酷過ぎデスっ。」

 

「よってたかってって感じ?」

 

「そんな風に聞こえました。」

 

金剛さんも鈴谷さんもゲンナリした表情をしました。

 

「......鎮守府も似たような感じだし、ソレと連想されても仕方ない様な......。」

 

そう鈴谷さんは呟きました。確かに似ているかもしれません。提督の仰っていた通りなら、警備棟やらがあるのを考えずに行けば提督と艦娘ですから。

ですけど、提督の周りで起きていた事はここでは起きないと私は自信を持って言えます。ですが、提督は私たちの行動がソレを連想させたという事に関して見れば、起きないと分かっていても疑心暗鬼にはなってしまうのも仕方ないと思います。

提督自身、『提督への執着』に関しては知っているはずですし、そんな提督を排除しようだなんて動きはまず鎮守府内で起きるとは思えません。

 

「そうです。ですから、私たちは早急にこの話を残りの9人に伝えなければなりません。提督に知られてしまった事と、実力行使されてしまうという事を。」

 

そう私が言うと、金剛さんと鈴谷さんは立ち上がりました。

 

「じゃあ集まるのは今日はやめた方が良さそうデスネ。......個々に連絡していくという事デ。」

 

「鈴谷も。」

 

「はい。よろしくお願いします。」

 

そう言って私たちは解散した。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺は警備棟の応接室に来ていた。巡田を呼んで、話をすることなっている。

 

「すみません、遅くなりました。」

 

「いえ。」

 

巡田さんは何時もの服に身を包んで、現れた。

 

「『尋問』はどうなりましたか?」

 

「駄目でした。」

 

そう言って俺は肘をついた。正直、もう参っている。

 

「途中、感情的になってしまいましたが......。」

 

「そうですか。」

 

俺は協力してもらっているからという理由と、半ば愚痴を聞いてもらっているつもりで話している。

 

「それと金剛と鈴谷が乱入してきてしまって、うやむやに......。」

 

俺はどうしようかと考えを巡らせた。一瞬、今発動中の大規模作戦を中止する事も視野に入れたが、今が好機だというのは確実だったので中止しなかった。

 

「それで......赤城さんへの牽制に?」

 

「多分なりました。巡田さんの情報は正しかったようですね。」

 

「それは良かった......って、良くないですね。」

 

「はははっ。」

 

軽く冗談を言ってくれるのはありがたい。

 

「だが、強く言えなかったのが悔しいです。」

 

「?」

 

「頑なに何を目的にしているかというのを吐かなかったんですよ。ですが、俺関連だと言うのは分かりました。」

 

そう言うと巡田さんは考え始め、ある答えを俺に突きつけてきた。

 

「提督関連でしたら......『反乱』とかしか思いつきませんね。ですけど、それは最もあり得ないです。」

 

「『反乱』ですか?......それは止めてほしいです。」

 

俺はそう笑って流したが、内心笑って等居られない。

もし本当にそうなら、古参組のほとんどを占めているあちら側に対抗できる手段が無い。というかそもそも『提督への執着』があるのにも関わらず、どこに『反乱』をすると言うのだろうか。鎮守府の外、大本営に協力を取り付けているのにも拘らず、大本営への反乱だったら滑稽極まりない。

だがある事を思い出した。赤城が大本営に向けて出した手紙の内容だ。あれから俺はあの手この手で調べ、情報を手に入れてきたが、全ての現況のヒントはあの手紙にあるのではないかと思った。

 

「ですよね......。」

 

そう苦笑いする巡田に一応、次の潜入を考えているなら今日の様に入る前にメールを送ってほしいとだけ言って俺は警備棟を出て行った。

 

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ーーー

 

 

霧島と熊野、叢雲が置いて行った具体的な最後の情報。赤城の手紙を俺は読んでいた。

内容は新瑞への俺の待遇改善に関する事。やはりそれ以上分かる事は無かった。だが、彼女らの目的のヒントになっている事は確実だ。

 

(待遇改善......俺はこれまで大本営の俺への見返りは不足に思ったことは無いが......。)

 

そう思いながら、何度も手紙を読み返す。

 

(やはり『提督への執着』を越えた行動をしているのは確かだろう。それを越えなくてはならない理由......?)

 

俺は思い出せる記憶を全て思い出して、しらみつぶしに考えた。所々抜けている部分もあるが、ある一つの事が気になった。

赤城と共に何かをしている艦娘にイムヤが居た。

番犬補佐艦隊として執務室に居たイムヤに俺はある事を言われていた。

 

『『辛い』って思った事、ある?』

 

『でも『寂しい』って思う事はあるでしょ?』

 

『『大半の艦娘は気付いてないわ。今のこの鎮守府での生活をなんも疑問に思ってないもの。』』

 

思い出せて且つ、関係のありそうなイムヤの発言はこれだけ思い出せた。

それらを組み合わせて導き出される答えはある。

 

(『辛い』、『寂しい』、『大半の艦娘は気付いていない』という事は、イムヤ、赤城たちは『気付いている』という事になるな。)

 

思考を巡らせる。

 

(あの後、イムヤに考えてみたらどうだって言われたな......っ?!)

 

俺はその後の会話を思い出すまで一生懸命に考えた。その結果が今出た。

 

(赤城たちは俺が『寂しい』と思っている事を知っているという事か?!)

 

俺は立ち上がり、執務室の中を歩き始めた。

 

(『辛い』と訊かれて俺は『責任』と言ったな......という事は、俺が『責任』を誤魔化して、目を背けていた事も知っているのかっ?!)

 

次々と仮説が浮かび上がってくる。

 

(イムヤと話し終わった後、俺は何かを考えていたな......受験かっ?!)

 

机に置いてあった数学Ⅲの参考書を手に取り、更に思い出した。

 

(確かこの本に興味を持ったのは赤城だけだ。その赤城に俺は何て言ったんだ?)

 

「将来使うんだ。.......だがもう必要ない......っ?!」

 

赤城たち艦娘は読み書きと道徳は備わっていると言っていた。なので勉強に関しては皆無の可能性がある。そしていつの日か長門が『学校とは?』と言っていた事も思い出した。つまり艦娘は学校を知らない。

俺は赤城に何に使うかと聞かれて『将来使うんだ』と答えた。『将来』という単語の意味を知らない筈がない。俺はそれを訊かれた後に『だがもう必要ない』と言っていた。

 

「まさかっ?!」

 

俺は考えられる事を総動員してある回答に辿り着いた。

 

『赤城たちは何かを理由に俺の『将来』がどうのって考えているのか?読み書きと道徳しか備わっていない艦娘たちが持っている知識をフル動員した結果が、資材の溜め込みと売却、新瑞との内容のよく分からない手紙、仲間を集め、銃器、パソコンを違反だと分かっていながら所有し、使おうとしている。』

 

そして考えている最中に叢雲が俺に話に来て、途中失神した事を思い出した。俺はあの時も『寂しいと思ったことは無い?』と聴かれ、問い詰められ、叢雲に『......家族と友達が居ない事だ。』と答えていた。

 

『赤城たちの目的は俺の寂しさや責任を軽減させる事か?』

 

そう最後に至った。

自惚れだが、これが一番有力だと俺は思った。

そしてさっき整理し、回答だと考えていた事に疑問を抱いた。

じゃあ何のために資金収集まがいな事をして新瑞と連絡を取り、仲間を集め、銃器やパソコンを手に入れたのか。

目的の仮説が立ったがその代りに行動が不自然に思えた。俺が艦娘の立場なら責任なら現状、秘書艦や事務棟や何かと分担しているところがある。寂しいと思うなら家族や友人はいないが、せめて傍に居る。と考えるのではないか?

 

(目的は仮説立てれたけど、これじゃあ変わらないじゃないか。)

 

そう思い、俺は私室に戻ってベッドに倒れ込んだ。

 

「そうは言っても、目の前には大規模作戦がある。そっちに集中しなくちゃな......。」

 

そう自分に言い聞かせて眠りに入った。

 





前回の投稿でご感想を書いて下さった皆さん、ありがとうございました。
感想というより考察が多いのは何時もの事ですが、色々聞けてうれしかったです。

と本題に入りますが、提督が謎の推理スキルを発動して目的に辿り付きました。が、目的のためにしている行動が理解できないという事態に陥ってしまいました。
うん......まだまだ続きます。
シリアスが辛いと仰って下さった皆さん、まだまだ続きます。ですが、丁度いい節目ですね。これを機に第二章に突入しようと思います。

第二章はどうなる事やら......。

ご意見ご感想お待ちしてます。

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