【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第百三十九  抗議団体の一掃は艦娘ではなく大本営でもなく......

 今日も正門には抗議する団体が来て、抗議をしていた。

内容はいつも通りで、正直面白くない。どう面白くないかというと、レパートリーが無さ過ぎて面白くない。

大体が、鎮守府の一般開放と艦娘に関する情報開示。内容に関してはどうやら一般の前に出た艦娘以外にはどんなのが居るのか。前回行われた文化祭(仮)では厳しい身体検査や持ち物検査などをクリアしてないと入場できず、怪しまれた人間はすぐに追い出されたという。つまり、艦娘をもっと知りたいという事らしい。それは大本営としてもいいイメージアップに繋がるが、それを訴えている人間には不信感を募らせているのはこちらと同じようだ。

 というか、昨日、全員逮捕したと言うのに昨日と同じ規模で抗議が行われているのにはどういう事か分からないでいた。

 

「今日もやってるのか。」

 

「そうみたいだね。」

 

 今日の秘書艦である最上は俺のつぶやきに答えた。

 

「昨日全員捕まえて大本営送りになったんでしょ?なのにまたこんなに集まったんだ。」

 

「そうなんだよ。ったく......。どうしたものかね?」

 

 そう俺が言うと最上はさっきまでいた秘書艦の机から離れ、俺の前に来た。

 

「僕にいい考えがあるよっ!」

 

「どんなだ?」

 

「あえて中に入れるんだ。」

 

「は?」

 

 俺は耳を疑った。何故、嫌がるはずの艦娘である最上がそんな事を言い出したのか。

 

「でも条件を付けるんだ。」

 

「どんなだ?」

 

「手荷物は全て預かりで、身体検査と金属探知機を通って貰ってから誓約書を書かせて指印して貰ってから門兵さんの監視付きで入れるんだ。」

 

「手荷物と身体検査、金属探知機でほぼすべてのモノを預かるのは分かったが、誓約書って何書かせるんだ?」

 

 そう俺が聞くと最上は凄い笑顔だが、とんでもない事を言った。

 

「『もし私が提督の執務や艦娘の仕事を邪魔した場合、銃殺されてもいい。』ってね。」

 

「最上......。」

 

「って書かせて鎮守府の施設は全部閉じて鍵締めして何処も入れないようにするんだけどね。僕たち艦娘は本部棟と艦娘寮は行き来できるようにするってのはどう?」

 

「まぁ良いが、あいつらの目的は艦娘だぞ?ただ道歩かせるだけでいいのか?」

 

 俺がそう訊くと最上は首を横に振った。

 

「それだけじゃないんだよね。提督にも協力してもらうけどいい?」

 

 最上が提案してきた。

 

「提督は本部棟と工廠を行き来してもらうよ。その代り、番犬艦隊と金剛さん、赤城さん、朝潮をつける。」

 

「その意図は?」

 

「艦娘を見かけたら彼らは何かしらのアプローチをするはずだよ。そして何かアプローチをしてきたら、門兵さんに脅してもらう。」

 

 俺は溜息が出た。最後のは多分、脅した後に地下牢送りにするんだろう。

 

「どうやって脅す?」

 

「銃口を突きつけて手を挙げさせてから連行。」

 

「んで?」

 

「地下牢に入れて武下さんから説教。」

 

「あー。銃殺ははったりか?」

 

「当たり前だよ。」

 

 俺は何も聞かずに決めた。

 

「よし。それやるか。」

 

「うん。」

 

「ただ、色々俺が追加させてもらう。」

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 正門の鎮守府側、少し進んだとところに仮設テントを立ててもらい、俺は門兵を数人呼び出して色々と伝えた。

勿論、驚かれたが最後のオチには納得した様で、皆が乗る事に。ここに来る前、武下にも説教を頼んできたので問題なし。

 そしてすべての準備が整い、始まった。拡声器を持った門兵が抗議している集団に言った。

 

「提督が許可を下さったっ!これから中に入って貰うが、1人ずつだっ!」

 

 1人ずつというのは、手荷物と身体検査、金属探知機を通らせてからテントに1人ずつ入らせ、誓約書を書かせる。

そして、最上の目的であった艦娘へのアプローチを誘発させるために門兵の監視の元行動するのは3人まで。

 

「やっと、我らぼ悲願が叶う時が来たッ!」

 

「これでっ......。」

 

「提督はハーレム主人公の様だが鈍感ではなかった様だっ!」

 

 そう言いながら手荷物と身体検査、金属探知機を通るために列を成し始める。

 

「最後のは腑に落ちん。」

 

「はははっ......。」

 

 俺がそう呟くと最上に苦笑いされたが、まぁいい。

どんどんと列が動くのを見届けると、俺は振り返った。

 

「という事で、頼んだぞ。」

 

 俺の後ろには最上の作戦にあった番犬艦隊と赤城、金剛、朝潮がいる。

 

「いい加減煩いったらなかったからいいわ。」

 

「そうだな。勘弁してほしかった。」

 

 腕を組みながらビスマルクとフェルトがそう言う。

 

「俺もだ。まぁ、今回のはまた一掃するだけだ。作戦決行。」

 

 俺たちは所定のところに行き、本部棟と工廠の間を歩き始めた。

俺が歩き、その横を秘書艦である最上が歩く。付いてくる番犬艦隊と赤城、金剛、朝潮。人選はまぁ、今更気にしても仕方ないが、このメンバーで歩いている。黙って歩いていたら不自然だという事で、話しながら歩くことになった。

 

「この往復だけを繰り返すってのは何だか疲れますね。」

 

 最初に言い出したのは赤城だった。いきなりメタな事言ってるので、少し慌てて話の軌道修正をする。

 

「フェルトさんの艦載機って何だか彗星に似てますよね?」

 

「メッサーシュミットの事か?そうだな......。」

 

 話し始めて詰まった2人に俺は口を挟む。

 

「彗星はメッサーシュミットが元になってるからな。似てるのも仕方ないだろう。」

 

「成る程......。」

 

「そうなんですか?」

 

「あぁ。」

 

 どうやら2人とも違いを見いだせていなかった様だ。まぁ、詰まっていた時点でその通りなんだが。

 

「赤城たち空母の艦載機は殆どが空冷式だ。その中で空冷式以外のモノと言ったら彗星くらいだろう。例外で三式戦闘機も彗星と同じ発動機を使ってるんじゃなかったか?」

 

「良く知ってるのだな、アトミラール。」

 

「まぁな。」

 

 俺はそう適当に答えながら周りを見渡す。まだ来てない様だ。

 

「あ、あと、フェルトさんが訓練してるときに使ってる爆撃機。スツーカですよね?何でもとても強いだとか。」

 

「いや、それは違う。制空権が完璧に取れてないと発揮できない強さだ。訓練では制空権は関係ないからな。」

 

「そうだったんですね。」

 

 フェルトと赤城で艦載機談義が始まったので俺はそっちから耳を外し、最上の反対側を歩いている金剛に話しかけた。

 

「最近なんか面白いことあったか?」

 

 本当に適当な質問をした。

 

「特にないデスネー。皆さんいつも通りデスシ......あっ。」

 

 金剛は何か思い出したみたいだ。

 

「この前、比叡が珍しく酒保で本を買ってきたのを見かけマシタ。」

 

「それって別に、面白くない......。」

 

「それで何の本を買ったか聞いたのデスガ、『ひえぇ......こっ、これは見せれませんっ!』とか言って頑なに教えてくれなかったノデ、霧島と取り押さえて見てみたンデス。」

 

 金剛はニコニコしながら言っているが、結構笑えない。比叡がなんだか可哀想に思えてきた。

 

「そしたら、本を買ったと思ったら漫画デシタ。しかも、進げk」

 

「おっとそれ以上はいけない。」

 

 どうやら金剛曰く、纏め買いをしたらしく、皆には自分が読んでから見せようかと思ってたらしい。

金剛は別に比叡が読み終わるのを待ってから借りるつもりだったとか言ってたが、比叡がそう言って頑なに見せなかったのは前になんかあったらかだそうだ。金剛はそこは教えてくれなかった。

 というか、そんな漫画まで置いているのか。酒保は。

 

「それでどこまで借りれたんだ?」

 

「4巻まで読みマシタ。」

 

「そうか。比叡は何巻まで買ってた?」

 

「うーんと、確か17巻くらいデスカネ?」

 

 金剛の口から漫画の話が出たことに驚きつつも俺は話を続けた。

 

「そう言えばその漫画の元になったのはあるんだ。俺はそっちが好きでなー、マブr」

 

「おっと、それ以上は駄目デース。」

 

 言いかけたのを金剛に止められた。

そんなこんなして話をしながら歩いていると、前から歩いてくる集団がいた。あれは見るからに門兵と抗議していた人のグループだ。

 自然に見えるように全体に目配せをして、俺は会話を続ける。

 

「んで、話変えるがいいか?」

 

「大丈夫デース。」

 

「金剛的には前線に重巡と航巡、駆逐、どれが増えて欲しい?」

 

 俺がそう訊くと金剛は悩みはじめた。

 

「うーん......。重巡は攻撃力とダメージ受けた時の消費資材量を見てバランスが取れてますシ、航巡は空母からの艦載機の他にも航空戦力を投入できると言うのは良いポイントデース。駆逐艦は言わずとも、数が欲しいというのは本音デスネー。」

 

「全部それぞれ欲しいって感じか?」

 

「そうなりマース。」

 

 そう話をしていると、あちらと反航戦で交わる時、あちらが足を止めた。

 かかったかと誰もが思った。

 

「ぬふおぉぉぉぉ!!!金髪碧眼ロング(ビスマルク)と、金髪ツインテ(フェルト)っ!しかも赤城さんと金剛ちゃんもいるっ!!」

 

「これは運がいいでござるゥゥゥ!!」

 

 俺たちは直感で感じた。こいつらヤバいと。

 

「何よアンタら。近付かないでくれないかしら?」

 

 多分これで焦ったのは俺と門兵だろう。

 

「金髪碧眼ロングはツンデレ属性ですかあぁぁぁ!!??」

 

「キタ、キターーーーー!!」

 

 何だかとても楽しそうだ。

ビスマルクは少しイラッとしたのか、顔をゆがめている。

 

「それに見たことない娘もっ......銀髪ショート(レーベ)、赤髪ショート?(マックス)、銀髪ロングで不思議ちゃん(ユー)、金髪碧眼(オイゲン)にっ!!」

 

「黒髪ロングのロリっ娘(朝潮)だぁぁぁ!!」

 

 改めて言う。とても楽しそうだ。

そして叫ばれた朝潮は俺の背後に隠れてしまった。

 

「アトミラール。こいつらが例の?」

 

「あっ、あぁ。」

 

「アトミラールだとっ?!」

 

「アトミラールとは英語で言えばアドミラールっ!日本語で言えば提督っ!!アトミラールはドイツ語だぁ!!」

 

「まさか、この金髪ツインテ(フェルト)は外国人っ?!」

 

 もう一度言う。とても楽しそうだ。

 

「あの、お名前はっ?!」

 

 凄い勢いでフェルトに名前を聞いた1人に少し引きながらもフェルトは答えた。

 

「......グッ、グラーフ・ツェッペリンだ。」 

 

「グラーフ・ツェッペリンだとっ......。」

 

「我は知らぬな......飛行船の方は知っているが、失礼ながら艦種は?」

 

「航空母艦だ。」

 

「艤装中に計画中止になった奴だー!」

 

 ビクついたフェルトも流石に無理だったのか、ビスマルクの背後に行ってしまった。

 

「艦娘はやはり絵から出てきたように思える......。まさにそんな感じでござるッ。」

 

 とここまで来てもうダメだったらしい、門兵が動き出した。

 

「動くな。そのまま跪け。」

 

「ひっ......なんだっ?」

 

「なんでござるかっ?!」

 

 門兵は突きつけた小銃の安全装置を解除する。カチャッと音が聞こえ、2人は肩を跳ね上げた。

 

「誓約書違反だ。連行する。」

 

 無慈悲な門兵の淡々とした口調に状況を呑み込めていない2人は抵抗をするが、勿論門兵に適う訳も無く、すぐに手錠を掛けられた。

 

「何でっ、僕たちがっ?!」

 

「我は何もしてないでござるっ!」

 

 そう言っている2人は引きずって警備棟に門兵が入っていった。

 

「2人確保だな。」

 

 そう言うと残っていた門兵がビスマルクとフェルトに敬礼をした。

 

「大丈夫でしたか?」

 

「えぇ。覚悟はしていたわ。」

 

「無論、私もだ。」

 

「他の方は?」

 

 門兵に訊かれ、全員が首を横に振る。大丈夫なようだ。

 

「では、作戦続行ですね。次が来ますので、宜しくお願いします。」

 

 そう言って残っていた門兵も警備棟に入っていった。

 これからさっきみたいな事が幾度となく繰り返され、後半は余りにもテンプレだったので笑いを堪えるので必死になっていたほどだった。そして、終わったのは開始から2時間後。勿論、全員地下牢に連れて行かれた。

 

「お疲れ様。すまなかったな。凄い心労を掛けたと思う。」

 

 そう言うとビスマルクは首を横に振った。

 

「いいえ。いつも番犬艦隊として提督の横に居る事しか出来ない私たちが少しでも役に立てたもの。どんな任務であれ、良かったと思ってるわ。」

 

「そうか。」

 

「それよりこの後、武下さんの説教が始まるのよね?」

 

「そうだな。」

 

「良い年した大人が濡らさなきゃいいけど......。」

 

 ビスマルクはそう言って笑った。

 

「もし濡らしたら掃除させればいいさ。」

 

 そうニヤニヤしながら言うフェルトはクックックと歯を見せている。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 武下の説教で全員がこってり絞られ、大本営に連れて行かれたのを見たが、どうなったかは知らない。

多分、警察に引き渡されて牢屋に入ったんだと思う。

 




 今回のやっつけ感はどうにも抜けませんでした(汗)
これで終息すればいいんですが、どうなるかは話が進まないと分かりません。それまでは終わったとは思わない方がいいです。
 秘書艦で、今回の作戦を考えた最上も酷いのか優しいのか分かりませんね。艦娘には会えるけど即逮捕って......。黒いと思います。

 ご意見ご感想お待ちしてます。

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