【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

157 / 209
第百四十三話  来訪者

 

 大規模作戦から1ヵ月。抗議団体の抗議活動は長く続き、アメリカからの使節団が鎮守府に2度訪れてから少し経った今日は特段何かあるわけでもなく、北方海域や他海域にて継戦できるように大本営の鎮守府は練習航海や残敵掃討戦を繰り返している。

率直に言って俺の、俺たちの仕事が無い。強いて言えば西方海域への残敵掃討戦と南方・中部海域への偵察があるが、まだ動き出さなくてもいいと俺は考えていた。それらを攻略するにあたって、現状の鎮守府戦力と練度が見合わないと俺が考えていたからだ。

なら、レベリングをすればいいだろう。だが、レベリングをしたくても北方海域は残敵掃討が行われた。今行っても何もいない現状だ。時間が経てば、アルフォンシーノ群島にはたむろしないだろうが、それなりの深海棲艦は出没するようになると予想している。その時、大本営の鎮守府が手に負えなくなり、且つ、こちらに余裕があればレベリングを行う事になっていた。

 

「なぁ、どれくらい続くんだろうか?」

 

「分からないわ。」

 

 今日の秘書艦はイムヤ。あの事件以降、イムヤは金剛や鈴谷までとはいかないが結構遊びに来るようになった。だが今日は秘書艦として執務室に居る。

 

「でも司令官。大本営の鎮守府が通らないところに向けて継続的に出撃させてるじゃない。」

 

「いいだろう?レベリングはやろうと思えばできる。」

 

 俺がさっきああいったものの、レベリングをやっていた。

大本営の鎮守府は北方海域をアルフォンシーノ直通ルートを通るが、レベリングは違う。逸れていくのだ。だから比較的残党は残っているのだ。それを漸撃していっている。

 

「作戦終了直後の大井さんが司令官に訴えてたわね。改二にしてくださいって。」

 

「あぁ。だから重巡メインのレベリングに初撃を加えさせる為に大井を艦隊に入れてる。」

 

「そうなんだぁ。んで、今レベリング中の艦娘は?」

 

「最上。航空巡洋艦に改装して以来、滅多に出撃してなかった。」

 

「最上さんねぇ......。航空巡洋艦っていう艦種の運用方法は?」

 

「からっきしだ。」

 

「でもその前は鈴谷さんのレベリングしてたわよね?」

 

「そうだな。」

 

 俺は終わった書類をイムヤに渡した。

鈴谷のレベリングは大規模作戦直後から始まり、これまでのレベリングで一番時間が掛かった。改装できるまでの練度の半分しかなかった為に演習と出撃を繰り返し、何度も何度も入渠させ、言い方が悪いが酷使してきた。それでも改装に漕ぎ着けたのは2週間後。駆逐艦のレベリングに1週間費やしてきた俺にとって長く感じた。

 

「それで、目標練度は?」

 

「20前半。そこまで来れば航空巡洋艦としてのノウハウはある程度吸収できているだろうから。」

 

「それならもう少しね。」

 

 イムヤは書類を抱えて扉に向かって行った。

 

「提出してくるわ。それと建造をやっていたわね?」

 

「あぁ。今日は高速建造をしてないから迎えに行ってやれ。」

 

「分かったわ。」

 

 そう言ってイムヤは執務室から出て行ってしまった。

建造に関しては俺は約束を2つしていた。1つは瑞鶴と翔鶴を進水させる事。もう1つはイムヤと潜水艦を進水させる事だ。現在、ボーキサイトが不足していて、空母レシピをやっていられるほど資源はない。なので比較的少量で済む潜水艦建造に力を入れていた。これまでは数々の艤装を出し、近代化改修に回してきた。お蔭で改修限界値まで到達した艦がいくつも増えたのだが、一向に目的が達成されないでいた。それに建造や開発に関して雪風に専任していたが建造開発を任せていた当時は練度がそれ程高くなく、俺が駆逐艦を中々前線に出していない時期だった為に俺にそう進言してきていたが、今では駆逐艦屈指で練度が高く、前線にも結構な回数出る事があるので専任を解いていた。

現状、建造開発を行っているのは秘書艦やレシピをしているする場合はそれに見合った艦娘に頼んでいる。今日のはイムヤに頼んでいたのだ。

 

「今日こそ、出て来てほしいな。」

 

 俺はそう考えてきた。未だにイムヤは広い部屋を1人で使っている(※ユーはドイツ艦で固められた私室で暮らしてます)。寂しい思いをしているのは自明の理。一刻も早く同じ艦種の艦娘を進水させたいそう俺は考えていた。そう考えていた刹那、廊下を誰かが走ってきた。足音は2つだ。

勢いよく開かれた扉の向こうにはイムヤが居て、その隣には見慣れない艦娘が立っていた。

 

「来たわよ!司令官っ!!」

 

「えっ?!なにっ?!どうなってるでちか?!」

 

 そうオロオロして俺の顔を見るなり驚き、イムヤの背後に隠れてしまったその艦娘は特徴的な語尾とイムヤと同じような恰好をしていた。

 

「来たか。」

 

「ほら、挨拶っ!」

 

 俺がそう言って彼女の顔を見た。彼女はオロオロしながらもそれに答える。

 

「伊五八ですっ!」

 

 そう彼女は言った。伊五八という事は、つまりはイムヤ的に言えばゴーヤだ。

 

「あぁ、よろしく。」

 

「ゴーヤって呼んでもいいよ?」

 

「そのつもりだ。」

 

 そう言ってカチコチしながら挨拶したゴーヤの横でイムヤはプルプルと震えていた。

そんな様子のイムヤにゴーヤはオロオロしながらどうしたのかと聞くが、イムヤは首を横に振るだけだ。

 

「嬉しくって......。」

 

「何がでちか?」

 

「司令官が建造を優先してくれてたの。潜水艦を出すために。」

 

 そう言った瞬間、ゴーヤは『そうでちか』とだけ言ってさっきまで緊張していた様子から一変した。

 

「潜水艦を出すって事はそれはずっと海に出てなければならないでちか?資源を集めて帰り、デコイをしたりするでちか?」

 

 そう言ったゴーヤに俺は驚いた。どうやら艦これにおいての潜水艦の酷い扱いに関しては知っているみたいだ。

だが、そんなゴーヤにイムヤは言った。

 

「司令官はそんなことしないわ。資源は十分に遠征艦隊が持ってくるし、司令官は後さき考えずに使わないの。」

 

「ならどうしてでちか?」

 

「私が寂しいだろうからって、そう言って優先させてくれたの。潜水艦の私室は広いけど私しかいない。ずっと1人でいたから......。」

 

「そうでちか......。提督。」

 

「なんだ?」

 

「ありがとうでち。」

 

「あぁ。」

 

 俺はなんだか照れ臭くなったが、これで約束は果たされた。だが先約が残っている。そう考えると少し怖い。

瑞鶴だ。よくあるような『爆撃するわよ?』的なのは無いが、それでも拗ねたら面倒だ。

 

「鎮守府を見て回って来い。あとイムヤ。」

 

「なに?」

 

「もう寂しくないか?」

 

「えぇ。それに寝るとき以外はずっと誰かが一緒に居てくれたからね。」

 

「そうか。あと海、見に行くか?護衛を付けてどこでも行きたかったら言ってくれ。」

 

「この休み中にでも頼むわ。」

 

 そう言ってイムヤはゴーヤの手を引き、執務室を飛び出した。

これから鎮守府の中を案内するんだろう。時間的には昼より少し前、殆ど回れずに戻ってきそうだ。そう思いながら頬杖を突く。

 

(良かった......。)

 

 ただそれだけだったがその刹那、扉が開かれた。其処に居たのは瑞鶴だ。

 

「提督さん?」

 

「なっ、なんだ?」

 

「さっきイムヤちゃんに頼まれたんだけど、秘書艦代理として少しここに居るわね。」

 

 そう言って入ってきた瑞鶴は少ししかめっ面をしながら秘書艦用の席に座った。

そして俺の方を見て言った。

 

「イムヤちゃん、知らない娘連れてたけど誰?見てくれはどうやら潜水艦みたいだったけど?」

 

 俺は思考を巡らせた。だがどう手を打っても仕方ない状況だ。あの恰好をしていてここに居たという事はもう答えは1つしかないからだ。誰でもそう考えが収束してしまうだろう。

 

「今朝建造された、伊五八だ。」

 

「ふーん。」

 

 俺が素直に言うと、瑞鶴は唇を尖がらせて立ち上がった。

そのままこっちに来ると俺の横に立ち、ずいっと寄ってきた。

 

「なっ、ど、どうした。瑞鶴?」

 

「私のお願いは?」

 

「は?」

 

「だ~か~ら~!私の翔鶴姉の進水は?!」

 

 そう言って俺の肩を揺らしてくる。

 

「私の方が早かったじゃん!!時間あるじゃん!!提督さんー!!」

 

「揺らすなっ!......空母の建造には資材が掛かるんだ。回数を重ねるごとに資材が大幅に減少していって、運用に支障が......。」

 

「翔鶴姉ー!皆待ってるんだよ?!」

 

「皆?」

 

 そう言った瑞鶴の言葉に俺が反応すると瑞鶴は俺を揺らすのを止めた。

 

「正規空母で進水してないのは翔鶴姉だけなの!だから皆待ってるんだ。翔鶴姉をさ。」

 

 そう言った瑞鶴はまた俺の肩を掴んだ。

 

「だから、早くしてよー!」

 

「分かったっ!分かったから、揺らすなっ!」

 

「本当に?!」

 

「あぁ!」

 

 そういうやり取りをしてやっと解放された俺だが、そんな俺の居る執務室の扉がまた開かれた。

扉を開いたのは赤城と金剛だ。この組み合わせと、赤城の焦燥を隠しきれていない顔を見ただけでただ事では無い事は理解できた。

 

「大変ですっ提督ッ!!直ぐに厳戒態勢にっ!!未確認艦が接近中ですっ!」

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 今日もだが実質休みの為、鎮守府のあちこちに散らばっていた艦娘はそれぞれの要所に集められ、話を聞いていた。内容は同じだ。

本部棟、酒保、警備棟の3か所でそれぞれ、俺、赤城、金剛が散らばり伝え話し、行動を起こす。

未確認艦の艦種は不明。だが、これまでにあった揚陸艦とは違う。哨戒任務で急遽出撃した加賀艦載機からの連絡が無ければ行動が出来なかった。そしてその時、加賀が自分の艦橋から身を乗り出し、叫ぶ。

 

「未確認艦は戦艦っ!艦隊を組んでいる模様っ!戦艦以外は現行艦と酷似し、揚陸艦の姿も見られますっ!」

 

 それを聞いた俺は指示を出す。呼び出しだ。

 

「門兵さん、今すぐ事務棟に走りそこにいる天見というパイロットを連れて来てください!」

 

「分かりました。」

 

 門兵は走り出し、天見を呼びに行く。

 

「提督、指示をっ!」

 

 赤城がそう俺に言ってくる。たぶんこれは迎撃に出たいんだろう。そんな雰囲気を俺は感じたが、俺は毛頭そのつもりはない。

今回のに関してはおかしい点がある。それは未確認艦接近と連絡が入り、その後の続報で7隻以上と聞かされた事。そして、あちらは輪形陣で接近中。続々と報告が入る中、その陣形や動きに関して夕立が覚えがあると答えた。何に覚えがあるのかというと、戦術指南書ではないが、資料室に残されていた戦闘記録だ。艦娘と護衛艦が共に戦っていた時代のモノだ。もうこれだけあればアレが何なのかは見当がつく。

 

「地下司令部に入る。だが長門と陸奥、鈴谷、雪風、北上、瑞鶴はこのまま出撃。俺から指示があるまで砲雷撃戦は許さない。」

 

「「「「「「了解。」」」」」」

 

 俺はそう言って地下に行くと伝えた。あそこなら通信設備が最近、どんどんと更新している為、人工衛星やらを使わないのなら無線など色々通信機材がある。

それを使わない手はない。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 俺は通信妖精に未確認艦の戦艦に無線を繋げるように言った。そして耳に当てているところから呼びかけが聞こえてくる。

俺が普段聞かない言語。日本では使いはするが以前よりも使わなくなった言語が聞こえてくる。英語だ。

それを確認すると、妖精にこのまま通信機材を背負うと言って俺は地上に出た。

予め、携帯無線機で繋げてもらったので外に出る事が出来た。

 外に出ると、門兵が天見を連れて来ていた。

 

「あの、司令官?どうされたんですか?」

 

「仕事をお願いできますか?通訳です。」

 

「一応、出来ますが......。」

 

「じゃあこれを耳に。」

 

 そう言って俺は無線機を背中から下ろして、天見に受話器を渡した。受話器からはずっと呼びかけが聞こえてきていた。

受話器を耳にあてると、天見は英語を話し出した。予想通りだ。パイロットというのは優秀である。英語が出来なければいけないのは分かっていた。だから呼んだのだ。

 

「通訳を。」

 

「はい。えぇっと......。」

 

 天見はそう言うと英語を話し、数秒すると入力マイクを押さえて俺に言った。

 

「米海軍だと言っています。」

 

「こちらは横須賀鎮守府艦隊司令部と伝えて下さい。それと、何故こちらに来たか。」

 

「分かりました......。」

 

 天見はそのままマイクを話すと離し、話しだす。すぐに手でマイクを押さえて俺に言った。

 

「日本皇国に見せに来たと。深海棲艦に抗う力を手に入れた。だそうです。」

 

「政府への許可はあるか聞いて下さい。」

 

「分かりました......。」

 

 天見はまたマイクに英語で言う。すぐにまたマイクを押さえて俺に言った。

 

「許可は取ってあるそうです。そして横須賀鎮守府の埠頭への入港許可を求めてきています。」

 

「許可します。ただし、上陸は許しません。」

 

「伝えます......。」

 

 天見が英語で伝え、少しすると立ち上がった。

 

「最初の任務が通訳だとは思いませんでしたよ。......何時になったら原隊復帰ですか?」

 

「ずっと事務棟ですものね。それに天見さんの配置移動に関する書類はきてません。」

 

「そうですか......。この後も通訳を?」

 

「はい。お願いします。」

 

 俺はそう言って無線機を背負って1回地下に下ろしてきてから地上に出た。

降りた際に出撃していた長門たちには未確認艦の艦隊のエスコートを頼んだので、直に埠頭にやってくる。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 埠頭に接岸したのは戦艦1と現代戦闘艦8、揚陸艦級2、現代空母2だ。それにどうやら潜水艦もいるらしいが、沖で待機しているとの事。俺の周りを非番だった門兵が取り囲み、戦艦の横で立っていた。そして、長門たちはそれぞれの艦を取り囲むように展開してもらっている。

俺を囲んでいた門兵の1人がぼそりと言った。

 

「あれは、アイオワ級戦艦......。」

 

 アイオワ級戦艦。第二次世界大戦中のアメリカ海軍の戦艦だ。大戦後も現役で、実艦は記念館になっているらしい戦艦だ。

そんなアイオワ級戦艦を見ていると、艦橋からいかにも海軍軍人らしい人と、兵士、そして一際目立つ格好の少女が現れた。

 

「接岸許可......。上陸は出来ないのか?」

 

 そう言った海軍軍人はコチラに向かって言った。

 

「私は米海軍特種艦 戦艦 アイオワ艦長、ウェールズ・マスキッド。そして......。」

 

「私はアイオワ級戦艦 アイオワよ!」

 

 俺と門兵は思考停止した。

目の前に日本やドイツ以外の艦娘を目の当たりにした。噂程度でイタリアの艦娘も居ると聞いていたが、アメリカはそもそも艦娘がいれば海岸まで領海が狭まる事は無かった。そうすると目の前に居る艦娘は、最近現れたと考えていいのだろう。

 

「私は横須賀鎮守府艦隊司令部司令官です。アポ無しで乗り込むとは、ここがどんな施設か分かっているんですか?」

 

 俺は正直、何故いきなり乗り込んできたのか理解できなかった。普通、使節を介して知らされるものではないのかと決めつけていたのだが、それを真正面から来たのだ。

 

「分かっている。数々の海を奪回し、人類の海を広げている艦隊の司令部だ。それがどうかしたか?」

 

 ふんぞり返っているウェールズは俺にそう言った。

 

「我々は米海軍。世界の海と秩序を守る米海軍だ。体制が変わり、艦娘が早々に出現したお蔭でここまで出来た島国が何を言っているのだ?」

 

「そうですね。」

 

 俺は頭に血が上ったが押さえ、一応相槌を打った。

 

「我々は戦える。帰ってきた使節団の結果報告で色々と知る事が出来た。海軍が横須賀鎮守府に手を拱いている事も、陸軍が交易ルートの確保に奔走している事......そして、」

 

 ウェールズはとんでもない事を言った。と言っても知られていてもおかしくないが。

 

「中部・南方海域への攻撃を計画している事もだ。中部海域は我々の領土である。中部海域を攻撃する事即ち、アメリカを攻撃する事である。」

 

「でっ、ですか......。」

 

「ハワイが陥落してから、あそこは深海棲艦の根城となったのだ。あそこは深海棲艦がいるが、元は合衆国の領土である。」

 

 そう言ったウェールズは鎖に手をかけた。

 

「攻撃は許さん。」

 

 そう言って少し呼吸を整えたウェールズは話を切り替えた。

 

「それに大統領は危惧しておられる。日本皇国の戦力、海域奪回して回った救国の英雄の元に最大戦力が集中し、しかもそれが制御出来ないでいる。実質横須賀鎮守府は国として機能しており、しかも独裁制。いつ反乱を起こすか分からない、と。全世界が叶わなかった深海棲艦の討伐に横須賀鎮守府だけは大きな被害を出さずにこれまで続けてこれ、実績も残している。その力はどの国の軍隊にも及ばない。」

 

 俺は何も言わなかった。

 

「提督。考えているよりも強大な力を持っている事は自覚しているのだろうか?一度反乱を起こそうと思えば必ず成功する。それ程の力が提督の手にある。」

 

 俺どころか門兵も黙ったままだ。沈黙は肯定を意味すると言うのは当たっている。反論できない。まず俺に関してはそんな事も考えた事が無い。門兵はあるかもしれないが、場合によってはこれまで築き上げてきた信頼が一気に失われる。それを恐れてか誰も口を開かなかった。天見でさえもだ。

 

「我々も海域奪回に乗り出す。その話をしに日本まで来たのだ。」

 

 そう言ってウェールズは艦橋に入った。それを追う様に兵士とアイオワが艦橋に戻って行く。

それをただ見ている事しか出来なかった。

ここまでウェールズの話を聞いて明らかなのは、艦娘の出現とアメリカ合衆国は海軍を以て深海棲艦と再び戦うという事。そして中部・南方海域をウェールズは何も知らない。俺も知らないが、ウェールズよりかは把握しているだろう。

 

「民間用の港に入り、政府と大本営と会談をするみたいですね。」

 

 天見は惚けていた俺にそう話しかけた。天見の手には手紙があり、それを読んだみたいだ。

 

「そうなんですか?」

 

「はい。」

 

「内容は?」

 

「アメリカ合衆国が艦娘を持つようになり、パワーバランスが傾いたと考えているんでしょう。」

 

 そう言った天見は手紙を和訳してから俺に渡してくれると言ってそのまま事務棟に帰っていった。

俺は武下に声を掛けた。

 

「パワーバランス......。失った力を取り戻すって意味ですね。きっと。」

 

「私もそう思います。深海棲艦によってアメリカ合衆国は大打撃を被ったそれを取り返す為に力を取り戻すという事でしょう。」

 

 俺もそれは分かっていた。だがやはり何度考えてもウェールズは知らなさすぎる。

 

「武下さん。部下の動揺は沈めておいてください。」

 

「無論そのつもりです。」

 

 俺はそう言って伸びをした。

そんな俺のところにイムヤが来ていた。

 

「司令官。ちょっといい?」

 

「あぁ。」

 

 俺はイムヤに呼ばれて、すぐに解散の指示を出し、執務室に戻ってきた。執務室には赤城も来ており、何だか重苦しい空気に包まれていた。

 

「どうしたんだ?」

 

 そう俺が聞くと赤城は溜息を吐いて困り顔をした。

 

「アメリカの艦娘......記憶ではありますが頭に血が上ります。」

 

「司令官、私も。」

 

 そう訴えてくる彼女たちの表情は怒りというよりももっと別の感情の様に思えた。

 




 
 色々盛りだくさんですが、まぁ......眠気との戦いでしたので......。
イムヤとの絡みもダークな感じは無く、明るくていいと思ったので今回の様になりましたが、最後は色々残して終わらせておきます。
 艦これ改での新実装艦であるアイオワをネタにさせていただきました。というか、元から布石っぽくしてたつもりですので多分気付いていた方もいらっしゃると思います。

 ご意見ご感想お待ちしてます。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。