【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話 作:しゅーがく
前回の続編です。
敷波を旗艦とした戦艦中心のレベリング艦隊は今日も出撃だ。
朝、朝食を摂り終えた艦娘は俺の居る執務室に来て整列している。
「集まったか。じゃあ、昨日同様に敷波の護衛を頼んだよ。」
「任せておけ。」
長門は敷波の横でガッツポーズをして見せた。
「だが提督。戦艦しか編成しないレベリングは聞いた事が無いぞ?」
長門はガッツポーズをした手を下げると腕を組んで言った。
俺も戦艦だけの編成でのレベリングは聞いた事が無かった。だが、これもボーキサイトを温存する為だ。被弾率や弾着観測射撃ができないというデメリットがあるが、止むを得んかったんだ。
「そりゃそうだ。ウチ独自だ。まぁ、気にせず出撃してくれ。」
「分かったよ、司令官。いってきまーす!」
そう言って敷波は戦艦の艦娘5人を連れて執務室を出て行った。
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敷波達が出て行ってから、今日の執務はそんなに無かったので早々に片づけると、加賀が話しかけてきた。
「提督。もうボーキサイトは遠征艦隊がひっきりなしに出ているので十分に溜まりました。」
そう言って加賀は俺に資材表を見せてきた。
確かに他の資材と殆ど同じ数、ボーキサイトは溜まっていた。これだったら正規空母である一航戦を第一艦隊に戻しても問題ないだろう。だが、俺はそれよりもやりたいことがあった。
「だがまだ加賀たちを第一艦隊に戻す気は無いぞ?」
そう言うと加賀は手を顎にやって考え始めた。そしてすぐに答えが出たように、顎から手を放した。
「艦載機開発......ですか?」
加賀が言ったのは俺が第一艦隊に戻さない理由だった。
「あぁ。開発資材の数を鑑みて、4回だけ。」
俺がそう言うと、丁度最近開発を頼んでいた雪風が執務室に入ってきた。
「司令!今日も頑張りますっ!!」
元気よく雪風は言ったが、俺は申し訳ない気持ちで今日の開発について説明した。
「すまん雪風。今日は建造だけ頼めるか?」
「どうしてでしょう?司令。」
「開発は対潜装備じゃなくて艦載機を開発したい。今日だけのつもりだから、加賀と行ってきてくれるか?」
「......はい!分かりましたっ!建造は戦艦のやつでいいですか?」
「そうだ、じゃあ頼んだ。」
雪風は一瞬、暗い表情をしたが直ぐに状況を整理して分かってくれた様だ。そうすると雪風は加賀の袖を掴んだ。
「加賀さん!いきますよ!!」
「はい。」
俺はそう言って2人仲良く執務室から出て行く姿を眺めつつ、終わった書類を整理した。
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「提督。」
加賀と雪風が出て行ってすぐ、赤城が俺に話しかけてきた。
「なんだ?」
「加賀さんよりも私の方が運が高いのですが......。それに加賀さん、まだ開発した事ないですよね?」
「あっ......。」
今さら止めに行く気にもなれず、俺は今日の開発は諦める事にした。また違う日にやろう。
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加賀と雪風の事をすぐに忘れて、俺はのんびり赤城とお茶を飲んでいると、執務室に加賀と雪風が入ってきた。
「司令っ!終わりましたよ!」
そう言って雪風は俺に結果を書いた紙を渡してきた。
其処には建造で、4時間20分が出たことと、開発で出てきた装備が書かれていた。
「やりました。」
加賀は少し口角を上げているので、どうやら結果は良かった様だ。俺は雪風から受け取った紙を読んだ。
「ふーん。扶桑型の艤装に......零式艦戦52型2つと九九式艦爆、失敗ね。」
俺は何とも言えなかった。加賀がどや顔していたのでてっきりレア艦載機が出たのかと思っていたからだ。
「ありがと、2人とも。」
俺はそう言って雪風から受け取った紙を書類の束の上に置くと、整理を始めた。勿論、装備に関する書類の整理だ。
「では司令、雪風は戻りますっ!」
そう言って雪風は元気よく執務室を飛び出していった。
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日が傾いた頃、昨日と殆ど同じ時間に敷波たちが帰ってきた。
だが昨日と様子が違っている。
「お疲れさま。......ん?どうした??」
俺が暗いオーラを纏っている敷波に訊いた。すると突然、敷波は泣き出してしまった。
「......グスッ......。今日の昼に私を庇った長門さんが大破したの......。大きい爆炎が上がってて、長門さんの艤装がすごく傾斜してて......。」
そう言った敷波からすぐに俺は視線を長門に切り替えた。
確かにところどころ打撲を負ったのか、痣がある。
「どうした?」
俺がそう言うと長門は口を開いた。
「......旗艦を守るのは僚艦の務めだ。ずっと気にするなと言っているんだがな......。」
そう言って長門は困った表情をした。
俺はこればっかりは俺から何かを言ってやることが出来なかった。
俺は実際に海域に出た訳でもないので、大口叩いて言っても滑稽なだけだ。そう思ったのだ。
そうすると短い沈黙から赤城が敷波に声をかけた。
「敷波さん。」
「グスッ......はい......。」
「私と向こうで話しましょうか?吹雪さんも呼びましょう。」
そう言って敷波の背中を押しながら赤城は執務室を出て行った。
俺はその状況を察した。赤城は駆逐艦レベリングを初期に経験している。それにかなり早くの着任だ。色々と経験してきた事を話すのだろう。吹雪に至っては初期艦。呼んだ理由も明白だった。
俺は何も言わずに2人を見送った。
「......赤城には後で礼を言わねばな......。」
そう言って長門は敷波の代わりに書いたのか、報告書を俺に渡すと執務室を出て行った。それに続くかのように金剛型の4人も執務室を出て行ってしまった。
どうやら、この空気を察したのか。金剛が俺に何も言わないのは少し以外だったが俺は気にも留めずに長門の報告書を読み始めた。
「......ふん。.............そうか。」
報告書には長門が大破した際の状況が事細かに書かれていた。
敷波の不注意。金剛型の4人は状況に合わせてかく乱をしていた様だった。実質、敷波の護衛は長門だけだった様だ。そんな中、砲撃戦の最中、気を抜いた敷波に向けて撃たれた雷撃を長門が代わりに受けた。と。
俺は報告書を読み終えると、後ろにあったもう一枚の紙の存在に気づいた。
「......出撃編成表と、出撃許可印......。まさかっ!!」
俺は執務室の窓から外を見た。
戦艦が5隻、単縦陣で出撃している。前から長門、金剛、比叡、榛名、霧島。独断出撃だ。
もう既に港から出ている。止めれない。加賀は居るが、俺が焦っている要因が分かっていない様だったし、軽空母の艦娘を呼び出しても間に合わないかもしれない。
俺はもう待つことにした。
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夜も更けて、加賀を部屋に帰した頃、長門たちが執務室に入ってきた。
「長門。」
俺は長門たちが独断出撃してからというもの、夕飯も加賀に頼んで持ってきてもらい、ずっと執務室から港と沖を見ていた。
「分かっている。独断出撃だ、どんな罰も受けよう。」
長門はそう言って目をつむって立ち尽くした。
俺はその姿を見て立ち上がり、長門の前に立った。
「......貴様等は何故止めなかった。」
俺は長門の前に立ったまま首を金剛たちの方に向けた。
「それは、あの深海棲艦たちのやり方に頭に来てました。ここで轟沈させておかなければ、同じ手で気付かなかった艦娘を轟沈させると思ったからです。」
俺には霧島の言った意味が理解できなかった。やり方。殺り方だろう。報告書に無かった何かがあるのだ。
「どんなやり方だ。」
「深海棲艦は自分らの水雷戦隊を分断し遊撃してました。これは今まで見たことのないものです。そして深海棲艦の水雷戦隊は私たちを上手く分断して、旗艦をほぼ裸の状態にしたんです。」
そう榛名は言った。
「裸になった旗艦に深海棲艦らは水雷戦隊に編成されていた雷巡チ級より魚雷を数十本と撃ち込んだんです。そのやり方が私たちにとって危険だった。」
比叡が続けて言った。
「だからすぐに消しに行ったんデス。今回は長門が気付いてダメージコントロールしやすい角度で壁になりマシタガ、次はどうなるか分かりまセン。それに壁になった長門は20本も魚雷を受けてマシタカラ。」
金剛はいつもの口調だが、すごく冷たい声でそう言った。
「そうか。」
俺は4人から語られた鮮明な状況を鑑みて、長門の罰を考えた。
「長門。」
「あぁ。」
「朝一で敷波のところに赴け。それと明日1日は敷波共に休暇とする。」
俺はそう言って頭を冷やすために執務室から出た。
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「あっ......あぁぁぁぁ......。」
俺が出て行ったのを見届けた長門と金剛たちは膝を小鹿の様にガクガクさせていた。
「提督がすごく怖かったデス......。」
「はい......。司令からお叱りを受けないようにしないと......。ひえぇぇ。」
「榛名、お風呂に入りたいです......。下着がっ......。」
「想像以上の人でした......。」
金剛たちはそう言って震えていた。一方、長門はというと、少し放心していたとか。
これは少し提督の一面がwww
あと色々話の関連付けのつもりのところもあるので違和感があったら感想の方でお答えします。
ご意見ご感想お待ちしてます。