【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第百六十四話  『FF』作戦③

 

 鎮守府沖まで出てから少し北上したところで端島鎮守府派遣艦隊を待ち、"連合艦隊"として移動を初めてから一週間、二週間が経ったくらいでやっとアルフォンシーノ群島、要塞に着いた。

道中は全く接敵することなく平和な航海であると言えば、定期的な哨戒機の発着艦だけだ。それもウチの艦隊と端島の艦隊、それぞれで方向を分担してしていて、赤城曰く『普段の負担が半減です。』だそうだ。

 要塞は普通に要塞だと言われて想像出来るものではなかった。普通ならば煉瓦造りかコンクリート造りを想像するだろう。だが俺の目の前にある要塞は違う。

湾をそのまま要塞化したのは目に見えるが、海岸線に沿って土台はコンクリートで海面から5m上は全て迷彩柄の入った鋼鉄。所々穴が空いていて、砲門がせり出していた。高くなる程に傾斜が急になり、最終的には海面に水平になっていた。

つまり、ドーム型のようにも見える。

 俺は目を凝らしてその要塞を観察した。先ず目に入るのは迷彩柄。経験則からして、迷彩に意味を持たないが取りあえずやってみたみたいなノリだろう。その次にはせり出す砲門。

赤城の艦橋から見ているが、比べるものが無い為、大きさは分からないが、門数は分かる。俺が見える範囲で40門以上あった。

 

「要塞から通信は?」

 

「入ってます。『姿を確認した。現在地から迂回し、ドックに入って貰う。』だそうです。和訳されていたので読めましたが、どうしてでしょうか?」

 

 赤城は通信妖精から受け取ったメモを読み上げてそう言った。

赤城らには伝えてないが、今回の作戦の為にアメリカに派遣されていた外交官が通訳をしてくれることになっていた。たぶん先に到着していたのだろう。

 

「言ってなかったが、日本皇国政府の外交官が通訳をしてくれているんだ。たぶんもう要塞に居る。」

 

「そういう事でしたか。ですが、私はあの要塞のドックに入るのは反対です。」

 

 赤城はそう言って、艦内に指示を出した。

 

「両舷停止。」

 

『両舷停止ー!』

 

 艤装が揺れ、次第に速度が落ちて、遂に止まってしまった。周りの横須賀鎮守府派遣艦隊も同じく止まった。それにつられてか、端島鎮守府派遣艦隊もこっちが止まったところから少し離れたところに止まった。

 

「訳は分かるが......。」

 

「絶対に嫌ですよ。鎮守府に工作員を放つような国のドックなんて......。」

 

 そう言って赤城はそっぽ向いてしまった。俺は通信妖精に言って、他の艦娘にも尋ねてみたが結果は同じ。赤城と同じ回答をした。

何故、そこまで嫌がるかは俺は痛いほど分かる。突然押しかけて来て、勝手に上陸し、工作員を放った。そして鎮守府敷地内で銃撃戦を繰り広げたのだ。無理もないどころか俺も内心とても嫌だった。もし、また工作員を使うというのなら、今回こそ、艤装に入られてしまうからだ。門兵だって連れてきてない。妖精は多分艦内に入られたら手も足も出せないだろう。

 

「端島鎮守府派遣艦隊から入電。『要塞からドックへ入る指示が出ている。両舷前進微速で前進されたし。』」

 

 通信妖精がそう俺と赤城に伝えてきた。どうやら彼方は抵抗が無いらしい。

 

「ドックには入りませんからね。」

 

 そう言い張りへそを曲げた赤城に俺は妥協案を出した。

 

「ならドック手前、多分あの様子だとドック侵入には開閉扉があるはずだ。その脇に停泊するのはどうだろうか。」

 

「うーん......分かりました。ですが、岸から艦は200m離しますよ?」

 

「それでいい。」

 

 俺はそう言って通信妖精に返事を送るように伝えた。

 

「端島鎮守府派遣艦隊提督宛てに『ドックへ入らない。開閉扉手前、岸から200mで投錨する。先方へは哨戒機を飛ばすためと伝える。』だ。」

 

「了解しました。」

 

 通信妖精はそう言って通信を入れに行った。

赤城もそうだが、やはりあの工作員の事件は記憶に新しい。妖精たちの表情を見ていてもそれは分かるのだ。妖精たちもドックに入るのは嫌だったみたいだ。

 

「端島鎮守府派遣艦隊から入電。『了解した。我が艦隊は貴艦隊の反対方向に停泊する。』要塞より入電。『了解した。』」

 

「ありがとう。」

 

 どうやら端島鎮守府派遣艦隊も付き合ってくれるみたいだった。それに要塞も中々話の分かる人が司令官みたいだ。

これでドックに入れと強制されたら、何があるか分かったモンじゃない。

 通信を訊いた赤城は艦内に指示を出す。

 

「両舷前進微速。要塞の脇、開閉扉付近に停泊します。」

 

『両舷前進びそーく!』

 

 再び赤城の艤装は動き出し、艦隊全体が動き出した。要塞の脇に艦首を向け、じわじわと接近していく。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 俺は要塞から入電があるまで艦内待機を命じていた。更にここに投錨する前に艦隊を単縦陣に変え、右舷の対空砲や機関銃座に警戒態勢を取らせている。勿論、左舷もだが右舷程警戒はさせていない。これはもし、誰かが無断で乗り込んできた時、威嚇射撃、攻撃を行うための準備だ。

 

「これから共闘するというのに何だか不思議な感じですね。」

 

「仕方ないだろう。工作員を放った前科がある。」

 

 赤城は要塞を見上げながらそう言った。

彼らの前科。話によればウェールズの独断だという事になっているが、真意は分からない。大統領が嘘を言った可能性だって否定出来ないのだ。更にあれから大本営を通してこっちにある報告書のコピーを受け取っていた。それはアメリカとのファーストコンタクト。つまり端島鎮守府の護衛艦隊と共に海を渡った外交官 天見とアメリカ大統領の初接触だ。

要約すると、日本皇国とアメリカの相互の存在確認を取った後、どうやらアメリカは工作員を端島鎮守府の艦隊に放っていたらしい。結果として上がられる前に制圧(察知され、即刻退艦を要求された)されたとの事。

 

「あちらの提示した合同作戦に私たちが手を貸すのも少々癪ですが、提督の決めたことです。前回は門兵さんが全てやって下さったみたいですが、今回は私たちがやらなければなりませんね。」

 

「あぁ。俺もなるべくならやり合いたくはないが、大統領が理解のある人ならいいんだがな。」

 

 そんな話をしていると通信妖精が話しかけてきた。

 

「要塞から入電!『哨戒感謝する。当方の米機動部隊は今夜到着する。作戦決行は翌日。』」

 

 どうやら聞き分けの良いというか、こちらが警戒しているのは丸わかりなんだろう。無理もない。あの事件の後、外交官がわざわざ日本に来たくらいだ。民間人にはまだしも、国防総省内部では騒ぎになっただろう。

 要塞からの入電には赤城が回答を出した。

 

「『了解。』と返事を出しておいてください。」

 

「了解しました。」

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 俺は艦橋から出て、艦尾の内火艇脇に座り込んで要塞を見上げていると、赤城が来た。

赤城は俺の横に座り、話しかけてくる。

 

「大きいですね。」

 

「そうだな。流石はアメリカと言ったところだろう。」

 

 顔も見ずにそう俺は答える。

 

「深海棲艦との戦争で損耗しないんでしょうか?日本皇国も艦娘発現直前はとてつもない程衰退していたと言いますが。」

 

「アメリカは自給自足が出来る国って言われてるからな。五大湖付近とサンベルト周辺、アラスカ......資源が大量に出る。それに食料も適地適作をしているから国土が減っていなければちゃんと機能しているはずだ。」

 

「そうなんですね。日本は資源は今のところ対外的なものばかりですからね。採れると言っても銀、銅、すず、石炭、質の悪い石油だけですからね。」

 

「あぁ。」

 

 赤城と話しながらだが、俺はこの要塞のある事に気付いた。

要塞と言うなれば、ただの分厚い壁だけでは仕方がない。そのためにこの要塞の外壁には砲がせり出している。その砲の事で気付いた事があるのだ。

 

「ありゃ駄目だな。」

 

「急にどうしたんですか?」

 

「赤城は外壁にポツポツとある砲が見えるか?」

 

「......はい。」

 

 俺は目を凝らして観察する。さっき見て駄目だと思ったが本当は違うかもしれない、そんな期待も込めてもう一度見るがやはり駄目だ。

 

「あれは日本皇国にもある203mm榴弾砲だな。」

 

「榴弾砲......深海棲艦には駆逐艦級以外効果はありませんね。」

 

「全くだ。」

 

 そう言いつつ俺は内心で要塞上部にミサイル発射基地やらサイロやらがあるんだろうなと考えた。

だがミサイルなんてよほどじゃない限り通用しない。それはこれまで戦ってきて証明してきただろう。だから多分、何もせずにただ攻撃を受けるより意味が無くても攻撃をしなければならないという事だと考えた。

 

「亀みたいですね。」

 

「どういう意味だ?」

 

 赤城は突然、そんな事を言い出した。

 

「攻撃ができる訳では無く、ただ攻撃を凌ぐだけの要塞。そんなの亀以外の何物でもないですね。」

 

「そうかもしれないな。」

 

 そう話していると突然、妖精に話しかけられた。

 

「お2人のお身体に触ってはいけませんので、ここに居るのならせめてこれを。」

 

 妖精が5人で来て、4人がお盆を持っている。お盆の上には味噌汁だろう。2つ置かれていて、箸も2膳あった。

つまり身体を冷やさない様に温かいものを気を利かせて持ってきてくれたという事みたいだ。

 

「これは内火艇妖精さん、ありがとうございます。」

 

「いいえ、当然のことをしたまでですよ。では、私たちはこれで。」

 

 そう言って妖精たちは中に戻ってしまった。

 妖精たちが持ってきた味噌汁は白味噌。甘めの味噌汁だろう。中には多分だが、里芋とごぼう、ニンジンが入っている。

 

「温かいですね......。」

 

「そうだな......。」

 

 味噌汁を飲みながら俺と赤城は要塞の話や、作戦の話を止めて違う話をした。

赤城は割と俺の話を知っているところが多いので、普段しない様な話をする。赤城が興味を示したのは何故か俺の両親。何故両親なのだろうか。

それ以外には学校の話、俺がどうして艦載機等の話ができるのか、番犬艦隊の話。番犬艦隊の話は赤城が指示を出しているので、結構真剣に聞いていた。といっても特段何がある訳という訳でもないのでただの何をしていたかという話だけだった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 少しすると妖精から呼び出され、要塞から入電があったという事を聞いた。

 

『日本皇国海軍横須賀鎮守府派遣艦隊並びに端島鎮守府派遣艦隊へ。私はこの要塞の指揮をしているアンガス・ホーキンズだ。貴艦隊の来航を心より歓迎する。当方の機動部隊は今日深夜の予定だ。出撃は当方軍司令部より明日明朝を予定している。それまで、羽根を休めていると良い。』

 

 日本語での入電だったが、どうやら日本語を話せる人間がいるみたいだ。

 

「返信。『心遣い感謝する。』で送ってくれ。」

 

「了解。」

 

 艦橋でそう指示を出すと俺は時計を見た。

時間にして午後1時前。そろそろ昼の時間だろう。そう思い、俺は立ち上がった。

 

「さぁーて、飯だ。何処で食う?」

 

 そう俺が訊くと艦橋にいる妖精たちは答える。

 

「「「士官食堂!」」」

 

「だよなー。」

 

 こうして俺と赤城、艦橋に最低人数の妖精を残して士官食堂に向かった。

何でも赤城曰く『妖精さんは小さいですから士官食堂で間に合うんですよね。人間サイズの私と提督で2席使いますけどまだまだ席はありますから。』という事だ。初日に士官食堂に入ってそれは理解できた。確かに俺たちが座ってても妖精たちが入るには十分だったのだ。だから赤城もそうだが他の艤装でも皆、こうしているらしい。

 





 今回の分を削除してしまう失態......。急遽、今日に回しました(汗)
削除してしまったものと投稿したものとでは内容がかなり違いますが、物語の進行上、どうでもいいのでそのまま投稿します。
 『FF』作戦が続く限り、提督との絡みのほとんどは赤城になると思います。というかそれ以外ないです。
その他の艦娘の視点をちょくちょく入れるつもりですが、気分で入れますので主要メンバーしか出ないです。ご了承ください。

 ご意見ご感想お待ちしてます。

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