【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第百六十六話  『FF』作戦⑤

「端島鎮守府派遣艦隊より入電。『端島鎮守府派遣艦隊旗艦 翔鶴より全艦隊へ。深海棲艦の機動部隊発見。繰り返します。深海棲艦の機動部隊発見。』」

 

 その刹那、緊張感が極限まで上がった。

クイーン・シャーロット群島から面舵を切ってから初の戦闘だ。現在地はバンクーバー島沖。事前の情報でバンクーバー島には現在、人はいないらしい。全員内地に疎開しているとの事。もし島に砲撃が行ってもさして問題ないとの事だった。

 赤城艦内は慌ただしくも、落ち着いて妖精たちが伝令や指示を飛ばしているが一度外に目をやると呆れを通り越して笑える状況になっていた。遠目に見える米機動部隊。ここから見えるのは揚陸艦だが、その揚陸艦では甲板を完璧に焦っている水兵や、異常に大きなサイレンが鳴り響いていた。深海棲艦との交戦はそちらが提示してきたものだと言うのに、その慌て様は何なのだろうか。

 

「第一次攻撃隊、発艦して下さいっ!」

 

『第一攻撃隊、発艦。繰り返す。第一次攻撃隊、発艦。』

 

 赤城は伝令によって甲板上の攻撃隊の準備が整ったのを聞いたのか、そう指示を出した。そしてその指示は艦橋から出ていた妖精によって飛行甲板に伝えられる。その後は30秒後には1機目がもう飛び立っている。それに続々と攻撃隊が続き、最後の攻撃隊が出て行く頃には最初に飛び立った攻撃隊はもう見えなくなっていた。

 端島鎮守府派遣艦隊旗艦の翔鶴から続々と補足位置などの続報が入る中、米機動部隊旗艦のジョン・F・ケネディからの入電も入っていた。

 

「米機動部隊より入電。『こちらジョン・F・ケネディ。深海棲艦の編成。空母2、重巡1、軽巡2、駆逐1。繰り返す。空母2、重巡1、軽巡2、駆逐1。』」

 

 前衛からの続報には無かった艦隊編成が伝えられた。先ほどジョン・F・ケネディから艦載機が発艦していったのが見えたので多分、その艦載機による偵察情報だろう。

 

「続いて米機動部隊より入電。『当方は貴艦隊の攻撃隊離脱を確認後、巡洋艦並びに駆逐艦によるトマホーク一斉射を行う。攻撃隊の攻撃後即時上空退避を進言する。』」

 

「提督っ?!」

 

「返信。『横須賀鎮守府派遣艦隊、了解。攻撃後に攻撃隊は即時上空へ退避。』」

 

 その指示を聞いていた通信妖精が加賀と飛び立っていた攻撃隊へ連絡を入れる。

続々と入る通信に通信妖精は赤城や俺に報告を繰り返しているが、どうやら焦ってはいない様だ。いつもこのようにしているのだろう。

 

「攻撃隊より入電。『我攻撃に成功せり。空母1は大破。重巡1、軽巡1は撃沈。上空へ退避する。』」

 

「赤城より米機動部隊へ。『攻撃隊の退避完了。』」

 

 赤城は通信妖精にそう指示をした数十秒後、前方を航行する米機動部隊両翼の巡洋艦、駆逐艦群から一斉に煙が上がり、ミサイルが射出された。トマホーク対艦ミサイルだろう。

トマホークは煙を上げて飛び上がり、刹那、消えてしまう。あまりにも速い速度で飛翔しているからだろう。

 

「砲戦距離に入ります。全艦へ砲撃戦用意。」

 

『砲撃戦よーい!砲撃戦よーい!敵機来襲に備えー!!』

 

 艦橋の緊張感が最高潮になり、遂に砲撃戦可能範囲に入った。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 最初の砲撃戦では反航戦だった。すれ違う様に撃ち合い、離れた時点で砲撃戦を止める。途中、通信で損害報告が入っていた。

だがその報告は端島鎮守府のものは其処までだったのだが、米機動部隊の報告は一々重いのだ。

 

「米機動部隊より入電。『当方の右翼被害甚大。巡洋艦1隻大破炎上中。駆逐艦1隻轟沈。』」

 

 やはり現代艦は損傷を受けない前提だからだろう。確かに前方には火柱が見える。

 

「やはりか。」

 

「そうですね。現代艦には装甲が皆無ですから。」

 

 そんな事を呟くが、轟沈が出ているのだ。救助はしなくてもいいのだろうか。

 

「救助はどうするんだ?」

 

「救助は意味ありませんよ。炎上している巡洋艦も大破してますから生きてる人が居れば奇跡ですし、駆逐艦は轟沈報告ですが多分爆沈ですから。」

 

 赤城の言う通りだ。炎上している巡洋艦はその前に大破した筈なのだ。深海棲艦も多分ではあるが、赤城たちと同年代の設計に思えて仕方がない。こちらの艦隊が撃ち合いをして争うのだ。

それ相応の装甲を持っていると考えるのが自然なのだ。そして軍艦の建造ではその軍艦が積む砲に耐えれるくらいの装甲を使う。つまり、こちらの砲も耐えれる程度には作られているのだ。だから凌ぎ合いをする。そういう事なのだ。

 

「クソッ......。」

 

「この作戦、こうなる事は分かっていたんです。だから最初、彼方は米機動部隊を取り囲むような陣形を提案していたんです。」

 

 赤城はそう答える。

 

「ですが『イレギュラー』があったのでこちらの艦隊は半減し、米機動部隊は脇腹を見せる事になりました。」

 

 赤城の言う通りなのだ。『イレギュラー』が無ければ米機動部隊の脇腹は見せなくて済んだ筈だ。

赤城はそう淡々と答えるが、やはり赤城にとっては結局、救助をする意味がないという事だろう。それもそのはずだ。妖精は多分、要救助者の前に姿を見せない。そして人間は俺だけで艦娘である赤城。艦を指揮するのは赤城だから自ずと俺が手当をしなければならない。だが赤城は俺にやらせたくないんだろう。

 

「分かった。そもそも妖精は多分姿を見せないだろうから、俺がやることになるだろうから。」

 

「はい。ですから救助する気がないんです。」

 

 そう言って俺は水面を眺める。

凍りついていないが、多分浸かっていれば時期的に凍え死ぬだろう。寒い時期の出撃だから仕方のない事なのだろうか。

 

「戦闘に集中しましょう。幸い海岸線が近いですから、救助でも来ると思いますよ?」

 

 赤城はそう言って指揮に集中した。

 

ーーーーー

 

ーー

 

 

 そこからというもの、接敵した深海棲艦の機動部隊との戦闘は赤城と加賀による第二次攻撃隊によって殲滅されたので、再び警戒態勢に入った。

 交戦しながら南下していたので、どうやら結構進んでいたらしい。艦橋の中も寒くはあるが、我慢できる程度にまで温度は上がっていた。 

 落ち着いたからか、艦隊の詳細な被害報告が赤城に寄せられている。横須賀鎮守府派遣艦隊の被害は軽微。航空隊が損傷機ありというくらいだ。他の艦は無し。端島鎮守府派遣艦隊は右舷の駆逐艦が損傷を受けるも軽微ということらしい。一方で米機動部隊は航行不能が2、撃沈が3。米機動部隊の司令官曰く『これでも被害は抑えられた方だ。』との事だった。

 

「もうそろそろ夜になりますね。」

 

「そうだな。水面が夕焼けで綺麗だ。」

 

 そんな事を言いながら艦橋から外を眺めていた。

 

「米軍側の予想交戦回数って何回でしたか?」

 

「さっきので1回。回頭するまでにあと1回だ。それからは接敵しない予想。」

 

「分かりました。」

 

 そう言うと赤城は妖精たちに指示を出した。

 

「御夕飯にしましょう!最低人員を残して士官食堂に。」

 

 これももう恒例で、いつもの事のになっていた。士官食堂で妖精たちが集まって食事というのも中々面白いものだ。

いろんな話が訊ける。他の艦娘の艤装所属の妖精から訊いた話だとかかなり面白い。

出撃中に伝令が間違えて伝えて、反対方向に砲撃していたりだとか、甲板でご飯食べると言い出して皆で甲板で食べていたら深海棲艦と交戦になるとか。よく分からない面白い事を聞くことができるのだ。どうやらそういう事が赤城でもあったらしく、格納庫で妖精たちが寝ていたら急に取舵で皆が床を転がり、壁に激突する事があったと言っていた。

 士官食堂で食事を終えたら、最低人員を食事に向かわせてから当直が起きて、他は眠る。

 例外なく、俺と赤城は一緒に寝ているのだが、俺が布団から抜け出す事がバレたみたいでもうホールドされて眠っている。

もうここずっとそうなっていて、俺も慣れた。極力触れないようにしているので、俺の中では問題なしって事になっていた。

 ちなみに俺は赤城の艦内地図はだいぶ覚えた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 鎮守府では残っている艦娘たちで提督が戻ってくるまでの決め事として、規律正しく生活することにしました。

先ずは朝起きて朝食を食べた後、鎮守府内の掃除をします。

これは班に分かれて、それぞれの箇所を掃除しますが、大掃除の時ほどでは無く、見える範囲でと決めています。ですので、廊下や部屋などの掃き掃除に窓の拭き掃除くらいです。

 

「掃除終わりました?」

 

「「「「「はいっ!」」」」」

 

 私たち霧島、熊野さん、吹雪さんは提督がお帰りになる時まで横須賀鎮守府の艦娘たちを仕切って何かを自主的にする事にしたんです。 

 この後は体力作りですね。幸い、提督が鎮守府内にグラウンドを作って下さったのでそのトラックを順番に走っています。勿論、恰好は普段着ている物ではなく、運動着です。以前、運動会が行われた際に配られたものですね。それ以降に進水した艦娘たちのも酒保で注文できますので皆さん持ってます。

体力作りは走るだけではなく、腹筋や腕立てスクワットもやり、最後には鬼ごっこやドロケイ、だるまさんが転んだなどをやってます。この自主的な行動を始めて4日くらい経ちましたが、ドロケイはかなり人気がありますね。私自身、結構楽しんでます。

 その後は休憩と昼食です。

 

「いただきますっ!!」

 

 運動した後のご飯はとても美味しいです。皆さんもそうみたいで、間宮さんも私たちに合わせて下さったみたいで結構濃い味のモノが出ます。

そしてご飯を食べた後は戦術勉強会です。資料室から戦術指南書を持ってきて会議室に集まり、それぞれの艦種や戦闘方法に合わせた戦術構想、議論、机上演習をします。ちなみに私は水上打撃部隊としての任務が多いですから、そういう類のところで勉強してますね。

ときより顔を見せてくれる夕立さんに話を訊いたりして皆さんの戦い方などを見直す時間になりました。

偶に寝てしまう艦娘もいますが、そういう艦娘はあまりに寝るようなら端で寝て貰ったりしますね。追い出すのも気が引けますから。

 戦術勉強会は3時間やりますが、休憩を挟みながらです。戦術勉強会は3時までやりますがその後は皆さん、自由に過ごしてます。私はというと、酒保に買い物に行ったり本を読んでます。まぁ、大体がそうなんですが。

 夕食後は早めにお風呂に入って、自由時間の続きですね。本を読んで過ごしたり、どこかに集まってお話してます。戦術勉強会の時間外でも勉強している艦娘も居ますので本部棟と艦娘寮は煌々と電気を付けてます。消灯時間までは電気をつけてますが、それまでに寝てしまう艦娘が多いので結構早いですね。私も例外に無く、早くに眠くなってしまいます。ちなみに演習は合間を縫ってやってます。

 こんな生活を今はしていますが、提督がお帰りになったら元に戻しますよ。

 




 今回も引き続き作戦視点と鎮守府視点を同時に投稿しました。よくよく考えてみると、いつ演習しているんだろうか?と思った方も多いと思いますが、合間にやっていると補完して下さい。無理やり最後の文に繋げましたが......。

 ご意見ご感想お待ちしてます。

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