【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第百八十話  提督と艦娘②

 

 今日の秘書艦は大井だ。

こんなタイミングでの秘書艦が大井だというのは何処か運命を感じる。どうしてあんな話をした記憶がまだ新しいのに、こんな早くに秘書艦になってしまったのだろうか。

 

「おはようございます。」

 

「おはよう。食堂に行こうか。」

 

「はい。」

 

 俺は必要以上に話さずに言葉を交わして食堂に向かう。

道中も何も話すことは無い。だがピッタリと横について離れない大井に俺は戸惑いながら食堂に入って朝食を摂った。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 執務中も特に何も話すことはなく、事務的な会話をして大井が書類の提出に事務棟に行くまで俺は気を張っていた。

そして大井が帰ってきた後も少しの間は何も言わなかったが、大井から話を振ってきた。

 

「昨日、金剛さんが提督の部屋に入っていくのが見えたのですが、なんかあったんですか?」

 

 大井は小首を傾げてそんな事を聞いてくる。

大井なら別に話をしてもいいのでは無いかと直感的に思った。大井も金剛と目的は違うかもしれないが、俺の布団に入った1人だ

 

「あぁ。布団に入りに来たよ。大井と同じ理由だったけどな。」

 

「そうなんですか。」

 

 俺がそういうと何故だか大井は頬を膨らませた。

 

「ふーん、そうですか。提督は私よりも金剛さんみたいな"大きい"娘がいいんですか?」

 

「何だよその大きいを強調した言い方。」

 

「何でもないですー。全く......。」

 

 そう言ってそっぽ向いてしまった大井に俺は『どうしたんだろうか』と思いつつ、手元にあった本に目を落とした。

何かを大井に訊く気にもなれないので本を開き、読む。そんな俺を見たまたも大井は話しかけてきた。

 

「提督、提案があるんですけど。」

 

「ん?」

 

「秘書艦、くじ引き制を止めませんか?」

 

 そう大井は言ったのだ。

秘書艦を指定せずにいたのは以前、長門のところに秘書艦がやりたいと訴えが集中したからだ。何故秘書艦がやりたかったのか分からないが、それでも集中した為にくじにしたのだ。

だがそれを何故止めないかと大井は提案してきたのだろうか。

 

「どうしてだ?」

 

 俺がそう聞くと大井は考える間もなく答えた。

 

「秘書艦経験のない艦娘が秘書艦になった時の手間ですよ。幾ら執務が1時間で終わるからといって新たな秘書艦教育のために補佐をつけたり提督が教えるのは時間がもったいないです。」

 

「そうは言っても1時間伸びるか伸びないかっていう違いだぞ?」

 

「それでもです。それに今日持ってきた書類の中にあった大本営からのやつ、提督読んでないですよね?」

 

「そんなものあったか?」

 

 そう俺は言いながら大井が言っていた大本営からの書類を探すと、確かにあった。

封筒だったので開けて中身を見た。

命令書。内容は作戦決行を促すものだった。

 

「......やれというのか。」

 

「そうだと思いましたよ。多分、出撃先は中部海域です。」

 

「......そうみたいだ。」

 

 作戦草案をし、すぐに準備、決行をしろとのことだ。

期限付きではないがすぐに始めろと書いてある。

 

「中部海域の奪還と制圧。深海棲艦の掃討......。揚陸艦の護衛。」

 

「いつも通りですけど、中部海域はこれまでの深海棲艦よりも強いのでは?」

 

「勿論だ。ウチので太刀打ち出来るだろうが、大破が続出するだろうな。」

 

 俺は命令書を握り締めて机に叩きつけた。

 

「......いきなり大本営がこんなモノを送りつけて来るとはっ!」

 

 叩きつけた命令書を大井は拾って広げると俺にあるところを指差して言った。

 

「これ、出処は大本営ですけど責任者が違いますよ。ほら......。」

 

 俺はそう言われてマジマジと見てみる。大本営から送られてくる書類は大体は責任者の欄が総督になっていてたまに新瑞なのだが、今回のは全く知らない人間の名前になっていた。そしてその名前の横に役職が書いてあった。

 

「海軍部情報課?階級は......大佐か。」

 

「将官では無いようですけど......。」

 

「そうみたいだな。」

 

「今まで聞いたことのない部署ですね。」

 

 大井の言う通りだが、俺が大本営に努めている人間をほとんど知らないのにも原因があるように思える。

 

「それに印は総督のものですよ?」

 

「何だと?!」

 

 そう言われて俺は命令書をまたマジマジと見つめる。

確かに印のところの奴はいつも送られてくる書類にあるモノ、総督の印だ。

 

「命令書である以上、遂行しなければならないだろうな。」

 

「そんなっ!出処が分からない命令書通りに動いても......。」

 

「いい。すぐに草案と編成を考えよう。」

 

 俺はそう言って海域の情報を思い出そうと頭をひねり始めた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 『WC』作戦、『TC』作戦、『HC』作戦、『BC』作戦と名付けた中部海域攻略に向けた作戦は至ってシンプルだった。

『WC』作戦では本来ならば潜水艦3隻入れなければならないと言うが、今回はそれ通りに行くことになる。そのために先ずはイムヤとゴーヤの他に潜水艦を1人用意する必要があるので建造が始まる。

『TC』作戦は通常運用している艦娘の反復出撃によって殲滅。

『HC』作戦では千歳型水母(※初登場)を編成に加えた作戦をしなければならない上に軽巡以下でないと出撃すら出来ないらしいのでそれに見合った編成をすることになる。こちらも反復出撃をする。

『BC』作戦では俺が編成するような編成でも十分攻略可能ということのなのでそのままいつも通りに済ませる。

この一連の作戦を『NG』作戦と呼称することにした。そしてそれぞれを段階で表す。

 作戦内容は大本営に報告しない。理由は単純に俺たちが『何処に向かい』、『何処に攻撃する』かを隠すためだ。多分、返信用封筒に入れて送っても見るのは海軍部情報課に送られてしまうからだ。だが別の茶封筒を用意する。このやり口は赤城が新瑞に連絡を取った時のやり口だ。これなら怪しまれはするが連絡出来るだろう。

 

「提出してきます。」

 

「頼んだ。」

 

 大体の作戦の土台が出来た頃は既に昼も跨ぎ、夕食の時間が近づいていた頃だった。執務室に差し込む陽の光も紅色になっている。

 

(大井に朝、言われた事も考えないとな。)

 

 大井からされた提案、秘書艦のくじ引き制の廃止だ。大井の提案だが決定権は俺にある。

最終的に決めるのは俺だ。提案されたからには無碍に出来ないので、一応考えることにすることにした。

 





 今日は少し少なめです。そしてうっすいです。
ですけど、今後の展開に重要な内容ですので......。
 そういえば比叡も改二になったのと先行登録に当選しました。先行登録に当選したはいいもののアンドロイドじゃないんですよね......。

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