【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第百八十六話  提督と艦娘⑧

 

 俺はいつも通りに目を覚ました。警戒態勢に入って今日で4日目だ。もう警戒態勢というか、警戒するのに慣れてしまったみたいだ。

本部棟に限り、日中もずっとカーテンを閉めてある状態にしている。それは侵入者から本部棟の状況などを外の遠いところから把握されるのを防ぐためだ。

 俺はカーテンを開けたい衝動を抑えつつ、制服に着替えて執務室に出た。

 

「おはようっ!提督。」

 

「おはよう。」

 

 今日の秘書艦は秋津洲だ。昨日の夜のことだが、くじ引きの制度はまだ続いていてそのくじで秋津洲は当たりを引いていたのだ。

その時に俺のところに来て、『哨戒任務もやるから、頑張る!』と宣言していた。

 それとよくよく考えたら昨日、アイオワと酒保に行っていたのだが、普通に本部棟から出ていた。

昨日は少し肌寒かったので格好も普段の制服の上から上着を着ていたので内心それで大丈夫だろう。

 

「朝ごはん食べに行くかも?」

 

「そうだな。」

 

 俺はそう言って立ち上がって秋津洲と執務室を出るのだが、俺と秋津洲は反対方向を向いて歩き出した。

 

「ん?秋津洲?」

 

「あー、今日はあたしの艤装でご飯にしようと思ってたかも。」

 

「おっ、分かった。その前にリモコン置いてきていいか?」

 

「勿論。」

 

 俺は何の疑問も持つことなく、食堂に寄って既に居た赤城にリモコンを任せると秋津洲の艤装に向かった。

 秋津洲の艤装ではもう結構出来上がっていたみたいで、もう持ってくるだけになっていた様だった。

 

「はーい、おまたせかも。」

 

 そう言って秋津洲は俺の前にご飯と味噌汁、里芋の煮っころがし、焼き魚、漬物を置いて自分のところにも同じものを置いた。

俺のお茶碗にご飯が余分に持ってあるのは男である事を考慮しての事だろう。実際、お腹は減っているのだ。

 

「「いただきます。」」

 

 そう言って手を合わせて朝食を食べ始めた。

秋津洲が甲板で食べたいとか言い出したので今は甲板、連装高角砲の後ろに机を出して食べている。

黙々と食べている訳ではなく、色々と話しながら食べているので結構時間が掛かった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 秋津洲の艤装で朝食を食べた後、執務をしたのだが秋津洲が初回にしてはかなり執務が出来るみたいで、経験者がやった時とほぼ変わらない時間で終わってしまったのだ。

 昨日の夕食後に秋津洲が『補佐を頼める娘が丁度用事があって補佐なしでやることになるかも。迷惑じゃなければ教えて欲しいの。迷惑だったらまた探すから......。』と言われてしまって別に迷惑なんて思ってないので教えることになったのだが、かなり飲み込みが早く、途中から俺の補佐なしでも出来るくらいになっていた。

そんな執務は小1時間で終わったので俺と秋津洲は暇を持て余していた。

 

「執務が終わると暇かもー。」

 

「いつもこんなんだ。」

 

 俺は秋津洲の暇だコールを質素に返しつつ、腰をポキポキと鳴らした。ちなみに姿勢を良くしただけで鳴るので多分相当猫背で執務をしているのだろう。

 暇を持て余している秋津洲は秘書艦の机の引き出しを開けてみたりした後、相当暇になったのか立ち上がって俺のところに来た。

 

「提督。」

 

「ん?」

 

「提督の私室の台所、借りていいかも?」

 

「何故だ?」

 

「そろそろお腹空く頃かも。」

 

「あー、そうかもしれない。」

 

 俺はそんなことを答えながら時計を見た。現在の時刻は午前10時40分過ぎ。11時くらいにいつも秋津洲はお菓子を持ってきてくれるので腹時計がそうなってしまったのだ。

 

「使ってくれて構わないぞ。」

 

「分かったかも。」

 

 そう言って秋津洲は手提げを持って俺の私室に入っていった。扉は閉めずに開けたままで手提げには食材が入っていたみたいだ。

私室で物音がし始めた頃、俺は机の上にあった本を手にとって読み始める。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 午前11時を過ぎた頃に俺の私室から美味しそうな匂いが漂ってきて、俺の鼻孔を刺激した。甘く、香ばしい香りだ。

私室からトレーを持って出てきた秋津洲はそれを俺の目の前に置いた。

 

「今日は出来立てが美味しいモノを用意したかも。パンケーキだけどよかった?」

 

「いいぞ。むしろ丁度食べたかったんだ。」

 

 そう言って俺はフォークとナイフを使って切り分けて食べていく。その姿を秋津洲はただ眺めていただけだった。

どうやらいつも作ってはくれるみたいだが、自分では食べてない様だ。

俺はそんなことを気にしつつもほんの数分で食べ終わり、秋津洲に礼を言った。

 

「ごちそうさま。それとありがとう。」

 

「お粗末様!いえいえ、好きでやってるから。」

 

 そう言って秋津洲はトレーを持って俺の私室に引っ込んでしまった。その後、水が流れてくる音がし始めたので、どうやら洗い物を始めたみたいだった。俺は洗い物くらい手伝うと言ったのが、『いいかも。あたしがやりたいことだから。』といって断られてしまった。

何だか腑に落ちないが、俺は洗い物をする秋津洲を眺めて少しゆっくりした後に、食堂に遠回りで向かった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 昼食を食べた後、俺がボケーっとしていると秋津洲が話しかけてきた。

 

「そういえば昨日、他の娘から凄く質問攻めにされたの。」

 

「何かあったのか?」

 

「何でも、提督にお菓子作って毎日持っていってる事がバレたかもっ......。」

 

「皆知らなかったのか?」

 

「そうみたい......。そしたらなぜだか寮の調理室でお菓子作り教室を開くことになっちゃった。」

 

 そう困った表情をして言う秋津洲は、少しため息を吐きながら頭を掻いて『どうしよう......。』と呟いて別の話を振ってきた。

 

「そういえば昔、金剛さんって凄く危険視されてたけど、今では赤城さんと同等の見方をされてるのはどうして?」

 

 この流れで来るとは思ってなかったので、俺は一瞬思考が停止してしまった。

さっきの話と全く関連性がないのに、一体どうしていきなりこんなことを訊いてきたのだろう。

 

「どうしてって......今でも監視下にあると思うんだが。」

 

「そうかな?それに調べて分かった事だけど、あそこまでしてたら監視が付くでしょ?」

 

「そうだな......実際、監視は付いていたぞ。」

 

「『いた』ね......過去形かも。」

 

 そう秋津洲は口癖である『かも』を言わずに聞いてくる。かなりの違和感を感じながらも俺はそれに答えていくが、どうしてそんな事を俺に聞こうと思ったのだろうか。

 

「赤城さんの信頼に値する何かが金剛さんにあるの?」

 

 その言葉の返答に俺は困ってしまった。

たった1文のために俺は頭をフル回転させた。ここで秋津洲にあの事を言ってしまえばどうなるか分からないが、ある程度想像が付く。

だがその一方で、秋津洲がどういう括りにされているか考えてみれば言ってしまってもいいのではないかとも思えてくる。

秋津洲は移籍組なのだ。

 

「言えない。」

 

 俺は結局、その回答を選んだ。

俺は口には出さずに俺への再確認を含めて答えていた。『大井による『提督への執着』の見解の影響』だと。

 

 秋津洲はそう俺が言って不思議がるが、何を聞いても俺は言うつもりは無かったので秋津洲はそのことを俺に訊くのを止めたみたいだった。だがなんとなくだが、秋津洲は俺がその質問に答えない事が分かっていたのかもしれない。

そして秋津洲はまた別の話を振ってきた。

 

「あたしね。」

 

 そう秋津洲は呟く。

 

「あたし......金剛さんと同じかも......。」

 

 それを聞いた瞬間、俺の脳内での情報処理がストップしてしまった。

 

 





 昨日は諸事情で投稿できませんでした。すみません。
まぁ、今回はあるのでご勘弁を。
 秋津洲の暴露で止まりましたが、ニヤケが止まりませんです。
今後も乞うご期待。

 ご意見ご感想お待ちしてます。

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