【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第百八十八話  提督と艦娘⑩

 

 次々と秋津洲が書くメモから次々と混成警備艦隊との連絡途絶が伝えられ、約30班あった混成警備艦隊のおよそ5/6が交信途絶。

辛うじて連絡の取れる艦隊も艦娘が消えた、門兵が消えたと報告をしていた。

状況が全く掴めない。今、鎮守府で何が起きているのかさっぱり検討もつかないのだ。

 

「なぁ、秋津洲......。」

 

「何かも?」

 

 俺はそんな中で、気になる事があった。連絡が取れないというのはどういう状況でなのか、だ。

侵入者がもし、混成警備艦隊の班を襲っているのだとしたら殺害か無力化、どちらかをしているということは明白なのだ。これまでの間に秋津洲から伝えられているのは連絡の途絶と無力化された後だということ。だが本位は分からない。

 

「連絡の途絶えた艦娘や門兵の状態は確認できているのか?」

 

「うーんと......気絶させられているみたい。でも気絶させられたら密室に閉じ込められたりしているみたいだから気が付いても連絡も取れないし、脱出出来ないって5分前になんとか出てこれた班から連絡あったけど......。」

 

「けど?」

 

「また連絡が途絶えたかも......。」

 

 どうやらまた侵入者に襲撃されたみたいだった。

 

「......。」

 

 俺は黙ることしか出来なかった。性格には頭の中に何も考えていられなかったのだ。

さっきまで緊張と恐怖に慣れたとばかり思っていたが全然違っていた。混成警備艦隊が無力化される事も初めてな上、武下までもが連絡が取れなくなったことなんて今まで無かったのだ。

現状、無力化されずにいる班も怯えてしまって門兵の戦意が喪失しているらしい。実質、こういった警備や護衛に素人な艦娘のみが少数巡回しているだけなのだ。そういう俺も既に戦意はない。恐怖で支配されている。表情に出さないようにするので精一杯だった。

 

「提督っ......。」

 

 そんな俺に秋津洲が話しかけてきた。

 

「混成警備艦隊......全班との交信途絶、したかもっ......。」

 

「っ!?」

 

「総員輪形陣っ!!」

 

 秋津洲のその報告に俺は嘗て無い程、身体が震え始めていた。

ここまで震えたのは初めてだ。そして秋津洲のその報告を聞いたビスマルクは番犬艦隊に輪形陣を取るように命じ、俺の回りに皆が所狭しと並んだ。

俺の目の前に立っているのはフェルトだ。立っていた位置でそうなってしまったみたいだ。

 

「皆死んだ訳ではないんだ。それに私たちが付いている。」

 

「そうだな......。」

 

 そうフェルトは言うが、ストレスはかなり溜まってきていて、身体に変調をきたし始めていた。頭痛、めまい、吐き気......そんなものが俺に襲いかかる。考えすぎなのだろうが、脂汗が滲み出し、背中も妙に張り付く。呼吸も乱れてきているのが自分でも分かる。

 

「クッ......。」

 

 俺は悪態を吐き、執務室のドアを睨む。

一向にその扉が開かれる事は無いが、目を話さずに瞬きも惜しんで見た。そうすると、廊下から足音が聞こえてきて、執務室の扉の前で止まった。

刹那、執務室内に緊張が走る。ビスマルクたちは艤装の砲を扉の方に向け、目はそちらを完璧に捉えていた。

そして扉が開かれた。

 

「へーイ?......あれ、どうしてデス?」

 

「なんだ、金剛だったのね......。驚かせないでよっ!」

 

 執務室の前に来ていたのは金剛だったみたいだ。

少しだけだが、安堵が出た。

 

「おおっと、忘れてマシタ。提督に報告デス。」

 

 そういった金剛は袖から紙を出して読み上げ始めた。

 

「鈴谷と赤城ら空母数名がまだ無力化されずに残ってマス。鈴谷は大丈夫だと思いマス。でも、他が心配デス。赤城たちもなんとか逃げ回ってるってことですケド、正直状況は良くないようデス。それと私はイワズトモ知れてますノデ、省略しまシタ。」

 

 そう言うと金剛も艤装を身に纏った。

金剛はこっちを向いて一言言った。

 

「来マス。」

 

 その言葉の意味を俺は飲み込み、身構えた。護衛の番犬艦隊もそれぞれを睨みつける。集中力を極限まで高めつつ周りの状況を整理していっているみたいだ。

俺はと言うと何も出来ずに居た。身体が動かしたくても動けないのだ。

そしてその時は来たのだ。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 『提督への執着』。横須賀鎮守府艦隊司令部の艦娘が提督を欲し、『海軍本部』の提示していた条件を全て満たしたために提督が着任したのと同時に発現した横須賀鎮守府艦隊司令部の艦娘特有の病気みたいなもの。正体はまだ分かっていない。

 『提督への執着』によって起こる艦娘の精神変化は一種の二重人格とも見える。その例が金剛だ。

彼女は提督の身体的、精神的な危険などを察知すると人格が豹変する。

一般的に言われている金剛からガラリと変わり、汚らしい言葉遣いをする。

 『提督への執着』は感染することは無いが、かなり危険なモノとして腫れ物を触れるかのような扱いをされている。

 大井による『提督への執着』に関する仮説は正しいといえるだろう。

確かに何処か提督をヒトとして見ている艦娘とモノとして見ている艦娘とではかなり会話の内容などが違う。モノとして見ている艦娘との会話にはどこか不自然な点が多く見られた。反してヒトとして見ている艦娘は提督をヒトとして認識してないと出来ない行為が見られる。よって大井による仮説は正しいとされる。

 最大の謎であるこのシステムに関しては何一つ分かることが無かった。

 番犬艦隊が海に出て戦えない理由がある。まず艦隊司令部間での艦娘のトレードが行われていないこと。次に、建造されたところもしくはドロッップした艦隊の所属以外は動くことは出来るが、かなり動きが制限されているから。大きく纏めると『世界がそうできているから。』といえるだろう。

 

 俺は何をしに来たのだろうか。俺は今は大学生の筈だ。ずっと書類に向き合って、友達と話すこともなく、部下と過ごす。そんな生活の繰り返しだ。そして俺は大学に合格するために一生懸命勉強をしていたんじゃないのだろうか。それがもう見えなくなってしまっていた。

俺は一体、どうして艦隊の指揮をしているのだろうか。

どうして指示を出しているのだろうか。

俺は一体どうしてこんなことをしているのだろうか。

俺は一体何をしているのだろうか。

俺は一体いつからここにいるのだろうか。

俺は一体何故目の間に並んでいる艦娘の背中に居るのだろうか。

俺は一体誰なんだろうか。

 

 記憶が混濁を始め、俺自身も理解不能な状況に陥った。

俺は頭で考えているだけで実際には動けないだろうと思っていた。俺は......俺は......。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 気が付くと俺は起き上がり、周りを見渡した。俺の周りに立っていたはずの番犬艦隊も秋津洲も金剛までもいなくなった場所に俺は手錠を書けられている。

そしてその瞬間、俺の背中にひんやりと冷たい棒状のものが当たった。きっと銃口だろう。

俺は言っても無駄だということが分かっていたので、何も言わずに背中の方向を見る。

そこには人が居た。

 

「どうなっている。」

 

 そう俺が愚痴をこぼすかのように言った。

 

「さぁ、どうでしょうね。」

 

 そんな声で俺への返答があった。だが実際はまだ付いていないんだろう。

 

「あなたを殺しに来ましたよ。」

 

 俺の顔を覗き込んだそいつは俺の眉間に拳銃の銃口を当てた。

 





 今日は少し分量が少ないです。
今もかなりウトウトしながらあとがきを書いてますけど時間がかかります。そしてなって書いたか覚えてませんの絵。

 ご意見ご感想お待ちしてます。

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