【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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今回は単発ネタです。
連続ネタを書きたいんですが、ネタが思いつかない......。


第二十二話  提督の知らなかった真実

「すみません、司令ぇ......。」

 

「あぁ、こういう事もあるさ。」

 

今日の雪風は絶不調だった。開発が何故か4回が全部失敗に終わり、最近続けているレア軽巡レア駆逐レシピ4回もいい結果が出ていない。

俺はそれに頭を悩ませていた。何故なら余裕ある資材に俺の心はオープンになり、建造回数を緩めることなくここまで来た。

やばいっ!油が3000切ってるじゃねぇか!と、叫んだ時にはもう遅かった。だってそれ今日だったからな。

 

「まっ......まぁ、気にするな。今日の分は終わりだ。明日また頼むよ。」

 

「はい......。」

 

雪風は俺にそう言われ、執務室をトボトボと出て行った。その背中にはいつもの元気さが見られず、少し不憫に思った。

 

「はぁ。軽巡は......っと、名取と五十鈴、川内、那珂の艤装ね......、近代化改修かな?」

 

俺はそう呟いた。これは俺の居た世界で艦これをやっている時の常套手段だ。解体は流石に気が引けたからだ。

その呟きに長門は反応して、俺が近代化改修を行う指令書を取り出した時に声をかけてきた。

 

「提督、いつも思っていたんだが......。」

 

「何?」

 

「五十鈴の艤装をそのまま近代化改修に回すのは勿体ないと思うのだが。」

 

長門はそう言った。俺は長門の言った言葉からある言葉を連想させていた。

五十鈴牧場。五十鈴は練度12で改造でき、その際に改造された五十鈴は21号対空電探を持っている。それを求めて数多の提督は五十鈴を練度12まで上げてから装備を取り、解体または近代化改修の材料にする。

そのことを指している。俺はなんか気分が乗らなかったのでそれをやっていなかったが、まさか艦娘からその様な事を聴かされるとは思ってもなかった。

 

「それは練度を上げて改造した時に所持している電探の事か?」

 

「そうだ。ウチの鎮守府は何故か電探には恵まれないだろう?五十鈴の艤装から貰うのが一番簡単で確実だ。初期の五十鈴が第一艦隊所属だった頃は、赤城もそれに助けられてたからな。」

 

「そうか......。」

 

俺は何とも言い難い感情になっていた。怒り、憎しみ、そんなものじゃない。悲しみみたいなものの混じった感情だ。

 

「俺はそんな事をしたくない。」

 

「何もやれとは言ってないだろう。ただ、戦力増強には先駆けとして21号電探が必要なのだ。」

 

「だけどそれはやれって言ってるようなものだろう?」

 

「提督がそう捉えてしまったのなら謝るが、必要だと私は考えるぞ。」

 

「嫌だっ!!そんな事っ!!」

 

俺はその勢いで執務室を飛び出してしまった。

 

「あっ!おい、待てっ!!!」

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺は長門の止める声も聴かずに執務室を飛び出して走ったが、よく考えたら俺、食堂と執務室以外行った事がないから迷うだろう、確実に。

充てもなく、ずっと同じような景色の続く廊下を走り、建物を飛び出していた。

俺がこれまで住んでいた建物は想像以上に大きく、作りが凝っている。3階建てでとても横に長い。色は少し煉瓦っぽいが、とても建物の雰囲気に合っていた。

俺はその足で鎮守府の中を歩いた。鎮守府は檻の様だと比喩されていたが、本当にその通りだった。四方、正確には三方は煉瓦造りの塀で囲まれていて、向こう側が見えないようになっていた。

そして、その敷地はかなり広く、通っていた学校も端から端まで歩いて20分以上かかったがそれ以上に広かった。敷地内には俺の出てきた建物の他にいくつか建物が立っており、それぞれに看板が立っていた。

寮、闘技場、酒保(※雑貨や日用品が売ってる店)、事務所、門兵詰所......。色々な建物があった。闘技場がなんなのか気になったが、中から柔道なので聴くような音がしたから武道場みたいなものかと考えて通り過ぎた。

建物の他にも、木のカーテンのかかった屋外テラスや運動場的なものもあった。

俺は彷徨った挙句、海岸のコンクリートでできた防波堤の上で座っていた。吹き付ける潮風にあおられて、遠くに見える船を眺めた。

そうしていると俺の背後に誰かか歩み寄って立った。

 

「あら提督が執務室と食堂以外に居るって珍しいじゃない。」

 

そう言って俺の横に来たのは五十鈴だった。さっき長門と話していた五十鈴だ。

 

「あぁ......ちょっとな。」

 

「何よ、五十鈴が訊いてあげるから言ってみなさい。」

 

「あぁ。」

 

俺は洗いざらい聞いてもらった。と言っても、この話に関係のある事だけだが。

他の事を話してしまうと、ショックを与えてしまうかもしれないからだ。例えば捨て艦や単艦出撃、無理な出撃などだ。

俺の話を五十鈴は有無も言わずに黙って聞いてくれた。

 

「そう言う事があって、ろくに出た事のない鎮守府をウロウロしてここに行き着いたって事ね。」

 

「そうだ。こんな事、本人の前で言っても虚しくなるし、本人は傷つくだけだろうけどな。五十鈴?」

 

「何?」

 

「幻滅したか?俺は自分の意思でやろうとしている。電探の為に。」

 

俺がそう言うと五十鈴は少し考えた後、答えを出した。

 

「良いんじゃない?確かにウチの鎮守府はやけに装備が揃ってるけど、電探は皆無だったものね。」

 

「良いのか?俺の話だと、練度を12まで上げたら解体、良くて近代化改修に装備剥ぎ取られてしまうんだぞ?」

 

「そうね。でも必要な事なんでしょ?強くなる為に、生き残る為に。そのための先駆けとしてするのならね。」

 

俺は黙ってしまった。当の本人でさえ、長門と同じ事を言うのだ。

五十鈴牧場は俺の居た世界でSSでは大抵、同じ艦娘が複数で練度が12まで上げられたら剥ぎ取られて解体される。そんな描写が多々あって、決まってそのシーンはシリアスに書かれていた。

何も言わずに解体されていく五十鈴......そんな事を俺は想像していた。

......ん?

 

「なぁ五十鈴。」

 

「何?」

 

「同名艦が建造・ドロップされた時ってどんな状態なんだ?」

 

俺は唐突にそんな事を訊いてしまった。

いつかの記憶にそんな話をいっぺん誰かと話しているんだ。だが、その状態がどうなっているのかだけ思い出せないでいた。

 

「そうね......。ドロップされたのは、内部構造がボロボロだったりするけど、すぐに使える状態だったりするわ。建造されたのは、ピカピカで出来立てって感じ。」

 

「艦娘は?」

 

「居る訳ないじゃない。同名艦だったら建造・ドロップした鎮守府にその艦娘が居たら建造・ドロップされた艦には艦娘は居ないわ。」

 

「はへぇ!?」

 

情けない声で反応してしまった。

五十鈴の口から説明された事はつまり、俺の想像していた様な事は起きないという事だ。

 

「だけど、他の鎮守府には同名艦がいるだろう?あれはどうなんだ?」

 

「あれはそれぞれの鎮守府に同じ艦娘が存在できないって事。つまり、他の鎮守府には同じ艦娘が少しずづ違う存在としている。いわば顔が似ている唯の他人みたいなものよ。」

 

俺は一瞬で身体から力が抜けるのを感じた。

 

「そうだったのか.......。じゃあ、さっき俺が言った五十鈴牧場ってのは?」

 

「その五十鈴牧場って言うのが何かわからないけど、他の鎮守府の五十鈴が似たような事を言っていたわ。確か『艤装を乗り換えて練度を12にしたらその艤装を改造してすぐに艤装を取って解体するのよ。忙しいったらないわ。』とか言ってたわ。」

 

俺は自分の世界での作り話に踊らされていたことをここで実感した。本当はそんな事が起きていたのだ。

五十鈴牧場とは、五十鈴が同一の艤装を複数乗り換えて練度を上げ、12になったら改造して剥ぎ取り、解体する。そういう事だったのだ。

 

「......ありがとう、五十鈴。」

 

「えぇ、当然よ。」

 

俺は五十鈴にお礼を言うと、五十鈴が『執務室まで遠回りで送って行ってあげるわ。案内をしてあげる。』そう言って俺を遠回りで鎮守府を案内してくれた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺は長い五十鈴の案内を聞きながら執務室の前にやっと着き、俺は執務室の扉を開いた。

 

「提督っ!どこへ行っていたんだ!」

 

「すまん。」

 

俺が入って長門の一声がそれだった。

 

「さっきは強く言い過ぎた。すまん、提督。」

 

強く言ったかと思うと長門は間髪入れずにそう俺に言った。

 

「いいさ。」

 

俺はそう言って机に着き、近代化改修の書類から書き込んだ五十鈴の文字を消した。

 

「五十鈴。忙しくしてしまうな、すまん。」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「いや、何でもない。」

 

どうやら俺の呟いた言葉は長門には聞こえなかった様だ。

 




これが五十鈴牧場の真実だ(白目)
と言っても作中だけですがねw
ネタ感が全然ありませんが、かなりネタです。笑えませんが。
最近自分で書いたのを読み返すんですが、かなりの頻度で長門が出てますね。いや、毎回出てる。これは秘書艦ローテにしたほうがいいのか?設定上、第一艦隊旗艦と秘書艦は別って事になってるんですがねw

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