【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話 作:しゅーがく
今日はなんか雰囲気違う話です。
そしてすごく適当な構成......。
まぁ、ノリで書いた単発で本編とは全く関係ないんですがねw
いつも通りの朝、布団を恋しく思いながら着替えて私室から出てみると執務室に蒼龍がいた。
「おはようございます、提督。」
俺は顔を洗って歯を磨きはしたが、まだ寝惚けていて状況がよく掴めてなかった。
「おはよ......。」
俺はそうふてぶてしく返すと、椅子に座って出された報告書の枚数を数える。
本当に執務と言ったら報告書の整理と消費資材の計算、消耗品の発注くらいなのだ。
「あのっ......提督っ?」
手を胸の前でモジモジとしている蒼龍にそう言われて顔を上げた。
「なんだ?」
「お腹が、空きました......。」
そう言う蒼龍はお腹を押さえていった。どうやら鳴りそうな様子だ。
俺はそう思い顎に手をやる。
鎮守府は人間が艦娘を閉じ込める檻の様な施設。一応人間は居るが、結構艦娘に対しては消極的な態度をする。
そして艦娘の扱いが酷いのだ。食事をする艦娘に対しての用意される食料は計算された量しかないのだ。それに、蒼龍の様に御飯時でない時間に腹が空いた艦娘は食事の時間まで我慢しなくてはいけない。普段、動いてばかりいる彼女らにとってはとても辛い事だ。
それに関しては間宮も悩んでいるというのを聞いた。そして酒保はあるものの、本当に必要な日用品くらいしかない。お菓子なんかも置いていないのだ。
「腹が減ったのか......朝食までは時間あるし......。」
俺は時計に目をやる。時刻は6時を回ったところだ。ちなみに朝食は8時だ。蒼龍の様子だととても持ちそうに無い。
「火の使えるところなんて食堂くらいだけだろうし......そもそも食材が無い。」
そう言ってはぁと俺がため息を吐くと、蒼龍が俺に火の使える場所があると言った。
そこは共用炊事場。艦娘の寮にある炊事場らしいが、使う機会はせいぜいお茶を淹れる時くらいだと蒼龍は言った。
「すまんな......我慢してくれ。」
俺がそう言うと蒼龍はションボリしてしまった。
悲しそうな表情でお腹を押さえる姿は何だかアレだが、気を紛らわしてもらう為に色々と話してみる事にした。
ーーーーー
ーーー
ー
朝食まで30分という時間まで迫った頃、俺と蒼龍はある話題で盛り上がっていた。
艦載機だ。
最近大きく艦載機の異動をしたんだが、その時に工廠の妖精が変な事を言っていたという。
『変な艦載機が出てくる。』
というのを蒼龍がたまたま聞いてしまったらしい。その話は俺のところまで報告がないという事は、妖精たちが隠しているという事。何かあったのだろう。
それと蒼龍が何故執務室にいたかというと、朝早くに目が覚めてしまってその時にはお腹が減っていたらしい。行くところもなく、二度寝しては寝坊してしまうと思い執務室にいたという事らしう。ちなみに今日の秘書艦は蒼龍だ。
「変な艦載機ねぇ......。」
俺がふーんと言いつつ考えていると、何かを思い出したのか蒼龍が指を立てて言った。
「そういえば、妖精さんがその後に『飛行甲板からの発着艦が出来ない。』って言ってた。どういう意味だろう?」
そう言った蒼龍の言葉に俺はある事に気づいた。
変な艦載機で発着艦が出来ない。変な艦載機はさておき、発着艦が出来ないというのはきっと、着艦フックが無いのと、滑走路の距離が足りないという事だ。
「そう言えば蒼龍たち艦娘は軍艦だった頃の記憶があるのだろうか?」
俺が唐突にこんな質問をしたのは、変な艦載機について分かる可能性があるからだ。もし軍艦だった記憶があるなら当時の海軍についての事なら大体分かるはずなのだ。
そんな質問をされた蒼龍はキョトンとしていたが、すぐに答えてくれた。
「ありますよ。」
ただそれだけだった。
蒼龍にあるという事は他の艦娘にも同様に記憶があるはずだ。そう考えると解決の糸口になるものは一つ。当時終戦まで生き残った艦娘に訊けばよいのだ。
俺はその事を蒼龍に言わずに、別の話を始めた。
ーーーーー
ーーー
ー
朝食の時間。蒼龍は時間になるや否な食堂に行こうと言い出して、俺は蒼龍に連れられて食堂に来ていた。
食堂は結構騒がしく、多種多様な艦娘がそれぞれ食事を摂っていた。
俺はさっき蒼龍に言わなかった生き残った艦娘に変な艦載機について聞くことにした。ついでにこの前話した妖精を見つける事に。白衣の方の妖精だ。あの妖精は自分を開発担当だと言っていた。何か分かるかもしれない。そう思った。
「提督、早く食べましょ!」
そう言って横で蒼龍が茶碗を持ってご飯を食べ始めた。俺はそんな蒼龍を尻目に白衣の妖精とある艦娘を探していた。
妖精は忙しなくウロチョロしているのですぐに居るか居ないかは判断できるが、艦娘はそうもいかない。俺はある艦娘の艦種の集団を探していたのだ。
その艦娘を見つけるのにはそう苦労しなかった。何せ集団が大きいからだ。
「モグモグ......提督、どうしたんですか?」
「あぁ、ちょっと用事がある艦娘が居てな......ちょっと行ってくる。」
俺はそう言って蒼龍の元を離れて、その艦娘のところに向かった。
ーーーーー
ーーー
ー
「鳳翔。」
俺はそう言ってある艦娘を呼び止めた。
鳳翔だ。鳳翔は軍艦時代に日本初の航空母艦として日本帝国海軍を背負った艦だ。
「はい、どうされました?」
柔らかい笑顔でそう答えた鳳翔はこちらを振り向いた。
手には空いたトレーがある。どうやら食べ終わって戻るみたいだった。タイミングとしては丁度いい。
「少し聞きたい事があってな、少しいいか?」
「はい。これを片づけてから伺います。」
そう言って鳳翔は軽く会釈すると人ごみに消えて行った。
俺が鳳翔を見送ると、そのまま蒼龍のところに戻って行った。
ーーーーー
ーーー
ー
「おかえりなさい。もう用事は終わったんですか?」
「あぁ。」
俺は席に着いて一息吐いてから箸を手に取った。
「そう言えば、誰に用事があったんですか?」
無邪気にそう聞く蒼龍に俺は朝食を頬張りながら答えた。
「鳳翔だよ。」
そう言うと蒼龍は何の驚きもせずに、ふーんと答え、俺が食べ終わるのを待っていた。
「そう言えばさっきの変な艦載機の件なんですけどね。」
そう蒼龍が切り出した。突然、待っている間に話していた内容に戻ってきた様だ。俺は口に入っていたので頷いて返事をした。
「昔もそう言う事が何回かあったって記録があるって妖精さんが言ってました。それも艦載機や砲に限定して。」
そう言って蒼龍は指を折りながら名前を挙げだした。
「艦載機では紫電改二、震電改、烈風、烈風改......。砲では試製51㎝連装砲なんかがそうですね。」
俺は蒼龍の挙げた物については知っている。
そしてそれがこの世界で当たり前の装備である事。そして、それらは今起きているイレギュラーと同じ様に生まれたものだという事だ。
だが、どうして紫電改二や震電改が艦載機として運用しているのだろう。当たり前で気付かなかったが、俺はそんな事を疑問に思った。
この世界に呼ばれる前、興味を持って艦これに登場する艦載機の実物を調べた事があった。
零式艦戦は言わずと知れたものだったので調べなかったが、それ以外の艦載機については調べた。
そうすると、おかしな点があるのだ。紫電改二も震電改も元の名は紫電改と震電。それも海軍が開発した局地戦闘機。いわば飛行甲板からではなく、滑走路から飛び立つ陸上戦闘機だという事だ。
「そうか......、成程な。」
俺はそう言って納得し、そのまま箸を進めた。
一方、蒼龍は何の事だか分かっておらずに、頭上にハテナマークを浮かべている。
ーーーーー
ーーー
ー
執務室に戻った俺は早々に執務を片づけて、ソファーに座っていた。
俺の目の前には鳳翔が居る。朝食の時に呼び出しておいたのだ。蒼龍は何故、こんな事になっているのか分かっていない様だったが、俺と鳳翔の会話から徐々に理解していく。
「鳳翔。軍艦だった頃の記憶はあるか?」
「えぇ、ありますよ。鮮明にとは言えませんが、かなり覚えています。」
そう言った鳳翔に俺は一言だけ、言った。
「その頃の記憶と、現状で食い違っているところがあるか?」
そう言うと鳳翔は頷いた。
「あの頃は、艦載機と言ったら零戦と九七艦攻、九九艦爆、天山、彗星でした。ですが今では私たちの鎮守府にはありませんが、紫電改二や震電改に似たものは何度か見たことありますが、どれも陸から飛んでました。」
当たりだ。
今起きているイレギュラーについて説明がついたのだ。鳳翔に訊いたのは終戦まで生き残り、復員船として活躍した後、解体されたという歴史があり、あの戦闘を一から十まで見ていたという理由からだった。
そして、今回のイレギュラーは新装備だという事も分かった。
「ありがとう。じゃあ今から工廠に行くか。」
俺はそう言って立ち上がり、執務室を出た。後ろから蒼龍と鳳翔が着いてくるのを気にせずに進んだ。
ーーーーー
ーーー
ー
工廠には頭を抱えた開発担当の妖精がいた。休みの時、俺の話し相手をしてくれた妖精だ。
「どうも。」
「あぁ、提督!どうされたんですか?」
そう言った白衣の妖精を手のひらに乗せて言った。
「変な艦載機を見せてくれ。」
そう言うと黙って頷いて白衣の妖精は俺と蒼龍、鳳翔を奥に案内した。
工廠は忙しなく動いているイメージだったが、動いていなかった。どうやら俺からの指令が無い限り動かない様だった。建造するためのドッグも見えたし、よくわからない機械もたくさんあった。
俺と蒼龍、鳳翔はそれを横目に見つつ、工廠の奥に来た。そこは元は空きスペースだったところだと白衣の妖精は言ったが、大きな布に覆われたものがある。
これが例の変な艦載機だという事はその場に居た誰もが分かった。
「ちょっと、あの布をどかしますね。」
そう言って白衣の妖精は俺の手から降りて、大きな布を取っていった。
布から現れたそれは、今まで見てきた艦載機の中では大型だった。そして胴が太い。と言うか、エンジンが大きいのだ。
この特徴、俺には記憶があった。
「雷電......。」
それは雷電だった。戦争末期に海軍が開発した局地戦闘機。
俺の予想は合っていた。紫電改二や震電改よりかはグレードが低いが、史実では迎撃機として有名だ。
「雷電ですか......ですがコイツは艦載機ですのでさしずめ、雷電改と言ったところでしょうか。」
そう言った白衣の妖精は俺の肩によじ登ってきた。
「提督、これはどうしましょう。」
「使おう。」
俺は迷いなくそう答えると、未だに状況が掴めていない蒼龍と鳳翔を確認すると、俺は白衣の妖精に話しかけた。
「これはもう使えるのか?」
「えぇ、1スロだけですが。」
「じゃあ今すぐ改装だ。蒼龍の航空隊に入れろ。」
「了解。」
俺と白衣の妖精は最低限の会話を交わし、俺は蒼龍と鳳翔を連れて工廠を出た。
ーーーーー
ーーー
ー
「という訳で実証試験だ。蒼龍、頼んだ。」
俺は執務室に帰るとすぐに蒼龍に艤装で湾内に出てもらうように命令をした。鳳翔には護衛監視役として着いてきてもらう。
「えぇと......あの、提督?」
「ん?」
「あの、雷電改とか言うのの試験ですか?」
不安そうに尋ねる蒼龍を俺は一蹴した。
「そうだ。」
「えぇ......。」
そう言う蒼龍の腕を取って、すぐに執務室を俺は飛び出した。
ーーーーー
ーーー
ー
海は静かで綺麗だった。今日は快晴で、雲一つない天気。程よく涼しく、照り付ける太陽の光も温かい。
「提督ー。行きますよー。」
そう呼ぶ蒼龍の声に俺は我に返り、タラップに足を掛けた。
今、俺は埠頭に来ている。目の前には蒼龍の艤装、正規空母 蒼龍が浮いている。その巨体は以前近くて見た赤城に引きを取らない大きさだ。
蒼龍に無理を言って乗せてもらう事になったのだ。戦闘の時は絶対に提督を乗せないと、決まっていると聞かされたと蒼龍が言っていた。どうやら俺の知らないところでいろんなルールが作られているらしい。
俺がタラップを上り終えると蒼龍が俺の手を引いた。
「早く行きましょうっ!」
そう元気よく言う俺は何も言わずに手を引かれるがままに階段を上り、甲板に出た。
潮風は吹き付け、甲板からは鎮守府がよく見えた。埠頭には蒼龍と鳳翔の艤装しかなく、朝に演習をしに行くように命令した五十鈴以下の艦隊は既に出ていて、他の艤装はどうやら倉庫の方にあるらしい。
「出よう。と言っても数kmだけでいい。」
「了解。」
そう言うと、蒼龍の艤装からエンジン音がし始めて、蒼龍の周りに居る妖精がせわしなく動き出した。どうやら持ち場につくようだ。
そうしていると蒼龍が艦橋に入ると言い出し、それについて行った。
ぐるぐると回りながら階段を上がり、艦橋についたころには既に移動は完了しており、停船している。鳳翔の艤装から艦載機が発艦したのか、上空には零戦21型が19機飛んでいる。どうやら哨戒らしい。
「じゃあ蒼龍。雷電改を出してくれ。」
俺がそう言うと蒼龍は近くの妖精に指示を出した。
するとすぐに甲板のエレベーターが上昇してきて、中から雷電改が現れた。工廠で見た時は外ほど明るくなかったので、分からなかったが、艦載機特有の塗装がされていた。
甲板に出てきた雷電改の発動機が唸りを上げて、プロペラが回転しだしたかと思うと、すぐに雷電改は発艦していった。
それに続くかのように次々と発艦し、最終的には空に12機の雷電改が飛んでいる。
雷電改は編隊を組み、空を飛び、色々な動きをしてみせた。旋回、上昇、急降下......自由に飛んでいるかのように見えたがそういう訳でもなく、蒼龍曰く『あれでも立派な試験ですよ。』という事らしい。
そんな雷電改を見上げた俺と蒼龍は一言も交わさずに、ただじっと空を見上げていた。
空には砲撃の音もなく、ただ雷電改が飛び、その背景がとても蒼い空だった。
俺にとってはいつもの風景かもしれない。だが、蒼龍たち艦娘にとってはこの光景はとても平和で穏やかな日なんだろうなと俺は感じた。
これはちょっとクサい話ですね。黒歴史になりそう......。
まぁ、これも提督がいると言うイレギュラーで解決させますw
艦これの艦載機に関しては本当に疑問があったので書きました。史実では紫電も震電も陸上での運用が想定されていた海軍の局地戦闘機だったんですよ。何で、艦載機なんだろうなって考えての今回の話です。艦載機の戦闘機といったら零戦しかないと思うのでw
ご意見ご感想お待ちしてます。