【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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最近忙しくて書いてられませんでした......。艦これもやってられなかった......。
という訳で続きです。



第三十四話  工作員、艦娘の怒り。④

 

鳳翔の艤装に乗り込んだ俺と番犬艦隊は鳳翔に連れられて艦載機格納庫に来ていた。

 

「提督。ここなら安全ですよ。」

 

そう微笑んだ鳳翔に、俺と番犬艦隊のメンバーの緊張が途切れた。

それまでの移動では影をなるべく歩き、警備艦隊と門兵の混成警備部隊が俺の護衛に外を歩いていたが、その間はずっと警戒していた。そのせいか、鳳翔の艤装に乗り込むとすぐに気が抜け、予定していた格納庫に到着するや否な糸が切れたようになったのだ。

 

「入口は全て警備が付きますし、侵入はされないでしょうね。あとは警備部隊が侵入者を捕獲してくれさえすれば出れますから。」

 

そう言って鳳翔は格納庫にあった零戦21型の主翼に座った。よいしょっとといった感じで少し高い位置にある翼に乗り上げると、足をぶらぶらさせて座った。その後に提督もどうですかと尋ねられて、まだ大丈夫だとだけ答えて格納庫の中を見渡した。

格納されている艦載機には全て識別のためだろう、胴体部にマーキングがされている。だが暗くて色までは分からない。

 

「それにしても、提督。」

 

「ん?」

 

突然呼ばれて俺は鳳翔の方を見た。

 

「赤城さんに全て任せても良かったのですか?」

 

俺はその質問をもう一度訊き返そうか迷った。

全て任せてよかったのか。その言葉は、俺が何も指示せずとも事が片付いたのかと言う意味なのだろうか。それとも、赤城に対する皮肉なのか。

これまで度々色々な事を忘れては俺に怒られてきた赤城の事を鳳翔は何度も見てきたのだろう。同じ空母だ。そんな赤城に今回の俺の命が懸ったこの事件を赤城に指揮を委ねてよかったのかという事なのだろう。

俺が答えに困り、辺りを見ると夕立と時雨も俺を見て黙っている。彼女らもその事に関して疑問に持っていたのだろうか。だが、俺はそんな赤城でも任せてもいいと思い至って赤城に指揮を委ねたのだ。

 

「俺は良かったと思うぞ。あれでもウチの古参だ。」

 

「そうですか......ならいいですけど。」

 

そう言って鳳翔は再び足をパタパタさせ始めた。

 

「ですが提督。私なら、私の艤装の飛行甲板にも数人、艦娘を配置しますよ?」

 

唐突にそう言い放った鳳翔は暗くてよくわからないが、笑っている。

それを訊いて俺は心臓が飛び跳ねた。甲板に配置が無い。それは、もし上空から侵入されて且つ俺が鳳翔の艤装に逃げ込むのを見られていたら......降下部隊で制圧されてしまい、物量に物を言わせて潰しに来るだろう。いつ訊いたか覚えてないが、資源輸送の為にこちらの世界の人間もほんの一握りだが提督が居るとの事。そこの配下の艤装を身に纏った艦娘が降下部隊に混ざっていたら......そんな予感が脳裏を過った。

 

「大丈夫でしょうが......。」

 

鳳翔はそう言って格納庫の天井を見上げた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

外では艦娘総動員でありとあらゆるところで侵入者捜索が行われていた。

皆血眼になって探している。艤装の砲を視線の先に向けていつでも砲撃できるように構えながら警戒している。上空でも空母たちの艦載機による哨戒が行わている。現状、何も連絡が入ってこない辺りを鑑みると、まだ発見できていないのだろう。そう考えるのが自然だった。

数多とある艦隊のとある警備艦隊で共に血眼になって侵入者を探している彼女、最上も皆と同じ気持ちだった。

初め、提督口から訊いた『暗殺されるだろう。』と言う言葉を聞いたとき、最上の心の中で何かが動いたのだ。

最上が進水した時には既に提督は着任していたが、建造をしてくれた霧島と案内をしてくれた熊野からは一切聞かされず、自分は他の自分と同じ様に提督の居ない鎮守府でただ無機質に来る命令通りに出撃して、褒めてくれない印刷機のある執務室に報告書を持っていくものだとばかり思っていた。だが、最上は提督が着任している事を知らされて驚いた。

提督が着任している鎮守府に進水できる事なんて確率で言えばほぼ0%だ。最上の深層心理にもそれは深く刻み込まれていた。

提督の姿を初めてみたのは最上が進水して数日後の事だった。その日に金剛が進水したのだ。それまでは提督が着任していると初めは驚いたが、一向にそれらしき姿を見る事は無かった。だが、同じ艦隊司令部の艦娘は揃いも揃って提督提督と言っている。最上は無機質な生活に飽き、求めている提督の幻覚でも見ているのかと思っていた。だがそれは一瞬にして消された。

金剛の歓迎会で提督が金剛と共に挨拶に回っているというのが風のうわさで聴こえたのだ。これも幻覚だろうと最上は疑ってかかったが、何だが重巡の仲間がうるさいと思いそちらに視線を移すとそこには女性しかいない鎮守府に異様な風貌の人が居た。一瞬、人間かと思ったが。やはり人間だ。ただの人間じゃない。周りを囲む艦娘が揃ってその人間を提督と呼んでいた。その人間もそれに否定することなく、艦娘の受け答えをしている。

あれが提督、0%と言われてきた提督だった。最上は席を立ちあがり、今すぐにでも提督のところに駆けて行きたかったが、我慢した。もしここで悪い印象を与えてしまっては、提督に嫌われてしまうかもしれない。提督の周りの艦娘の表情を見る限り、提督はとてもいい人間な様だった。人当たりもいい。それに訊けばここの艦隊司令部の傘下では轟沈なし。ロストという奇妙な記録は残っていたが、バリバリのホワイトだと分かっていた。損傷すればかすり傷でも入渠でき、補給も出撃する度に満足にできる。こんな鎮守府、そうそうない。

何時しか最上の心は提督に向いていた。

だが、それからしばらくしての事。提督の口から告げられた自分の暗殺。

理由を聞けば最悪だった。最上たち艦娘を平等に扱わず、鎮守府という檻に閉じ込めた張本人である人間が提督を暗殺するように仕向けたとの事だった。どのツテの情報かは提督から聞かされなかったが、最上に怒りが積もっていたのは自分自身よくわかっていた。

自由を奪い、権利を奪い、意思がある艦娘を道具の様に扱う人間が、自分たちから今度は提督を奪うと言うのだ。

気付けば、最上はその人間の殺害の事だけを考えていた。自分らの提督に手を下す人間を殺す。自分たちの唯一欲しかった提督を目の前から消そうとする人間を殺す。それしか頭になかった。

 

「くそっ......侵入者......。見つけたらただじゃ置かないぞ。」

 

最上はそう口走っていた。周りの同じ警備艦隊の艦娘も定期的にそんな事を口走っていた。

そんな最上と同じ警備艦隊は由良と白露だ。

それと何故か人間である門兵も共に警備として行動している。本来ならば彼らも人間と一緒で、最上たちに酷い事をするのかと思っていたが、『地上で魚雷は撃たないで下さいよ。』と軽口叩かれてから話す事は全部どんな提督か、いつも何している、そっちの飯は間宮さんとかいうのが作ってるらしいが美味しい、など日常的な事ばかりだった。

ここまで艦娘に敵意を出さない人間に会うのは自分の中での常識ではありえない事だった。

そうして警備している事数時間、不意に門兵が最上に話しかけた。

 

「最上さん......でしたよね?ここの艦隊司令部には一体、何人の艦娘がいらっしゃるのですか?」

 

最上はその言葉に驚いた。これまで人間は艦娘を数える時、『隻』を使っていたが門兵は『人』と言った。気はずっと立っていたが、最上はそれには気付きうれしく思った。

 

「多分......80人くらいだと思います。」

 

「そうなんですね。ならこの総勢100人超の監視網を侵入者はとてもじゃない限り、通り抜けられませんね。ははっ。」

 

そう言って門兵は携えていた小銃を構えなおした。

最上はそんな門兵にこれまでに感じたことのない人間の雰囲気を取っていた。提督のようなそんな雰囲気だ。

その刹那、最上は変な音に気付いた。破裂音の後にすごい速度で迫って飛翔する物が飛ぶ音。それは戦場で聞き慣れた音だった。砲撃音。陸地の方から聞こえたのでこの場合は発砲音だろう。だがその音なら最上も偶に聞いていたが、何だか最上の中で胸騒ぎがし始めた。由良と白露をの方を見てみると、彼女らも同じ胸騒ぎを感じているのか額にうっすら汗をかき、眉毛も垂れ下がっている。

最上は瞬時に状況を考えた。その時、叫び声が聞こえた。その叫び声の持ち主には心当りがあった。夕立だ。

夕立と言えば番犬艦隊として提督の護衛として動いている艦娘だ。そんな艦娘の叫び声だなんて、何かあったに違いない。それも、最上たちが感じていた胸騒ぎに説明が付く事象が。

それを考えた時には最上と由良、白露は走り出していた。

 





この編はいつまで続くのやら......(オイ
とまぁこんな訳で思い立ったネタはそのまま使う作者の悪い癖でございます(白目)
今話の書き方的に先が見えてしまうのは仕方ない......うん。

ご意見ご感想お待ちしてます。

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