【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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前回の続きです。



第四十一話  観艦式②

 

会場ではファンファーレが鳴り響き、今回のには陸軍の音楽隊が音楽を奏でる為に参加してくれたそうだった。

俺は会場にある檀上、総督と新瑞の横に座っていた。そしてその正面には多数のメディアのカメラと観客たち。今回の観艦式には艦娘が出るという事が公表されていたので、大人数の観客が集まったと始まる前に総督が言っていた。入りきらずに大きなモニターにライブ中継もされるそう。

 

「では、横須賀鎮守府艦隊司令部最高司令官からご挨拶があります。」

 

そう司会進行が言うと、マイクが回ってきてそれに俺は机に置かれているカンペをチラ見しながら話し出した。

 

「皆さま、海軍主催の観艦式に多忙ながらお集まりいただきありがとうございます。今回は先日、軍法会議の中継でありました『艦娘』による観艦式を行わせていただきます。これまで日本近海、遠方へ度重なる出撃を繰り返し、着実に我々の海域を取り戻している艦娘の雄姿をご覧ください。」

 

短い挨拶だったが俺はマイクのスイッチを置いて礼をすると、拍手が巻き起こった。

それを見てか、脇に控えていた裏方が照明弾を上げた。そこで遠くからの砲撃音が木霊する。これから海上に進入してくる知らせだ。撃ったのは長門だ。

 

「さて、今目の前を通り過ぎますのは、横須賀鎮守府艦隊司令部第一艦隊旗艦である戦艦 長門でございます!」

 

司会進行がそうマイクを持って言うと、俺の横に電源の入ってない状態で置いてあった巨大スクリーンに電源が入り、望遠レンズで捉えた長門の艤装が映し出された。

 

「次に通りますのは、戦艦 長門の姉妹艦である戦艦 陸奥です!」

 

そうやってどんどん紹介されていくのを観客たちはおぉーと歓声を上げて見ていた。

だが俺は司会進行が中盤で言った言葉に驚いた。

 

「第一水雷戦隊が通ります!第一水雷戦隊所属の駆逐艦 夕立は単艦で遠方から数多くの深海棲艦を撃破して損傷を受けながらも鎮守府まで帰還したと言われている武勲艦でございます!」

 

え、そんなことまで言うのと俺は戸惑ったがよくよく考えてみると司会進行が言った事は事実とは少し噛み違っていたので気にしない事にした。

 

「最後に通りますのは、横須賀鎮守府の強みである空母機動部隊です!先頭におります航空母艦 鳳翔をはじめ、航空母艦 赤城、加賀、飛龍、蒼龍、隼鷹、飛鷹は横須賀鎮守府の大きな戦力であり、日本近海や遠方で深海棲艦に猛威を振るった猛者たちです!!」

 

空母の艦娘たちは甲板に乗るだけいっぱいの艦載機を出して通り過ぎていった。

 

「これより少しお時間を頂いて、ここの会場に艦娘が到着するのをお待ちください。」

 

そう言うと司会進行は、マイクを置いた。

気付けば始まってから2時間くらい経っていた。観客たちはずっと座っていたので腰を押さえて立ち上がったり、トイレに走っていったりしている。

 

「提督よ。国民の掴みは良さそうじゃな。」

 

そう言って笑う総督に俺はそうですねと返してタイムテーブルの書かれた紙を見た。

そこには不安の積もる事が多く書かれていた。艦娘による演習。これはいいのだが、『艦娘に訊いてみよう!』とかいう少し頭の悪そうな内容に書かれていた出てくる艦娘が不安で仕方なかった。長門、赤城、加賀、時雨、夕立。ここまではいいが、金剛、鈴谷、川内は別だ。何を言うか分からん。正直本当に不安で仕方ない。しかもそれはこの休憩が終わってすぐにあるのだ。今から胃が痛い。

 

「どうした提督。」

 

俺の異変に気付いたのか総督が心配して声を掛けてくれた。

 

「大丈夫です。」

 

そう言うと、また俺はタイムテーブルの書かれた紙に視線を落とした。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

「お次は艦娘を数人こちらに招待して色々質問してみよう!という事で、こちらに数名来ていただきました!ご紹介お願いします!!」

 

そう言われた8人の艦娘は並んでいる順番で自己紹介を始めた。

 

「戦艦 長門だ。」

 

「戦艦 金剛デース!」

 

「航空母艦 赤城です。」

 

「航空母艦 加賀です。」

 

「重巡 鈴谷だよ!」

 

「川内です!」

 

「僕は時雨だよ。」

 

「夕立です!」

 

そう自己紹介をすると司会進行に案内されてマイクスタンドが並んだ長机に並んで座った。俺の座っている横だ。

 

「ではではまず長門さんから!軽めでいきましょう。鎮守府での暮らしはどうなんですか?」

 

「待機中は鍛錬に励んだり提督の傍で戦闘記録を纏めている。娯楽は少ないが、最近提督の計らいでテレビが設置されたり本が多く置かれたので楽しんでいるぞ。」

 

長門はそう言った。......間違いじゃないが、暮らしについて半分しか答えてないぞ。

 

「旗艦として出撃することが多いと思われますが、前線はどうですか?」

 

「前線では仲間が決死の思いで深海棲艦に挑んでいる。損傷して帰還する事も多々あるが、着実に取り返してる実感はあるぞ。」

 

今度はちゃんと答えた。

 

「長門さんありがとうございました!お次は金剛さん!提督はどんなお方ですか?」

 

俺はそれに吹き出した。このタイミングで訊くとは思ってなかった。しかも聞いた相手が金剛だ。答え方によってはかなり不味い。

 

「そうデスネー。提督はたくさんの艦娘の世話をしているのであまり話せてマセンガ、とってもいい提督ネ!私たちの事を第一に考えて色々手を回してくれマース!」

 

「先ほどから気になってましたが、その服装は何ですか?」

 

「これは正装デース。肩が寒い気もシマスガ、慣れれば問題Nothing!」

 

そう言ってフンスと得意げに言う金剛。

 

「金剛さんありがとうございました!ではお次は鈴谷さん!見たところ高校生の様ですが、歳はおいくつですか?」

 

「鈴谷は17歳だよ。と言っても歳は緩やかにとるから実際は81歳かなー?」

 

そう言った鈴谷は少し悪戯っぽく笑う。

その反面、会場はエェーという具合にすごく耳を傾けていた。

 

「本当ですか?!」

 

「いや嘘でしょ。私たち艦娘には歳が無いから海軍の偉い人が見た目で歳を判断したんだ。鈴谷は17歳って言われたから17歳って訳。」

 

「鈴谷さんの好きな食べ物は?」

 

「カレーでしょ!カレーは命っ!!」

 

そう言って鈴谷は机をバンと叩いて立った。

 

「鈴谷さんのカレー愛がひしひしと伝わってきました!では、お次は川内さん!」

 

「はーい。」

 

「川内さんは何でも鎮守府の中では『戦闘要員』とかいう括りにいるそうですが、どういった事をしているのですか?」

 

「戦闘要員ってのは提督が水雷戦隊を編成する時に旗艦や随伴に優先的に指定する軽巡の艦娘の事だよ。ウチの鎮守府は出来て日が浅いから装備面で劣っててね、優先的に戦闘要員にいい装備が回されるんだ。」

 

川内がそうやって淡々と答えるのに俺は違和感を覚えた。結構真面目だったみたいだ。

 

「軽巡の艦娘の方は夜戦になると戦艦以上の火力で深海棲艦を沈めると聞きましたが本当ですか?」

 

「本当だよ!夜戦になると私たちの様な小型艦は敵の懐に飛び込んで攻撃するんだ。最近だと妹の神通が無傷の敵戦艦を一撃で沈めてたよ。」

 

「川内さんありがとうございました!では時雨さん!ここまでは普通の話題を振ってきましたが時雨さんには『時雨のノート』というものの説明を訊きたいと思います。」

 

「『時雨のノート』ってのはこれだよ。僕が出撃した行き帰りに通る近くの鎮守府なんかの様子を書き留めたものだよ。中に書いてあるものをここで読んでもいいけど、観客の皆さんの気分を害するものもあるから概要だけ言うね。......これには放置されてる鎮守府の状態を書き留めたんだ。中は凄惨で酷いものだったよ。詳しくは言えないけどね。」

 

「時雨さんありがとうございます。ちなみに時雨さんのノートは先日の軍法会議で裁かれました海軍本部の悪行も書かれていたそうで、軍法会議での証拠になったそうです。ではお次、夕立さんに訊いてみましょう!」

 

「はーい!」

 

「夕立さんのその髪、跳ねているところは癖毛ですか?」

 

「夕立への質問はそれっぽい?これは癖毛よ。治らないし、皆はよくピョコピョコ動いてるとか言ってるっぽい。」

 

「夕立さんって犬っぽいって言われませんか?」

 

「言われるっぽい!」

 

「ははは!ではお次、赤城さんに訊いてみたいと思います。赤城さん、最近は出撃する事が少ないと訊きますがどうしてですか?」

 

司会進行もいい具合にあったまってきたのか、軽くそう聞いて回っている。

赤城は終始背筋を伸ばして座っている。

 

「それは鎮守府の備蓄に艦載機を補充するための資材が枯渇している為です。提督は遠征任務で資材を多く確保していただいてますが、それでも出撃では私と横の加賀さんだけで精いっぱいなので、出撃を提督が控えているんです。」

 

「そうなんですか......。因みに今日の観艦式で消費される資源は?」

 

「大本営が持って頂けるようなので、この後に行われる艦隊戦模擬演習では全力で参ります!!」

 

「これはこの後の模擬演習に期待ですね!ありがとうございました!次は加賀さん。」

 

「はい。」

 

「連日提督に高性能艦載機の開発の検討をしているそうですが、どうですか?」

 

「こちらの鎮守府には艦攻・艦爆共に高性能なものが増えてきておりますので今は艦戦の開発を進めてます。最近『雷電改』という新型艦戦があるようですが知らない子ですね。」

 

そう言った加賀の頭上を雷電改が飛んでいった。

 

「加賀さん、アレって雷電改ですか?」

 

「いえ、知らない子ですね。」

 

「でっ、では!第一艦隊では最後に配属されたと聞いてますが、第一艦隊の雰囲気はどうですか?」

 

「第一艦隊は新海域解放に斥候として提督が送り込む艦隊です。常に慢心せず、鍛錬に勤しんでおり、何時でも出撃できる状態であります。ですが、砕けるところでは砕け、休める時には休み、仲間との信頼を深める事にも力を入れておりますので、とてもいい雰囲気です。」

 

そう言った加賀は俺の顔をちらっと見た。

 

「では一通り聞けたところで、観客の方から質問を訊いてみたいと思います!」

 

そう言って司会進行は壇上から飛び降り、観客の前に立った。

 

「では艦娘の方に訊きたいこのある方は手を挙げて下さい!」

 

そうして始まった質問合戦はまた1時間と続いた。

 





中盤からの質問の回はいるのでしょうか?と書き終えて思いまいたw

これいつまで続けようか(真剣)

取りあえず進めるだけ進めてみます。

ご意見ご感想お待ちしてます。

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