【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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一応、演習回。


第四十二話  観艦式③

会場から長門達は去り、いよいよ演習が始まる時間になった。

スクリーンには双方の編成と位置が写されている。演習艦隊は西軍と東軍に分かれての演習だ。

西軍は旗艦長門、鈴谷、熊野、時雨、吹雪、赤城。東軍は旗艦金剛、高雄、愛宕、夕立、白雪、加賀。どちらも戦艦1、重巡2、駆逐2、空母1の編成だ。公平に勝負をするという事でこうなった。旗艦が長門と金剛というだけでも結構な違いな気もしなくもないが、俺はそれを固唾をのんで見守っている。スクリーンからも伝わる緊張感の中、空気の読めない奴が居た。

 

「提督ぅー!見てますカー!!」

 

思いっきり手を振る金剛に会場は爆笑に包まれた。

 

「後でお叱りだな......。」

 

俺はそう呟いて心に決めると、開始を合図する砲が鳴った。鳴らしたのは比叡だ。

両軍それぞれ単縦陣で航行を初め、それぞれの偵察機が次々と飛び立っていく。一連の動作はどちらの軍も同じタイミングだったので、どれ程の経験から来るタイミングなのかと、観客は拍手した。

数分後に双方の航空隊合わせて180機の艦載機が航空戦を始めた。艦戦は艦攻・艦爆の護衛と相手の艦攻・艦爆を喰らう為に突撃し、機体のマーキングがあっても見分けの着かない状態になっていた。

ここで司会進行が解説を始める。

 

「現在上空では両軍合わせて180機の艦載機が航空戦を繰り広げております。西軍の赤城は82で東軍の加賀は98機と西軍は数では押されていますが、経験に物を言わせております!赤城航空隊が制空権を取りました!」

 

上空ではペイント弾で被弾した艦載機は戦線を離脱していくが、戦闘空域では赤城の艦載機が果敢に飛び回っている。

 

「おぉっと!双方の艦隊に艦攻・艦爆隊が接近!それぞれ対空砲火を上げている!」

 

スクリーンには両軍の艦隊から光線が出たかと思うと、遠くから遅れて轟音が鳴り響いていた。砲撃しているのだろう。

 

「第一次攻撃隊が帰還します。被害は西軍が鈴谷小破、吹雪軽微。東軍は白雪中破だ。」

 

その実況が入ると、スクリーンにはアップに被害を受けた箇所にベッタリとペンキがぶちまけられている艦があった。

 

「これより砲雷撃戦に突入します!上空のカメラに切り替えます!」

 

そう司会進行が言うと、映像は一時的に途切れて、上空を飛ぶそれぞれの艦載機に無理やり取り付けたカメラが撮っている映像が流れだした。水平飛行する艦載機なので艦攻・艦爆のどちらからしい。

そして激しく撃ち合う艦隊戦が映し出された。ペイント弾が飛び交い、海面に着弾すると水しぶきを上げている。その光景は戦場だった。

 

「両軍急速接近!雷撃戦に入るようです!」

 

そう司会進行が言うと、重巡と駆逐の艤装にある魚雷発射管が回頭。魚雷を発射した。

魚雷は線を描くことなく、それぞれの艦隊に突き進み、爆発する。

今の雷撃で西軍は長門が小破、鈴谷が大破、吹雪が中破。東軍は愛宕が中破、白雪が大破、加賀が小破した。

 

「艦隊が回頭を始めました!更に攻撃を仕掛ける様です!」

 

それぞれ長門と金剛が先頭に立ち、射線が通るたびに砲撃を繰り返してる。後ろにも流れ弾が飛び被弾する事もあるが、長門も金剛もそれには気にしてなかった。後ろにはそれぞれの空母しか居ないからだ。他はというと艦隊から離脱してそれぞれの横っ腹や後ろを取るために最大戦速で航行している。時より重巡は砲撃をしているが、相手には当たるはずもなく、海面に悉く落ちていった。

2箇所で繰り広げられる砲雷撃戦は時間が進むごとに双方に被害が広がり、遂に長門と金剛、赤城と加賀の一騎打ちになった。長門と金剛は主砲が1基しか機能しておらず大破していた。赤城と加賀はそれぞれ艦載機の流星が5機ずつ残っているだけでもう少しで艦載機の発着艦が出来なくなってしまう状態だった。

両軍が息を合わせるかのように突撃をしだし、艦隊が交えた瞬間、上空で赤城と加賀の流星が航空戦をの決着がついた。

 

「演習終了!!西軍の勝利!!」

 

こうして演習は幕を閉じた。

 

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

演習を最後に幕を閉じた観艦式は観客もとい国民からは好評だった様だ。それと同時に疑問が挙がっていた。『どうして大戦期の軍艦が現代の護衛艦でも太刀打ちできなかった深海棲艦と互角に戦えるのか。』その疑問は艦娘への質問をするところの後、観客からの質問に応えていた時にある子どもが言った言葉だった。

それには少し答えに戸惑ったが、長門が『私たちは見掛けこそ大戦期に大海原で暴れた軍艦だが、違うぞ?なんたって私たちは艦娘だからな!』と言って子どもを納得させた。

俺はそんな事を思い出しながら夜の更けた鎮守府の執務室でだらけていた。

 

「座ってただけなのに疲れた......。」

 

「お疲れ様です。」

 

夜も更けたというのに鳳翔は執務が終わってないだろうと、終わるまで残ってくれた。もう終わったのだがな。

 

「国民の皆さんにも喜んでいただけて今日は良かったです。」

 

そう言って鳳翔は机にお茶を置いた。

 

「ありがとう......はぁ......。」

 

そう言って俺は手元に視線を落とす。俺の手には一枚の書類。そこには新瑞が今回観艦式に参加した報酬を何でも言えと帰りに寄越したものだった。

何でも言いといったので、艦娘の寮全部屋にテレビを設置してもらうとかも考えたが、それは前の休みの時にわざわざ食堂だけにつけて時間も制限した意味が無くなってしまう(※第二十五話参照)。

そこで俺は鎮守府の拡張工事を頼むことにした。俺の居た世界では課金することで色々な拡張が行えたが、今とはどう勝手が違うのか見当もつかない状態だった。なので取りあえず頼むことに。これには今日の秘書艦である鳳翔と長門も同意してくれた。

 

「じゃあこれに書き込んだら今日は終わりだな。」

 

そう言って俺は書き込んで鳳翔を部屋に帰らせた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

一人で佇む埠頭にはまだペンキがべっとり着いた長門の艤装が浮いている。近くで見たことは無かったが、凄い大きかった。以前見た赤城と同等レベル。

薄暗い中でも栄えている41cm連装砲が鈍く姿を浮かび上がらせていた。

 

「この世界にきて何か月が経ったんだろうな。」

 

俺はそう呟くと自分の部屋に戻って行った。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

「......。」

 

俺が呟いたところを見ている艦娘が一人いる事には俺は気付かなかった。

 




これで観艦式は終わりです。
最初読んで思った......。こんなに緩い観艦式ないだろ。
多分皆さん思ってると思いますがスルーしてください。

ご意見ご感想お待ちしてます。

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