【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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今回はちょっと変かもしれません。それと感想次第ですが、内容を初期投稿から大幅に変更するかもしれません。




第五十七話  川内型姉妹の願い

「提督ぅー!おっはようございまーす!!」

 

俺が気持ちよく寝ていると言うのに、耳元で大きな声が聞こえた。

 

「何だ......那珂か。」

 

「そうですよー!今日の秘書艦、貴方だけの秘書艦でアイドルの那珂ちゃんでーす!」

 

間髪入れずに脳天にチョップをかました。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

「いったーい!酷いですよ、提督!」

 

そう言いながら自分の頭を撫でる那珂に俺は言った。

 

「起こすならもう少し優しくしてくれ。あと声がデカい。」

 

「そうかなー?丁度いいと思ったけど......。」

 

「確かに眠気が一発で飛んだが、同時に怒り覚えたわ......。次やるときは止めてくれよ?」

 

「はーい。」

 

案外聞き分けの良い那珂に俺は少し戸惑いつつも、着替えるからと言って那珂を私室から追い出した。

というか何で那珂は起こしてくれたんだ、と考えつつ時計に目をやる。時間は7時。朝食の時間が始まって30分が経った頃だった。

 

「あっ、成程ね。」

 

俺は手をポンと叩くと、那珂がどうして起こしに来たか分かった。

要するに俺は少し寝坊したのだ。那珂は秘書艦だから先に執務室に来ていたが、俺が中々起きてこないのでわざわざ起こしてくれたみたいだ。

 

「後で礼いっとかなきゃな......。」

 

そう言って俺は手袋をはめると扉に手をかけた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

何時もより遅れて食堂に行くと、普段合わないメンツが居た。こう時間が違うと変わるものだなぁと思いつつ、那珂とトレーを持ち、朝食を貰う。ちなみに今日はオムレツとハム、サラダ、パン。間宮さんは一体どう90名近くの艦娘の食事を用意しているんだろうか。

そう考えつつ、俺は那珂と席に着いた。

 

「いっただきっまーす!」

 

そう言って元気よく朝食を食べ始める那珂の前にあったのは、ご飯、味噌汁、漬物、お浸し、焼き魚、納豆......。日本の朝食のテンプレを想像させるようなものだった。

 

「今日もおいしー!......提督はそんだけで大丈夫なの?」

 

そう言って那珂は俺の方を横目で見て言った。

 

「あぁ。足りなければどうにでもなるし、基本的に動かないからな。」

 

そう言って箸でオムレツを切って口に運ぶ。

 

「執務の時間も短いし、提督室から出ないんでしょ?」

 

そう言って那珂はポリポリと漬物を食べていた。

 

「そうだな。基本的には。」

 

「不健康だなぁ......。お散歩とかは?」

 

「前に鎮守府一周した以来だ。」

 

そう言うと那珂はもう食べ終わるのか、味噌汁を啜っていた。

 

「じゃあ今日、執務終わらせたら運動しよ?」

 

そう言って立ち上がった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺は執務室に帰ってから放心状態だった。何故なら那珂、自称艦隊のアイドルな癖に、執務で艦娘がやってもいいものを全部持っていきあがった。しかも3分で終わらすし......。長門と島風以上に執務ができる様だ。しかも新しいレベリング艦隊編成を一人で考え始めてついさっき俺に確認で見せてきた。見せられたものはとても完成度の高い編成。資源を気にせずに色々な艦娘のレベリングも行える編成だった。

 

「那珂......。」

 

「何?」

 

「那珂って優秀なんだな......。」

 

「何それ酷い!那珂ちゃん、基本的な事は何でもできるよ?」

 

キャハとか言い出しそうな表情で俺に言うが、確かに何でもできる。侮れぬ、那珂。

 

「んー!予定よりも早く終わっちゃったね。外行く?」

 

そう言って那珂は俺の手を引いて執務室を出た。案外強引でなく、やんわりと痛くない程度で引っ張ったのでここでも那珂の優秀さを垣間見た。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺と那珂が外に出ると、外には川内と神通がバトミントンをしていた。

 

「それっ!」

 

「はいっ!」

 

そう言ってラリ―を続ける川内と神通に那珂は話しかけた。

 

「川内ちゃん、神通ちゃん。提督連れてきたよ!」

 

そう言って俺の手を引いて前に出す。

それを訊いた川内と神通はラリーをやめ、こっちを向いた。

 

「提督ー。身体動かすんでしょ?バトミントンやろーよ。」

 

「提督が嫌でないなら......是非......。」

 

正反対な性格の2人はそう俺に言った。

 

「バトミントンかぁ......。半年ぶりかな?」

 

そう言って俺は上着を脱いだ。少し寒いくらいとはいえ、運動すれば暑くなるから脱いだだけだ。

 

「おっ!提督、腕なんかまくっちゃって......私と勝負する?って言ってもラリーだけどね。」

 

そう言って川内はパスパスとシャトルを上に向かって打った。

 

「じゃあ私が変わります。どうぞ。」

 

そう言って神通が俺にラケットを渡してきた。

 

「ありがとう。じゃあやるか!」

 

そう言って俺と川内のラリー対決が始まった。

どちらも打ちにくいであろう場所に狙ってシャトルを打つが、何とかどちらも打ちかえし、一歩も譲らない。

俺の身体も温まり、それと同時に息も上がり始めていた。これだけ動いたのだ。仕方ない。一方の川内も負けじと打ち返している。額には汗。あちらも身体が温まり、息が上がりだしている様だ。俺はここで勝負をかける事にした。

俺がこの世界に来る前、体育で友達相手にやっていた技。......名前は特にないがだまし討ちだ(※作者が本当にやってます)。打ち損ねたかのように見せて相手を油断させたのち、地面に落ちる擦れ擦れでゴルフの如く、シャトルを打つ。力加減を間違えればかなりの距離を飛ぶが、言っても拾いに行けない程度ではない。この技でシャトルが拾いに行く間に落ちる事は何度もあった。

 

「これで......。」

 

そう言って川内は俺の外しやすいコースを狙ってきた。今がチャンスだ。俺はワザと外した。スカッという空気を切る音が聞こえた。

 

「よしっ!」

 

そう言って小さくガッツポーズをする川内を見る暇なく、俺は技を繰り出した。

 

「甘いぞっ!フェイクだ!!」

 

パスッという軽い音と共に、シャトルが打ちあがった。

 

「うそっ!」

 

そう言ってシャトルを追いかけるのもすでに遅し。着地予想ポイントには川内は間に合わなかった。

 

「うそー!提督、どんな技使ったのさー!!」

 

そう言ってプンプンする川内に耳打ちで説明した。この後、那珂が川内とやると言うのを訊いたからだ。

 

「成る程ねー。そりゃ、初見は打てないね。」

 

そう言って川内は笑いながら離れて行った。俺は那珂にラケットを渡し、神通が見ている近くに行った。

 

「提督ってバトミントンお上手なんですね。」

 

「いんや。俺は遊び程度でしかやったことない。」

 

そう答え、俺は川内と那珂がラリーをやっているのを眺めた。

2人とも均衡な勝負をしていて見るには面白みにかけているものだった。だが、川内が那珂が打ったのを見切ってニヤリと笑った。

 

「せいっ!」

 

その掛け声と共に盛大にスカした川内だが、間髪入れずにラケットを振り回した。

 

「はっ!」

 

今度はラケットに当たり、飛ぶ。シャトルは今までのよりも速さを増して、打ち辛いであろう那珂の正面にシャトルが勢いよく飛んでいったがあっけなく打ち返された。

那珂は飛んでくるシャトルを見て数歩下がっていたのだ。

 

「甘いよ、川内ちゃん!」

 

そう言い放って打ったシャトルは川内が那珂に打ったのと同じくらいの弾速で川内の正面を捉えた。

そしてシャトルを川内は打つ統べなく、地面に落下してしまった。

 

「あちゃー。無理だったか......。」

 

そう言って川内はトントンとラケットで肩を叩くと、休憩にしようと言って近くのベンチに腰を下ろした。

 

「疲れたー。幾ら水雷戦隊の出番がないからって言っても、駆逐艦は護衛として出てるからねぇ。私も出たいな。」

 

そう言って俺の方を川内がチラッと見た。

 

「脈絡なく話を繋げて訴えても仕方ないだろう。俺の方針、知ってるだろ?」

 

「まぁね。......でも本当に最近はバランスをとれた艦隊編成が多いよね。これまで昼戦撃破が主眼だったみたいだけど、夜戦も想定内なの?」

 

「それもあるが、基本的には対潜の為だ。最近出撃する海域は潜水艦が多いもんでね。」

 

俺は川内の言葉に受け答えて背中を伸ばした。よくよく考えてみたら、この世界に来てからはずっと執務室にいたりしていたので外で何かしたことが無かった。

いい気分転換になったし、何より身体を動かせて楽しかった。那珂に感謝しないとな。そう考えた矢先だった。那珂が俺にある事を話した。

 

「運動会の景品、今使ってもいい?」

 

そう言って那珂はラケットを立てかけると俺の方を向いた。

 

「私、いいや、私たち川内型姉妹の願いは、皆が笑顔で過ごせる事かな。」

 

そう言ったのはいいが、とても抽象的な願いだった。

 

「深海棲艦を倒しながら、誰も欠けずに終戦を迎えたい。それまでは油まみれになって硝煙塗れで戦うのは覚悟してるよ?だけど、それだけじゃ私たちはせっかく提督が変えてくれた待遇の前とあまり変わらない。だからあの時なかったこの姿になった楽しさを感じたい。」

 

そう言った那珂の目にはとても力が入っていた。

 

「楽しい事、うれしい事、いっぱい知りたい。そう思ったんだ......。だから提督......これは私たちの願い。そして、艦娘の願い。」

 

俺はここまで那珂に言わせてしまった。

確かに待遇の改善を考えて行動してきたが、俺が着任してから2ヵ月で変わったことなどちっぽけなものだったのかもしれない。もっと知りたいと那珂は訴えた。

 

「わかった。......俺もこれまでは設備とかの事ばかり考えてたけど、違う事でいいんだよな?」

 

「うん!この前やった運動会みたいなのをまたやりたい!」

 

俺は考えを巡らせた。

ここに来てから改善してきたことよりもインパクトのあるもの......。あった。楽しい事......かは分からないが、那珂は楽しめる筈の事が。

 

「今思いついた。」

 

「ん?」

 

俺が手をポンと叩いたのを那珂は見ていた。

 

「那珂。自称艦隊のアイドルだったよな?」

 

「自称って......そうだよ!私は艦隊のアイドルっ!」

 

「じゃあ、やるか!」

 

そう言って俺は那珂の肩をポンと叩いた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺は那珂に今思いつく事を伝えた。

『艦隊のアイドルになれ。』それだけだった。俺はこういったプロデュースをしたことが無いが、踊りも曲も那珂に丁度いいものがあるじゃないか。そう思ったのだ。

 

 

 

『恋の2-4-11』

 

 

 

いつだったか俺の居た世界で提督100万人突破したことから艦これユーザーがニコ○コ動画にアップロードしたオリジナルソングだ。ちなみにD○Mが公認しているらしい。

これを使わない手は無い。

だが問題点があった。どうやって原曲と振付の動画を手に入れるかだった。

俺はバトミントンをやった後、執務室に帰りながらそんなことを考えていた。横では本格的なアイドルができるという事で、那珂はとてもご機嫌だ。スキップまでしている。

だが俺はある存在を忘れていた。

妖精なら何とかできるかもしれない。そう思い至ったのだ。

 

「それで、私が呼ばれたんですね?」

 

現在、俺は執務室の机の上に呼び出した工廠の開発班の妖精。通称、白衣の妖精を呼んでいた。

 

「そうだ。だから俺のいた世界から引き抜けるか?」

 

「提督を丸々こっちに連れてきましたからね。造作もないです。ついでにDVDに焼いて、歌詞カードを作っときます。」

 

そう言って白衣の妖精は去っていった。

そんな光景を眺めていた那珂は不思議そうに『恋の2-4-11ってなんだろ。』とか言っているんで俺が説明をした。

 

「那珂。」

 

「何ー?」

 

「俺が別の世界から来たってのは知ってるよな?」

 

「うん。」

 

「その世界ではな、那珂のための曲が作られてたんだ。それが恋の2-4-11。」

 

それだけ言うと那珂は喜んだ。

自分専用の曲があったという事に驚きがあるというのと、それを自分が歌って踊れるということにだ。

 

「那珂が歌って踊れるようになった暁には別の事を計画しよう。と言っても、那珂のソレのお披露目の舞台だけどな。」

 

「えぇー!!那珂ちゃん専用の曲が用意される上にステージっ......。那珂ちゃん、本気出さなきゃ!」

 

そう言って気合を今から居れている那珂を尻目に別の事を俺は考え出した。

 

(那珂のバックダンサーどうしよう......。)

 

俺はこれを夕飯時まで悩む羽目になった。

ちなみに那珂の恋の2-4-11お披露目は、暫定だが『鎮守府文化祭』というのを開き、そこに訪れた観客に見てもらうという事だ。

 




( )これは提督の心の声ですのでお願いします。
恋の2-4-11をネタに使うとどっかから苦情とか、削除依頼とか来ませんかね?
とてもいいと思ったので使ったんですが......。詳しい方、ぜひ教えてください!

ご意見ご感想お待ちしてます。

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