【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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前回の投稿から3日経ってしまいました......。忙しいと時間を忘れてしまうとはこのことですね。




第五十八話  青葉の願い

 

那珂たち川内型姉妹からの願いを訊いた次の日。結構遅くまで起きていた俺は、これまた遅くまで寝ていた。

意識が戻りつつあるなか、俺の顔を覗き込む輪郭がぼんやりと浮かび上がった。髪は薄いピンク。こんな色の髪をしているのは鎮守府には2人しか居ないと記憶していた。

 

「おはよーございます。司令官。」

 

そう言って俺が完全に目を開いたのを確認した時に言ったのは青葉だった。そう言えば今日の秘書艦は青葉だった。

 

「......あぁ。おはよ。」

 

俺はのそのそと温もりの恋しい布団から出ると、青葉に部屋から出てもらい着替えた。

 

「さて。さっきも言ったけど、おはよう。」

 

「はい!おはようございます!」

 

そう言って元気よく青葉は返事をした。

 

「朝食の時間はもうすぐですよ!」

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

朝食を済ませた俺と青葉は執務室に帰ってきて、今さっき執務を終わらせたところだ。

 

「いつもこれだけなんですか?」

 

青葉は椅子に座ってパタパタしながら言った。結構詰まらなかったみたいだ。

 

「そうだが?最も、他の秘書艦は自分で仕事を見つけてやってたけどな。」

 

そう言いながら俺は書類を纏めていた。

本来ならば秘書艦がやってくれていたが、今日が秘書艦初体験の青葉にはまだ察しがつかなかったのだろう。

 

「そうなんですか......。これからどうするんですか?」

 

そう訪ねてきた青葉に俺は纏めた書類を突き出す。

 

「これを事務棟に。これは秘書艦の基本的な仕事の一つだ。」

 

そう言って渡すと青葉は『ほえー。これが出してる書類ですかー。』とか言いながら見ようとしていたので止めて、行かせた。

俺の目の前で開けそうになった青葉は、どうせ道中に開けるんだろうなと思いつつ、俺は背筋を伸ばした。最近の執務が終わった後の日課みたいなものだった。終わったら背伸びをする。結構腰が鳴って気持ちいものだ。

 

「はふぅ......今日もペキペキ言ったなぁ。」

 

そう言って俺は机の端に置いてあった本を開いた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

程なくして青葉は帰ってきた。どうやら寄り道せずにすぐに行って帰ってきた様だ。この様子を見ていると、書類の中身は見ていない様だ。

 

「本当にアレって何なんですか?」

 

少し膨れっ面で俺に青葉がそう言った。

 

「ただの書類だ。消費資材糧、諸連絡......そんなもんだ。」

 

「そうなんですか。じゃあ偶に増える書類何かは何があるんですか?」

 

なんでそこまで知っているんだろうと、疑問に思いつつ俺は答えた。

 

「アレは特別な事が書いてある。最近だったら滑走路の建設だ。」

 

俺はそう言って執務室の窓から外を眺めた。視線の先には滑走路の工事が行われている現場がある。

大方完成しているのか、今は横に隣接される倉庫なんかを作っている様だ。

 

「そうなんですね......。だから増えたと。」

 

「余分に何かをするたびに増える。俺は今まで1枚追加しか経験してないがな。」

 

そう言って外から視線を外した。

 

「俺としては増えても増えなくても暇なのには変わりない。俺も書類が増える事に関しては適度に増えても気にしない。」

 

「そうですか......。」

 

横で青葉は腰を掛けた。

 

「そう言えば滑走路の建設がもう終わるようですよ?」

 

そう言って青葉は建設をしている方向を向いた。

滑走路は鎮守府の敷地を広くしても何なので、海に作っていた。ちなみに工廠の妖精に頼んだら快く引き受けてくれた。資材に関しては鋼材と油だけでいいと言われたので好きなだけ使う事も許可をしていた。

律儀に妖精たちは使用した鋼材と油を記録して執務室に報告書として提出しているが、減ってる量はちゃんと数えてなければ気付かないくらいだ。

 

「司令官。滑走路は何に使うんですか?」

 

そう青葉は俺に訊いてきた。

 

「新戦術だ。戦いが楽になるかもしれない。」

 

俺はそれだけ言って椅子にもたれ掛かった。

 

「新戦術......新たな戦い......深海棲艦を殲滅する近道ですね。」

 

「そうともいう。だが、効くとは限らない。俺が構想している戦術では実証しないと優位性が証明されないからな。」

 

「実戦で使えないと意味がないんですね。」

 

「そうだ。」

 

俺は欠伸をしつつ答えた。

 

「......脈絡もないですが司令官。私の願い、聞いてくれますか?」

 

突然青葉は俺に言ってきた。

 

「唐突だな。それで?」

 

「はい。......戦闘時以外で私がカメラを持ち歩くことを許可して欲しいんです。」

 

青葉は唐突だった。

 

「別に戦闘以外で何か持ち歩いちゃいけないなんて規則作った覚えないが?」

 

「違うんです。私はこの鎮守府の皆の自然な笑顔を写真で撮りたいんです。そしてアルバムにしたい、そう思ったんです。」

 

青葉は手を前でもじもじさせながら言っている。

 

「そのためには提督の許可が居ると思ったんです。みんなの笑顔を写真で残す。みんなで集まった写真を残す。............私たちの帰る場所を再確認したいんです。」

 

そう言った青葉に俺は箱を渡した。中には適当に見繕ったカメラとメモリーカード、ケースが入っている。

 

「えっ......これは?」

 

何を渡されたのかと少し不思議がっていたが、青葉は中身を確認した途端喜んだ。

 

「カメラですね!」

 

「あぁ。青葉にあげようと思ってね。俺も持ってるし。」

 

そう言って俺は唐突に机の下からカメラを出した(※カメラを買ったタイミングはご想像にお任せします)。

 

「それを使って皆の笑顔を写真で撮ってくれ。そして記念撮影だ。皆で集まって並んだ写真を撮るんだ。」

 

そう言うと青葉は目を輝かせた。

 

「ありがとうございますっ!!」

 

「ただし、誰かを撮るときは撮っていいか聞く事。勝手に撮ったら嫌な思いをするかもしれないだろう?」

 

そう言って俺は手に取っていたカメラを仕舞った。

 

「はいっ!」

 

その時の青葉の笑顔は普通の女の子の顔をしていた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺があげたカメラで青葉はその日の夕食時に食堂で全員を集め、記念撮影を提案した。

艦娘たちは誰もが乗り気になり、ひな壇を作って全員で並んだ。端とかで良かったのに俺はわざわざ最前列センターに就任。いわゆる校長先生ポイントに位置した。その周りを艦娘が囲んでいき、シャッターを下ろすのはセルフタイマーで写真を撮る事にした。

青葉は慣れない手つきでタイマーをセットして、大慌てでひな壇に戻り、姿勢を正してにっこりと笑った。

撮れた写真には皆の笑顔が映り、自分たちと共に俺が映っていた。集合写真だが、その写真は青葉や他の艦娘たちにとってかけがえのないものとなった。総勢90名と1名。全員が幸せそうな表情をしている。

 





ここまで忙しいと毎日投稿は難しそうです。これでもやっと時間を見つけてあげた感じですし......。
最低でも12月入るまでは不定期になりそうです。

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