【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第六十話  新戦術②

 

瑞鳳が提出から帰ってきて、かなりの人数が居ない状態の食堂で昼食を摂り終えた後、俺は滑走路に来ていた。

何もない平坦な滑走路では偶に妖精たちが走っているのが目に入るが、それよりも俺は230機の爆撃隊が出て行ってから追加で出来た富嶽が格納庫に収められるところを見ていた。それぞれの尾翼に番号が掛かれ、今俺の目の前で入れているのは248番だ。

富嶽以外にも格納庫には入れられていて、一式戦闘機二型と三型、総称『隼』が400機。四式戦闘機一型乙、『疾風』が250機が所狭しと並んでいる。

 

「どうされました?」

 

俺に話しかけてきたのは、格納庫の管理を任せている妖精だった。

 

「ん。どんな状況か見てみたくてな。」

 

「そうですか。このままいくと富嶽だけでも500機超は生産されるでしょうね。他の戦闘機たちもそれぞれ400ずつ。」

 

そう言って妖精は俺の肩によじ登った。

 

「これらに更に雷撃が可能なものも加われば、この滑走路だけで深海棲艦と戦えますよ。」

 

そう言って飛び降りて仕事があると言って妖精はどこかへ行ってしまった。

確かにこれだけあれば制空も簡単だろうし、富嶽の絨毯爆撃と雷撃機があれば一端の空母の様な運用ができる。そういう事なのだろうと俺は思い、その場を離れた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺と瑞鳳は帰還してくる爆撃隊の数を数えていた。一列になって滑走路に進入してくる富嶽を『正』の文字で紙で数えていく。今は丁度100を超えたあたりだ。

不調を訴えて戻ってくる富嶽は無かったが、たまにエンジンから煙を吹いている富嶽も着陸していたので、多分敵迎撃機に撃たれたのだろう。これは特務艦隊の帰還を待って聞くしかない。俺としては赤城がそんなヘマをするとは思えなかったから、確認という形になるが。

 

「......よっと。提督。230機全て帰還しました。」

 

横でずっと『正』を書き続けた瑞鳳は最後の富嶽の着陸を見届けると、書き記した『正』の数を数えて俺に報告した。

 

「そうか。......特務艦隊の帰還予定時刻は?」

 

「およそ30分後です。結構近くまで戻ってきてるみたいです。」

 

そう言われて俺は埠頭の先を見た。確かに長門を先頭に大艦隊がこちらに来ていた。

 

「確認した。あとは報告を聴くだけだな。」

 

俺はそう言って自分の席に座り、俺の元に届いた滑走路の妖精からの報告書を見ていた。

そこには予定していた数の飛行機の調達が完了し、格納庫への格納も完了したという知らせだった。それと、格納庫の不足を懸念して新規増築を訴えるものだ。俺は迷わずサインを入れて、滑走路の妖精への返事を書き留めた。

ちなみに滑走路から届く報告書なんかは滑走路主任という妖精がいるらしく、その妖精から届いている。

 

「隼、疾風、富嶽の配備が完了したそうだ。」

 

俺はそう言って瑞鳳にどれだけの配備数か書かれた紙を見せた。

 

「隼が400機。疾風が400機。富嶽が500機......。何処の航空隊ですか?!」

 

「横須賀鎮守府航空隊だが?正式名は決めてないけど。」

 

そう言うと瑞鳳は顎に手をやりうーんと唸りだした。どうやら航空隊の名前を考えている様だ。

 

「......それぞれを戦闘機は20機ずつで割って番号充てるだけでいいと思いますよ?ひとくくりの名称はきっとそのうち愛称が付きますから。爆撃機も20機で割って番号充てればいいと思います。」

 

「成る程......。まぁ、横須賀鎮守府航空隊だと艦載機か陸上機か分からないからな。」

 

俺は紙とペンを出し、番号順に部隊を編成した。

 

「1番機から20番機は第一飛行戦隊。21番機から40番機は第二飛行戦隊。41番機から60番機は第三飛行戦隊......。」

 

「1番機から20番機は第一爆撃中隊。21番機から40番機は第二爆撃中隊。41番機から60番機は第三爆撃中隊......。」

 

最後まで書き上げると滑走路主任の妖精宛ての封筒を用意した。同封するのは機体番号ごとに割った部隊編成と趣旨の書いた便箋。すぐに入れて封をした。後で瑞鳳に持って行ってもらう。

 

「部隊を分ける際には尾翼や胴体にマーキングするんですけど、あちらに任せてもいいですよね?」

 

瑞鳳は俺が封した封筒を受け取るとそう聞いてきた。

 

「あぁ。何でも好きにマーキングするといいと伝えておいてくれ。もう直ぐ特務艦隊が埠頭で投錨するだろう。」

 

そう言うと瑞鳳は走って執務室を飛び出していった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

滑走路から戻った瑞鳳と執務室で待っていると、長門以下特務艦隊だった艦娘たちが執務室に入ってきた。報告との事。

 

「戻った。戦果を報告する。」

 

そう言って長門は書き留めてあったんだろう紙を出して読み上げた。

 

「爆撃隊による海面絨毯爆撃によって深海棲艦は殲滅。キス島を解放した。」

 

思っていた通りの戦果だった。富嶽による海面絨毯爆撃は効果を絶大に発揮していた。だが、資源を大量に消費する欠点はあった。

 

「キス島にはかつて送り込まれていた日本皇国陸軍守備隊約5000名の生存を確認。私の艤装で収容して帰還したが、まだ艤装に残してある。」

 

俺は衝撃を受けた。キス島に人間が居たと言うのだ。これまで解放した海域には須らく人間は存在しておらず、残っていたのは手つかずの資源だけだったからだ。

 

「どんな様子だった?」

 

「ひどく疲れていた様子だ。私たちの存在が確認されて鎮守府に隔離される前に送り込まれた様だから私たちの事は知っていた。」

 

「そうか。今から話しに行こう。鳳翔と祥鳳、瑞鳳は偵察機と零戦を準備だ。すぐに知らせろ。」

 

「了解した。」

 

長門は俺が会うと言ったのに反対はしなかった。たぶんいつもの様に空から見張る事を言ったからだろう。

 

「すぐに向かう。」

 

俺は執務室に居た全員を引き連れて埠頭に向かった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

遠目から長門の艤装の甲板を見ても分かるくらいに人が乗っていた。

それを眺めつつ空を見上げると、零戦と彩雲が飛び始めていた。もう発艦させたのかと思いつつ、何時嗅ぎ付けたのか今度は熊野が艤装を身に纏い俺の前を歩いている。その後ろには無傷で帰還した特務艦隊の艦娘たちがこれまた艤装を身に纏っていた。ちなみに艤装を身に纏うと、埠頭に停泊している艤装は消える。

 

「キス島守備隊......。話によると数年間、島に取り残されていたと訊きましたわ。」

 

熊野は俺の前を歩きながらそう言った。

 

「そうなのか?」

 

「えぇ。何でも米軍の撤退に置いて行かれたとかと訊きましたわ。」

 

そう言う熊野はこちらを向かずにずっと前を向いて歩いている。もう長門の艤装が目の前だからだ。

カンカンと音を立てて上るタラップで少し緊張しながらも俺は歩みを進めた。上りきると、甲板には座っている兵士たちが居た。装備は持っている様だが、結構手直しした後があり、皆来ている戦闘服もヨレヨレになっている。

 

「何か来たぞ......。」

 

「艦娘が一杯居るぞ。」

 

「あの白い服のは何だ?」

 

「というか艦娘が艤装を纏ってるっ!」

 

そうわざわざする甲板で熊野が砲を鳴らした。炸裂する手に持った主砲は噴煙を上げた。

それを訊いた兵士たちは黙った。それが何を意味したか理解できたようだ。

 

「貴方がたはキス島守備隊で間違いありませんわね?」

 

「そうだ。」

 

1人立ち上がりそう答えた。

 

「では整列して下さいな。」

 

そう熊野が言うと立ち上がっていた兵士が号令をかけた。

 

「整列っ!!」

 

ザザッという音と共に全員が立ち上がり、並んだ。

 

「提督。」

 

そう熊野に言われ俺は咳ばらいをした。

 

「......キス島守備隊の皆さん。救助が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。私は横須賀鎮守府の提督です。」

 

そう言うと少しざわついた。

 

「ウチの艦隊が急に現れた時、さぞや驚いたと思います。今いる戦艦 長門に言われて甲板に乗り、帰ってきたのは私は先ほど長門の方から聞かされました。」

 

そう言って俺は息を飲み込んだ。

 

「と、言っても仕方ないので取りあえず、お疲れ様でした。ここは日本です。貴方たちは日本に帰ってきました。」

 

そう言うと整列していた兵士たちは涙を浮かべ、袖で拭き、座り込んでしまうものも居た。

 

「島風。」

 

「はいっ!」

 

「大本営に緊急連絡『キス島の残存守備隊を収容、日本に帰還。』だ。」

 

俺は島風を呼び出して、そう伝えるとすぐに連絡を取ってもらう為に行ってもらった。

 

「労い、報酬、何でも大本営に要求してやりましょう。私が無理を言って通します!」

 

そう言うと帰ってきた兵士たちは泣きながら雄叫びを挙げた。数年間戦い抜いた辛さから解放され、やっとの思いで帰還した日本の地が踏める喜びに浸っていたのだ。

 

「やった!!帰ってこれたぞ!!」

 

「うおぉぉぉぉぉ!!!妻と息子に逢いてぇぇぇ!!」

 

「俺は生きてるぞ!!」

 

そう思い思いに叫ぶ中、整列の位置からずれる事無くある兵士が俺に言った。

 

「空を埋め尽くした爆撃隊は何ですか!!あれが深海棲艦共を木っ端みじんにしたんですよ!!すっげぇデカいし!!」

 

「アレは富嶽。大型戦術爆撃機です。」

 

そう言うと兵士たちは揃って『おぉ!』と言った。

 

「大本営からトラックが来ます。兵士の皆さんは長門から降りて並んでいて下さい!」

 

そう言って島風がタラップを駆け上がってきて言った。どうやら連絡はついた様だ。

 

「凱旋ですよ。行先は大本営です。」

 

俺はそう言って降りて行った。それに続くかのように兵士たちも並んで降りて、埠頭に整列した。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

キス島守備隊の生還で大本営は沸いた様だった。

メディアの横須賀鎮守府への取材許可を求めるものと、横須賀鎮守府宛ての感謝状何かが段ボール箱に入りきらない程届いたと俺は聞いた。

生還兵の凱旋では近くの陸軍基地から音楽隊やらが集まり、盛大な式典の様になったとの事だった。

 





これにて新戦術の話は終わりですね。結局成功しましたが、キス島守備隊のネタは届いたご感想から影響を受けて書きました。パクリですかね?
本編では解放されましたが、ゲームの方ではまだ手古摺ってます。いつになったらクリアできるのやら......。

ご意見ご感想お待ちしてます。

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