【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第六十四話  北上の願い

珍しく普通に起きたのでボケーと執務室の椅子に座っていると北上が入ったきた。

 

「おはよー提督ー。」

 

そう言いながらおさげをふらふらさせてポスッと北上は椅子に座った。

今日の秘書艦は北上だ。北上は結構早い時期から艦隊にいた気がするが、こうして秘書艦をやってもらうのはなんだかんだ言って初めてだ。

 

「朝食まで時間あるけど、どうする?」

 

北上は寒いのか縮こまりながらそう言った。

 

「ダラダラする。」

 

俺はそう言うとグデーっと机になった。縮こまった北上は驚いた表情をしている。

 

「提督がそんな風にしてるなんて聞いたこと無かったんだけど......。」

 

「普段はやらん。」

 

俺はそう言って腕を枕にした。さながら、授業中に寝る学生の様だ。

 

「へー。私もー。」

 

そう言って北上はもぞもぞと動き出した。どうやら縮こまった態勢から変えてるようだ。俺は突っ伏せてるから音しか聞こえないが、俺は気にせずにそのまま寝てしまった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺は突然身体が揺らされるので目が覚めた。身体が北上が揺らしていた様だ。起こしてくれたみたいだった。

 

「おぅ......寝てたのか......。ありがとう、北上。」

 

「どういたしましてー。それより提督。朝ごはん食べそびれちゃった......。」

 

そう言って北上は時計のある方向に指をさす。時計は丁度8時30分を指していた。朝食の時間は6時30分から7時30分までと決まっており、それ以外では間宮が倉庫にある食糧を確認に行ってしまうので、言っても誰もいないのだ。

 

「寝過ぎたか......。後から不満が出るだろうな。主にテレビ。」

 

そう言って俺は遠い目をした。

テレビが食堂に設置されてから結構時間が経っているが、未だに俺が管理をしていた。勿論電源のオンオフもだ。これまでは6時30分から7時30分まで俺が居座り、テレビの管理をしてから電源を落として執務に向かうってのが決まりだった。だが、時間になるのと同時に全員が集まって食べるので今は間宮に管理を頼んでいる。だが間宮は電源のオンオフが分からないと言っていた。

 

「だろうね。でも仕方ないと思えば仕方ないんじゃない?」

 

そう言って北上は秘書艦の椅子に座った。

 

「そうだが......。」

 

「気にしすぎだって。昼は行くんでしょ?」

 

「勿論。」

 

そう北上に言われて俺は取り敢えず座り直した。

 

「と言うか食いそびれて腹が減ったな。」

 

「そうだよー。お腹減ったよー。」

 

そう言って北上はお腹を押さえた。ちなみにまだ改二になっていないのでへそは出してない。

 

「どうしよ......。コンビニとか無いし......。」

 

俺は考えを巡らせた。そしてある事に思い至った。

 

「あっ、俺が作ればいいか。」

 

そう言った瞬間、ガタッという音と共に北上が立ち上がった。

 

「それマジ?」

 

「マジだ。無いんだろう?」

 

そう言って俺は立ち上がり、私室に戻った。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺は私室に戻るなり、冷蔵庫を開いた。冷蔵庫の中には卵と牛乳、レタス、厚く切られたベーコン、パンが入っていた。こうも丁度いいものが残っていたと思いつつ、俺はボウルやら色々と出して料理を始めた。

つい最近だが、俺の部屋にIHコンロとカウンター、シンクができたのだ。理由はこういう時に使う為だ。それと唐突に作りたくもなるのでその時の為。

 

「おぉ......提督の部屋ってこうなってるんだ。」

 

そう言って北上が俺の私室に入ってきた。

 

「ねぇー、私のもあるよね?」

 

「当たり前だ。北上も食いそびれたんだろう?」

 

そう言いつつも俺はフライパンから目を離さない。

今作っているのはオムレツだ。間宮のには味が劣るかもしれないが、結構自信がある。

それとあとでベーコンを焼いてレタスを割いて完成だ。

 

「北上、パンがオーブンで焼けてるだろうから出しておいて。」

 

「ほーい。」

 

そう言って俺は出しておいた皿にオムレツを乗せた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

全部ができるのにそんなに時間はかからなかった。そもそもオムレツ2こ焼いてベーコンを焼くだけだ。時間がかかる要素が無い。

俺と北上は俺の私室の机に向かうと食べ始めた。

 

「オムレツとベーコン、レタス、パンねぇ......。いいねぇ。」

 

そう言って北上はいただきますと言って食べ始めた。俺もそれに続くかのように食べ始めた。

 

「んまっ!!ふわとろじゃん!!」

 

そう北上は一口目のオムレツを食べて叫ぶとあれもこれも食べ始めた。無言で。

俺はそれを眺めつつ、もそもそと食べている。

北上と食べたことはなかったが、結構北上は丁寧に食べる。

 

「このベーコン、そのままだったら食べるのに苦労しそうだけど、切ってあって食べやすいよ。」

 

そう言って口をモゴモゴしてパンを食べる北上。

 

「そうか。ナイフとかは極力使いたくなかったからな。ごちそうさま。」

 

俺はそう答えて、食べ終えた皿を持ってシンクに向かった。

 

「食べ終わったら皿とか洗うから持ってきてくれ。」

 

そう言って水に浸してあったフライパンやボウルを洗いだした。

北上もすぐに食べ終わり俺のところに皿を持ってきた。

 

「ごちそうさま、提督。」

 

「お粗末様。先に戻っててくれ。」

 

そう言って俺は洗い物に戻るが、北上は俺の部屋から出て行こうとしなかった。どうやらさっき座っていた椅子に座り直したようだ。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺が洗い物を終わらせて手を拭いていると北上は声をかけてきた。

 

「提督って料理出来たんだ。」

 

「そりゃな。自立してから困らないようにって両親に小さい頃から家事を一通り仕込まれてたからな。というか出来て当然だろう?」

 

そう言って手を拭いたタオルを洗い物カゴに投げると俺はドアノブを握った。

 

「執務を始めようか。悪いが北上、書類を取ってきてきて。」

 

「りょーかい。」

 

俺と北上は執務を始める為に俺の私室から出た。

 

「ひょっとして提督って女子力高い系?」

 

そう小さく呟いた北上の言葉は提督には聞こえなかった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

いつも通り執務をこなし終わったら昼食の時間になっていた。

俺と北上は執務室を出て食堂に向かった。

食堂にはいつものように艦娘たちが集まって食事をしている。いい匂いが俺の鼻腔をくすぐった。

 

「今日のお昼は蕎麦みたいだねー。」

 

北上そう言ってトレーで間宮、正確に言えば妖精から受け取った蕎麦を眺めて言った。

 

「蕎麦か。俺は好きだから嬉しい。」

 

そう言って席に座った。勿論、北上は隣に座った。俺の隣でもいいのだろうかと考えつつ、蕎麦につけるつゆに薬味を放り込んで、蕎麦を啜り始める。

そうしていると俺の前の席が埋まった。誰だろうかと顔を上げてみるとそれは蒼龍だった。

 

「おはようございます、提督。......うーん。正確にはこんにちは?」

 

そう言われて俺は顔を上げた。

 

「蒼龍か。おはよう?こんにちは?、まぁいいが。どうした?」

 

そう言うと蒼龍の口から放たれた言葉の回答に困った。

 

「今朝は提督が来なくて間宮さんが心配してましたよ?」

 

蒼龍が言うと周りにいた艦娘たちはガタッと音を立てた。

 

「寝坊だよ。8時30分までに行けなかったんだ。」

 

そう言うとまた周りでガタッと鳴った。

 

「提督が寝坊ですか......お腹減ってるのなら私非番なので酒保で食べれるものを余分に買ってきましょうか?」

 

「ん?あぁ、別にいいぞ。食ったからな。」

 

そう言うと蒼龍の頭上にハテナが浮かんでいるように見えた。

 

「何か買い置きでもあったんですか?」

 

「いんや。自分で作ったさ。」

 

そう言うと蒼龍はもちろん、聞こえているであろう艦娘全員が何かしらの音を立てた。

 

「食器は丁寧に扱えよ......。」

 

そう言うと蒼龍は謝って落とした箸を拾うと、俺に聞いてきた。

 

「提督って料理できるんですか?」

 

「当たり前だ。」

 

そう言うと周りで『えぇー!』の合唱が起こり、俺は耳を塞ぐ羽目になった。

 

「それってあの......即席とか?」

 

「アホか。ちゃんと作るわ。」

 

そう言うと俺の横で蕎麦を食べていた北上が口を開いた。

 

「提督の料理、美味しかったよ。ありゃ、間宮さんとは別のおいしさ......。」

 

そう言って北上は再び蕎麦に意識を戻したが、周りの艦娘はそれどころじゃないみたいだ。

 

「北上さん......いいなぁ。」

 

そんな事を言ってる蒼龍の背後では凄い騒ぎになっている。

 

「提督の手料理っ!?」

 

「食べてみたいデース......。」

 

「雪風も食べてみたいですっ!」

 

そうわらわらと言っている背後だが、北上はまた口を開いた。

 

「私室も良かったなぁー。広くて、小奇麗だったし。」

 

俺はもうこの言葉で収集が付かなくなるのが分かったので何も言わないようにした。何故、ここまで反応するのだろうかと考えつつ俺は蕎麦を啜った。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

昼の騒ぎから脱出した俺と北上は執務室に戻ってきていた。

 

「あー。お腹いっぱい。」

 

そう言って北上は秘書艦用の椅子に腰をかけていた。

 

「そうだな。」

 

俺は手元にあった書類を眺めながら答えた。手元にあったのは景品の達成数を記した紙。もう北上が言えば、全員分が出たことになる。

 

「そう言えば、北上。」

 

「ん、何?」

 

「北上は景品、願いは決まったか?」

 

俺がそう言うと、北上はポンと手を叩いた。

 

「忘れてたよ。」

 

「なんだそりゃ。」

 

北上はどうやら忘れていた様だった。

 

「んーとね。」

 

そう言って北上は考え始めた。

 

「......。」

 

俺はそれを黙って見ている。

 

「......決めた!」

 

そう言った北上は笑顔だ。

 

「ちゃんと提督に休んでもらう事。」

 

そう言った北上に対して俺は椅子から滑った。

 

「私たちは第一艦隊によく入る出撃要員はたまに休んでるけど、提督は休んでないでしょ?だからどっかで休みの日を入れる事。」

 

そう言った北上の笑顔は優しかった。

 

「分かった......。偶に休みを入れよう。」

 

俺はそんな仕事をしている感じはしてなかったが、部下である北上に言われたんだ。休もうと考えた。それに、俺はやりたいことがあった。

それがある山を俺は見つめた。

 

「時間もいっぱいあればゆっくりできるもんな。」

 

そう言った俺の顔を不思議そうに北上は見つめていた。

この後も執務が終わっていたので、ダラダラと過ごした。

 




前回は文字数が少なすぎて嘆いていたのにその次でこれとか......すみません。

次回で景品は終わります。そのあとから、どうしていきましょうかね......。ネタはあるんですがね。一応。

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