【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話 作:しゅーがく
早朝、執務室には前日に呼ばれていた艦娘たちが集まっていた。
高雄、愛宕、北上、雪風、赤城、加賀。全員がこのメンバーの呼ばれた意味が理解できなかった。
「おはよう。」
そう言って俺が執務室に入ると、何とも言えない表情を全員がしていた。
「これは......どういった意図の編成なのでしょうか?」
赤城がそう俺に尋ねてきた。
そんな赤城に向かって俺は胸を張り、口を開いた。
「これより、高雄以下の艦隊はリランカ島に進軍。島を占領する深海棲艦を殲滅せよ!」
「「「「「「はっ!!」」」」」」
息を合わせてそう高雄たちは答えた。
「と言っても富嶽も出るんだがな。2個爆撃中隊。」
ズゴーという効果音が聞こえた。さながら昭和の漫才の様だった。
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朝食の時間よりも前に出撃していった高雄たちを見送ると、丁度今日の秘書艦が執務室に入ってきた。
「ゼェハァ......提督っ、艦隊はっ?」
「今しがた出撃したところだ。爆撃中隊ももう雲の上だろう。」
「不幸だわ......。」
そう言って姿勢を戻したのは山城だ。
「朝食だ。食堂に行こうか。」
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朝食を終えた俺と山城は執務を片付けていた。と言ってももう殆ど終わっている。どうやら今日の出撃で出た誰かがもう持ってきて手を付けていた様だった。半分近くが終わっていたのだ。
「やらなくても良かったのに......今日また暇になる。」
そう言って最後の書類を書き終えた俺は背を伸ばした。
「提出してきますね。少し酒保に寄ってきますがいいですか?」
山城は俺が積み上げた書類の山(※1mmもありません)を手に取るとそう言った。
「ん?何か買うものでもあるのか?別に構わないぞ。」
「ありがとうございます。では、行ってまいります。」
そう言って山城は執務室を出て行った。
俺はそれを見計らったかのように引き出しからある冊子を出した。現在残っている装備のリストだ。厳密に言えば、新瑞に連絡を付けて取り寄せた倉庫で眠っている自衛隊・海軍時代の遺品だ。
中には深海棲艦にも通用する装備がいくつもあり、増産すれば対等に戦えると言われたモノ......SPYレーダーまでも取り外されたものが残っていた。
「......出来るだけ多くの装備が欲しいな。」
そう言って俺は欲しいものをリストアップしていった。SPYレーダー、CIWS、地対艦誘導弾、短距離地対空誘導弾......興味本位で要塞砲をリストアップしてみた。
どれも書類上、かなりの数があるらしく、如何使うか困っているものらしい。
「取りあえずあるだけ寄越してもらうか。」
俺はそう言って備考に『あるだけ』と書き込んだ。それがあの悲劇につながるとは想像もしてなかった。
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リストを折って封筒に厳封していると山城が帰ってきた。手には酒保に行ったからだろう、袋が握られている。
「おかえり。すまないが書類が増えてしまった。」
「大丈夫ですよ。今できたのなら急ぎではないでしょうし。」
そう言って山城は袋を秘書艦用の机に置くと俺が厳封した封筒をマジマジと見た。
「これ......大本営宛てですか?」
「あぁ。新瑞さん宛てだ。」
そう言うと『何かは存じ上げませんが、何か取り寄せるんですか?』と俺に聞いてきたので回答に戸惑った。だが俺の答えを聞く間もなく山城は袋から箱を出した。
「ん?それは?」
そう俺が訊くと山城がそれを俺に差し出した。
「こっ、これはっ、.......その......お姉様が提督とお茶を飲みたいと言っていたので、それ用のを......。」
そうもじもじしながら言う山城からそれを俺は受け取った。
「ありがとう、山城。大切に使わせてもらうよ。それと扶桑に今日の午後にでもお茶をしようって言ってくれるか?」
「はいっ!」
山城はどうやらシスコンではなく姉思いの妹だった様だ。
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昼食を終えて俺は山城と埠頭にある扶桑の艤装の甲板の上に来ていた。そこには机が出されていてシーツがかけてあり、椅子が7脚用意されていた。
机の上にはまだ焼きたてなのか、クッキーが並んでいる。
「お待ちしてました。」
そう言って扶桑が35.6cm連装砲の裏から出てきた。
「うお!連装砲の裏からかよ!!......それよりお茶なのに甲板か。」
そう言って俺は辺りを見渡した。正面は海、左は艦首、右は35.6cm連装砲、背後は鎮守府とよくわからない処に居た。
「ここは落ち着けますので、結構皆自分の艤装の甲板でこうやってお茶を飲んだりするんですよ?」
そう言って扶桑は椅子に腰を掛けた。山城も定位置なのか扶桑の横に座った。
「提督はこちらに......。」
そう言って案内されたのは山城の反対側だった。
「ありがとう。」
俺は礼を言うと腰かけて箱を取り出した。
「提督、それは?」
「あぁ、これか?これは......ムグッ!」
俺が『山城からもらった。』って言いかけたら咄嗟に立ちあがった山城に口を押えられてしまった。
「あはは!提督、どうされたんですか?」
「ムグムグッ!!」
俺は言葉を発せずにいると山城が色々歪曲した説明を始めた。
「今朝お茶しましょうって言ってみたら『自分のカップがあるんだ。持って行ってもいいか?』って言ってたので多分それですよ!」
無理やり感が滲み出ているが、扶桑には分からなかったらしい。
「そうなの?では提督、それをお預かりしますね。」
そう言って扶桑は箱から出したカップを手に取った。そして紅茶を注ぎ始める。
そうしていると誰だろうか、話し声が近づいてきた。
「今日も扶桑たちとティータイムネー!」
「この時間はいつもゆったりしてますもんね!」
「榛名は今日、スコーンを焼いてみました!」
「スンスン......ふむ、どうやらもう飲み始めているようですよ。」
その話し声で誰だかすぐに分かった。金剛型姉妹だ。
「そう言えばサー。今朝赤城たちが出撃していったみたいですネー。行先は......西方海域でしょうカ?」
「リランカ島でしたっけ?空襲を仕掛けるって噂の。」
「朝早くに富嶽が飛んでいったのでそうでしょうね。」
「ですが編成が結構弱腰でしたよ?重巡2に雷巡1、駆逐1、空母2......普段の提督ならしない編成です。」
そう言いながら俺たちの前に金剛たちが現れた。
「こんにちはデース!扶桑と山城!」
そう言って手をブンブン振りながら現れた金剛たちは俺を見るなり目が点になった。
「今日は俺も参加してる。」
そう言って俺は紅茶を啜った。
「んなっ!」
「んななっ!」
「んなななっ!」
そう次々に言う比叡と榛名、霧島。
「「「「提督が居ます!(デース!)」」」」
そう叫ぶ4人に俺はすかさずチョップをかました。勿論痛くない様に髪に触る程度。
「るっせ。静かにしてくれ。」
そういって俺は座りなおした。
「どっ。」
「ど?」
「どっ、どうして提督は居るんですカ?!」
「居ちゃ悪いか。」
金剛は自然に俺の横に椅子に座るとそう訊いてきた。
「居ちゃダメだなんてとんでもないデス!むしろhappyネー!」
そう言ってニコニコする金剛。
「じゃあいい。」
俺はそう言って海を眺めながら紅茶を飲んだ。何か格好つけてるみたいで嫌だったが、角度が角度だけにそちらしか見えない。
そうして始まった俺と扶桑姉妹、金剛姉妹のお茶会は結構続いた。
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日が傾き始めて空が紅くなってきた頃、空を轟轟という音が響き始めた。これは富嶽のエンジン音だと誰しもが分かった。
「帰ってきたか。山城、執務室へ。」
「はい。」
俺は立ち上がると扶桑に礼を言った。
「ありがとう。美味しかったよ。」
「えぇ。こちらこそありがとうございます。」
そう扶桑は俺に微笑みかけた。
「行くぞ、山城。」
「はい。」
俺と山城は足早に執務室に向かった。
その一方、片づけをしていた金剛と榛名は俺のティーカップをマジマジと見つめていた。
「榛名、これって......。」
「えぇ、間違いありません......。」
そう言って榛名は山城のティーカップを横に置いた。その瞬間、金剛と榛名は中破した(※心です)。
「なななっ!」
「これはっ!」
並べられた2つのティーカップは同じ色、同じデザインだった。これはまるで......。
「ペアカップデース!!」
「ペアだったんですね!?」
この日、出撃してないはずなのに入渠場に居た金剛と榛名を見かけたとか。
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日もだいぶ傾き、暗くなった頃、執務室には高雄たちが帰ってきていた。これから報告だ。
「ただいま帰還しました。戦果をご報告します。」
そう言って高雄は報告を始めた。
「道中の深海棲艦と何度か交戦しましたが無傷です。そしてリランカ島へは爆撃中隊が爆撃をしたので、問題ないです。こちらの勝利です。」
「うん。分かってた。」
俺はそう言って立ち上がった。
「祝いだ!順調に進む海域解放を祝して!!」
「「「「「「おーー!!!」」」」」」
祝いではどんちゃん騒ぎになり、途中門兵が暴れる艦娘を抑える為に入ってきたのはここだけの話。
武下は俺とそれを眺めていた。
1発でリランカ島クリアしました。編成は作中のと同じです。
あとお茶会に書いてて違和感がありましたがそのままにしちゃいましたw
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