【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第七十話  提督の嘆き②

俺は頭を抱えていた。

何故なら、午後になって執務室の椅子でくつろいでいるといきなり夕立が飛び込んできたのだ。いつもの夕立ならちゃんとノックをして、俺の確認を取ってから入ってくるのだが(※赤城と夕立以外は普通に入ってきます)、飛び込んできたのは初めてだった。そしてそんな夕立の口から言われた事に衝撃を受けた。

 

「鎮守府正面に未確認艦を発見したっぽい!!」

 

俺はすぐさま立ち上がり、執務室の窓からそれを確認した。

未確認艦はかなり接近してきていた。艦娘たちはそれぞれ艤装に乗り込み、指示一つでいつでも砲撃できる体勢を整えていた。要塞砲も全基がその未確認艦を捉えている。

そうしていると、未確認艦から人が出てきた。軍服を着ている。その軍服を着た人は両手を挙げたまま叫んだ。

 

「我々に先方を攻撃する意思はない!提督にお話がある!」

 

そう叫ぶ人に向けて砲門が微調整された。

そんな中、夕立から続いて報告があった。

 

「全艦娘、全妖精からです。いつでも砲撃指示を、とのことです。」

 

そう言われた俺は夕立に伝言を頼んだ。

 

「夕立、全艦娘、全妖精に通達。所定地に戻れ。繰り返す。所定地に戻れ。」

 

「了解っぽい。」

 

俺がそう言うと夕立は艤装を身に纏ってどこから出したのか分からないが、受話器に話しかけた。

 

「提督から伝言です。所定地に戻れ、所定地に戻れ。」

 

そう言い終わった夕立に俺は頼みごとをした。

 

「護衛、頼めるか?」

 

「了解っぽい!」

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺と夕立、秘書艦の伊勢は未確認艦の甲板に現れた人と話す為に未確認艦の近くまで来た。そうすると叫んでいた人が甲板から現れた。

 

「すみません。急に。」

 

そう言って近づいてきた彼に夕立と伊勢が立ちはだかった。

 

「おぉっと......それ以上は......ね?」

 

「それ以上は許さないっぽい。」

 

伊勢は刀を抜き、夕立は砲を構えていた。

 

「......失礼しました。では、本題に入らせてください。」

 

そう言った彼は咳払いをした。

 

「私は日本皇国陸軍 強襲揚陸艦 天照(てんしょう) 艦長の的池です。本日はお願いがあって参りました。」

 

そう言って的池は紙を懐をから出した。そしてそれを読み上げる。

 

「貴艦は先の空襲にて奪還されたリランカ島の占領を命ずる。」

 

的場はもう1枚捲った。

 

「横須賀鎮守府艦隊司令部 貴艦隊は天照をリランカ島まで護衛されたし。 新瑞。」

 

そう言うと的池は紙を畳んだ。

 

「そう言う事です。それにあたって鎮守府に寄港してもよろしいかと。」

 

そう言った的池に向かって夕立が言った。

 

「リランカ島......この前陥落させたところ。占領するって事はその船には人がいっぱい居るっぽい?」

 

それにすぐさま的池は答えた。

 

「もちろんです。ざっと1000人はいますよ。それに重機や食料も積んでいます。」

 

そう的池から訊いた夕立は俺の方を向いた。

 

「夕立は条件付きで寄港を許可してもいいと思うわ。」

 

そう言った夕立に続いて伊勢が言った。

 

「ただし、厳重な警備の下。さらに水雷戦隊の監視下でです。」

 

そう言われて天を仰ぐと、空に雷電改が飛んでいた。赤いマーキング、赤城艦載機だ。戦闘機が飛んでいるという事は、かなり警戒されている。

 

「許可します。但し、条件は呑んでもらいますよ?」

 

「分かってます。」

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺と伊勢、夕立が戻ると早速食堂で警備艦隊が結成されていた。編成に関しては侵入者の時と同じような編成の様だ。それ程に警戒されているという事だろう。だが、目に血走った様子は見られなかった。

 

「赤城、今回も指揮艦は?」

 

「私です。前回と同じような警戒網を張ります。」

 

そう言って赤城は笑うと、艦娘で犇めき合う中に戻って行った。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

何事もなく夕食を摂り終えた後、強烈な不安感に襲われていた。

理由は明白だった。

天照という揚陸艦に乗っている人たちは艦娘の事は知っているが、本質を知らない。俺のイメージでは必ず兵士と言えば何かをやる。女性の容姿をしている艦娘が居る施設なら猶更だ。間違いを起こし、艦娘に殺されかねないと不安を抱いてしまっていたのだ。

そんな矢先、外が騒がしくなった。声的には艦娘だ。俺はその瞬間、執務室を飛び出していた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

「武器となるものを置き、手を頭の後ろで組みなさいっ!」

 

艦娘3人と門兵3人の混成警備隊が迷彩服を着た男たちを捕らえているところだった。

 

「どうしたっ!!」

 

俺がそう駆け寄ると鳥海と那珂、村雨がこちらを向いた。

そして状況を鳥海が説明しだした。

 

「先ほど、警備中に不審人物を発見。捕らえたところです。警備部に現在有効になっている逮捕権を行使。地下の牢に拘束します。」

 

そう言った鳥海は笑っていなかった。一方、手を組んでいる迷彩服の男たちはへらへらとしていた。

 

「へへっ......生で見たことなかったけど、艦娘って可愛いじゃん。」

 

「観艦式にはいなかった艦娘だね。名前、なんていうの?」

 

そう言っている迷彩服の男たちに門兵が小銃の銃口を向けた。

 

「口を慎め。」

 

だた門兵はそう言った。そして門兵の1人がこちらを向いた。

 

「提督。どうやらこやつ等は教わっていない様です。鳥海さんたちと長時間接触させておくのは危険だと判断します。逮捕権を行使して警備棟の地下牢に拘束してもよろしいでしょうか?」

 

そう言った門兵は俺のよく知る人物だった。それは武下大尉とよくいる二等兵。食堂のテレビのアンテナを設置した二等兵だった。

 

「分かっている。すぐに連行しろ。」

 

「了解。」

 

そう言うと二等兵は銃を迷彩服の男たちに突き付けた。

 

「本時刻を持って貴様らを拘束する。」

 

そう言って結束バンドで腕を縛ろうとした瞬間、迷彩服の男の片割れが言った。

 

「危険ってどういうことだ?艦娘が可愛くて可愛くてって事か?......それとも俺らに襲われるからか。そりゃそうだろ。そんな布面積の小さい服着たり、セーラー服着たりしてる娘がいるんだ!」

 

そしてもう一人の方が口を開いた。

 

「ていうかアンタ何者だよ。そんな若い奴、軍隊には居ないぞ?居るなら精々士官学校か。つーか、ほんと何なの?見てくれは海軍将校様みたいだが、コスプレかぁ?パパの仕事着でも着てるんですかー?」

 

そう煽ってくる2人に俺は無言だった。今の俺の心境が知られてしまったら、この2人がどうなるか分からない。そして横須賀鎮守府がどういう場所なのか、身をもって知る事になる。

 

「......司令官さんを侮辱しましたね......。」

 

小さい声だが微かにそう聞こえた。

 

「えっ?何だって?」

 

そうへらへらしながら訊き返す迷彩服の男のこめかみに鳥海が先ほどまで身に纏ってなかった艤装の20.3cm連装砲が当てられていた。

 

「司令官さんを侮辱しましたね!!!!」

 

鳥海がそう言った瞬間、那珂と村雨も艤装を身に纏った。

 

「提督を侮辱した......。」

 

「司令官を侮辱した......。」

 

そう言う那珂と村雨に迷彩服の男が少し引きつらせながら言った。

 

「なっ......なんだよっ!提督って誰だよ!ていうか、コイツこそ誰だよ!偉そうにしあがって、クソガキがぁ!」

 

そう迷彩服の男が俺に言い放った。

その刹那、砲声が辺りに鳴り響いた。

俺が鳥海たちから撃たれたもので無い事を確認すると周りを見渡した。すると先ほどまで居なかった、金剛と鈴谷、時雨、夕立、赤城、加賀が居た。艤装を身に纏っている。

 

「へへっ......俺的にはこいつらよりもグラマーな赤城や加賀の方が良かったんだよ。」

 

「俺は金剛ちゃんかな?」

 

そう言った2人に向かって強烈な殺気が飛んだ。

 

「なんだ?」

 

そう言った2人に加賀が近寄って行った。

 

「そこの......。」

 

「何だよ。」

 

そう言った迷彩服の男の胸倉を加賀が掴んだ。

 

「提督の面前で無ければ殺してます。先から少しずつ切り落として......痛みに悶えながら死ぬんでしょうね。碌な死に方じゃないですよ?」

 

そう言った加賀はすぐに言い換えた。

 

「あ......でもやっぱり、深海棲艦にお土産として艦爆から落とすのもいいですね。」

 

そう言った加賀は縄を取り出した。

 

「死ぬのは提督の面前ではないので問題ないです......。」

 

そう言って男に縄を巻き付けた。

 

「一部の深海棲艦は喰うらしいですよ?人間を......。生きたまま喰われるってどんな感じなんでしょうか?」

 

そう言った加賀の目は笑ってなかった。

そんな様子を俺は黙って見ていたが、流石に声を掛けないと不味いと思った。

 

「おい加賀。」

 

「はい。」

 

「手を引け。」

 

「ですが......。」

 

「手を引くんだ。」

 

そう言うと素直に加賀は手を引いた。

そして俺は二等兵に声をかけた。

 

「こいつらを牢屋にブチ込んどいてくれ。それと揚陸艦に伝令。『貴艦の乗組員を逮捕した。』」

 

「了解しました。」

 

俺はそれだけを言うと、逮捕の説明を求める男たちの声を無視して執務室に戻って行った。そして帰る最中、これだけではない様な気がしてならなかった。

 




2話分投稿しようかと思ってましたが、無理そうなのでこれくらいで。

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