【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話 作:しゅーがく
夜も深まると、次第に外の騒ぎにが顕著に聞こえるようになった。そのスパン、約1時間。
俺はもう出て行かないと決め、寝る事にした。なぜなら必ず明日、的池から会談が要求されるはずだからだ。
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俺が朝、起きてくると既に執務室には秘書艦が待っていた。今日の秘書艦は陽炎みたいだ。
「おはよう、司令。」
そう言うと陽炎はいつもの執務の書類ではないものを渡してきた。
「ん?これは?」
「昨夜の逮捕者リストよ。」
そう言われて俺は渡された紙に目を通す。そこには総勢13名の名前が書かれていた。
「そうか......ありがとう。」
「うん。じゃあ、食堂に行こう!」
そう言って軽い足取りで執務室を出て行った。
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食堂はいつも通りな雰囲気を出していたが、数が少ない。その理由には検討が付いていた。
警備で外を回っているのだ。だが、それにしては数が少ない。いつもなら満席なのだが、20席は空いている。それだけの艦娘が外の巡回をしているという事だ。それに、揚陸艦の周りには常に艦娘が目を光らせている。それの数も居ないのだろう。
「どうしたの、司令?」
そう言いながら陽炎はトレーを2つもって現れた。
「何でもない。それよりありがとな。」
そう陽炎に礼を言って俺は席に着き、朝食を摂り始めた。
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これは私の独断専行だが、今、的池という男と話をしている。
「正規空母、赤城か。」
「えぇ。」
的池はそう私に言った。
「命令書を見せていただけませんか?」
「いいとも。」
的池は懐からその命令書を出して差し出した。
確かに書かれていた書類には間違いはない。だが決定的に違うところがあった。
「陸軍からですか?」
「そうです。私たちは陸軍の上陸部隊ですからね。」
そう訊き返し私は次の命令書に目を通した。其処には驚きの言葉が書かれていた。命令書そのものが海軍のものではなかったからだ。
「こっちも陸軍......海軍からの命令ではなかったんですか!?」
「命令ではありませんよ。ここに停泊するのは『お願い』ですし、護衛も『お願い』ですからね。」
「くっ......。」
命令書を受け入れる前に目を通さなかったのが仇となったことに気付いた。
「提督もこのことには了承して頂きましたし......問題ないですよね?」
そう言った的池は壁にもたれた。
「それにこの任務、国民の為なんです。」
そう言った的池は別の紙を出して私に差し出した。
「......リランカ島を貿易中継基地とする!?」
「えぇ。ヨーロッパ諸国の様子はドイツを通して分かっていますので、貿易をここを通して行おうという計画が陸軍で行われています。」
そう言った的池は壁にかかっているリランカ島を指差した。
「相手国はここまでドイツ海軍の艦娘の護衛の下、リランカ島に貿易物資を輸送。日本海軍はこれを積んだ貨物船、もしくは潜水艦で東進。南方海域に点在する泊地を休み休みしながら本国に帰還。南方には海軍の泊地があるそうじゃないですか。そこを中継した貿易ですよ。」
そう言った的池の言動に私は怒りを覚えた。何故ならこの計画、多分提督も知らない事だ。そして何より護衛を務める艦娘の事情を無視した計画だったのだ。
「こんな計画......私は賛成しかねます。これから提督にお伝えしてすぐに大本営に報告をっ......。」
そう言って行こうとした瞬間、的池に手を掴まれた。
「これは我ら陸軍に残された生命線なのですっ......海に現れた深海棲艦と海軍が戦うのを非力な我らは加勢できない悔しさに指を咥えていたんです......。ならばせめて苦しい思いをしている国民の為に生命を擲って危険な海外貿易の発展を進めようと.......。」
「いい加減にしてください!」
私は的池が並べる言葉に遂に我慢が出来なくなった。
「国民の為、悔しい思いをしてきた、何言ってるんですか!かつて海軍には護衛艦という船があり、深海棲艦と戦ってきた。それは私たちも知ってます。ですが、陸軍は指を咥えていたですって?やれることを懸命に探して、加勢するんじゃないんですか!!」
「それは陸軍も探してきた!地上から海軍を援護できるヘリや航空機、ミサイル......噴進砲を開発をしてきた!だが、効果は無かった。ただ悪戯に兵を死なせるだけだったんです!」
そう言った的池は壁を叩いた。
「ならばやれることを......せめて国民が豊かに暮らせるように......そう考え、これを計画したんです。」
そう言った的池を赤城は一蹴した。
「それが叶ったとして、陸軍は何をするんですか?私たちに輸送艦の護衛を押し付け、計画した陸軍は何をするんですか!提督にこのことは報告させていただきます!!」
そう言って今後は手を掴まれないように赤城は走った。
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息を切らした赤城が執務室に入ってきて俺と陽炎は驚いた。
先ず走ってくるようなことが一度も起きなかったこれまで、こんな赤城を見たのは初めてだった。
「提っ......督っ......!」
「どっ、どうした。」
ゼェハァ言いながら入ってきた赤城に戸惑いつつ、俺は赤城の方に耳を傾けた。
「停泊している揚陸艦の的池さんが読み上げた命令書、陸軍のものでした!それに、停泊も護衛もお願いだと......。」
そう言った赤城に俺は思考が混濁してしまった。
命令じゃなかったのか。お願いってどういうことだ。陸軍からだと.......。そんな思考が入り混じる中、俺は赤城に一つ訊いてみた。
「お願い......それって正規じゃないって事か?」
「そうです。非正規のものです。それに陸軍はとんでもないことを考えてますよ!」
その後に続いた赤城の証言に俺は開いた口が塞がらなかった。壮大な貿易計画と実行に映った時、全てを海軍に投げ出すという計画。そんな計画の話を聞いた。
「それは本当か?」
「五分五分ですが、こうして動いているとなると本当かと......。」
俺はここで覚悟を決めた。
「揚陸艦を見張る水雷戦隊に連絡っ!!『揚陸艦を抑えろ!』」
「りょ......了解!」
状況を横で聞いていた陽炎は慌てて通信するために艤装を展開した。
今鎮守府で起きている事態、俺は相当大事になると想像していた。
いつも通りじゃない時間で投稿させていただきます。
いやぁ......結構感想の方に今後の展開の予想とか届いていたんですが、その時点で書ききってなかったので戸惑いましたw
秋イベは順調に進んでおります。まだE-1ですけどw
E-2までは進むつもりです。
ご意見ご感想お待ちしてます。