【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第七十九話  鎮守府復興

 

「だがその前に再建だな。というか腹減った......。」

 

そう言って俺は瓦礫に腰掛ける。

辺りを見渡すと、皆笑いあっているが今何もない状態だということを分かっているのだろうか。

 

「取りあえず、大本営に連絡入れないとな。」

 

俺はそう言って武下の方に向かうと、頭に包帯を巻いた武下は笑っていた。

 

「武下大尉。至急、大本営に連絡を。」

 

そう言うと武下は笑いながら言った。

 

「あー、必要ないですよ。」

 

「どうしてです?」

 

「救出艦隊について行ったウチの部下が、避難誘導中に電話を使って連絡を入れたそうです。もうじき来るんじゃないでしょうか?」

 

「何がっ!?」

 

武下はそう言って海の方を眺めた。

すると赤城や加賀らが艦載機を発艦させ始めた。そして長門や金剛らは全員、海を睨んでいる。

何かが来たようだ。

 

「未確認艦が接近中っ!」

 

そう赤城が叫ぶ。

 

続いて艦載機からの連絡が入った様だ。それの報告も赤城が言う。

 

「未確認艦は......揚陸艦『天照』ですっ!」

 

俺は動揺した。こんなタイミングで来たのかと。そしてこの状態の鎮守府を空けてリランカ島に向かえということなのかと考えた。

 

『的池です!上陸許可をっ!』

 

マイクで言っているのだろうか、ここからでも聴こえた。

 

「的池のみ許可する。って言っても、聞こえないのか。」

 

「自分が行きますっ!」

 

そう言って西川が走って行ってしまった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

「急にすみません。」

 

的池はこの前来た時の様に現れた。

 

「いえ。それでどういった御用件でしょうか?ちなみに今、リランカ島への護衛任務は出来ませんよ?」

 

そう言うと的池は首を横に振った。

 

「そうではありません。今回は任務でここに来たんですから。」

 

そう言って的池は俺に紙を手渡した。

 

「揚陸艦『天照』は食料、毛布、テント、簡易トイレ、簡易風呂、発電機を積み、至急横須賀鎮守府に向かわれたし。  発 大本営総督......成る程。」

 

そう俺が読み上げると的池は俺に言った。

 

「これから支援物資の荷下ろしを許可して下さい。と言ってもトラックを下すだけですが。」

 

そう言って的池は頬を掻いた。

 

「分かりました。但し、こちらの門兵が下ろします。よろしいですね?」

 

「はい。」

 

俺は的池に門兵数人を連れて戻ってもらい、紙を再び眺めた。

わざわざ揚陸艦に載せなくても、陸路を使えばすぐだっただろうに。そう考えてしまった。だが海を使った理由があるはずだ。それはすぐに俺も、周りも理解することになる。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

横須賀鎮守府の周囲を囲む塀。その要所には門兵が交代で使う詰所がある。そこは被害を受けずに残っていたので、門兵たちがそこに保管してある装備を取りに行き、警備を再開し始めた矢先だった。

俺と長門、赤城、妖精代表、武下で今後どうするかと検討をしている時だった。門兵の1人が走ってきたのだ。

 

「提督っ!」

 

そう言って走ってきた門兵はズレたヘルメットの位置を治すと話し始めた。

 

「鎮守府正門に自治体が集まって、デモが起きてます!!」

 

俺は血の気が冷めるような思いをした。これまで鎮守府に押し掛けるのはメディアばかりだったのに、今回は自治体だと言うのだ。いいようによっては、排除される可能性もあるからだ。

 

「すぐに行くっ!!」

 

俺は検討中の話し合いを投げ出して、正門に走った。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

『深海棲艦との戦争は海でやれ!国民の傍でするんじゃない!!』

 

『国民を巻き込む気かぁー!!』

 

演説車をどっかから借りてきたんだろう。スピーカーから抗議の言葉が飛んできていた。正門では盾を構えた門兵が並び、壁を作っている。それを押すかのように自治体の議会の人なのだろう、叫んでいる。

 

「戦争は外でやれー!」

 

「これ以上、国民を不安にさせるなー!」

 

俺は冷や汗が出た。

これは非常に不味い状況だ。こんな時、もしも『近衛艦隊』の構成員が近くに居たら......。そう考えた時にはもう遅かった。

空にはエンジン音が轟き、それに気づいて見上げると零戦52型が飛んでいる。マーキングを確認した。赤城と加賀だ。加賀は近衛艦隊の構成員。しかも幹部だ。

非常に不味い。

俺は息を整えて門兵の壁の後ろに立った。

 

「私は、横須賀鎮守府艦隊司令部司令官です!!」

 

声を張り上げ、自治体を黙らせた。

 

「率直に言いましょう。我々は深海棲艦の奇襲を受けました!目的は鎮守府内にあった飛行場の破壊!それが成し遂げられた今、深海棲艦は居ません!」

 

「それがどうしたってんだよ!」

 

俺の声に反発した声が聞こえる。

 

「なので安心して下さい!」

 

俺はこれを言って不味いと直感で感じた。説得力が足りないのだ。

 

「安心できるか!!今回あったら次があるかもしれないだろう!?」

 

最もな抗議が飛んできた。

 

「その時は近づかせる前に排除するまでですっ!」

 

「気付かなかったらどうするんだ!」

 

少しイラッとしたが表情に出さないように我慢しながら応える。

 

「気付かなかったらまた鎮守府が焼かれるだけです!」

 

「それに国民が巻き込まれるかもしれないだろう!」

 

頑固だと内心思いつつ、返答を考える。が、背後に寒気がしている。もう俺の直感が最悪な事を伝えていた。

 

「ヘーイ、皆さん。どうしたデスカ?」

 

金剛が来た。また俺の真後ろまで来ていた様だが、さっきまで全然気づかなかった。

 

「おい!今回のこと、どういうことか説明しろ!」

 

そう1人が叫んだ。

 

「ン―、そうですネー。今回の鎮守府奇襲攻撃は私たちも対策は取ってマシタネ。鎮守府に使える兵器をできるだけ持ち込んで、私たちも出撃しまシタ。だけど、爆撃を許してしまったんデス。」

 

「哨戒は出ていなかったのか!?」

 

「出てましたヨ?」

 

金剛はそう答える。

 

「なら何故近づかれた!」

 

それは俺が答えた。

 

「レーダーには艦隊、艦載機群は捉えて迎撃は早期に始まってました。ですが、鎮守府にあったものでは接近されるまで撃ち落とせなかったんです。」

 

「何故だっ!ミサイルとかあるだろう!?」

 

「ありました!ありましたけど、使えなかったんです。」

 

そう言うと叫んでいる1人が門兵の壁にぶつかってきた。

 

「ミサイルがあれば近づかれる事無く全部落とせただろうが!」

 

「不調で艦載機を捉えられなかったんです。」

 

そう言うと壁にぶつかってきた人が門兵の盾を殴った。

 

「じゃあ何で、何でここまで接近させた!?」

 

「ミサイルが使えない我々は迎撃には戦闘機が出る筈でしたが、出撃命令を出すころには飛行場は燃え、戦闘機も破壊されていたんです。ですから、対空機銃で落とす必要があったんです。」

 

「だから近づけたのか!?」

 

そう言って盾をバンバンと叩く。

 

「そうです。」

 

そう俺が答えると金剛がその人に近づいて行った。そして周りに聞こえるように大きい声を出した。

 

「貴方たちは、その時何をやっていたんですカ?」

 

そう訪ねた。いきなりそんな事を聞いて、意味が判らなかったが次第にその意味が判っていった。

 

「港に空母の艦隊が来ていて、安全なところまで護衛付きで運ぶっていうもんだからそれに乗ってたさ。」

 

「フーン。」

 

金剛はそう言って俺の方を向いた。

 

「この人たちを鎮守府に入れまショウ。今の状態を見てもらいマス。」

 

「どういうことだ?」

 

そう俺が訊くと金剛は手配を始めていた。

 

「門兵さん。この人たちから数人でグループを作って案内して下サイ。勿論、グループ毎に門兵さんが監視をつけて下サイ。」

 

「分かりました。金剛さん。」

 

そう言って金剛は俺の横に来た。

 

「皆さんには、鎮守府をご案内しマース。突然意味が判らないと思いますガ、まぁ貴方たちが非難する鎮守府がどういうものか、見てもらいマス。」

 

そう言って金剛は空を見上げた。

 

「赤城と加賀の零戦が哨戒に出マス。念のためですヨ?」

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺はあるグループに着いて行っていた。門兵の盾を殴り、俺に色々抗議していた人が居るグループだ。

そのグループの自治体の人はさっきから口を塞いでいる。何故かというと、通るところ燃えさかり、地面は抉れ、墜落した深海棲艦の艦載機が転がっているからだ。そして埠頭に来て要塞砲を見た。要塞砲は砲の辺りを砲撃を喰らってボコボコになっていたり、爆弾の直撃でターレットごと飛んでいるのを歩きながら見た。さらに全壊した本部棟、酒保、警備棟、事務棟を見て、最後に艦娘や事務棟の人が集まっている広場を通って運動場に出てきた。運動場には対空射撃をしていた駆逐艦の艤装が地面に刺さり、炎上し、艤装が囲んでいる中心は陥没していた。

その光景には誰もが言葉を失っていた。

 

「......何でこんなところに船がっ。」

 

そう誰かが呟いたのを聴いていた金剛は返事をした。

 

「ここの真下には空襲を受けた時の為に、海上自衛隊時代に作られた地下施設があったんデス。そこに提督たちは居マシタ。地上にあった対空機銃が使えなくなった時、地下に避難していた駆逐艦の艦娘が自ら防空すると言ってここに自分の艤装を出したんデス。そうですヨネ、提督?」

 

「あぁ。」

 

そう言って金剛は艤装を眺め、火が鎮火されていた艤装に触った。

 

「これは......朝潮デスネ。」

 

そう言って艦の側面に周った。

 

「朝潮なら......居マシタ。」

 

そういって金剛はタラップを上がり、朝潮を連れてきた。

グループに居た自治体の人は驚愕した。年端もいかない少女がいたからだ。

 

「どうしたんですか、金剛さん?」

 

「イエ、少し話したくなりましてネ。......損傷具合はどうですカ?」

 

「大破です。幸い艦橋に攻撃は当たりませんでしたが。」

 

そう話していると盾を殴っていた人がぼそりと言った。

 

「少女じゃないか......。」

 

それを金剛は聞き逃さなかった。

 

「ハイ。少女ですヨ?」

 

「ということは、この辺にある壊れている船には全員......。」

 

「朝潮くらいの女の子が居マス。」

 

そう言うとグループはざわざわし始めた。

 

「軍法会議の時も思ったけど......。」

 

「これはどうなんだ?」

 

そう言っている。

 

「それにこんなに密集して、あの陥没しているところを守っていた様に見えるが、どういうことだ?」

 

そう盾を殴っていた人が言うと朝潮が話し出した。

 

「あそこは地下施設の司令部、提督が居たんですよ。最も、今は潰れてますが。」

 

「こんな幼い少女に戦わせて、司令官は地下に逃げていたのか......。」

 

そう誰かが言った瞬間、金剛は嘲笑うかのように言った。

 

「こんな幼い少女が戦っている間、貴方たちは何やっていたんデスカ?空母で安全な港に送って貰ったんデスカ?」

 

「うぐっ......だがこんな少女に戦わせて、良くないとは思わないのか?!」

 

それを訊くと金剛はどこから出したのか、資材消費に関する書類を俺に出した。そこには鉄と鋼材、弾薬、油がそれぞれ300ずつ書かれている。

 

「提督、これにサインしてくだサイ。」

 

俺は少し戸惑って、何の真似か聞いた。

 

「どういうことだ?」

 

「彼らは少女に戦わせるなら自分らで戦闘艦を作って深海棲艦と戦うそうデース。資材がないだろうと思いまして、少し分けてあげようカト。」

 

そう言うと盾を殴っていた人は声を挙げた。

 

「まて!どういうことだ!俺はそんな事、一言も言ってないぞ!」

 

それを訊いた金剛は振り向いた。

 

「朝潮たちに戦わせないということはそう言うことデース。かつての海上自衛隊の様に、戦ってきてくだサイ。」

 

「そんな......絶対死ぬじゃないか。」

 

盾を殴っていた人がそう言った。

 

「じゃあどうしますカ?」

 

「とにかく、こんな少女を戦わせるのはモラル的にだな......。」

 

俺はここまで我慢してきたがもう限界だった。

 

「そうか......ならここに居る自治会の人はここに残り、鎮守府復興後の海域哨戒に出て貰います。朝潮たちの代わりに。」

 

そう言うと盾を殴っていた人が驚き、抗議しだした。

 

「どうしてだ!」

 

「朝潮たちを戦わせない為です。貴方たちが朝潮たちで空く穴を埋めるのでしょう?これから大本営に海上自衛隊時代の護衛艦の設計図を送るように頼みますから、作られた護衛艦に乗り、出撃して下さい。」

 

そう俺が言ったのを訊いた金剛は追撃を仕掛けた。

 

「どこの海域にしましょうカ?」

 

「沖ノ島にするか。あぁでもあそこなら最高でも重巡でだから......護衛艦1隻で行ってもらうか。重巡の艦娘も少女だし。というか、艦娘全員に言えるが全員少女だ。」

 

俺はそう言って背中を向けた。

 

「待て、意味が判らんぞ!俺らを護衛艦に乗せて出すだと!?」

 

「そうですけど?」

 

そう言って俺は振り返った。

 

「そもそも貴方たちがここに来て抗議するのも御門違いです。攻撃が始めるまでに近隣住民の避難の為に艦娘たちは率先して救出艦隊を結成しましたし、ある艦隊では自殺覚悟で敵中に突っ込むことを考えていた艦娘もいます。何もかも、この鎮守府の為。そしてその後ろにある住宅街や商店街、スーパー.......そこで生活している国民の為だったんです。そしてこのシステムを作ったのは大本営ですから。」

 

俺はそう言ってため息を吐くと、続けた。

 

「大本営が決めたということは、陛下がお決めになった事。どうぞ、抗議して下さい。」

 

そう言って俺は艦娘や事務棟の職員が集まる広場に向かった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

あの後、鎮守府の中を見て回った自治体の人たちは出て行った。抗議しても自分らが助けられたことには変わりないし、鎮守府以外には被害が無い。ボロボロになってまで戦い続けた艦娘の艤装を見たからだろう。

それからは抗議にくる団体は居なかった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

鎮守府が襲われてから3日が経った。俺は建物を見上げていた。

 

「早すぎるだろう......。」

 

俺が見ていたのは本部棟だ。妖精たちが建造しなおすと言って襲われたその日の夜から作業を初めて、今日完成したそうだ。他のところでも抉れた地面は元通りになり、全部の建物は出来上がっていた。滑走路も元通りになった。

 

「そうですかね?」

 

俺の肩に乗っている白衣の妖精はそう言った。

 

「普通何か月とかかるだろうが。」

 

「これでも掛かった方ですよ?」

 

俺はそれを訊くともう反論することを辞めた。妖精たちは巨大な戦艦を4時間で作ったり、富嶽を途切れることなく作り続ける様な集団だったのだ。

 

「そうか......。じゃあ、通常に戻るか。」

 

そう言って俺は新しくたった工廠に白衣の妖精を送ると、執務室に向かった。

 

 




題名がオチに行ってしまった!?
ということで、今回は少し読み辛いかもしれません。すみません。

ご意見ご感想お待ちしてます。

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