【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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先日の投稿から約1日が経過しました。
あれ以来更に読んで下さって、今ではUAが一万に届きそうです。

またまた前書きに報告させていただきました。


第九話  提督の挨拶回り② 駆逐艦編

 

『金剛さん 進水おめでとう!』

そう書かれた幕の下で金剛はマイクを持っていた。今から始まるのは、金剛の歓迎会。朝に白雪が建造して進水させたのだ。

檀上の上で金剛は堂々と立ち、あれこれと自己紹介をしている。

 

「......そういえばサー、私が進水してすぐに提督に挨拶しに行くと無視されたヨー。酷いデース!」

 

そう叫んだ金剛はきっと提督に何か面白半分で艦娘が言うと思ったのだろうが、金剛の予想は外れて全員がホッとしている。特に空母。

 

「ン?何ですカ?この空気......。」

 

そう言う金剛に檀上の近くの席に居た比叡が金剛に向かって言った。

 

「金剛お姉様を迎える為に提督はピンチな状況なのに資材を投げてまで色々していたんですよ......。大型艦はキス島で金剛お姉様の捜索に、駆逐艦や軽巡洋艦は遠征任務にひっ切りなしに出撃してましたから......。」

 

そう言うと金剛が口をポカーンと開けて黙ってしまった。

比叡が黙ると次は比叡の横に座っていた榛名が言った。

 

「色々と試行錯誤をして果てに私たち姉妹が秘書艦で建造をすればいいのではないかと仰って......。」

 

まだ口をポカーンと金剛は開けている。そんな姿を見つつ次は霧島が言った。

 

「私の予測ですが、比叡お姉様の仰った通り、提督は鎮守府の戦力増強に向けての先駆けとして遠征に迎える艦隊を一つ増やしたかったんだと思います。榛名には油と鋼材は何とか余りがあるとか言ったそうですが、実は共に心もとない量しか残ってなかったんですよね......。」

 

そう言った霧島の言葉にまだ金剛は口をポカーンと開けている。そんな長時間開けてたら口の中が乾かないのだろうか。

そんな事を言った霧島の言葉は全員が聞いていた訳で、その事情もなんとなく察しては居たみたいだった。特に遠征にひっきりなしに出されていた遠征艦隊のメンバーと空母や航空戦艦は。

俺の横で座っていた長門が俺の方をチラッと見ると、不敵な笑みをしたと思ったら長門は金剛に言った。

 

「とか、金剛型には伝わっているみたいだが、提督は本当は比叡たちが寂しがっているのではないかと言っていたぞ?」

 

そう言う長門はニヤニヤとしていた。

俺は急に顔が熱くなり、前に置いてあった水を一気に飲んだ。

そうしていると、比叡たちが金剛同様にポカーンと口を開けていた。何という状況だろうか。

 

「とまぁ、今回のキス島周回と建造の本当の理由はこういう訳だ。」

 

そう言った長門はふぅと一息ついて水を飲んだ。

俺は本当に恥ずかしくなり、その場から立ち去りたくなる衝動に襲われた。一刻も早くここから立ち去りたい。

そう思っているとポカーンとしていた金剛が戻ってきた。

 

「提督......。やっぱり、そうだったんデスネ。」

 

「あぁ......。」

 

俺は金剛にそう言われ、素っ気なく返した。そうすると金剛は命一杯息を吸って、大きい声で言った。

 

「この恩、私は皆さんに返しマス!キス島周回でも何でも来いデス!!!お蔭で妹たちに逢えましたカラネ!!今後は私がその役をやりマース!!」

 

そう言うと歓迎会会場もとい食堂は大きな拍手に包まれた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

金剛の宣言が終わり、全員が用意された豪華な夕食に舌鼓している時、金剛が俺のところにやってきた。

因みに俺は何故か知らないが、ずっと第一艦隊のメンバーに囲まれている。執務室以外に出るとだいたいこんな感じだ。どうにかならないのかと思っていたところだった。

 

「提督ー。」

 

「ん?何だ?」

 

そう言うと金剛は頭を下げた。

 

「昼はごめんなさいデス。提督が無視していたので私、へそ曲げてマシタ。」

 

理由はそれだった。

 

「いいさ。俺の方こそすまなかったよ。俺もあれはなかったと反省している。」

 

「私もだ。すまなかった。」

 

そう言うと金剛はパァーと笑顔になった。

 

「ならよかったデス!それで、提督ぅ!明日の秘書艦を私にしてくだサーイ!!」

 

そう言われ俺と長門は椅子から滑り落ちそうになった。

 

「「......やっぱり想像通りだった。」」

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

滑った椅子から体勢を元に戻した俺は既に食べ終わった食器を纏めていた。夕食前に思い付いた艦娘たちへの挨拶回りの為だ。

 

「む?どうした?今日は執務を終えたはずだが??」

 

「いやなんだ。よく考えたら俺の歓迎会の時も長門たちと食ってただけだし。他の艦娘たちとも話してみようかなって思ったからさ。」

 

「そうか。」

 

俺は長門が俺の受け答えに返した事を聞くと、秘書艦にする云々でまだ俺の近くに居る金剛に声をかけた。

 

「金剛ー。」

 

「ハイ!提督ぅー、私を秘書艦にするノ?」

 

「いや、それは考えてるところだが、一緒に皆のところを回らないか?」

 

俺がそう言うと金剛は快く了解してくれた。

だがその時俺はまだ知らなかった。艦娘たちにそれぞれ挨拶で回ることがどれ程大変なのかという事を。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

最初に俺と金剛が来たのは、駆逐艦が集まっているところだ。

他の集団とは別の意味でワイワイと賑やかだった。席が高いのか結構の艦娘が足をぶらぶらとさせながら食事を楽しんでいる。近づく俺と金剛にいち早く気が付いたのは、俺の初期艦である吹雪だった。

 

「あっ、司令官と金剛さんだ!」

 

その声に周りで食事していた艦娘が全員進める箸を止めた。そして俺と金剛を見た。

 

「ホントだっ!」

 

「この前は遠目だったし、食堂に来る時間が不規則だから会わないんだよねー......。」

 

わらわらと集まってくる艦娘に俺は困惑したが、すぐに金剛が助け舟を出してくれた。

 

「ヘーイ!提督が困ってるヨー?」

 

「「「「はーい。」」」」

 

何という発言力。俺はこの時は見えてなかったが、どうやら金剛の表情が変化したらしい。

 

「あっ、ありがと。金剛。」

 

「どういたしましてネー。」

 

そう言うと金剛は眉を吊り上げた。ドヤ顔。憎めない。

金剛のドヤ顔を見ていると、俺に一際大きい声で呼んだ艦娘が居た。

 

「司令官っ!」

 

そう言った艦娘はポニーテールとサイドテールの中間あたりの位置で髪を結っている。綾波型駆逐艦 一番艦の綾波だった。

 

「おわっ!どうした?」

 

「いえ......そのっ......。」

 

もじもじとする姿をただ俺はじっと見守る。何かを伝えようとしているのは十分判っていた。

 

「執務は......いつもどれくらいに終わっているのでしょうか?」

 

綾波が言ったのは、俺の仕事がどれくらいに終わっているかだった。

ふと、俺は自分の居た世界での艦これを思い出す。夜中と言っていい時間に俺はプレイしていた。この世界にもそれが影響していたらしく、秘書艦は基本的に深夜に指令書を受け取っていたみたいだったのだ。

それを綾波は俺が深夜にやっているのではないか、という質問を遠まわしにしてくれたのだと俺は思った。

 

「朝食後すぐに始めて、昼過ぎには終わってるよ。」

 

そう言うと俺の周りに集まっていた駆逐艦娘が全員一点をギロリと見た。その先に居たのは第一艦隊。約一か月、それに一週間俺の周りから第一艦隊の誰かが離れる事はなかった。

そして、その睨んだ理由が俺には判らない。何か言われているのだろうというのは察したが、具体的な事は分からなかった。

 

「私たちは第一艦隊の方から提督は夜まで執務しているって聞いてました......。お昼ご飯だって一緒に食べたいのに......。」

 

俺は眉をハの字にしている綾波を見て、俺も駆逐艦娘と共に第一艦隊のメンバーに目をやる。

俺に見られ、肩をピクリと跳ね上げるメンバーはあからさまに顔をそらした。

 

「そうだったのか。なら明日、一緒に食べよう。」

 

「はいっ!!」

 

そう俺が顔を第一艦隊のメンバーから外さずに綾波に応えると、綾波が返事するのが聞こえた。トーンで喜んでいる事が判る。

それが聞こえたのか、赤城と加賀がこちらを見た。ちらりと。

そんな2人を俺は見る。表情を変えずに、無表情で。

 

「なら提督っ!私たちとも遊ぼうよっ!!」

 

そう言ってきたのは白露だった。白露型駆逐艦 一番艦の白露だ。俺の中ではずっと『イッチバーン!』って叫んでるイメージがあったものだから、目の前にひょこっと視界に入ってきた時は身構えたが、そういう訳でもない様だった。

 

「たち?何人だ??」

 

「6人!私と時雨、村雨、夕立、五月雨、涼風。私の妹たちだよっ!!」

 

「分かった。」

 

俺は白露のも返事をするが、目は離さない。第一艦隊のメンバーから目を離さない。今のところ、何も変わらないが、動揺が扶桑型姉妹の方にも伝播したようだ。正規空母と航空戦艦合わせて4人がちらりと見た。俺はそれを見返し。無表情でだ。

 

「司令ぇ!雪風は司令の役に立ちたいですっ!!」

 

白露の後ろからひょこりと俺の視界に雪風が入ってきた。俺がこの世界に来る切っ掛けの一端を担う存在だ。

 

「そうか?でも雪風はいつも役に立っているぞ?」

 

「いえ、違うんです......。雪風は雪風の幸運を最大限に使って、司令の役に立ちたいのです!」

 

「そうか、分かった。明日からの開発は雪風に一任しよう。雷装を充実化したい。それに対潜装備も欲しかったんだ。」

 

「雪風の得意な開発ですね!頑張りますっ!!」

 

そう言ってニコニコする雪風を視界に捉えつつも俺は第一艦隊のメンバーの方に目を向けたままだった。今度は日向に動揺が伝播したみたいだった。俺はてっきりそういうのには日向は流されないとばかり思っていたから少し残念。

 

「あー、すまんがこれ以上聞いていると朝になってしまいそうだ。これ以上は執務室の前に箱を置くからそこに名前と俺に何かしてほしい事を書いてくれ。俺の出来る範囲でやろう。」

 

そう言うと周りを囲んでいた駆逐艦娘はニコニコながら自分の席に戻っていった。

それを尻目に俺は第一艦隊のメンバーの方をまだ見ていた。もう今度は全員に伝播している。ちらりと見ては肩を飛び跳ねさせている。

 

「第一艦隊、集合。」

 

俺がそう小さく呟くと、全員が目にも留まらぬ速さで俺の目の前に移動し、整列した。一糸乱れぬ動きに少し関心したが、俺はそれを見たかった訳ではない。

 

「言いたい事、分かるよな?」

 

俺がそう言うと6人はガタガタと震えだした。横にいつの間にか駆逐艦と話していたはずの金剛が立っているが、金剛は青い顔をしている。

 

「「「「「「すみませんでしたっ!!」」」」」」

 

俺はそれを訊き、少し間を置いた。

 

「......。じゃあいい。解散。」

 

「「「「「「はっ!!」」」」」」

 

その場に居た全艦娘は同じ事を思っていた。この提督は怒らせてはいけない、と。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺は第一艦隊のメンバーが元の位置に戻ったのを確認すると、駆逐艦娘や金剛の方を見た。そうすると、全員が何故か敬礼している。

 

「ん?どうした??」

 

「いっ、いえ!何でもないデス!」

 

金剛は両手をパタパタさせながら言った。その様子はさっき第一艦隊のメンバーが見せたようなものと似ている。何かを金剛は隠している。俺は直観的にそう思った。

 

「嘘だろー。なんか隠してる。」

 

俺がそう言うと、金剛はふぅと息を吐いた。

 

「......さっきの提督は、怖かったデス。着任して一日目にして私は色々と学んだデース。」

 

そう言った金剛は敬礼していた手を下げてニコリと笑った。

俺はそれを見て視線をそらし、駆逐艦娘の方に目をやる。未だに、敬礼したままだ。

 

「どうした?敬礼だなんて。」

 

「いえ!」

 

吹雪がそう答えた。どうやら型毎に並んでいる様だった。一番最初の特型駆逐艦だから吹雪が返事したようだった。

 

「あー、言い忘れてたけど。」

 

俺がそう言うと、駆逐艦娘が肩を震わせた。

 

「執務室にはいつ来てもいいぞ。さっきは綾波にああは言ったものの、グダグダと執務している。だけど、節度は守ってな?」

 

俺がそう言うと皆パァーと笑顔になった。

どうやら、大本はそれだった様だ。執務室に行ってみたい、のだろう。

そう思っている俺を金剛は見ていた。だが、金剛は少し頭を抱えていた。

 

(この提督。結構鈍感デース。)

 

俺に聞こえない様に金剛は溜息を吐いた。





ぶれないのが金剛......。
これは揺るぎないです。この流れでお分かりの様に、ここで話数を稼ごうという魂胆であります←
この提督の挨拶回り以降は単発ネタにしたいと考えてます。
今後偶に出てくる建造と開発の結果は大体、その日のデイリー任務の結果ですのであしからず。

ご意見ご感想お待ちしてます。

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