【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第八十七話  鎮守府文化祭(仮)③

陸の奴らと榛名との騒ぎの後、結局何も起きずに初日は終わった。

夕方になり、日が落ちて1時間程経った時間が終わりの時間だったが、それまで人が絶える事は無かった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

今日は前日とは少し違う。

前日では露店、アトラクション、案内があったが今日はそこにステージが入っていた。ステージでは艦娘が企画した出し物の他に、那珂によるライブも行われる予定だった。

俺は最初からステージの裏に来ていた。最初の出し物はクイズ大会だ。参加者が色々な問題に答えていくものだが、決まりで真面目な回答はダメで、ボケなければいけないという鬼畜ルールがあるようだ。

完璧に笑いを取るステージだが、参加した艦娘は割とお調子者みたいなのが多かった為に結構ウケていた様だ。

そしてクイズ大会の後が、このステージの本番で、那珂のライブだ。

ライブと言っても1曲だけだがそれでも、これが本番だ。

クイズ大会の舞台が撤収し終わり、ライブの舞台の設置が始まった頃、裏には那珂とバックダンサーになっていた村雨と夕立、五月雨、涼風、朝潮と更に由良と長良も居た。

 

「よーし!大トリは那珂ちゃんたちだよ!レッスンの成果、見てもらおう!!」

 

「「「「「「「おー!!」」」」」」」

 

円陣を組んでそう言っている様子は、懐かしく思えた。

 

『続いては、川内型軽巡洋艦 那珂と水雷戦隊によるステージです。』

 

アナウンスが入ると、ステージの照明は落とされ、那珂たちが駆け出して行った。ちなみに、いつもの制服姿ではなくちゃんと衣装を作って着ている。

出て行った瞬間、さっきまでのクイズ大会の余韻が残っていたのか結構熱い雰囲気に囲まれた観客席からは、何事かとザワザワしているが、すぐに様子は一変した。

 

「第四水雷戦隊っ!那珂ちゃん、いっきまーす!」

 

そう那珂が叫んだ瞬間、照明が点き、音楽が流れ始める。

那珂のライブが始まったのだ。

その曲が始まると、よくわからないが盛り上げる為に騒ぎ初めて、サイリウムが点き始めた。

そして俺はここで盛り上げるためのサプライズを入れていた。2日目ということで、手の空く門兵にコールを頼んでいた。曲が進んでいくと、コールを入れるところも通るのだが、そこでコールが入っていく。門兵たちも気が利くのか、コールの紙を周りに渡していた様で、結構な人数がコールをしていた。

キラキラと輝く舞台に盛り上がるコール。これがライブなんじゃないのか、と心の中で思いながら俺は裏から眺め続けた。

 

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ーーー

 

 

那珂のライブの熱が残ったまま次の催しが始まった。次の催しはトークショーの様だ。那珂のライブのセットが片づけられると、別のセットが出てきて、ほんの1分で設置が完了した。貴休憩を挟んでから、司会進行役の霧島が出て行った。

 

「ライブの次はトークショーです!司会進行は私、金剛型戦艦 四番艦の霧島が務めさせていただきます。」

 

そう言って切り出した霧島は上手の方に手をやった。

 

「それでは、出ていただく艦娘の皆さんです!」

 

そう言うと拍手が鳴り、1人ずつ出て行く。

 

「観艦式の際、トークをしなかった方々に頼みました!最初に、戦艦 陸奥。」

 

「どうもー。」

 

「彼女は文化祭(仮)では、アトラクション。つまり艤装の試乗をやってます。ちなみに陸奥さんは、現場叩き上げで皆に頼られる強いお姉さんです。」

 

陸奥はいつもの格好でひらひらと手を振りながら出て行った。

 

「次は、観艦式の際に出ていた鈴谷さんの姉妹の重巡 熊野。」

 

「ごきげんよう。」

 

「彼女は、鎮守府を初期から支えた歴戦の猛者です。御淑やかな雰囲気の女の子ですが、一度戦場に出れば戦艦に引きを取らない強さを持ってます。」

 

熊野は霧島の紹介に顔を赤くしながら陸奥の隣に行った。

 

「3人目は、正規空母 瑞鶴。」

 

「こんにちはー。」

 

「彼女は鎮守府ではかなり結構後に来た艦娘ですが、ムードメーカーとしていつも皆を和ませていただいてます。」

 

そう紹介され、『古参じゃなくて悪かったですねー。』と言いたげな顔をしながら熊野の横に行った。

 

「4人目と5人目は長門さんと陸奥さんに並ぶ、提督の伝家の宝刀、戦艦 扶桑と山城。」

 

「「こんにちは。」」

 

「ザ・大和撫子のお2人は海域奪還に繰り出した初期を支え、熊野さんと並ぶ歴戦の猛者です。ですが、山城さんがドジっ娘なので結構アレですけどね。」

 

そう言われ、『なにおう!』と怒る山城を扶桑が引っ張っていった。

 

「6人目は我が扶桑さんと山城さんと共に海域奪還に繰り出した駆逐艦 吹雪。」

 

「こっ、こんにちはっ!」

 

「吹雪ちゃんはこう見えても一番鎮守府に詳しいんですよ。吹雪ちゃんは案内役として文化祭(仮)で務めているので、是非彼女に頼んでみるといいでしょう!」

 

そう言われて頭を掻きながら山城の横に立った。

 

「以上、6人で鎮守府に関するトークをしようと思います。......と言っても話せる範囲でだけですが。」

 

そう始まった霧島司会進行のトークショーは結構盛り上がり、途中、喋っていいのか怪しい内容まで言っていたのでヒヤヒヤした。

瑞鶴がうっかり陸上機の話をしそうになっていたのだ。

それ以外は何ら問題が無かった。観客の心も掴めた様だった。トークショーは1時間続き、最後にはネタが尽きたのか、艦娘の私生活の話にまで発展していた。

俺が訊いて一番衝撃的だったのは、何かの拍子に霧島が言った『金剛は意外と勤勉で最近は鎮守府の施設の構造を覚える為に地図をよく見ている。』だった。俺だって覚えていないどころか、本部棟ですら怪しいのにそんな事をしていたのかと思った。陸奥が言った『長門が皆に秘密で猫を飼っている。』というのにはステージの艦娘や裏に居た艦娘と俺、門兵は一斉に吹き出した。イメージがなかったからだろう。と言っても、俺は居た世界でのイメージもあったのでそこまで問題ではなかった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

「これでトークショーは終わりです。休憩を挟んだ次は急遽、昨日露店で行われていました駆逐艦 時雨の戦術講義をしてもらうことになりました。」

 

そう言って霧島は掃けていった。通りで上手に時雨が居る訳だ。そして、観客の方が何だか騒がしくなってきた。どうやら抜ける人は抜けて、全員が整列させられている。そして、出てきたのは机と椅子だった。

 

「ブフォ!」

 

俺はさっきも吹き出したが、また吹き出してしまった。どうやら真面目な講義な様だ。ご丁寧に椅子と机が並べられ、即席の青空教室的なものが出来た。

 

「さて。......僕は白露型駆逐艦 時雨だよ。今回、急遽僕が露店で公開していた講義をやってほしいとのことだったのでこれから簡単な模擬講義をするね。」

 

そう言って出て行った時雨は戦術指南書とマイクを持って出て行った。そしてステージには大きなスクリーンが映し出された。

 

「本当なら僕だけ何だけど、今回は『戦術指南書の番人』って言われてる夕立にも一緒にやって貰うね。夕立は観艦式の時に来ていた人は分かると思うけど、遠方から1人で帰ってきた武勲艦なんだ。」

 

そう言って時雨は俺の方を見た。

 

「っと......提督。」

 

いきなり話しかけられた。ステージに集中して欲しい。

 

「何だ?」

 

俺は出来るだけ聞こえる声で答えた。

 

「夕立の話、してもいいかな?」

 

「ダメなところ以外はいいぞ。」

 

そう答えると満足したのか時雨は再び前を向いた。

 

「提督から許可が出たからするね。夕立は遠方から帰ってきたって言ったけど、本当は鎮守府近海で座礁してたんだ。燃料弾薬が尽きてボロボロになって動けなくなっていたところをね。これ以降は夕立から訊いた方がいいから変わるね。」

 

「夕立は1人で帰ってくることになった時はこれからやる講義の内容、夕立たちに先輩が残していったこの本を読んでなかったの。だけど、帰ってきて分かった。この本は夕立たちが生き残る為に必要な内容が全て入っている、この本の内容を覚えれたら夕立たちは駆逐艦の艦娘として立派になれるって。だから帰って来てからは暇があればこの本を読みに行ってたから『戦術指南書の番人』だなんて呼ばれるようになったんだわ。」

 

そう言って夕立はマイクを置いた。

 

「という訳で、今からは簡単な内容ということで、駆逐艦のメリット・デメリットについての講義を始めるね。」

 

そう言って急遽始まった時雨と夕立の講義は難しい内容をやっているのだが、頭にスッと入ってくるものだった。多分、この2人の教え方が上手いのだろう。時雨と夕立の講義を受ける為に残った観客も机といすが用意された後に、配られた資料を見ては顔を上げて講義を聞いている。さながら大学のオープンキャンパスだ。そんな様子に思えた。

結局、模擬講義は40分行われたが、どうやら反響が良かったらしく、『艦娘がどのように戦っているかが分かった!』という声が多数寄せられたようだった。

これで一応、ステージを使った出し物は終わりだが、まだ日が高い。鎮守府文化祭(仮)はまだまだ今日も続く。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺はステージの裏手から出ると、昨日と同様に、私服に着替えて、艦娘の実態調査をしていた。

まだ誰一人としてバレていないのが、結構楽しかったりする。もう何度も出会った艦娘もいるのだが、全然気づかない。

俺は昨日回れなかった、別の露店のところに来ていた。

今いるところは、甘味処。間宮がやっている露店だ。ちなみに出ている露店で一番大きかったりする。規模的に見ても露店を通り越してるようにも思えた。甘味処ではアイスクリーム、最中、パフェの甘いものと軽食が出る様だ。手伝いに伊良湖も来ていて、結構忙しそうにしている。

俺は注文カウンターに続く列に並んでいた。そして時期に俺の番になり、間宮にアイスクリームを注文した。

 

「アイスクリームを一つ、お願いします。」

 

「はーい。200円になりますねー。」

 

俺はそう言われて200円を渡そうとしたら、間宮に手を掴まれた。

 

「えっ?」

 

そう俺が驚くと、間宮は周りに聞こえないくらいの音量で言った。

 

「提督ですよね?私服を着ているところは初めて見ましたが、似合ってますよ?」

 

そう言われて俺は少し慌てたが、すぐに間宮は手を離してくれた。

 

「ではあちらでお待ちしていて下さいね。」

 

そう言われて流されたが、間宮には私服を着て口調を変えるだけでは通用しない様だ。俺は出されたアイスクリームを受け取って、空いてる席に座って食べ始めた。

 

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ーーー

 

 

間宮を出た後、ブラブラとしていると急に視界が暗くなった。

 

「うおっ!?」

 

「だーれだ?」

 

俺はそう言われて考え始めた。声的には女性、しかも若い。そしてこんな事をしてくるのは艦娘しかない。さらに、物静かな艦娘はこんな事をしないだろう。行き着く先には結構アクティヴな艦娘でそれなりに大きい。

 

「飛龍?」

 

「違うしっ?!」

 

今の口調で分かったので、俺はすぐに答えた。

 

「じゃあ、鈴谷。」

 

「あたりー!」

 

そう言われてやっと視界が明るくなった。目が明るさに慣れた時には鈴谷が俺の目の前に立っていた。

そしていきなり鈴谷に言われた。

 

「提督ぅ?私服に着替えても分かるよー?」

 

何と言うことだ。これまでバレてきてないと思っていたのに。

 

「何だと!?」

 

「て言うのは嘘ー。鈴谷は分かったよ?」

 

そう言ってニカッと鈴谷は笑った。

 

「そうか。」

 

「うん!」

 

そう俺が答えると、鈴谷は俺の横に並んだ。

 

「提督を見つけたから話しかけたんだー!んふふー。」

 

そう言って自慢気に胸を張った。

 

「そうかー。と言うか鈴谷は何かの役はやってないのか?」

 

俺は歩き始めると鈴谷が付いてきたので話を切り出してみた。

 

「ないよー。今は休憩みたいな?」

 

そう言って横を付いてくる。

 

「みたいなって......。まぁいいか。」

 

そう言って俺は鈴谷を連れて回ってしまったので、結局バレてしまったのは言うまでもない。

 

 




いやー、まだまだ続きますよ。それと、昨日の感想への返信が遅れてしまい、すみませんでした。昨日は精神的ダメージが大きい事が起きたので少し凹んでいたんですよねw
立ち直りましたがねw くよくよしてても仕方がないのでw

ご意見ご感想お待ちしてます。

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