ULTRA-LIVE!!   作:零零機工斗

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ULTRAMAN(ウルトラマン)
それは、この星を守る戦士達。
人知れず、異星からの攻撃を防ぎ、社会に混乱を招くであろう情報さえも遮る者達、科学特捜機関、Special Science Research Organization(SSRO)の戦闘員達のことである。
勿論情報操作は彼らの専門ではない。
だが、侵略を望む者達を退けるには後処理よりも先にまず力が必要なのだ。
当初既存の武器などでは歯が立たなかった人類が決心して触れた力――異星人の技術。

その結果として生まれた存在、ULTRAMAN(ウルトラマン)
彼らの行く末は、果たして――。


1.超人の産声

対象(ターゲット)、位置特定完了しました。場所は千代田区神田。暴れ出す前に、公衆からはなるべく目撃されないよう注意しつつこれを速やかに対処してください』

「これから公衆巻き込んで暴れようって奴を公衆に存在を知られる前に潰す、なんて無茶ぶりだよなあ。いつも通りではあるが」

『……川村さん』

「はいはい、了解したよ」

 

季節は春。

3月後半に差し掛かり、学生らは卒業式を終え次の学年、あるいは学校へ向かう前の心の休息を取っている時期であろうか。

 

「…変身」

 

その裏では、地球にいつも通り(・・・・・)の危機が迫っていた。

彼らにとっては、よくある朝の出来事でもある。

 

『そこを左に曲がってください。ターゲットはもうすぐです。幸い、まだ被害はまだ小規模のものです』

「わかった。建造物の破壊などは?」

『ありません。中高生ほどの男性が一人、追われています』

「わかった、急ごう」

 

一般人ならあまりの速度に影しか見えていないような高速移動で、『彼』は駆けた。

自分の様な『被害者』を、これ以上増やさないために。

 

 

 

***

 

 

「ハアッ……ハァアッ……!!」

 

隼田太一(はやた たいち)は無様に息を切らせながら走っていた。

恐らくここまで必死に走ったことは、生きてきた15年間の中ではないであろう。

 

それも当然かもしれない。

文字通り『必死』、足を止めれば死んでしまうのだから。

足を止めなくとも、死ぬかもしれないのだから。

 

つまり、このままでは『必ず死ぬ』。

 

本能がそれを察したのか、太一の身体は恐怖が疲労をかき消し、力を捻り出して走ることができていた。

人通りの少ない道をひたすら右、左と曲がって距離を保っていた。

 

だがそれももう限界だろう。

驚異はすぐ後ろ迫っているのだから。

 

「弱くて遅くて脆くて……必死に足掻いちゃって……面白いよなァ地球人は!!」

 

禍々しく尖った鱗に覆われ、長い尻尾を持った3m近くはある、人の形を模してはいるが、人と見違える筈の無い何か(・・)

異形の怪物、としか呼称することのできないような存在が、その巨体からは予想もできない速度で太一の背後に迫っていた。

 

「おらよっとォ!!」

 

背中に衝撃と痛みを感じ、気づけば太一は前方に吹っ飛ばされていた。

背中を蹴られでもしたのだろう、背中の骨が折れなかっただけ幸いではある。

 

しかし、まだ生き延びる、などという希望の思いは微塵もなかった。

うつ伏せの状態から上を見上げると、怪物は両腕を組んで振り上げてしていたのだから。

腕を降り下ろす寸前の怪物と、目が合う。

 

純粋な悪意と、愉しさの映る目だった。

 

腕が降り下ろされる光景がゆっくりと見え、記憶に焼き付く。

 

死ぬ―――と確信し、少年は生を諦めかけた。

せめて痛みは少ないように祈りながら。

 

 

 

 

ふわりと、身体が浮くような感覚を覚えた。

 

「間に合ったか」

 

予想していた痛みはなく、疑問に思いながら目をうっすらと開けると、これまた予想外の光景が太一の視界に映った。

 

自分の身体ほど大きい腕に叩き潰される寸前に、太一の身体は『彼』の腕に抱かれていたのだった。

 

所謂お姫様抱っこという体制だが、そんなことを微塵も考えられるような状況ではなかった。

 

「……アンタ、は……?」

「ん?まあ…『正義の味方』、かな」

 

銀色のヘルメットに赤と銀の装甲が全身を覆った、190㎝ほどの人物が息切れの太一の顔を覗き込んだ。

 

黒い基礎装甲の上を銀色の薄い装甲が覆い、胸部や、肩、腕、足などは更にその上に銀と赤の厚い装甲が多重装甲を形成していた。胸部装甲の真ん中には、青白く光る球形状の結晶がはめ込まれていた。

 

潰されていない太一を見て、怪物は一瞬驚いたように表情を歪ませ、残念そうにうめいた。

 

「全く、誰だよ…そのまま放っておけば面白いことになってたのによォ。つーかなんだそれ、鎧か?」

「鎧と呼んでも問題はないが、ただの鎧じゃないな」

「ハァ?」

 

太一を横にゆっくり降ろすと、男は数歩ほど怪物に向かって前進した。

 

コンクリートを抉る音と、何かが破裂したような音が鳴ったのはほぼ同時だった。

装甲を着込んだ男がいつの間にか怪物の目の前におり、その拳は怪物の腹にめり込んでいた。

 

「グゥッ……ガハッッ」

 

攻撃が通ったのか、緑色の体液が怪物の口から吹き出し、垂れていた。

 

「この力、人間のもんじゃねえ……そうか、てめえ、地球の“機関”の犬か……」

 

怪物の顔が異形すぎて表情など分かりづらいが、それでも憤怒を露わにしていることは明らかだった。

その怒りを更に煽るかのように、男は肩を窄めて言った。

 

「さあ?どうだろうね」

「上等だ、潰してやんよォ!!」

 

怪物は鱗に覆われ肥大化している腕を振るが、男の速度に追いつくはずがなく、難なく横に避けられた。

 

「どこを狙っている」

「てめえじゃねえよ」

 

男がハッと気づくが既に遅かった。

怪物は装甲男の速度を見て捉えきれないと判断し、対象を太一(無力な人間)に替えたのだ。

 

組まれた両腕は容赦なく、太一目掛けて振り下ろされた。

 

「ッさせるか!」

 

躊躇なく、太一の前で両手を広げて受け止める装甲の男。

当然、後ろに吹っ飛ばされるが空中で足を地面に叩きつけて方向を横にずらし、太一に当たらず後方の工事中の建物に衝突した。

 

その衝撃で柱が破壊されたのか、鉄パイプや鉄の板が降り、下敷きとなってしまった。

 

「お、おい!」

「はっ、やっぱ正義の味方とかほざく奴はこうしてぶっ飛ばすに限るな。どっちにしろ守ってる奴は死ぬんだからよォ」

 

今度は守る者がいない、無防備な太一を叩き潰さんとする怪物。

槌のごとく、真上から殺意のこもった片腕は振り下ろされた。

 

寸前でそれを横に躱す太一。

 

が、地面はその直撃で抉れ、太一の身体は余波で吹っ飛んで壁に背中から叩きつけらてしまった。

既に一度、驚異的な剛腕によるものではなかったとは怪物の一撃を食らった背中であり、壁に叩きつけられたことにより痛みは最早声も出ないレベルに達し、意識が飛びかけてしまう。

 

服もボロボロになった太一に怪物はゆっくり歩み寄り、片腕を振り上げる。

半ば意識を失っていても、力なく睨む太一の顔を見て嬉しそうに怪物は口元を歪ませた。

 

「それじゃあな、綺麗に中身散らせろよ」

 

愉快な声でそう言い、狂気と悪意の鉄槌は振るわれた。

今度こそ死ぬのだろうか、動けない身体を動かす気にもなれず、太一はその光景を眺めていた。

 

「散らせるわけにはいかないんでね」

 

装甲に傷一つ見られない銀色装甲の男が鉄パイプの山を吹き飛ばし、先ほど見せた様な高速移動で太一の目の前まで跳び、動けない太一を救い上げた。

怪物の攻撃は外れたが、余波によって吹っ飛ばされそのまま太一を上側に抱き上げながら地面を滑る。

 

「……ッハ、すまん、手荒だがこうでもしなきゃ間に合わなかった」

「だ、大丈夫、ですか……?」

 

身に纏う装甲には相変わらず傷が殆どないが、男の声は少し枯れていた。

ある程度衝撃が伝わっていたのだろうか、多少の傷を負っている様だ。

 

救う方も救われた方もボロボロだった。

 

「もうすぐ君を保護しに仲間が来るから安心していい、邪魔さえなければあいつは倒せる」

「す、すいません…」

 

暗に邪魔だと言われ太一は焦り気味に謝るが、男は気にした様子はなかった。

無言で立ち上がった彼は、上で苛立ちに顔を歪ませた怪物を睨みつけてた。

 

『無茶しすぎですよ川村さんッ』

「ははっ、若くはないがまだまだいけるさ……ぐゥッ…」

 

希望は、悲痛の声を上げて崩れた。

足が崩れ、膝で身体を支えてはいるが、とても戦える状態ではないということが目に見えた。

 

「ほら、早くさっきみたいに必死に逃げてろ。私は大丈夫だ、ここで奴を仕留める」

「全然大丈夫じゃ、ないだろ...!仲間が来るまで待つのが正解じゃないのか!?」

 

青白く光っていた胸元の結晶は変色し、いつの間にか赤い光を放っていた。

 

「その間に、どれほどの被害が増えると思う?」

「ッそれは……」

 

男はまた立ち上がり、怪物を睨みつけていた。

怪物はニタリと口を歪め、容赦なく叩き潰さんと彼らに向かって走り出した。

 

その光景を目に焼き付け、過去と重ねていたのは装甲を着込んだ男だけではなかった。

痛みに悶えそうになる身体を無視し、太一は立ち上がり彼の腕を掴んだ。

 

「なッ!?」

「なら、俺が戦う!!」

 

その叫びに呼応するように、結晶の赤い光は青の光となった。

まるで生きているかのように、揺らめいて生暖かい熱を感じさせる光。

光は眩しさを増していき、視界を埋め尽くしてゆく。

 

目が眩む様な青い光に、二人は飲まれた。

 

 

数秒後、眩い光が引くと、さっきまで太一達が立っていたその場に残されていたのは銀と赤の装甲を着こんだ人物と、黒スーツを身に纏った細身の男性だった。

太一の姿はどこにもない。

 

いや、正確には入れ替わっただけなのだ。

黒スーツの男が今まで装着していた装甲が、先ほどの発光現象と同時に外れ、太一に装着された。

 

 

『何これ……この子、適合者だったの…!?』

「…誰?どっからか声が……?」

 

呆然としている黒スーツの男を横に、装甲スーツ内で響く声に動揺する太一。

命がかかっている状況にしてはあまりにもシュールな光景であった。

 

「んあ?さっきのガキが見当たらねえな!まあ、別にどうでもいいかァ!!」

 

怪物は走るのを止めて上に跳び、再び両腕を組んで振り下ろした。

傍にまだ黒スーツの男がいる以上、避けることができない状況だった。

 

『打ち返せ』

 

世界が止まったかのような感覚の中、誰かの声が聞こえた様な気がした。

 

「アアアアア!!」

 

太一が取った選択は回避でも防御でもなく、右ストレートを振り下ろされる怪物の腕に叩き込むことだった。

 

「グゥアアアアア!?」

 

硬い何かが弾かれるような金属音と共に衝撃波が起き、体重を腕に乗せて振り下ろしてきた怪物の方が後方に吹っ飛んだのだった。

吹っ飛んだ怪物は先ほどの鉄パイプの山に突っ込んだ。

 

「え……?」

 

まさか自分程度の力で弾き返せるとは思ってなかったのか、きょとんとする太一。

身体の痛みは引いており、妙に動きやすい感覚に違和感を覚えて自分を見下ろした。

 

「これで、戦えるのか……?」

 

装甲を見た太一の反応は驚きでも恐怖でもなかった。

その力の限界を探す、疑問。

己を変えられるのかという、自分への問い。

 

自分の身に纏っている装甲を眺めるのも束の間、怪物が瓦礫から飛び出す。

 

「オノレエエエエエ!!」

「フッッ!」

 

太一は真向から怪物の攻撃に自分の拳を叩き込んだ。

まるでもう逃げられない状況を自分で作るかの様に。

逃げていた過去の力無き自分を忘れるかの様に。

 

怪物の振るう腕を、ひたすら自分の拳で打ち抜くつもりで攻撃を打ち返していた。

 

「アアアアアア!!」

 

最早どちらが吠えているのかはわからなかった。

だが、どちらが押しているのかは明らかであった。

 

『真向から挑んで押してる……!?』

 

通信から聞こえる声は太一の耳には届くことはなく、ひたすら拳を突き出していた。

 

「グゥウウウ……ッッ!!冗談じゃねえ、こんなところで死ねるか!」

 

もはや防御の方法が相手の攻撃に自分の攻撃を当てるという異常な戦いから先に退いたのは、怪物の方だった。

 

『放て』

 

またどこからともなく声が聞こえる。

通信ではない、頭に直接響くような声。

 

突き動かされる様に、あるいは本能に従う様に自然な動作で太一は両腕を十字に組んだ。

 

「逃げるんじゃ、ねえええええええ!!」

 

その咆哮は、逃げる敵に対する罵倒か、己に対する心の叫びか。

 

後ろに跳び、青く光りながら逃亡を図った怪物に向かって眩い青色の閃光が走る。

断末魔も出る前に掻き消え、怪物は空中で蒸発した。

 

『スぺシウム光線……!?どうしてそれを知って……』

「……なんか腕から出た……」

 

怪物の存在が掻き消され、残された太一は腕を十字に交差して呆然としているだけだった。

 




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