獣憑きの少年も異世界に来るそうですよ?   作:モグモグラ

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第10話

場所を変えて座敷に招かれた。”サウザントアイズ”の幹部二人と向き合うように座る。ここでも、変態は黒ウサギを舐め回すように見ていた。‥‥もう死ねばいいのに、この変態。

思考を読んだ月琉に怒られたので自重。

「―――”ペルセウス”が私達に対する無礼を振るったのは以上の内容です。ご理解いただけたでしょうか?」

変態を無視して、黒ウサギは白夜叉への説明を終わらせた。黒ウサギ。よく頑張った。

「う、うむ。”ペルセウス”の所有物・ヴァンパイアが身勝手に”ノーネーム”の敷地に踏み込んで荒らした事。それらを捕獲する際における数々の暴挙と暴言。確かに受け取った。謝罪を望むのであれば後日」

「結構です。あれだけの暴挙と無礼の数々、我々の怒りはそれだけでは済みません。”ペルセウス”に受けた屈辱は両コミュニティの決闘をもって決着をつけるべきかと」

狙い通り、両コミュニティの直接対決の話を出せた。

もちろん、レティシアが暴れたというのは嘘だ。彼女を取り戻すための作り話。

「”サウザントアイズ”にはその仲介をお願いしたくて参りました。もし”ペルセウス”が拒むようであれば”主催者権限”の名の下に」

「いやだ。」

言葉を遮るように、変態は言った。

「‥‥はい?」

耳を疑った黒ウサギが聞き返す。

「いやだ。決闘なんて冗談じゃない。それにあの吸血鬼が暴れ回ったって証拠があるの?」

「それなら彼女と石化を解いてもらえば」

「駄目だね。アイツは一度逃げ出したんだ。出荷するまで石化は解けない。それに口裏合わせないとも限らないじゃないか。そうだろ? 元お仲間さん?」

嫌味ったらしく笑みを浮かべる変態‥‥ルイオス。そろそろ月琉からジト目されたから名前で呼ぼう。ほんと俺って月琉に弱いな。

ルイオスの言葉は筋が通ってるだけに言い返せない。

「そもそも、あの吸血鬼が逃げ出した原因がお前達だろ?実は盗んだんじゃないの?」

「な、何を言い出すのですかッ! そんな証拠が一体何処に」

「事実上あの吸血鬼はあんたのとこに居たじゃないか。」

ぐっと黙り込む。そこを突かれるとな。言い返せなくなる。

「まあ、どうしても決闘に持ち込みたいならちゃんと調査しないとね。‥‥‥‥もっとも、ちゃんと調査されて一番困るのは全く別の人だろうけど。」

「そ、それは‥‥‥‥!」

黒ウサギとルイオスは白夜叉の方へ視線を移す。

レティシアを手引きしたのは白夜叉らしいし、調査されたら白夜叉の立場が危うくなる、か。

「じゃ、さっさと帰ってあの吸血鬼を外に売り払うか。愛想のない女って嫌いなんだよね、僕。

特にアイツは体も殆んどガキだしねえ―――だけどほら、あれも見た目は可愛いから。その手の愛好家には堪らないだろ? 気の強い女を裸体のまま鎖で繋いで組み伏せ啼かす、ってのが好きな奴もいるし? 太陽の光っていう天然の牢獄の下、永遠に玩具にされる美女ってのもエロくない?」

‥‥おぉ。なんという趣味だよ。いや、あえて黒ウサギを怒らせる為に言葉を選んでいるのか。

挑発に乗った黒ウサギはウサ耳を逆立て叫ぶ。

「あ、貴方という人は‥‥‥‥!」

「しっかし可哀想な奴だよねーアイツも。箱庭から売り払われるだけじゃなく、恥知らずな仲間のせいでギフトまでも魔王に譲り渡す事になっちゃったんだもの。」

「‥‥なんですって?」

外での会話が聞こえてなかった飛鳥が声を上げた。

黒ウサギは声こそ上げなかったが、その顔には動揺が浮かんでいた。

それを目ざとく拾いルイオスは追い討ちを掛けた。

「報われない奴だよ。”恩恵(ギフト)”はこの世界で生きていくのに必要不可欠な生命線。魂の一部だ。それを馬鹿で無能な仲間の無茶を止めるために捨てて、ようやく手に入れた自由も仮初めのもの。他人の所有物っていう屈辱に耐えてまで駆けつけたってのに、その仲間はあっさり自分を見捨てやがる!目を覚ましたこの女は一体どんな気分になるんだろうね。」

「‥‥‥‥え、な」

おうおう。精神的にえぐるね。黒ウサギが蒼白になっちゃったじゃん。

「ねえ、黒ウサギさん。このまま彼女を見捨てて帰ったら、コミュニティの同士として義が立たないんじゃないか?」

蒼白な黒ウサギに右手を差し出しながらルイオスは言う。

(‥‥なんとなくコイツの狙いが読めた。)おそらく黒ウサギが目的だな。

案の定、ルイオスは黒ウサギと引き換えにレティシアを解放すると言ってきた。

「外道とは思っていたけど、此処までとは思わなかったわ! もう行きましょう黒ウサギ!こんな奴の話を聞く義理は無いわ。」

堪らず飛鳥が長机を叩いて怒鳴り声を上げた。

「ま、待ってください飛鳥さん!」

黒ウサギの手を引き出ようとする飛鳥だが、黒ウサギは拒んだ。

その瞳は困惑が見える。この申し出に悩んでいるようだ。

「ほらほら、君は”月のウサギ”だろ?仲間の為、煉獄の炎で焼かれるのが本望だろ? 君達にとって自己犠牲って奴は本能だもんなあ?」

ルイオスはいやらしく捲し立てた。

「‥‥‥‥っ」

「ねえ、どうしたの? ウサギは義理とか人情とかそういうのが好きなんだろ?安っぽい命を安っぽい自己犠牲ヨロシクで帝釈天に売り込んだんだろ!? 箱庭を招かれた理由が献身なら、種の本能に従って安い喧嘩を安く買っちまうのが筋だよな!? ホラどうなんだよ黒ウサギ 「〈黙りなさい!〉」」

見かねた飛鳥がギフトを使うと、ガチン!と音を立ててルイオスの下顎が閉じた。

「っ‥‥‥‥!?‥‥‥‥!!?」

困惑するルイオスにさらに命令を使う飛鳥。

「貴方は不快だわ。そのまま〈地に頭を伏せてなさい!〉」

言葉通り体を前のめりに歪める、と思いきや、命令に逆らい強引に体を起こした。おそらくある一定以上の力を持ってる相手には効きが悪いのだろう。

「おい、おんな。そんなのが、つうじるのは―――格下だけだ、馬鹿が!!」

命令を打ち破り、怒りを顕にしたルイオスが取り出したギフトカードから、光と共に現れた鎌。

それが振り下ろされる前に出しておいた《凍土》で受ける。即座に鎌を蹴り飛ばしたのは十六夜。

鎌は背後の壁に刺さった。修理が大変そう。

「な、なんだお前達‥‥‥‥!」

「空だよ。あんた、いい加減にしなよ。言葉ならともかく、手を出すなら容赦はしないぞ?」

「十六夜様だよ色男。喧嘩なら利子つけても買うぜ? 勿論トイチだけどな。」

《凍土》を構えつつ質問に答えてやる。十六夜は軽薄そうに笑いながら答えた。

距離をとり、刺さった鎌を掴み追撃を掛けようとするルイオスにこちらもいつでも受けれるようにする。だが、俺の《凍土》とルイオスの鎌が白夜叉に押さえつけられる。

「ええい、やめんか戯け共! 話し合いで解決できぬなら門前に放り出すぞ!」

叱られた。なので《凍土》を納める。それと同時に周囲の漂う冷気が消える。

「‥‥。ちっ。けどその女が先に手を出したんだけどね?」

鎌をしまったが、尚殺気立つルイオス。

「ええ、分かってます。これで今日の件は互いに不問ということにしましょう。‥‥‥‥後、先ほどの話ですが‥‥少しだけお時間をください。」

黒ウサギの返事に驚いた。飛鳥も同じようで叫んだ。

「ま、待ちなさい黒ウサギ!貴女、この男の物になってもいいというの!?」

「‥‥仲間に相談する為にも、どうかお時間を」

「オッケーオッケー。こっちの取引ギリギリ日程‥‥一週間だけ待って上げる。」

黒ウサギの返事ににこやかに笑うルイオス。現状、それ以外の手段じゃレティシアを救えないからな。

足早に座敷を出る黒ウサギを追って飛鳥が出て行く。

「そら‥‥。」

「‥‥‥‥そうだな‥‥。放っておこうか。」

俺達が干渉するべきじゃないと思うしな。そう伝えると月琉が頷く。

十六夜と俺はどちらからともなく呆れたように肩をすくめる。

「白夜叉は恵まれてるな。気難しい友人とゲスイ部下に挟まれるなんてそう経験できないぞ。」

「全くだの。羨ましいなら代わってやるぞ。」

「いや‥‥俺も十六夜も今は遠慮しとくよ。‥‥‥‥ところでさ、”ペルセウス”のリーダーってのはお前?」

「あぁ? そうだけど、いまさら何聞いてんの?」

さっきの事もあってか、不機嫌そうに答えた。

その答えを聞き十六夜はしばらくルイオスを見つめた後、落胆した表情になった。そしてため息をついて踵を返した。

「―――ちょっと待てよ。今のため息はなに?」

「名前負けしすぎ。期待した俺が馬鹿だった。‥‥そういう意味さ。」

「はっ。今なら安い喧嘩でも安く買うぜ?」

そう言い鎌を構えるルイオス。あっ、別に洒落じゃないからね?

だが十六夜は片眉を上げて見つめ直し、興味なさげに座敷に背を向けた。

「‥‥英雄、地に堕ちる‥‥か。」

俺はそう呟いてから月琉と共に十六夜を追う。

 

 

二人に追いつくと、言い争いをしていた。

確かに黒ウサギの行動は身勝手だったが‥‥って十六夜?どうする気?

「夜中に叫ぶな喧しい。」

あっ、二人の頭を互いにぶつけさせた。

「えぇ‥‥。大丈夫‥‥か。」

「お互いの言い分は理解した。それを踏まえて言わせてもらうと、黒ウサギ。お前が悪い。」

ばっさり言ったね。

「ど、どうしてですか!?」

オデコを抑えながら抗議する黒ウサギ。オデコが赤くなってる。

十六夜は冷めた目で黒ウサギを見つめている。

「手紙の一件もそうだけどな。レティシアは”ノーネーム”の本拠に来た時、もう覚悟していたはずだ。あの目が、お前に助けを求めている目だったか?」

あの目は、そうではなかったな。どっちかといえば十六夜の言う通り、覚悟を決めた目だ。

「そ、それは‥‥‥‥いえ、助けを求めていないから助けないというのは詭弁でございます。」

「そりゃそうだ。だけど場合による。レティシアがギフトを失った事を黙っていたのは、お前に身代わりになって欲しくないからじゃねえのか?」

自分が黒ウサギ達の重荷になるのを避けたかったからだろうな。

「あとお嬢様の言い方も悪いな。もっとソフトに自分の気持ちを伝えろよ。

『私、黒ウサギの事が心配で心配で堪らないの! お願い、側に居て!』―――とか」

「そ、そんなつもりで引き止めていたわけじゃないわ。」

反論したが、飛鳥は耳まで真っ赤になっていた。何割かは図星だったのかもしれない。

「も、申し訳ありません。気持ちは嬉しいのですが、その、黒ウサギにそういう趣味は」

なぜ曲解する?このウサギは。

「ここぞとばかりに曲解かしら? ええ、いいわ受けて立ってさしあげてよこの駄ウサギ!」

飛鳥と黒ウサギの戯れが始まった。

「‥‥? ねえそら?そういう趣味ってなに?」

「お前はまだ知るべきではない。てか知らないでくれ。」出来ればノーマルな方に育って欲しい。

「? よくわからないけど、わかったよ。」そらがそう言うならと納得した。

月琉が俺に従順で良かった。内心でホットする。

飛鳥と黒ウサギが落ち着いたので、”ノーネーム”に戻ることにした。

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