獣憑きの少年も異世界に来るそうですよ?   作:モグモグラ

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第12話

十六夜とジンとともに宮殿内を突き進み、最上階に到着。

「到着っと。」

待っていた月琉と黒ウサギに手を振る。

安堵したように溜め息を漏らす黒ウサギとニコニコしてる月琉。

「―――ふん。ホントに使えない奴ら。今回の一件でまとめて粛清しないと」

声の方を見上げると、翼の生えたブーツを履いた‥‥

「ええと、ル何とか。」

「おい。忘れるなよ! 僕の名前はルイオスだ!」

ああそんな名前だっけ?

「‥‥コホン。まあでも、これでこのコミュニティが誰のおかげで存続できているのか分かっただろうね。自分達の無能っぷりを省みてもらうにはいい切っ掛けだったかな」

続けるんだ‥‥。

バサっと翼が羽ばたく。一度だけの羽ばたきでルイオスは風を追い抜いて、俺たちの前に降り立った。

「なにはともあれ、ようこそ白亜の宮殿・最上階へ。ゲームマスターとして相手をしましょう。‥‥‥‥あれ、この台詞を言うのって初めてかも」

へえー。そうなのか。でもそれは、騎士達が優秀だったからだな。

「ま、不意を打っての決闘だからな。勘弁してやれよ」

十六夜は肩を竦ませ、笑いながら言った。

「フン。名無し風情を僕の前に来させた時点で重罪さ」

翼が再び羽ばたく。

ルイオスはギフトカードから燃え盛る弓を取り出した。

あれって持ってて熱くないの? 《焔》みたいに使用者は結界で護られてるのか?

まあ考えるのは後でいいか。

その弓を見て黒ウサギの顔色が変わった。

「‥‥炎の弓? ペルセウスの武器で戦うつもりはない、という事でしょうか?」

「当然。空が飛べるのに何で同じ土俵で戦わなきゃいけないのさ」 俺らを小馬鹿にするようにルイオスは天へ舞い上がる。でも、戦いの意思は見えない。

「?何をする気だ?」

壁の上まで飛び上がったルイオスを観察する。首に掛かったチョーカーを外し、装飾を掲げた。

「メインで戦うのは僕じゃない。僕はゲームマスターだ。僕の敗北はそのまま”ペルセウス”の敗北になる。そこまでリスクを負うような決闘じゃないだろ?」

うーん‥‥。慢心してくれないのか。それとあの装飾はおそらく、ゲーム前に話してたアルゴルかな?

装飾が光始める。星の光のような光の波は、強弱をつけながら数が増えていってる。まるで封印を解いていくかのように。

十六夜と俺は臨戦態勢をとる。ジンには後ろにいてもらおう。

「目覚めろ―――”アルゴールの魔王”!!」

強くなっていた光は褐色になり、視界を染める。

「ra‥‥Ra、GEEEEEYAAAAAaaaaa!!!」

「‥‥っ!!」

女性らしき声なのだが、人の言語ではない。不協和音に耳を抑える。五感が鋭い弊害だな。耳がキンキンする。

現れたのは体中を拘束具と捕縛用のベルトで覆われた女性だ。灰色を髪を逆立て叫び続けている。

「ra‥‥GYAAAAAaaaaaaaaaa!!」

「な、なんて絶叫を」

「避けろ、黒ウサギ!!」

不協和音にウサ耳を抑えてた黒ウサギは十六夜の言葉にえっ、と硬直する。

俺と十六夜が同時に動く。

十六夜が黒ウサギとジンを、俺が月琉を抱き抱えて飛び退くと、直後その場所に岩塊が落ちてきた。

月琉を小脇に抱え、立て続けの落石をよける。

「いやあ、飛べない人間って不便だよねえ。落下してくる雲も避けられないんだから」

く、雲!?

空を見上げると、なるほど雲が石化して落下している。石化、となればあれはアルゴルの仕業か?

「さすが星霊・アルゴール‥‥。って言えばいいのかい?」

「ふうん‥‥。名無し風情のクセに知っているのか。まあ、君らのお仲間も部下も今頃石になってるし、君もその仲間に入れてあげるよ。」

不敵に笑うルイオス。さっきので俺らを石化すれば、勝負がつくというのに‥‥。遊ばれているのか。

「‥‥ふう。それじゃ、月琉。離れててくれ。」

「うん、分かったよ。」

月琉を下におろしてジンと話し終えた十六夜の元へ行く。

「どうする? 二人がかりでやる?」

「んじゃ、アイツは任せた。俺は魔王をやる。」

ルイオスの相手をしろと言われたので了解の意を示す。

「さ、話は纏まったよ。それじゃ準備はいいかよゲームマスター」

「三人でかかってこないのかい? 後ろの子はリーダーなんだろ?」

「やれやれ、お前如き相手にうちのリーダーの手は汚させないよ。」

肩を竦め応える。もちろん手を汚すってのは比喩だ。無駄に命を奪う気はない。

「―――はっ。名無し風情が、精々後悔するがいいッ!!」

「ra、GYAAAAAaaaaa!!」

ルイオスとアルゴールが同時に動いた。ルイオスはアルゴールの陰に隠れ、弓を打つようだな。

蛇のように蛇行する炎の矢がこっちに降り注ぐ。

「十六夜。俺は気にしなくていいからな。俺もお前は気にかけないから。」

一声掛けてから、自分に当たりそうな矢のみを、ギフトカードから出したクナイで打ち落とす。

十六夜は気合い一喝で弾き飛ばした。肺活量も凄いのか。

ルイオスは弓矢は使えないと悟ったのか、次は鎌を取り出した。

(おっ?あの鎌、何かついてるな。)

”解析”してみると、”星霊殺し”とかいうものが付与されてるみたいだ。ついでにあの鎌はハルパーというらしい。

「そっちの金髪を押さえ付けろ、アルゴール!!」

「RaAaaaa!!LaAAAAA!!」

甲高い声を上げ、十六夜目掛けてアルゴールが両腕を振りおろしてきた。

それを正面から受け止めた十六夜。驚くことに、星霊相手に力比べをする気だ。俺は無理だよ? だってスピード特化型だもん。精々、躱して脇に攻撃する程度だ。

一瞬、押し合いになり、勝ったのは十六夜だった。アルゴールは押し切られ、ねじ伏せられた。

「‥‥うわぁ。」

獰猛な笑みを浮かべ、アルゴールの腹を踏みつける十六夜に正直、引いた。

「よそ見してる暇は無い!」

「ん? ああ。」

背後に回ってハルパーで斬りかかろうとするルイオスに目を戻す。

「《焔》」

《焔》を呼び出し、ハルパーを受け止める。

「ッ!」

炎を発現させて、ハルパーを溶断する。

「なっ!?」

驚愕を浮かべるルイオスを蹴り上げる。

「ッ!?」

上に吹き飛んだルイオスに言う。

「駄目だろ。初見の相手の攻撃を受けたら」

さっきみたいに武器を失うからな。

「き、貴様ぁ‥‥!!」

怒りに顔を染め、半分ほどになったハルパーを投げつけてきた。だが難なくよける。ついでにクナイを投げ返す。

「ふんっ。」

それをよけたルイオス。多少余裕を取り戻した顔つきだ。

「‥‥破砕」

小さく呟き、クナイに巻き付けた御札を起動させる。

直後、ルイオスの背後で爆発が起きた。

「ガっ!」

不意を突かれ、爆風に吹き飛ばされたルイオスは、少し前に十六夜に昏倒させられたアルゴールに重なるように体を叩きつけられた。

「油断大敵、だな。」

「き‥‥‥‥貴様ら、本当に人間か!? 一体、どんなギフトを持っている!?」

うーん、一応生物学的には人間のつもりなんだけどね‥‥。多少、獣じみてる自覚はあるけど。

「んー。”獣憑き”に”陰陽師”、戦闘的なのはそれくらいだな。」

ギフトカードを取り出し、質問に答える。

十六夜も同じように、ギフトカードを見つつ答えてた。

「い、今のうちにトドメを! 石化のギフトを使わせては駄目です!」

俺達二人が余裕綽々な態度をルイオスに見せつけてると、ジンが慌てて叫んできた。

「‥‥そういえば、アルゴール。最初以外石化使ってこないな。」

正直、あれを放たれたら、一瞬で負けるなぁ。

「くっ! アルゴール!宮殿の悪魔化を許可する!奴らを殺せ!」

あらら? 使わないの?

再び謳うような不協和音をアルゴールが発すると、途端に白亜の宮殿は黒に染まった。生き物のように脈打つ壁に嫌悪感を覚える。本能的な嫌悪感だ。

宮殿全体に広がった染みから、蛇を模した石柱が襲いかかってくる。

「そういや、ゴーゴンって色んな魔獣を生み出したって伝説があったけな?」

‥‥そういえば、アルゴールの悪魔もそうだけど、いきなり頭に知識が浮かび上がったんだよな。アルゴールの悪魔の時は僅かなりとも知識があったから構ってなかったけど、これは記憶にない知識だ。

「‥‥まっいいや。」

あとで考えよう。面倒な事をグダグダ考えて負けたくはないし。

《凍土》も呼び出し、蛇の石柱を斬る。片方は溶断して、断面がマグマのような液体になる。もう片方は凍結し、地面に落ちると砕け散る。

十六夜はそれらを避けていた。

「もう生きて帰さないッ! この宮殿はアルゴールの力で生まれた新たな怪物だ! 貴様らにはもはや足場一つ許されていない! 貴様らの相手は魔王と宮殿の怪物そのもの!「話が長い」へぶっ!」

短くまとめろよ。ったく‥‥。《焔》の鞘を投擲した格好から戻す。

「容赦ねえな。」

「長い話は嫌いなんだよ。」特に戦闘中の長い会話は。

「んじゃ、十六夜。ここ壊して。」

「「え?」」

「やっぱりね。」

黒ウサギとジンは呆気に取られた顔、月琉は予想できていたのか、ため息をついていた。

「おう。」

軽く答えた十六夜は、無造作に拳を上げ、黒に染まった魔宮目掛けて振り下ろした。

周囲を囲ってた蛇蝎は一斉に砕け、霧散する。その直後、闘技場が崩壊した。

崩壊に巻き込まれかけたジンを黒ウサギが受け止めているのを横目に、いつの間に横に来ていた月琉に小突かれた。

「そら? ここまでやる必要ないんじゃないの?」

うわー、怒ってらっしゃる。

「い、いや、ここで一度、十六夜の力を見てみたくてね?」

「‥‥‥‥」

「‥‥ごめん。やり過ぎたと今更思ってる。」

素直に謝っておこう。

「まあいいけど。それで、そら? どうするの?」

「ここまでとは思ってなかった。」

崩壊から身を守るために張った結界から惨状を見て息を呑む。

闘技場は僅かに面影を残すばかりで、殆どが3階まで崩落している。

「馬鹿な‥‥どういう事なんだ!? 奴の拳は、山河を打ち砕くほどの力があるのか!?」

上空でルイオスが恐怖を混ぜた叫びを上げていた。うん、これは俺も怖いわー

静かに結界を解除しながら好奇心から起きた惨状に冷や汗を感じる。

 

 

〜ルイオスside〜

 

ルイオスは屈辱で顔を歪ませた。こと如く、自分を侮辱する二人の名無しに

宮殿の悪魔化も破られ、このままでは勝ち目は無い。

(‥‥だが)

スッと真顔に戻り、次いで凶悪な笑顔を浮かべる。

(どうあれ、勝てばいい。)もうなりふり構ってられない。正面から叩き潰して絶望させてやろうと思ってたが、

「もういい。終わらせろ、アルゴール」

アルゴルの悪魔に命令し、石化のギフトを開放させる。

星霊・アルゴールは謳うような不協和音と共に、褐色の、石化の光を放つ。

光は二方向に別れ十六夜と空を包まんと突き進む。

「――――‥‥‥‥カッ。ゲームマスターが、今更狡い事してんじゃねえよ!!!」

「‥‥初めからそうすれば良いのにさ。」

二人、同時に動いた。結晶のような刀身の短刀を空が振るうと、左の光は光であるにも関わらず、氷結し砕け散る。砕けた結晶は光を反射し輝いた。

方や十六夜の方は、十六夜の一撃を受けた光は、こちらはガラス細工のように砕け散り、影も形もなく消滅した。

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