獣憑きの少年も異世界に来るそうですよ?   作:モグモグラ

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第2話

「ふう‥‥。スッキリした。」

ひとしきり黒ウサギの耳を引っ張って怒りがおさまったので、解放する。

「―――あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス。」

あれぇ? そんなに経っていたのか。夢中で気づかなかった。(棒)

涙目の黒ウサギに苦笑いしながら、岸辺に座り込んで耳を傾ける。他三人も同じように『聞くだけ聞こう』という態度で耳を傾けていた。

気を取り直すように咳払いをした黒ウサギは、大げさに両手を広げて、

「それではいいですか、御四人様。定例文で言いますよ? 言いますよ? さあ、言います! ようこそ、”箱庭の世界”へ! 我々は」

 

〜説明カット〜

 

一通りの説明を聞き終え、飛鳥と十六夜の質問が終わり、移動することになった。その道中、

「なあ。世界の果てを見に行ってみねえか?」

十六夜からそう誘われた。

「‥‥世界の果て?」

返しながら黒ウサギの方に目を向ける。

こっちの会話が聞こえてないのか、上機嫌そうに鼻歌を歌いながら歩いている。

「そうだな‥‥、『そらー。ぼくおなか減ったよぉ‥‥。』わるいが、遠慮しておく。一人で行ってくれ。」

ルーが空腹を訴えてきたので、そう応える。

「オッケー。それじゃ任せた。」

あっという間に走り去った。速いな。俺といい勝負になるかもしれない。

それにしても、黒ウサギ。聞こえてないのか? ウサギって聴力良かったと思っていたんだけど、こっちのは違うの?

 

「ジン坊っちゃーン! 新しい方を連れてきましたよー!」

黒ウサギが手を振る先を見ると、十歳前後くらいの、ローブを着た少年がいた。

「お帰り、黒ウサギ。そちらの三人が?」

「はいな、こちらの御四人様が―――」

あっ。やっと気づいたのか。

こちらを振り返り、彫像のように固まった黒ウサギは恐る恐る口を開いた。

「‥‥え、あれ? もう一人いませんでしたっけ? ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から”俺問題児!”ってオーラを放っている殿方が」

すごいな。それだけで十六夜が頭に浮かんだ。

「ああ、十六夜君のこと? 彼なら”ちょっと世界の果てを見に行くぜ!”とか言って駆け出していったわ。まあ。彼の方が知ってると思うわよ?」

俺に話をふらないで欲しかったな。

「‥‥。十六夜なら、あっちの断崖絶壁の方に向かって行った。」

空から見えた断崖絶壁の方を指さしながら言う。

「な、なんで止めてくれなかったんですか!」

呆然としていた黒ウサギは問いただしてきた。

「? 止めた方が良かったのか?」

「当たり前です!」

ああそうだったのか。

「それはごめん。普通に会話してて、黒ウサギが何も言わなかったから良いのかと思ってた。」

頭を下げて謝る。

「い、いえ。気づかずに進んでいった黒ウサギにも非があります。でも、次からはしっかりと教えてくださいヨ?」

「分かった。」

そう応える。

「た、大変です! ”世界の果て”にはギフトゲームのため野放しにされている幻獣が」

「幻獣? 獣?」

反射的に聞く。

「は、はい。ギフトを持った獣を指す言葉で、特に ”世界の果て”付近には強力なギフトを持ったものがいます。出くわせば最後、とても人間では太刀打ち出来ません! 」

「あら、それは残念。もう彼はゲームオーバー?」

「ゲーム参加前にゲームオーバー? ‥‥斬新?」

「冗談言っている場合じゃありません!」

ジンが必死なのは分かるが、十六夜は多分それなりに強い気配がするからあまり重大に思えない。

「はあ‥‥ジン坊っちゃん。申し訳ありませんが、御三人様のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」

ため息をつきながら黒ウサギはそう言った。

「わかった。黒ウサギはどうする?」

「問題児を捕まえに参ります。事のついでに―――”箱庭の貴族”と謳われるこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやります。」

ルーが全身の毛を逆立てる程の怒りを噴出させた黒ウサギは、黒い髪を淡い緋色に一瞬で変えて彫像を駆け上がって行った。

「一刻程で戻ります! 皆さんはゆっくりと箱庭ライフをご堪能ございませ!」

そう言い残し、あっという間に視界から姿を消した。

『あの十六夜って人も怖いけど、あのウサギもこわいよぉ。』

「‥‥あまり、黒ウサギは怒らせたくないな。」

主にルーがビビっちゃうから。狼なのにウサギにビビるってどういう事だろう。

呆然と見送った一同で最初に口を開いたのは飛鳥だ。

「黒ウサギは堪能くださいと言っていたし、お言葉に甘えて先に箱庭に入るとしましょう。」

「え、あ、はい。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします。三人の名前は?」

「久遠飛鳥よ。そこで猫を抱えているのが」

「春日部耀。黒い狼を連れているのが」

「風魔空だ。よろしく。」

『よかったー。狼って分かってもらえた。』

ルーが嬉しそうで良かったよ。

ジンが礼儀正しく自己紹介をしたので、それに倣い、一礼する。

石造りの通路を無抜けると頭上から眩しい光が降り注いだ。見上げてみると、太陽が見えた。

『そら!そら! 太陽がみえるよ!』

「そうだな。天幕の中なのに不思議だな。」

耀と三毛の方も似た会話をしていた。

「箱庭を覆う天幕は内側に入ると不可視になるんですよ。そもそもあの巨大な天幕は太陽の光を直接受けられない種族のために設置されていますから。」

何だろう。その言い方だと、吸血鬼か何かがいるみたいだな。

飛鳥も同じ事を思ったのか、眉を上げて皮肉そうに言った。

「それはなんとも気になる話ね。この都市には吸血鬼でも住んでいるのかしら?」

「え、居ますけど」

あっさりと肯定するジンに飛鳥は複雑そうな表情を浮かべた。

俺もまさか、漫画とかで出てくる吸血鬼が実際にいるとは考えてなかったので、思考が一瞬止まった。

『そら? だいじょうぶ?』

「あ、ああ。心配いらない。」

ルーにそう返し、大きく深呼吸する。

そんなこんなで、飛鳥の提案で近くのカフェテラスに向かう。

席に座ると猫耳を生やした少女が店の奥から飛び出してきた。

「いらっしゃいますかー。御注文はどうしますか?」

「えーと、紅茶を三つと緑茶を一つ。あと軽食にコレとコレ」

『ネコマンマを!』

『ミルク!』

「はいはーい。ティーセット四つにネコマンマ、それにミルクですね。」

飛鳥とジンが不可解そうに首を傾げた。

耀は驚きを浮かべていた。

「やっぱり、その耳は本物か。」

猫耳の少女にそう言う。

「本物ですよー。なんなら触ってみます?」

「いや、遠慮しておくよ。それと、いつまでも油を売っていたら大目玉を食らうと思うぞ?」

「あはは。そうですね。」

猫耳の少女との会話が終わり、少女は鍵尻尾を揺らしながら店内に戻って行った。

「さてと、ってどうした? 三毛猫。」

『おのれ小僧ッ! ワシのナンパの邪魔をした罪は重いぞ‥‥!』

なんか、三毛猫から憎悪の視線を受けてるなと思ったらこの言葉か。

「‥‥三毛猫?」

『お、お嬢! じ、冗談や!』

耀の言葉により霧散したが。

『ねー、そら? ナンパってなぁに?』

「いや、ルー? それは知らなくていいから忘れろ。」

お前はする方じゃなくてされる方だし、あれ? だったら引っかからないように教えておくのが正解か? いや、でも狼だし。

「ちょ、ちょっと待って。貴方達もしかして動物と会話できるの?」

動揺した声で飛鳥が聞いてきたので、耀とともに頷く。

「他にどんな動物と意思疎通が可能ですか?」

「生きているなら誰とでも話は出来る。」

「そうだな。俺もそんな感じだ。」

ジンの質問に答える。

「それは素敵ね。じゃああそこに飛び交う野鳥とも会話が?」

「うん、きっと出来‥‥る? ええと、鳥で話したことがあるのは雀や鷺や不如帰ぐらいだけど‥‥ペンギンがいけたからきっとだいじょ」

「 「ペンギン!?」 」

「う、うん。水族館で知り合った。他にもイルカ達と友達」

耀の言葉に驚いてた飛鳥とジンはこっちに顔を向けてきた。

「俺も会話は出来る‥‥と思う。ちなみに俺が話したことがあるのは雀とカラス、鷹に鷲くらいだな。」

そう答えながら、野鳥達を眺める。

その後のジンの説明によると、この箱庭にいる幻獣達と意思疎通をするのは難しいらしく、同じ種かそれなりのギフトが無ければ不可能だという。

「そう‥‥春日部さんと風魔君は素敵な力があるのね。羨ましいわ。」

笑いかけられ困ったように頭をかく耀。対照的に憂鬱そうな飛鳥に言っておく。

「俺のことは空で良い。苗字で呼ばれるのは苦手だからな。」

「そう。分かったわ。なら私の事も飛鳥で良いわ。春日部さんもそう呼んでくれるかしら?」

「オッケー。よろしく飛鳥。」

「よろしく。それで飛鳥はどんな力を持っているの?」

「私? 私の力は‥‥」

飛鳥が話そうとした時、邪魔が入った。

「おんやぁ? 誰かと思えば東区画の最底辺コミュ”名無しの権兵衛”のリーダー、ジン君じゃないですか。今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないんですか?」

品の無い声の方に目をやると、二メートル越えの巨体をピチピチのタキシードで包んだ変な男がいた。

(何だコイツ? 虎みたいだが‥‥)

いきなり出てきた男を怪訝な眼で見る。

「僕らのコミュニティは”ノーネーム”です。”フォレス・ガロ”のガルド=ガスパー」

「黙れ、この名無しめ。聞けば新しい人材を呼び寄せたらしいじゃないか。コミュニティの誇りである名と旗印を奪われてよくも未練がましくコミュニティを存続させるなどできたものだ。―――そう思わないかい、お嬢様方」

ガルドと呼ばれたそいつは許可なしに空席に腰を下ろし、飛鳥と耀と俺に愛想笑いを向けていた。

俺はその愛想笑いを受け流し、飛鳥と耀はガルドに冷ややかな態度でいた。

「失礼ですけど、同席を求めるならばまずは氏名を名乗ったのちに一言添えるのが礼儀ではないのかしら?」

「おっと失礼。私は箱庭上層に陣取るコミュニティ、”六百六十六の獣”の傘下である「烏合の衆の」コミュニティのリーダーをしている、ってマテやゴラァ!! 誰が烏合の衆だ小僧オォ!!!」

ジンに横槍を入れられてガルドは怒鳴り声とともに変化した。まるで肉食獣のような顔になり、怒りを浮かべた瞳をジンに向けた。

「口慎めや小僧ォ‥‥紳士で通っている俺にも聞き逃せねえ言葉はあるんだぜ‥‥?」

「森の守護者だった頃の貴方なら相応に礼儀で返していたでしょうが、今の貴方はこの2105380外門付近を荒らす獣にしか見えません。」

「ハッ、そういう貴様は過去の栄華に縋る亡霊と変わらんだろうがッ。自分のコミュニティがどういう状況に置かれてんのか理解できてんのかい?」

「ハイ、ちょっとストップ。」

嫌悪な二人を遮るように飛鳥は手を上げた。

「事情はよくわからないけど、貴方達二人の仲が悪いことは承知したわ。それを踏まえたうえで質問したいのだけど―――」

そう言い、飛鳥は鋭い視線をジンに向けた。

「ねえ、ジン君。ガルドさんが指摘している、私達のコミュニティが置かれている状況‥‥というものを説明していただける?」

「そ、それは」

ジンは言葉に詰まっていた。飛鳥はその動揺を逃さずに畳み掛ける。

「貴方は自分のことをコミュニティのリーダーと名乗ったわ。なら黒ウサギと同様に、新たな同士として呼び出した私達にコミュニティとはどういうものなのかを説明する義務があるはずよ。違うかしら?」

追求され何も言えないジンを見て、怒りがおさまったのか、ガルドは獣の顔をヒトに戻した。

「レディ、貴女の言う通りだ。コミュニティの長として新たな同士に箱庭の世界のルールを教えるのは当然の義務。しかし彼はそれをしたがらないでしょう。よろしければ”フォレス・ガロ”のリーダーであるこの私が、コミュニティの重要性と小僧―――ではなく、ジン=ラッセル率いる”ノーネーム”のコミュニティを客観的に説明させていただきますが」

飛鳥は訝しげにジンを見たあと、

「‥‥そうね。お願いするわ」

ガルドに向き直り、そう応えた。

〜説明カット〜

説明が終わり、カップ片手に話を反復。

ようは、”ノーネーム”っていうジンが率いるコミュニティは”魔王”って奴のせいで崩壊手前にされ、コミュニティというものに必要な名前と旗を奪われた。

そんな感じだろう。

そして今は、

「それを踏まえた上で、貴方達にご提案があります。もしかしてよろしければ黒ウサギ共々、私のコミュニティに来ませんか?」

勧誘を受けている。

「な、何を言い出すんですガルド=ガスパー!?」

ジンは机を叩いて講義した。

だがガルドは気にせずに話を続けた。

「どうですかジェントル達。返事はすぐにとは言いません。コミュニティに属さずとも貴方達には箱庭で三十日間の自由が約束されています。一度、自分達を呼び出したコミュニティと私達”フォレス・ガロ”のコミュニティを視察し、充分に検討してか「いや。結構だ。」」

言葉を遮りそう言うと、ガルドとジンは、は? とこっちの顔を窺った。

「俺は、何処だろうと構わないからな。気分でジンの方に入るよ。二人はどうする?」

「そうね‥‥。なら私もジン君のところにしようかしら? 春日部さんは?」

「私はこの世界に友達を作りに来ただけだからどこでもいい。‥‥空がいるならどこでも」

? 最後の方がよく聞こえなかったが、まあたぶん重大な内容ではないだろう。

しかし、獣並みの聴覚の俺が聞き取れないとは、よほどの小声だったのか。

「じゃあ、私が友達一号に立候補していいかしら?」

「なら、俺は友達二号かな?」

「‥‥うん。空も飛鳥も私が知っている人達とは違うから大丈夫。」

耀は小さく頷きながら応えた。

『よかったなお嬢‥‥お嬢に二人も友達ができてワシも涙が出るほど嬉しいわ』

ホロリと三毛猫は涙を浮かべていた。

一方、そっちのけにされたガルドは顔を引き攣らせた後、大きく咳払いをした。

「失礼ですが、りゆ「まだいたのか? まあいいや。質問したいことがあるからな。」‥‥何でしょうか? ジェントル?」

再び言葉を遮られ、怒りに肩を震わせたが無理やり作った笑みを浮かべるガルド。

「お前の話の中に、ここら一帯のコミュニティに”両者合意”で勝負を挑んで勝ったらしいけどさ。少し俺が聞いた内容と違うんだよね。―――なあ、ジン。ゲームでコミュニティをチップにするのは、よくあることか?」

「や、やむおえない状況なら稀に。でも、それはコミュニティの存続を賭けたかなりのレアケースです。」

いつの間にか、近くで聞いていた猫耳の店員も頷いた。

ガルドの方を見れば、焦りの色をその顔に浮かべていた。

「あら? どこへ行くのかしら? まだ質問は終わってないわ。 〈座りなさい〉」

飛鳥の言葉により、立ち上がろうとしていたガルドの身体が椅子に勢い良く降ろされた。

「!? なっ‥‥!」

訳がわからず混乱しているガルドに聞く。がその前にしらばっくれないように、飛鳥に頼む。

「飛鳥。ちゃんと質問に答えてくれるよう、お願い、してくれないか。」

「ええ。それじゃ、今からする質問に〈偽りなく答えなさい。〉」

「それじゃあ、何故、お前はそんなレアケースを続けられたんだ?」

「そ、それは相手の、コミュニティから女子供を攫い脅迫したからだ。」

人質か。いかにも小物がやりそうなことだな。だが、正直楽な方法だ。人質を盾にゲームを受けさせ、吸収。従っていれば人質に手は出さないとでも言えば従順に動いてくれるな。

「‥‥それでその人質はどこに幽閉してる?」

助け出して返してやれば、ガルドのコミュニティに従う連中も居なくなる。正義の味方には興味無いけど、恩を売っておいても良いだろう。

そう楽観的に考えていたが、次のガルドの返答に馬鹿な考えだと思い知らされた。

「もう殺した。」

「‥‥は?」

場の空気が凍りつくのが感じられた。俺も一瞬、耳を疑った。

「初めてガキ共を連れてきた日、泣き声が頭にきて思わず殺した。それ以降は自重しようと思ってたが、父が恋しい母が恋しいと泣くのでやっぱりイライラして殺した。それ以降、連れてきたガキはまとめてその日に始末することにした。けど身内のコミュニティの人間を殺せば組織に亀裂が入る。始末したガキの遺体は証拠が残らないように腹心の部下が食「〈黙れ〉」」

ガチン!!と勢い良く口が閉ざされた。飛鳥がそう言ったからだ。

これ以上コイツの言葉を聞いていたら、その首をへし折っていたかもしれない。その前に黙らせてもらえてよかったよ。

「素晴らしいわ。ここまで絵に書いたような外道とはそうそう出会えなくてよ。流石は人外魔境の箱庭の世界といったところかしら‥‥ねえジン君?」

冷ややかな、ここにはそんな奴だらけなのか?と問いかける視線を受け、ジンは慌てて否定の言葉を言う。

「彼のような悪党は箱庭でもそうそういません。」

「そう? それは残念。―――ところで、さっきの証言で箱庭の法がこの外道を裁くことはできるのかしら?」

「厳しいです。吸収したコミュニティから人質をとったり、身内の仲間を殺すのはもちろん違法ですが‥‥裁かれるまでに彼が箱庭の外に逃げ出してしまえば、それまでです。」

ジンはそう応えたが、そんなのでは満足できない。

「そう。なら仕方がないわ。」

飛鳥が指を鳴らすと、どうやら身体が自由になったらしいガルドがテーブルを砕きながら、

「こ‥‥この小娘がァァァァァァ!!」

体を完全に獣に変化させた。その姿は虎というべき姿だ。

「テメェ、どういうつもりか知らねえが‥‥俺の上に誰が居るか分かってんだろうなァ!? 箱庭第六六六外門を守る魔王が俺の後見人ッ!」

このままじゃ飛鳥が危ないので、立ち上がり片手でガルドの頭をテーブルに叩きつける。

「ギッ‥‥!?」

まさか小僧一人に片手で押さえ付けられるとは思ってもいなかったであろうガルドが目を剥いていた。

「飛鳥。続けてくれ。」

「ええ。分かったわ。―――さて、ガルドさん。貴方の上に誰が居ようと私は気にしません。それはきっとジン君も同じでしょう。だって彼の最終目標は、コミュニティを潰した”打倒魔王”だもの。」

 

〜ガルドside〜

(何だ? この小僧。)

片腕一本で自分をテーブルに押さえつけている黒髪の少年に疑問と驚異を感じていた。

そして、そのことにより僅かに冷静になった頭が理解をした。

徐々に、自分の獣としての部分がその少年に服従しかかっているということに。人と悪魔の霊格が無ければ地べたに這いつくばり、惨めに許しを乞いていたと。

(何とか‥‥しなければ‥‥だが)

早くこの状況から無抜け出さなければ、そう考えていたガルドは目の前の少女の言った言葉に無意識に頷いていた。

 

〜sideアウト〜

 

ガルドが飛鳥の要求、ギフトゲームを了承し、慌てて逃げ出すのを確認して、それから猫耳の店員に体を向ける。

「ええと‥‥、騒いだ上に店のものを壊してしまってわるかった。」

ヒビが入った椅子と板が粉砕されたテーブルに目を向け、謝罪の言葉を言う。

「べ、別に構いませんよ! ウチのコミュニティのボスもあの連中のやりたい放題には腹を立てていましたし。」

「そうだとしても、一応迷惑を掛けたし。これの弁償はいくらくらいだ?」

テーブルと椅子のワンセットの弁償費を聞く。

「これなら銀貨六枚ですが、別に良いですよ。」

遠慮されてもなぁ。壊してしまったのは事実だし。

「銀貨か‥‥。こっちの相場は分からないが、これで足りるか?」

そう言いながら、腰のポーチから布袋を取り出してテーブルの上に置く。

「何ですか? これは‥‥っ!?」

袋の中をのぞき込んだジンが絶句した。

「ほ、宝石の山!?」

続けて中を見た猫耳の店員も目を丸くしながらつぶやいた。

「そうだな。今手元にあるので釣合いそうなのはそれだと思うんだけど、足りないのか?」

だとしたら後は‥‥貯めておいた希少金属ぐらいかな。

「じゅ、十分すぎますよ! これの半分でもあればお釣りが出るくらいです。」

ああそうなの? だったら良かったよ。

「なら、それを受け取ってもらえない? こっちにも譲れないとこがあるわけだから。」

そう言うと、はじめは遠慮していたが、最終的に受け取ってもらえた。

これで良しと。

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