獣憑きの少年も異世界に来るそうですよ?   作:モグモグラ

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第3話

「な、なんであの短時間に”フォレス・ガロ”のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか!?」「しかもゲームの日取りは明日!?」「それも敵のテリトリー内で戦うなんて!」「準備している時間もお金もありません!」「一体どういうつもりがあってのことです!」「聞いているのですか四人とも!!」

合流した黒ウサギは話を聞いた途端、説教し始めた。

「「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」」

「黙らっしゃい!!!」

スパーン!とハリセンで叩かれた。

「別にいいじゃねえか。見境なく選んで喧嘩売ったわけじゃないんだから許してやれよ。」

その後も続いた説教が止めてくれたのは十六夜、なんだけどさ。ニヤニヤしてたし、俺らの叱られてるのを見て楽しんでない?

とにかく説教が終わったのは助かった。流石にそろそろ正座してるのも限界が近い。

立ち上がって軽く足首を回して血流を良くする。

『そらー。だいじょうぶ?』

「大丈夫だよ。」

隣で見ていたルーに応える。

その後の話は、ガルドとのゲームに十六夜は不参加だという。他人が売ったゲームに手を出す気はないそうだ。理解は出来る。

 

 

説教をして失った気力が回復したっぽい黒ウサギは立ち上がりながら、横に置いていた木の苗を大事そうに抱え上げた。

「そろそろ行きましょうか。本当は皆さんを歓迎する為に素敵なお店を予約して色々とセッティングしていたのですけれども‥‥不慮の事故続きで、今日はお流れになってしまいました。また後日、きちんと歓迎を」

「いいわよ、無理しなくて。私達のコミュニティってそれはもう崖っぷちなんでしょう?」

飛鳥の言葉に黒ウサギは驚き、ジンを見た。そしてジンの申し訳なさそうな顔を見て知られていると悟ったようだ。

「も、申し訳ございません。皆さんを騙すのは気が引けたのですが‥‥黒ウサギ達も必死だったのです。」

恥ずかしそうにそう言った。

「もういいわ。私は組織の水準なんてどうでもよかったもの。春日部さんと空君はどう?」

恐る恐る、俺と耀の顔を伺う黒ウサギに応える。

「俺も飛鳥と同じかな。」

応えて耀に目を向ける。

「私も怒ってない。そもそもコミュニティがどうの、というのは別にどうでも‥‥あ、けど」

けど?

思い出したように迷いながら呟く耀にジンが身を乗り出しながら聞く。

「どうぞ気兼ねなく聞いてください。僕らに出来る事なら最低限の用意をさせてもらいます。」

「そ、そんな大それた物じゃないよ。ただ私は‥‥毎日三食お風呂付きの寝床があればいいな、と思っただけだから」

耀の言葉にジンが固まった。

(水を確保するのも困難な程に追い込まれてるのか。)

なら水を入手する苦労は言わずもなが。

「それなら大丈夫です! 十六夜さんがこんな大きな水樹の苗を手に入れてくれましたから! これで水を買う必要もなくなりますし、水路を復活させることもできます♪」

慌てて取り消そうとした耀を遮るように、木の苗を持ち上げて黒ウサギが言った。

「私達の国では水が豊富だったから毎日のように入れたけれど、場所が変われば文化も違うものね。今日は理不尽に湖に投げ出されたから、お風呂には絶対入りたかったところよ。」

「それには同意だぜ。あんな手荒い招待は二度と御免だ。」

「右に同意かな。」

「以下同文」

四人で責める視線を黒ウサギに向ける。

「あう‥‥そ、それは黒ウサギの責任外の事ですよ‥‥」

怖気つく黒ウサギと隣で苦笑するジン。

「あはは‥‥それじゃあ今日はコミュニティへ帰る?」

「あ、ジン坊っちゃんは先にお帰りください。ギフトゲームが明日なら”サウザントアイズ”に皆さんのギフト鑑定をお願いしないと。この水樹の事もありますし」

サウザント‥‥アイズ? ”千の瞳”?

「”サウザントアイズ”? コミュニティの名前か?」

「Yes。”サウザントアイズ”は特殊な”瞳”のギフトを持つ者達の群体コミュニティ。箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし。」

へえー。そうなのか。

「ギフトの鑑定って?」

「勿論、ギフトの秘めた力や起源などを鑑定する事デス。自分の力の正しい形を把握していた方が、引き出せる力はより大きくなります。皆さんも自分の力の出処は気になるでしょう?」

‥‥力の出処‥‥ね。気にならないと言ったら嘘になるけど知りたいという程でも無いかな?

 

 

”サウザントアイズ”に向かう道中、街路樹を見ると桃色の花を散らしていた。

「桜の木‥‥ではないわよね? 花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないもの」

「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合いの入った桜が残っていてもおかしくないだろ。」

「春になったばかりと記憶してたけど?」

「‥‥? 今は秋だったと思うけど」

ん?と話が噛み合わず互いに顔を見合わせて首を傾げる。

「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所がある筈ですよ。」

何そのパラレルワールド。

「へぇ? パラレルワールドってやつか?」

あっ。十六夜も同じように考えてたのか。

「近しいですね。正しくは立体交差並行世界論というものなのですけども‥‥今からコレの説明を始めますと一日二日では説明しきれないので、またの機会ということに。」

曖昧に濁した黒ウサギは立ち止まって振り返った。着いたみたいだ。

蒼い生地に向かい合う二人の女神像の旗を掲げた商店を見上げる。

ここが”サウザントアイズ”みたいだな。

目を動かすと、看板を下げようとしている割烹着の女性がいた。この人は店員なのかな?

「まっ「待ったなしです御客様。うちは時間外営業はやっていません。」」

黒ウサギがストップを掛けようとして、阻止されていた。ここに用があるのは間違いないので、女性店員の横を通り抜ける。

「お邪魔しまーす。」

『おじゃましまーす。』

一声掛けてから店内にはい

「いつ入店を許可しましたか?」

バレました。やっぱり黙って入ったら良かったかな。

「冗談なんだけどなー。」

「そんな笑えない冗談はいりません。」

冗談通じなさそうだな。おとなしく戻ろう。

元の位置に戻った時、爆走する音がしたので黒ウサギの前から横にズレる。

「いぃぃぃやほおぉぉぉぉぉ!」

大声をあげながら爆走してきた和服白髪少女は、勢いよく黒ウサギにフライングボディーアタックをかまし、黒ウサギもろとも水路に落ちた。

『‥‥。そら、なにあれ?』

「何だろうな‥‥。」

ボチャンという水音を聞きながらつぶやく。

危機回避してなかったら跳ね飛ばされてそう。

「‥‥おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか? なら俺も別バージョンで是非」

「ありません」

「なんなら有料でも」

「やりません」

十六夜‥‥。真剣な表情で何を言ってるの?

それはそうとして黒ウサギは大丈夫かなぁ。

「し、白夜叉様!? どうして貴女がこんな下層に!?」

「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろに! フフ、フホホフホホ! やっぱりウサギは触り心地が違うのう! ほれ、ここが良いかここが良いか!」

‥‥うわぁ。ノーコメントで。

「し、白夜叉様! ちょ、ちょっと離れてください!」

あっ。少女を引き剥がした。それで、こっちに投げて来た。

「このコースなら十六夜の方か。」

「ほい。」

こっちに足でパスしてきた。やめて欲しい。

「‥‥っと。」

受け止めておこう。ちゃんと手で。

「ふう。恩に着るぞ。‥‥だがそこのおんし! 飛んできた初対面の美少女を足で受け流すとは何様だ!」

地面に降ろすと、少女は礼を言ってきた後、十六夜にそう詰め寄った。

「十六夜様だぜ。以後よろしく和装ロリ。」

笑いながら自己紹介する十六夜。

和装ロリって、まあその通りだけどさ。

「ちなみに俺は空。」

一応自己紹介する。

「貴女はこの店の人?」

呆気にとられていた飛鳥が思い出したように少女‥‥白夜叉に話しかけた。

「おお、そうだとも。この”サウザントアイズ”の幹部様で白夜叉様だよご令嬢。仕事の依頼ならおんしのその年齢のわりに発育のいい胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ。」

‥‥変態?

「おう。今失礼な事考えておったろ?」

「気の所為だよ。きっと。」

誤魔化しておく。

「うう‥‥まさか私まで濡れる事になるなんて」

水路から上がってきた黒ウサギが服を絞りながら呟いていた。

「因果応報‥‥かな。」

「俺らを濡らしたからな。」

『お嬢と小僧の言う通りや。』

『いんがおーほー。』

返すと黒ウサギは悲しげに服を絞る。

「ふふん。お前達が黒ウサギの新しい同士か。異世界の人間が私の元に来たという事は‥‥遂に黒ウサギが私のペットに」

こっちを見回してニヤリと笑ったと思えば、何を言ってるのこの少女?

「なりません! どういう起承転結があってそんなことになるんですか!」

ツッコミを入れる黒ウサギ。白夜叉は笑っていた。

「まあいい。話があるなら店で聞こう。」

「よろしいのですか? 白夜叉様。」

「よいよい。面白そうなやつらが来たからの。」

面白そうか。これは褒められてるの?

 

正面玄関を通り和風の中庭を進みに和室に案内された。

上座に腰をおろした白夜叉の着物はいつの間にか乾いていた。どんな原理だろう。

白夜叉から黒ウサギとの関係や箱庭についての話を聞いた。

図で描かれた箱庭を見た問題児達の感想としては、

「‥‥超巨大タマネギ?」

「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」

「そうだな。どちらかといえばバームクーヘンだ。」

「‥‥バームクーヘン食べたいな。」

『バームクーヘン食べたーい。』

この感想を聞いた黒ウサギは肩を落とし、白夜叉は笑っていた。

お腹減ったなぁー。思えばつまむ程度にしか食べ物食べてないな。

そして話は十六夜が取ってきたらしい、黒ウサギの持ってた木の苗についてになった。

水樹の苗を持ってたという蛇に神格というものを与えたのが白夜叉で東側の”階層支配者”でここら一体での最強だと知った途端、三人の目が輝いた。三人が勝負を挑むと白夜叉は高らかに笑い声をあげた。

「抜け目ない童達だ。私にギフトゲームを挑むと?」

あれ? もしかして俺もそれに含まれてるの?

「え? ちょ、ちょっと白夜叉様!?」

「私も遊び相手には常に飢えているからな。ちょうどよい。」

ノリがいいんだな。それで、本当に俺も含まれてない?

「しかし、ゲームの前に一つ確認しておく事がある。」

「なんだ?」

白夜叉は着物の裾から表にもあった向かい合う女神像が描かれたカードを取り出した。

「おんしらが望むのは”挑戦”か――――もしくは”決闘”か?」

壮絶な笑みで白夜叉がそう言うと、爆発的な変化が起きた。

「!」

周囲を見回して見れば和室なんて無く、見えるのは雪原と凍る湖畔、水平に廻る太陽だ。

 

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