ギフトゲームの内容に関しては、面倒‥‥もとい、原作のものに主人公の名前が追加された程度なのでカットしました。
羊皮紙を読み終える。
「ガルドの身をクリア条件に‥‥‥‥指定武具で打倒!?」
「こ、これはまずいです!」
読み終えた途端、ジンと黒ウサギが悲鳴のような声をあげた。
「このゲームはそんなに危険なの?」
二人に飛鳥は心配そうに聞く。
「いえ、ゲームそのものは単純です。問題はこのルールです。このルールでは飛鳥さんのギフトで彼を操る事も、耀さんのギフトで傷つける事も出来ない事になります‥‥‥‥!」
あれ?俺は?忘れられてない?
「‥‥‥‥どういうこと?」
「”恩恵”ではなく”契約”によってその身を守っているのです。これでは神格でも手が出せません! 彼は自分の命をクリア条件に組み込む事で、御三人の力を克服したのです!」
ああ、良かった。黒ウサギには忘れられてなかった。
「すいません、僕の落ち度でした。初めに”契約書類”を作った時にルールもその場で決めておけばよかったのに‥‥‥‥!」
聞けばジンはギフトゲームに参加したのはコレが初めてらしく、そのせいで怠ってしまった事があるということか。
「敵は命がけで5分に持ち込んだってことか。観客にしてみれば面白くていいけどな。」
十六夜。ニヤニヤ笑いながら、そんな気軽に言わないで欲しいなー。
「気軽に言ってくれるわね‥‥‥‥条件はかなり厳しいわよ。指定武具が何かも書かれていないし、このまま戦えば厳しいかもしれない。」
厳しい表情で”契約書類 ”を覗き込む飛鳥。
(んー。これはちょっと厄介かな。)嫌な予感がするからな。結構俺ってカンとか鋭いし、今まで直感を外したことがないからな。
『ヘンな匂いがするよー。』
「ん。そうだよな。これは血だな。」
さっきからする匂いにルーと話し合う。
昨日、ガルドからしていたものよりも濃い血の臭いを感じ取っていた。
「‥‥ジンは”鬼化”とか言っていたが血の臭いで鬼か‥‥。」
『きゅーけつき?』
「吸血鬼な。」変なところで伸ばすなよ。
「と、なると。指定武具は、関連のあるものか。」吸血鬼‥‥関連のあるもの‥‥。
「‥‥空? 行くよ?」
「ん? ああ分かった。」
呼ばれて思考を中断して門の前に移動する。ルーは留守番だ。
あと極力九尾を使わないでおこう。九尾の能力は使うと体力を使う事が判明したし、なるべく温存しておきたい。
♦
門をくぐり、閉ざされると木々が門を絡めるように退路を塞いだ。逃げは許されませんか。そうですか。
目を前に向ける。光を遮るように立ち並ぶ木々に俺はふと、育った森を思い出した。もっとも、あの森には人工物は無かったが。
巨大な根により人が通れる道が無くなった道をすいすいと歩きながら周囲に聴覚と嗅覚を向けておく。ここまで視界が遮られた環境じゃ視覚よりは使える。
「「大丈夫(だ)。近くには誰もいない。匂いで分かる(よ)。」」
おっと、耀とハモった。
「空も分かるの?」
「当然だよ。五感と直感は獣並みかそれ以上ある自覚もあるし。」その上、森の中で生きてきたんだ。森の中なら絶対に間違わない自身がある。
「詳しい位置は分かりますか?」
ジンの問に耀は首を横に振った。
「それは分からない。でも風下にいるのに匂いがないのだから、何処かの家に潜んでる可能性は高いと思う。」
「俺も同意見だ。だが今はガルドよりも、指定武具を探すのを優先すべきだろう。」
「そうね。それじゃまずは外から探しましょ。」
方針は決まったので行動を開始する。その際の役割としては、五感の優れている俺と耀は周囲の警戒。飛鳥とジンが武器を探す。
樹に飛び乗って警戒をする。
警戒しながら考えをまとめる。
(吸血鬼ってことは、無難に銀製の武器かな?形状は‥‥針サイズとかなら積むぞ。)流石にそれは無いか。‥‥無いよな?
「‥‥駄目ね。ヒントらしいヒントは見あたらないし、武器らしい武器も見つからないわ。」
「それなんだけど、もしかしたらガルドが守っているんじゃないか?」
「どうして?」
三人が視線を向けてくる。
「考えてみなよ。自分を倒す武器をそこらへんに投げておくと思うか?」
「‥‥それは、そうですね。そんなマヌケな事 普通はしませんね。」
「自分に危険なものは自分で守ってた方が安全だろう。それが理由だよ。」
「そうだとするなら気が乗らないけど、方針を変えましょう。まずは春日部さんと空君の力でガルドを」
「それはもう見つけてる。」
「でかい屋敷‥‥本拠かな? そこに影が見えた。」
飛鳥の言葉を遮りつつ答える。
樹から飛び降りた耀の瞳を見ると、猛禽類のような金の瞳になっていた。多分鷹が何かの視力を使っているんだろう。
その耀の隣に音を立てずに降り立つ。
「とりあえず本拠の近くまで行ってみよう。‥‥ジン? おーい。」
武器はガルドが持ってるだろうし、そのガルドは本拠に篭っている。なら行くしかないのでそう提案する。そして移動しようとし、ジンが何か考え込んでいたので声を掛ける。
「‥‥‥‥あ! はい、何でしょうか?」
いやいや何でしょうか、じゃないよ。
「本拠に近づく。OK?」
「はい。」
まるで誰かに命じられたかのように絡み合い、道を侵食する木々に苦戦する飛鳥とジンに手を貸しつつ本拠前に着く。
「見て。館まで呑みこまれてるわよ。」
本拠は無残な姿になっていた。虎の紋様の施された扉は取り払われ、転がっているし窓は砕かれている。豪奢な外観も塗装もろともツタに蝕まれている。
「ガルドは二階に居た。入っても大丈夫。」
それは俺も確認してたので頷く。
中に入ると内装も酷いものだった。家具は打ち倒され、あちこちにツタが侵食している。
ここまで来ると、疑問が生じ始めた。
なぜ、ガルドはこんな舞台を用意したのか。ここまで資金を掛けたであろう館を壊してまで作る必要はあったのか、また、森というあちらに有利な環境であるにも関わらず罠も奇襲もしてこなかったのは何故か、と。
三人も同じ事を考えたようで、先程とは違う緊張を顔に浮かべた。
緊張感の中、天井越しに二階を見上げる。気配は動いてなかったが、この館に入るあたりからこちらに気づいているようだ。待ち構えているのだろう。
「‥‥二階に上がるが、その前に役割を分担しておこう。誰かに退路を確保していてもらいたい。」何が起きるか予想が出来ないので、逃げ道をはっきりとしておきたい。
そう言うと三人は顔を見合わせた。
「ジン君。貴方は此処で待ってなさい。」
「ど、どうしてですか? 僕だってギフトを持ってます。足でまといには」
「そうじゃないわ。上で何が起こるか分からないからよ。だからいざという時の為に貴方にはこの退路を守って欲しいの。」
理にかなった言葉だ。ジンもそれは理解しているようで不満げではあったが渋々と従った。
個人的には飛鳥にも待機していて欲しかったが、まあ二人くらいなら守れそうだしいいかな? 耀に関しては負傷さえしなければ自力で逃げられそうだし。
耀と飛鳥と簡単な作戦会議をしてから階段を登る。
ガルドには気づかれているので普通に階段を上がり、扉の前に立つ。
両脇に立つ飛鳥と耀に目線をくれてから足で扉を蹴り壊す。扉の向こうにガルドがいたらガルドもろとも吹き飛ばす感じで。
木片が舞う中、部屋に入る。
「ギ‥‥‥‥」
「―――‥‥‥‥GEEEEEYAAAAAaaaaa!!!」
中にいた虎の怪物、あっ、こいつガルドだ。ガルドは白銀の十字剣を背にするように立ちふさがっていた。
♦
〜ルーside〜
門前で待っていたルーの耳に獣の咆哮が届く。
鳥たちが一斉に飛び立つ音を聞きながら、閉じていた目を開けた。
『(んー。今のはあのガルドって虎のかなー?)』一瞬、自分の主であり兄のような存在の少年を頭に浮かべたがすぐに除外する。
『まー、そらが吠えたにしては覇気も無いものだもんね。』
普段滅多に本気では怒らない空が本気で怒った時の恐怖を思い出し、一匹で震えていたルーは、目線を横にいる十六夜と黒ウサギに向けた。
『(十六夜って人がボケて黒ウサギがツッコミって、まんま漫才だねー。)』
ある意味では自分と空も似た関係だったと小さく笑い声をあげるルー。
『(まあそらならどうにかするしだいじょぶだよね。)』
あまり心配していない感じでつぶやき、ルーは大きくあくびをすると再び目を閉じた。
信頼というより、確固たる自信のある言葉だった。
〜sideエンド〜
常人には目に留まらない突進を仕掛けるガルドから二人を守るように受け止める。
(! ‥‥思ったよりも力が強いな。)このままでは押し負けそうなので力の流れを受け流す。
「っ、逃げろ!」どうせダメージにはならないけど、蹴り飛ばしてガルドを離して二人に叫ぶ。
その言葉に我に返った飛鳥は部屋の外に飛び出た。
飛鳥が階段を守っていたジンを掴み階段を飛び降りる。
「おっと? お前の相手はこっちだよ。」
飛鳥とジンを狙おうとしたガルドの前に立ちはだかる。打ち合わせ通りなら俺と耀が気を引いている間に飛鳥が武器を回収だったが、耀がやってくれているので俺はギリギリまでガルドの注意を引く。
「《影鎖》」
とは言っても、獣と人の身の俺では力で負けるので一時的に動きを止めさせてもらう。
取り出した御札に霊力を込める。
「GEEEEEYAAAAAaaaaa!?」
ガルドの足元の影が蠢き、ガルドの体に絡み動きを拘束した。だが、あまり長くは持ちそうにない。耀が武器を回収したら拘束が解ける前にケリをつけるか逃げるかだな。
耀の方に目をやる。ちょうど銀の十字剣を手に取っていた。
「GEEEEEYAAAAAaaa!!」
拘束が解かれたか。なら、一旦逃げ‥‥、って
「耀っ!無理だ!」
耀が十字剣を握り締めて、拘束の解けたガルドに斬りかかろうとしていたので叫んで止めようとしたが、遅かった。
「GEEYAAAaaa!!!」
素人の剥き出しの殺気を感じ取ったガルドは銀剣を軽々と躱し、丸太程ある腕を耀に叩き付けようとした。
「―――っ!!」
床を踏み砕きながら耀の元に走り、突き飛ばす。
「空!?」
突き飛ばされ、すぐさま体勢を立て直した耀が驚いた目でこっちを見て来た。それを横目にガルドの一撃を受ける。
「‥‥ッ!」吹き飛ばされ、壁に激突し壁を崩壊させる。
(‥‥痛い‥‥な。多分腕折れてるな。)後、額から出血してる。
怪我自体は慣れてるから分析はできるが‥‥。動き回るのは危険だな。折れた方も利き腕の左腕だし。
フラフラと立ち上がる。ボロボロと壁の破片を落としながら立ち上がり、ガルドを見据える。
「外に飛び出ろ!」
耀に叫びながら、手の中に忍ばせていたものをガルド目掛けて投げる。
「GEEEEEYAAAAAaaa!!!」
反射的にその物体、煙玉を破壊して周囲に煙をばらまいてくれた。もちろん、ただの煙玉では無い。
「‥‥GEEYAAAAAaaaaa!?」
唐辛子の粉を吸い込んで悶絶するガルドの悲鳴をバックに窓から飛び降りた耀に続いて外に飛び出る。
♦
匂いを追って飛鳥とジンと合流する。
「そ、空君! 大丈夫なの!?」
俺の腕と頭からの出血を見て悲鳴のような声をあげる飛鳥に答える。
「大丈夫‥‥ではないな。無茶しすぎた。」
答え、木の幹に寄りかかる。耀の方に目を向けると、耀は銀剣を抱えたまま所在なさげに立っていた。
「‥‥別に、気にする必要はない、と言いたいが俺じゃなければ死んでいたかもしれない。」
止血剤をポーチから取り出しながら、耀の行動を咎める。
「‥‥ごめん。」
頭を下げる耀。
「死ななかっただけマシだから良いよ。だけど」
そう答え、止血剤のジェルを額の傷に塗る。
「今度からは軽率な行動を控えてくれ。これは命のやり取りだからな。」
折れた腕をどうしようかと考える。適当な枝でも折って‥‥いや、脈を打ってる枝を折る気にはなれないな。正直キモい。
とりあえず放置しておく事にする。
「さてと‥‥。どうしようか?」
身体能力も何もかもこっちは負けてるんだ。唐辛子で嗅覚と視覚は潰せたとしても、聴覚が残ってるしな。
「あっ。そうだ。」
「何か思いついたんですか?」
「うんまあ、実験感覚だけど少し銀剣貸して。」
耀から銀剣を貰う。
「よし、やってみるか。」
受け取り、九尾の力を少し出す。九尾の妖力が伝い、銀剣に流れ込み蒼い炎となる。だが、暑さは無い。
やがて炎が収まると白銀に僅かに蒼の混ざった剣が一つ。
「”蒼炎の聖十字剣”か。まあまあの出来だな。」
ついでに鞘も作ってそこにしまいつつ、剣を飛鳥の方に向ける。
「飛鳥。使いなよ。」
そう言って渡すと、受け取った。
「! これは?」
持った瞬間、体の変化に驚く飛鳥に説明する。
「身体能力強化の加護を付けた。それと、多分その剣は飛鳥のギフトと相性はいいはずだよ。」
飛鳥のギフトは、”支配”。それは生物だけでなく物にも働く。十字剣に元々付加された退魔に加えて、九尾による破邪の力を増幅させるはずだ。
「それじゃ、悪いけど少し休む。」
そう言い残し、幹に寄りかかるように座り込む。必要以上に体力を使わないように目を閉じ、意識を手放す。
〜飛鳥side〜
空が「休む。」と言って糸の切れた人形の様になった時に焦ったが、ただ眠っているだけと分かり、安堵した耀を見た後、空から渡された十字剣を見つめた飛鳥は決心したように立ち上がる。
「春日部さんとジン君はここで空君の事を見てて。今からあの虎を退治してくるわ。」
「あ、飛鳥さん!? 駄目です、一人じゃ無理です!」
「飛鳥! 私も」
慌てて止めようとする二人に飛鳥は幾分冷静な声で返した。
「大丈夫よ。どんなに強くても知性の無い獣に負けないわ。―――それに、空君が私にこの剣を渡したのってそう言う事じゃないかしら?」
自分一人でも倒せると判断して空が渡した。そう飛鳥は言った。
「十分で決着をつけるわ。」
そう言うと飛鳥は屋敷の方角へ歩いて行った。
それから飛鳥の言葉通り、十分後木々は一斉に霧散した。