獣憑きの少年も異世界に来るそうですよ?   作:モグモグラ

8 / 16
第8話

木々が霧散して建物が倒壊する音で目を開ける。そして遠くから駆けてくる黒ウサギと十六夜の足音を聞きつつ、立ち上がる。

片腕一本の骨折で済むのは予定外だったけど。もう少し怪我すると思ってた。

その後、黒ウサギ達と合流する。

「空さん! 大丈夫ですか!?」

大慌てで駆け寄ってきた黒ウサギがぺたぺたと触ってくるので肩を押して離す。

「左腕の骨折と額を少し切っただけだよ。治療したいんだけど、そういう施設はあるのかな?」

けっこう我慢してたけど、脂汗が止まらない。

「コミュニティの工房なら治療器が揃ってます。すぐに行きましょう!」

黒ウサギはそう言うと、駆け出した。着いていける早さなのでその後を追う。

(あっ。ルー忘れてた。‥‥‥‥まあ良いか。)

あいつなら勝手に帰ってくるし。

 

 

黒ウサギが工房と呼んでいた場所は、ギフトを用いた儀式を行うための場所のようだ。

黒ウサギの話では、工房に置かれているギフトは扱いが難しかったり、使い手を選ぶために売るに売れない物ばかりだという。

「はい。終わりましたよ。」

「サンクスと。元通りとは、びっくりだよ。」

痛みは無く、完全に治った腕と額の傷に驚く。

「空さんの怪我なら傷の跡すら残らないですからね。それに、空さん自体の治癒能力も高いようですし。」

確かに昔から怪我の治りは早かったけな?

「なるほど。傷が残らないのはいいことだよ。」

独り言でつぶやきながら工房から出る。

軽く腕を回してみると、痛みも違和感も無い。素晴らしいことだ。さすがは箱庭というべきか。

感心しながら外に出る。

「ルー。」

『なにー?』

声を掛けると茂みからルーが姿を現した。

「‥‥どんな感じだった?」

『落ち込んでるねー。まあ仕方ないけどね。』

「ん。分かった。」

会話を終え、ルーを持ち上げてからゆっくりと歩いていく。適当に散歩しよう。

(‥‥さてと。)

少し考えてから、自分の部屋に向かう。

(おっ。やっぱり居た。)

思ったとおり、耀が部屋の前に居た。

「耀。」

「!空!」

耀の方へ行く。

「‥‥あの、‥‥」

(〈‥‥そら。〉)

(〈分かってるよ。〉)

ルーと念話で会話をし、小さくため息をつく。

「貸し一つ。それで良い。」

「えっ?」

「今回のは、貸しだってこと。その内返してくれればいいよ。」

一々気にする事では無いけど、耀は優しい子だからな。気に病まれても嫌だ。

「それより、俺は少し寝たい。」

あくまでマイペースを貫く。

そう言い、部屋に入る。

防音の術を掛けてからルーを下におろす。

『‥‥ほんと、そらは寛容だね。』

「ははは。まあそれが俺だし、ね。」怪我一つで誰かにネチネチと文句を言う趣味はないよ。

『ふうん。それは良いけど。』

ああ。興味無いか。

ベットの上に飛び乗ったルーは俺と同じ青い瞳でこちらを見つめてきた。

『そらはいつも人に本心を見せない。人を信用していないからだね。そのくせ、他人に甘い。どういう事かなー?」

瞬きの間に、”狼”から獣耳の生えた”人”の幼女姿に変化したルーに小さく微笑する。いつも通り、着物が似合ってるな。

「そういう気分だったんだよ。ルー、いや、月琉(るる)。」

返しながら、月琉の隣に座る。

「ふーん‥‥。まあ、そらがやる事にぼくは従うよ。そらはぼくの主だもん。」

膝に頭を乗せてきたので月琉の頭を撫でてやる。こう、獣耳の付け根を撫でてやると喜ぶんだよな、こいつ。

「従ってばかりじゃダメだろ。お前にはちゃんと、俺に意見してもらわないとな。」

「‥‥分かってるよー。」

普段通りのコミュニケーションをとる。

「‥‥っ。」

月琉が耳をピクリと動かした。

「1人。きゅーけつきだね。」

「吸血鬼な。」

匂いを感じ取り、月琉と顔を見合わせて言う。

月琉を膝の上からどかし、不満げな月琉を撫でてから一緒に窓から外に出る。

 

 

「やあ。美しき吸血鬼さん?」

音もなく忍び寄り、金髪の美少女に声を掛ける。

「!? ‥‥いつからそこにいたんだ?」

驚きを浮かべたがすぐに尋ねてきた。

「ついさっきかな? 散歩してたら‥‥なんて、冗談はいいか。気配を察したから見に来たんだよ。」

そう答え、少女の隣に立つ。月琉は俺の隣にいる。

「俺は、”ノーネーム”所属の空だ。これは俺の相方の月琉。そっちは?」

「よろしくー!」

「レティシアとでも呼んでくれ。」

「OK。レティシア。」

握手の一つくらいは交わしたいが、そんなキャラじゃないし。

「なるほど。君が空か。風魔の名を持つだけある男だな。」

「ふうん。白夜叉から聞いたのか?」

「そうだ。白夜叉から話を聞いて、新生コミュニティがどの程度の力を持っているか、見に来たんだ。」

なるほどね。

「なら、どうぞ?俺は邪魔はしないから。」

そう答えるとレティシアはにこやかに笑い、宙に浮かび上がった。

それを見てから、屋敷に入る。

「そら。どうする?」

「‥‥眠いから寝たい、が談話室にいくぞ。」

関わるべきだろうから。

月琉とともに談話室に向かうと十六夜、黒ウサギ、飛鳥の三人とレティシアが話をしていた。

「用件というほどのものじゃない。新生コミュニティがどの程度の力を持っているのか、それを見に来たんだ。先程も一人、お前達の仲間に会った。」

誰一人気づいてないなー。気配消して入ったからな。

「? それはどの方で「俺だよ。黒ウサギ。」空さん!?」

そうそう、俺俺。

ニコニコと笑みを浮かべながら、窓際に立つ。

「ぼくもいるけど、まあいいかな?」

「んー。良くはないな。お前のヒト形態は初対面だし。」

月琉と言葉を交わしたあと、十六夜達に目を向ける。

「‥‥空君。その子は?」

「ルー、って言ったら分かるかな?俺が連れていた狼だよ。」

飛鳥の問いに答える。

「へえ?人型になれるなんて初耳だな。」

「まあ、言ってないもんね。」

「そうそう。言ってなかったからな。」

落ち着いている十六夜に月琉と言う。

「そ、それで、その子は何者ですか?」

「俺の妹ってことになってる式神。」

即答する。隠すことでもないもんな。

「ああっ! 式神ですかって妹!?」

ああやっぱり驚くか。

「うるせえぞ、黒ウサギ。」

なんか十六夜がご立腹なんだが?

「そうよ。話が聞こえないでしょう。」

「うむ。すまないが黒ウサギ。少し静かにしてくれ。」

「‥‥はい。」

三人に言われ黒ウサギがしょぼんとしていた。

「‥‥そら。何これ?」

「気にしちゃいけない。」

多分、天(作者)の気まぐれだと思うけど、気にしたら負けだ。気にしたらこっちにも被害が来そうだし。

「妹にしてる理由は、まあ、月琉が知性を持つ以前から面倒を見てたら自然とそう考えていた。」ここでの知性は式神化の事だ。

「一ついいかしら。何故その子は自分をぼくと言うのかしら?」

「‥‥? そういえば何で?」

月琉自身も知らないのかよ!

「人格を設定したのは師匠だし‥‥。つまりは師匠の趣味か‥‥。」

自分に陰陽術を叩き込んでくれた師匠を頭に浮かべため息をつく。あの時は俺が未熟だったから師匠の手を借りたんだが、他の兄弟子の手を借りた方が良かったよ。

「今更、人格を変えられないからな‥‥。」人格を変えるということは、月琉という存在の抹消だ。相棒をあっさりと消すわけにもいかない。まあ、今の月琉の性格は気に入ってるし良いけどさ。

「月琉が式神になったのは生まれたばかり、自我もはっきりしてない時だからな。こっちである程度自由がきくものなんだよ。」

その分野は式神のプロのほうが詳しく説明出来るけど、俺は御札関連を重点的に学んだからそうとしか説明出来ない。

俺の説明に納得したのかわからないが特に追求は来なかった。

これ以上の質問も来なかったので、中断されてた会話が再開された。

「実は黒ウサギ達が”ノーネーム”としてコミュニティの再建を掲げたと聞いた時、なんと愚かな真似を‥‥と憤っていた。それがどれだけ茨の道か、お前が分かっていないとは思えなかったからな。」

「‥‥‥‥。」

黒ウサギは黙って俯いていた。分かってはいたんだろう。

「コミュニティを解散するよう説得するため、ようやくお前達と接触するチャンスを得た時‥‥看過できぬ話を耳にした。神格級のギフト保持者が、黒ウサギ達の同士としてコミュニティに参加したとな。」

ああ、俺らのことか。でも、ほか3人はともかく俺はそこまでとは思えない。

「そこで私は一つ試したくなった。その新人達がコミュニティを救えるだけの力を秘めているのかどうかを」

「つまりはテストか。」

「結果は?」

黒ウサギが真剣な双眸で問う。対してレティシアは苦笑しながら答えた。

「生憎、ガルドでは当て馬にもならなかったよ。ゲームに参加した三人はまだまだ青い果実で判断に困る。‥‥こうして足を運んだはいいが、さて。私はお前達に何と声を掛ければいいのか。」

レティシアはまた苦笑した。

 

 

色々あって、十六夜とレティシアがゲームをすることになった。ドウシテコウナッタ。

あれか? また天(作者)のせいか?一回殴りたい。

「そら!」

月琉の声で我に返る。顔を上空に向けると鉄塊がレティシア目掛けて飛んでいた。

レティシアは‥‥動けないようだ。思考に体が追いついていないのか。

「‥‥《焔》!」

短刀《焔》を取り出し、振るう。

《焔》から飛び出た炎は鉄塊を覆うと一瞬で鉄を気化させた。一瞬だから周囲に影響はなし。

「よしと。月琉。そのギフトカードは黒ウサギにでも渡しときな。」

「は‥‥‥‥!?」

俺の言葉で気づいたのか慌てて月琉が手に持ってる金、黒、紅で彩られたカードに目を向けるレティシア。

「はーい。」

元気に返事をした月琉がギフトカードを黒ウサギに渡した。それを横目に《焔》をしまう。

そしてレティシアが弱体化していると話を聞いた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。